カーライフ
更新日:2019.12.10 / 掲載日:2019.12.10
今年の【キーワード】から見る『総括』と『予測』

2019年の自動車ニュースを改めて振り返ってみると、さまざまな出来事があったが、とくに安全装備の大切さを再認識させてくれた年であると実感した。今年を印象に残った『キーワード』を元に振り返りながら、2020年はどうなるのか? を予測してみた。
(掲載されている内容はグー本誌2020年1月号の内容です)
2019年のクルマ業界を振り返る
19年1から10月の国内販売台数は、前年とほぼ同じ水準で、軽自動車が新車として売られたクルマの37%を占めた。商品開発も活発で、19年にはデイズ/eKワゴン/eKクロス、N-WGN、タントが発売された。
また第46回東京モーターショーには、次期フィット、ヴィッツの後継となるヤリスも出展され、コンパクトSUVのロッキー&ライズも発売された。軽自動車と小型車が盛況だ。
その一方で痛ましい交通事故、あおり運転の末に発生した暴行事件など、深刻なニュースも多い。クルマの使い方を考えさせられた1年間で、特に安全装備の必要性を痛感した。
その意味で注目されたのがN-WGNだ。軽自動車だが、ホンダ車で初めて衝突被害軽減ブレーキ(緊急自動ブレーキ)が自転車に対応した。軽自動車やコンパクトカーは街中で頻繁に使われ、安全装備の自転車対応も大型車以上に求められる。N-WGNに限らず、軽自動車は全般的に安全装備が充実する。
またスカイラインがプロパイロット2・0を搭載して、ステアリングから手を離した状態での運転支援を可能にした。これもドライバーの疲労を抑えて安全性を高める。通信機能を活用したSOSコールや、エアバッグ作動時の自動通報機能が拡充するなど、安全装備が幅広く進化。
キーワード1『安全装備』
2019年を振り返ると……
安全装備では衝突被害軽減ブレーキの進化が注目されたが、新たに登場した車種は、軽自動車もサイド&カーテンエアバッグを標準装着している。ボディの衝撃吸収構造も含めて、さまざまな安全性能をバランス良く高めた。
記憶に残る自動車事故が多かった2019年 導入して安全性を高めたい装備をチェック

【スグに備えたい装備1】衝突被害軽減ブレーキ
[性能が向上したことで進化を遂げる]
急速に進化しているのが衝突被害軽減ブレーキ。センサーには、2個のカメラや1個のカメラとミリ波レーダーを使うなど、以前に比べて上級化してきた。これに伴い、自転車や夜間の歩行者を検知できるタイプも増えている。ヤリスは右折時における対向車、あるいは横断歩道上の歩行者を検知して、緊急自動ブレーキを作動させる。車両の陰から出てくる歩行者への対応も含めて、各車種とも衝突被害の軽減機能を総合的に向上させている。
【ココがポイント】
緊急自動ブレーキのセンサーや制御機能を使って、運転支援機能も採用されている。最近では軽自動車でも全車速追従型クルーズコントロールや操舵支援機能が用意され、運転の疲労を軽減してくれる。

新車乗用車搭載率65.2%※(2017年) ※国土交通省ホームページより引用。(https://www.mlit.go.jp/report/interview/daijin190607.html)
【スグに備えたい装備2】誤発進抑制機能
[踏み間違いによる事故を防止] 誤発進抑制機能はアクセルとブレーキペダルの踏み間違いなどに基づく急発進事故を防ぐ。最近は前進と後退の両方に対応するタイプが増え、カメラ(前方のみ)や音波センサーを使って常に障害物を検知しており、そこに向けてアクセルペダルを深く踏み込んだ時など、エンジン出力を下げたりブレーキを作動させる。安全を確保するために、最初はアクセルペダルを緩く踏み、正常に発進したことを確認してからペダルを踏み増してほしい。
【ココがポイント】
タントの場合、前方は2個のカメラと音波センサーを使って対象物を検知する。反射を使う音波センサーは、主に至近距離の対象物を把握する。カメラは画像として捉えるから、二重に検知することで正確性を高める。
【ジャンル別】先進安全装備が備わったイチ推し中古車はこちら
中古車中心価格帯:115万から246.4万円
セダンなら[SUBARU]インプレッサG4(先代型)
先代型は2011年の発売時点で、2Lエンジンを搭載する4WDにアイサイトバージョン2を採用。歩行者、自転車、車両を検知するから安心感が高い。2014年にはアイサイトがバージョン3に進化し、より性能が向上した。中古車中心価格帯:105万から405.3万円
ミニバンなら[日産] セレナ(先代型)
セレナはミニバンの代表車種に位置付けられる。先代型は2013年にマイナーチェンジを行い、エマージェンシーブレーキを採用した。単眼カメラをセンサーに使い、歩行者も検知して衝突被害軽減ブレーキを作動させる。中古車中心価格帯:55万から259.6万円
SUVなら[マツダ] CX-5(先代型)
先代型のCX-5は2014年に改良が行われ、高い速度域で作動するスマートブレーキサポートを装着した。ブラインドスポットモニタリングなども含めて、安全装備が充実しているので現行型ではないが、安心感は高い。

【スグに備えたい装備3】ブラインドスポットモニタリング
[死角に入った車両を検知できて安心] ブラインドスポットモニタリングは、車線変更時の衝突事故を防ぐ機能だ。死角に入る後方の並走車両を検知して、インジケーターなどによりドライバーに知らせる。それでも気付かずに方向指示機を作動させると、警報音を鳴らすなど積極的に注意を促す。またリヤクロストラフィックアラートもある。後退しながら車庫から出る時など、後方を横切る車両があると、検知して警報を発する。いずれも後方に向けたミリ波レーダーがセンサーとなる。
【ココがポイント】
以前のクルマは、後方視界が優れていた。しかし最近は、外観がカッコ良く躍動的になった代わりに、後方が見にくくなっている。そのためにブラインドスポットモニタリングなどが必要になった経緯もある。

【スグに備えたい装備4】アダプティブLEDヘッドランプ
[対向車に対する眩惑を抑える] カメラセンサーで対向車や先行車を検知して、ハイ/ロービームを自動的に切り替えてくれるのがオートハイビーム。アダプティブLEDヘッドランプは、これをさらに進化させたものとなる。複数のLEDヘッドランプの内、相手車両を照射している部分だけを消灯することで、ハイビームの状態を維持しながら相手方の眩惑を抑える。さらに、ヘッドランプのユニット内部にシェードを装着して陰を作ることにより、照射範囲を調節するタイプもある。
【ココがポイント】
アダプティブLEDヘッドランプは衝突被害軽減ブレーキのセンサーと、LEDヘッドランプを組み合わせて可能になった。今は先進装備や各種センサーが豊富に採用されるため、さまざまな機能を実現できる。

【スグに備えたい装備4】ドライブレコーダー
[決定的な証拠を映像で記録する] ドライブレコーダーは事故を防ぐ安全装備ではないが、万一トラブルに見舞われた時に、その状況を録画することができる。以前は前方のみを録画する方式だったが、今は前後の2カメラタイプ、さらに左右まで含めて車両の周囲を360度録画できるタイプもある。右の表を見ると、昨年の同時期に比べて出荷台数が大幅に伸びていることが分かる。やはり、日常的に煽り運転のニュースが取りあげられているのが普及している要因としては大きいだろう。
【ココがポイント】
録画された映像が、事故の証拠に使えるか否かは状況により異なる。ただし信号などが明らかに撮影されていれば、自分も相手も嘘は付けないだろう。解像度の高いタイプであれば、説得力も強まる。
ドライブレコーダー国内出荷実績
2019年度第2四半期(2019年7月から9月) :1,315,146台2018年度第2四半期(2018年7月から9月) :863,209台※一般社団法人 ドライブレコーダー協議会の統計より
【ジャンル別】先進安全装備が備わったイチ推し中古車はこちら
中古車中心価格帯:29.5万から194.7万円
軽自動車なら[ダイハツ] タント(先代型)
最近の軽自動車の装備は、小型車よりも充実している。先代型タントは、2015年の改良でスマートアシストIIを採用して、衝突被害軽減ブレーキの歩行者検知を可能にした。2016年にはスマートアシストIIIに進化している。中古車中心価格帯:35.5万から196.5万円
コンパクトなら[ホンダ] フィット(現行型)
コンパクトカーでは現行型フィットが注目される。2017年のマイナーチェンジでホンダセンシングが採用され、歩行者も検知できる緊急自動ブレーキを採用した。車間距離を自動制御できるクルーズコントロールも備わる。
2020年はこうなる!!
・衝突被害軽減ブレーキの自転車検知が普及
・通信機能を使った緊急時の通報機能が進化
・歩行者保護エアバッグの採用が増える
・手離し走行の可能な運転支援機能が充実
【2019年話題となった新装備】 プロパイロット2.0の実際の使い勝手はどうか?
高速道路上のみに限り追い越しや車線変更まで自動で行ってくれるプロパイロット2.0がついに登場した。従来のプロパイロットとの違いや実際の使用感などを踏まえ紹介する。
「3D高精度地図データによりカーブや車線変更も安全かつ的確」

自動運転はここまできた! 2020年はどこまで進化?
実用性が非常に高い2.0、車線変更も自動で快適に
2.0でないほうでは同一車線内のみだった運転支援の機能を複数車線に拡大し、車線変更支援や一定の条件下でハンズオフを可能とした、世界初の先進運転支援技術である。
センサーに7個のカメラ、5個のミリ波レーダー、12個ものソナーを備えた車両周囲360度のセンシング情報を駆使し、ナビゲーションに自車位置を数センチ単位で正確に把握できる3D高精度地図データを用いているのも特徴だ。
ハンズオフが可能となる条件は、ドライバーが前方をちゃんと見ていることが大前提で、件の3D高精度地図データがあり、中央分離帯のある道で、制限速度内で走行しているという3つが揃っていること。ドライバーの状況は車内に設置された赤外線カメラが常に監視しており、よそ見をしたら警告が発せられる。
ハンドル支援の作動は、表示色が白から緑になるとハンズオン、さらに青になるとハンズオフでの同一車線内走行が可能となる。
車線変更については、約60km/h以上で走行中に条件が整うと車線変更が可能である旨をシステムが提案し、それをボタンを押して承認した場合か、ウインカーレバー操作により任意のタイミングで車線変更することもでき、追い越しが完了すると同じ操作でもとの車線にもどる。
人間が目視するよりもずっと確実に周囲の安全を確認してくれて、車線変更を完了するまでをクルマに任せられるというのは非常に重宝する。
また、スマートフォンとの連携により、乗車前にあらかじめ最終的な目的地に到着するまでの一連のルートを設定しておくと、ルート上の高速道路の分岐や出口が近づくとシステムが車線変更を提案してくれる。
ACCについても加減速の制御が巧みなうえ、白線に対する車両の向きをカメラが検知し、タイヤの角度と操舵反力を微調整する独自の技術により極めてライントレース性に優れるのも特徴。設定速度を標識検知機能により検知した制限速度が自動的に反映されるようにもできる。また、3D高精度地図データの精度が高いおかげでカーブの大きさに応じて自動的に適宜減速する際の制御が非常に的確であることも特筆できる。
ただし、せっかく有益な機能の多くが、技術的には可能なのに、法規対応で制限速度プラス10km/hまでしか使えないようにされており、それが妥当でない状況は少なくない。改善すべきはむしろ法規である。
そんな中でも自動運転技術はさらなる進化を遂げ、2020年にはいよいよ一般道へ繰り出すことになる見込みだ。一定条件下での「レベル3」や、高速道路の渋滞でハンズオフだけでなく周辺監視も不要としたり、完全自動運転の実用化、異業種との連携など、各社それぞれ計画している模様で、大いに期待したい。
アドバンスドドライブアシストディスプレイ
360度センシングの情報やプロパイロット2.0の作動状況、車線変更の提案やハンズオフの可否など、様々な情報をアニメーションでわかりやすく表示。
◎2.0のココがイイ!
・安全確認を含め安心して運転を任せられる
・トリプルカメラによる車線間中央維持機能が秀逸
・熟練ドライバーのようにスムーズな加減速
▲2.0のココがイマイチ!
・制限速度+10km/hしか使えない
・操作が直感的でない
・分岐後制限速度に合わせて急減速することも
キーワード2『復活』
2019年を振り返ると……
全面刷新の新型車が少なめだった1年といえそうだが、その中でも勢いを感じさせたのはトヨタ。とりわけスープラとRAV4の復活が印象的だった。軽自動車では重要な車種がくしくも近い時期たてつづけに現れた。
装いも性能も新たに復活し、話題を集める
メーカーの勢いの差が顕著になった2019年
スープラとRAV4が復活したかと思えば、新型カローラや改名したヤリスが出るなど、いろいろと目立ったのはトヨタ。一方でマツダも全面刷新のマツダ3や新顔のCX-30を送り出した。
マイナーチェンジではインパクトのある顔を得たデリカD:5とプロパイロット2・0を搭載したスカイラインが印象に残る。その他、人気のミニバンセレナとフリードや、SUVではRXやRVRには大がかりな変更があったほか、ヴェゼルにガソリンターボが、エクリプスクロスにディーゼルが追加されるなど、魅力的な選択肢が増えたといえる。
ホンダはインサイトがフルモデルチェンジしたが、今年に出るはずだったフィットが事情により先送りになったのが痛手だ。SUBARUはあまり大きな動きはなかった。一方、年末商戦を控えて小型SUV『ライズ』や『ロッキー』が登場したりと……勢いのあるメーカーとそうでないメーカーの差が顕著な1年だった。
2020年にはメジャーな人気車種がいくつもモデルチェンジを控えている。また、ホンダが出す小柄で航続距離の短い都市型EVをはじめ電動化の流れもさらに加速していきそうだ。
たちまちSUVで販売トップの超人気車に!

[トヨタ] RAV4
4代目は日本では販売されなかったが、5代目となり、日本へ導入され復活した。発売と同時に非常に好調な売れ行きを見せている。力強さを訴求する外観となり、後輪の駆動システムに3タイプを用意したのも特徴。ハイブリッドも設定される。
中古車中心価格帯:229.9万から425.7万円
ココをCHECK!
[オフロードでの走破力と操舵安定性に優れる]ダイナミックトルクベクタリングAWDが走行状況に応じ、前後トルク配分に加え後輪トルクを左右独立で制御。高い走破性を発揮する。
スポーツカーの復権なるか?

[トヨタ]スープラ
BMWとの共同開発により約17年ぶりに復活。プラットフォームやパワートレインはBMWと共通となる。スープラらしく直6エンジンが搭載されたほか、初めて4気筒エンジンが設定された。MTの設定がないことも話題に。
ココをCHECK!
伝統の直6エンジンが圧巻の走りを演出する直列6気筒ツインスクロールターボエンジンを搭載。優れた回転バランスを誇り、直6ならではの気持ちの良いフィーリングが楽しめる。
燃費の良さと高い質感を両立させ登場

[ホンダ]インサイト
初代は2ドアクーペ、2代目は5ドアハッチバックだったインサイトが、ミドルセダンとして生まれ変わった。先代同様ハイブリッド車でありながら上品な4ドアセダンとなったことで、快適性や走行性能にまでこだわりをみせた。
中古車中心価格帯:268万から362万円
ココをCHECK!
細部にこだわり美しさを追求ソフトパッドの曲線に沿うように施されたステッチラインや、ミシンの縫製と手張りによる美しい仕立てで上品な空間を演出。
2020年に登場予定のクルマは期待の新型車が目白押し
従来の使い勝手はそのままに上質に進化

[ホンダ]フィット(2月登場予定)
プラットフォームは現行型の改良版ながらデザインやパワートレインは大きく変わり、車種体系およびグレード名も一新され、4つの個性がラインアップされる。ハイブリッドは1モーター式のi-DCDを廃し、i-MMDゆずりの2モーター式の上等なものが与えられる。
よりスタイリッシュでアグレッシブな走りに期待

[SUBARU]レヴォーグ(2020年後半登場予定)
程よいサイズ感の高性能ワゴンという基本コンセプトを踏襲し、いよいよSGP(スバルグローバルプラットフォーム)を採用して生まれ変わる。エンジンは1.8Lターボを搭載予定。実はSGPとターボの組み合わせは初めて。よりスタイリッシュな雰囲気になる外観にも期待大。
TNGA初コンパクトカー向けプラットフォーム

[トヨタ]ヤリス(2月中旬登場予定)
TNGAの小型車版の第1弾。これまでの車名『ヴィッツ』から改名され、デザインも一新される予定だ。エンジンはすべて3気筒となり、ガソリンの1.5Lと1.0Lのほか1.5Lハイブリッドが用意され、MTも選べる。先進安全装備の充実に加えて進化した高度駐車支援システムも設定。
国内市販予定モデルがついに公開

[ホンダ]アコード(2020年登場予定)
2年前に北米で発売され、ほどなく中国市場に導入するなど、すでに海外では販売されている10代目アコードが、ようやく日本に上陸する。ワイド&ローかつクーペライクなフォルムが特徴で、日本仕様はハイブリッドのみとなる見込みだ。生産はタイ工場でおこなわれる。
ミニバンとSUVが融合したような斬新なデザイン

[トヨタ] TJクルーザー(2020年登場予定?)
SUVテイストのミニバンの新提案として開発。スクエアなボディ形状と両側スライドドアが特徴で、室内には荷物を固定するためのアイデアが随所に見られ、助手席側の前後シートをフルフラットにすると、約3mの長尺物も積める。2.0Lハイブリッドを搭載か。
ロータリーエンジンも復活が近い??
ロータリー用ターボの特許を取得したマツダは、スペースフレーム型でダブルウィッシュボーン式サスを持つ、フロントミッドシップ用のシャシーも開発している模様。かねてよりウワサの絶えないロータリーを積むスポーツカーがいよいよ現実のものとなるか。
2020年はこうなる!!
・ファン待望の名車が復活するか!?
・電気自動車が続々参戦予定?
・個性的なデザインのクルマが増えそう
キーワード3『EV』
2019年を振り返ると……
2019年1月には現行リーフのバッテリー容量を62kWhに高めたe+が加わった。ホンダはコンパクトな電気自動車のホンダeを披露している。輸入車でもメルセデスベンツEQCの発売など、電気自動車が徐々に増えてきた。
東京モーターショーでも続々登場 EVの現状とこれからを予測する
電気自動車普及の流れだが個人所有における課題も多い
第46回東京モーターショーには、電気自動車が豊富に出展された。日産はアリアコンセプトと軽自動車サイズのIMk、ホンダはホンダe、マツダはMX-30、三菱はMIテックコンセプト、トヨタは燃料電池車のMIRAIコンセプトという具合だ。各社とも積極的に取り組んでいる姿勢が窺える。
背景には二酸化炭素の排出量と、化石燃料使用量の抑制がある。欧州では21年に厳しい燃費規制が実施され、1km走行当たりの二酸化炭素排出量を企業平均で95gに抑えねばならない。燃費数値に換算すると24から25km/Lだから、優れた環境性能を達成する必要がある。
日本の国土交通省と経済産業省も、30年度までにWLTCモード燃費の平均値を25・4km/L以上とするようメーカーに義務付ける。電気自動車も含まれ、エネルギーの消費効率を燃費に換算する。電気自動車は環境性能の向上に適しており、直近では燃費規制の実施もあるから、早期に普及させる必要が生じた。
そこで現時点における電気自動車の売れ行きを見ると、19年度上半期(4から9月)において、電気自動車の販売総数は9945台であった。メーカー別に見ると、リーフなどを扱う日産が圧倒的に多く9244台を占める。それでも実質的に1車種だから、電気自動車の販売規模は1か月平均で1700台程度だ。ハイブリッド(マイルドタイプとプラグインを含む)が1か月平均で9万3500台に達するのに比べると、電気自動車は2%以下の規模にとどまる。20年にはその台数を少しずつ増やしていく。
日本では、総世帯数の約40%がマンションなどの集合住宅で暮らす。都市部ではさらに60から70%に比率が高まる。集合住宅に電気自動車の充電設備を備えるなら、建設時に施工しないと困難なため、電気自動車は戸建てでない場合、所有しにくい。
そこで日産は、販売店に可能な限り急速充電器を設置。「マンションに住んでいてもリーフを所有できます」と宣伝するが、すべての充電を急速で行うとリチウムイオン電池への負担が心配だ。従来に比べて電池の耐久性は大幅に向上したが、電気自動車を所有するなら自宅にも充電設備を備えたい。そうなると日本の住宅事情では困難が伴うから、法人ユーザーも含め、慌てず着実に普及を進める必要がある。
[日産]アリア・コンセプト
GT-Rに採用されている前後高出力電動モーターを配置したツインモーター4輪制御システムを搭載。リーフとは比較にならない加速力と走破性が期待され、デザインは、ほぼこのままで市販化される可能性が高い。[マツダ]MX-30
マツダ初の量産型EVとして東京モーターショーで世界初公開。マツダが掲げる「魂動」をさらに進化させたチャレンジ精神溢れるデザイン。フリースタイルドア(観音開き)の採用や先進安全技術など非常に楽しみな1台だ。
[レクサス]LF-30
レクサス創業30周年に由来した車名を持つEVコンセプト。奇抜なデザインは未来的ともいえ、後部座席に「人工筋技術」を使用し、乗員の体型にフィットするよう自在に形状が変わるという。最高出力は536psを発揮する。[ホンダ]ホンダe
N-ONEを彷彿させるクラシカルな丸目ヘッドライトがキュートなホンダのEVコンセプト。バッテリー容量は35.5kWhで1充電航続距離は220kmと控えめ。EVでは珍しい後輪駆動ということもあり、走行性能に期待したい。
2020年はこうなる!!
・電気自動車の普及率が徐々に高まる!?
・トヨタが超小型EVを発売予定!
・充電インフラの整備がより進む!
キーワード4『Iot化』(Internet of Things)
IoTとは……
「IoT」とは日本語では一般的に「モノのインターネット」と訳されている。「身のまわりのあらゆるモノがインターネットにつながることで情報交換が行われ、相互に制御する」仕組みのことを総じてIoTと呼んでいる。
クルマのIoT化でどんなメリットがあるのか?

今まではインターネットはPCや携帯電話をメインにつながっていたが、IoTにより、家電などの“モノ”もインターネットと結ばれるようになった。モノのなかにはクルマも含まれていて、それが一気に広がったのが2019年と言っていいだろう。
最近聞く『コネクティッドカー』がいい例で、クルマは移動する端末となりナビ情報や音楽、メールなどはネットを通じて送受信されるというのは画期的といえる。大きな変革を迎えているというか、IoT化もコアメニューのひとつだ。
当然、2020年はそれが加速するだろう。IoTの命は回線だが、近々導入される5Gになれば飛躍的に通信速度が速くなる。つまり、やり取りにタイムラグがほぼなくなるわけで、ナビやエンターテイメント環境だけでなく、より現実的な制御が可能になることから、安全性向上にも寄与するのは確実だ。
e-Palette
トヨタのe-Paletteは端末そのものだ。近くを走るe-Paletteをスマホで呼んで移動できるのはもちろん、数台に分乗してライブへ。車内から楽しんだり、DJもe-Paletteからプレイするなど、クルマの概念自体が異なる。コネクティッドカー
2019年、一気に広がりをみせたコネクティッドカー。現状ではセンターとのナビデータのやり取りや音楽のダウンロード、メールの送受信などが主に利用されているが、将来的な自動運転にも大きく関係するものだ。
キーワード5『デザイン』
「自動車デザインの背景には技術の進化があり、ブランドと戦略がそれを育てる」という世の習いからいけば、トヨタのプリウスからMIRAI、C-HR、そしてRAV4やカローラスポーツに至るエッジの立ったキレのあるデザインは今後も堅調だろう。
ドアミラーレスやDRL(デイランニングライト)などの技術熟成がさらにトヨタデザインに円熟味を加えるはずだ。対して、良品イメージのホンダやニッチ狙いのスズキ、デザイン的にはコンサバ傾向にある日産などは、勢いが乏しい印象だ。誰もがクルマは変わると分かっている今、性能面だけでなく、デザインでもメーカーには勝負してほしいところだ。
MAZDA3
挑戦的で提案性に富んでいると感じる。ユーザーに新たな価値観を与えるという意味でも従来よりもさらに一歩踏み込んだデザインだ。デリカD:5
ekクロスを含め、LEDヘッドランプを軸にした特徴的な顔を描き出したことに驚かされた。それがまた売れてしまうから面白いものだ。
まとめ

CR-VやRAV4、スープラといった多くの車種の復活に加え、市販車では初となる自動運転レベル3のプロパイロット2.0を搭載したスカイラインが登場するなど、話題に事欠かない年であった2019年。東京モーターショー2019で発表された新型レヴォーグやヤリス、MX-30といった期待のモデルの登場を控える2020年。記念すべきオリンピックイヤーということもあり、今後どのような話題で我々を楽しませてくれるのか期待が高まる。