カーライフ
更新日:2025.09.10 / 掲載日:2025.09.10
秋の行楽ドライブを颯爽と駆け抜ける
走りを楽しむスポーツコンパクト
Enjoy! SPORTS COMPACT CAR!

夏の暑さが少しずつ和らいでくる秋はドライブに最適な季節。
そんな秋のお出かけを楽しく演出してくれるのが、本特集で紹介する“スポーツコンパクトカー”。
じつは、古くは70年代からスポーツコンパクトは愛されてきた。
実用車をベースとしているため、コストパフォーマンスも良好で、気持ちがいい走りを気軽に楽しめる! というありがたい存在だ。
クルマを操る楽しさを感じながら、秋のドライブをスポーツコンパクトカーでぜひ楽しんでみよう。
撮影/渡部祥勝
(掲載されている内容はグー本誌 2025年9月発売号掲載の内容です)
コンパクトカーのスポーツモデルが愛される理由スポーティな走りを身近に感じられる価値ある存在GR YARIS

いつの時代も各メーカーがスポーツコンパクトを用意
コンパクトな車種に、少し性能の高いエンジンと硬めの足まわりを搭載すると、安価で楽しいスポーティカーを作れるのではないか。この発想に基づく商品は昔から多い。初期の車種としては、75年に初代VWゴルフに追加されたGTIが有名で、クルマ好きにとって大切な「速さとカッコよさ」を低価格で提供した。
70年代は排出ガス規制による出力低下で、スポーツモデルにはつらい時代だったが、80年代になると再び走行性能が進化を始めた。3代目トヨタ・スターレットターボSや3代目ホンダ・シビックに1.6ℓツインカムエンジンを搭載するSiなどが登場し、軽快で楽しい運転感覚を味わえた。この後、パワー競争がさらに激化。90年には4代目の日産・パルサー3ドアハッチバックに2ℓツインカムターボと4WDを搭載するGTI-Rが設定された。当時は好景気でモータースポーツにも積極的に取り組み、パルサーGTI-Rは参戦ベース車としても使われた。
00年以降は、コンパクトスポーツモデルが多様化した。車両価格が上昇するなかで、スズキ・スイフトスポーツは、高性能なエンジンと足まわり、エアロパーツを装着して価格を200万円以下に抑えた。コンパクトスポーツで大切なことは、ベースとなる標準車の素性だ。スイスポは、ベース車のスイフトを入念に作り込んだから、優れたモデルへと発展した。コンパクトスポーツを選ぶ際は、両者のキャラクターの違いが明確になるため、なるべくベース車にも試乗しておきたい。専用パーツの装備やエンジン、モーターの制御など、各々に盛り込まれる内容に違いはあれど、いずれも手が出しやすい価格帯のモデルが多いのもコンパクトスポーツの大きな魅力といえる。
文:渡辺陽一郎
なぜトヨタはGRに力を入れているのか?
トヨタがGR(ガズーレーシング)に力を入れる最も大きな理由は、過酷なモータースポーツへの参戦を通じて各種のデータを集め、優れた商品開発に反映させるためだ。空力特性から燃費まで、モータースポーツで得られる知見は多い。また海外では、モータースポーツの実績が市販車の売れ行きを左右する事情もある。そこで、モータースポーツに参戦するベース車としてGRシリーズを用意した。そのなかでスポーツコンパクトのGRヤリスやGRカローラも人気の車種だ。両車ともに直列3気筒1.6ℓターボエンジンと4WDを搭載して、GRヤリスは専用の3ドアボディで全長も4mを下まわるから旋回性能が高い。GRカローラはカローラスポーツがベースだから、5ドアボディによって後席の居住性なども優れている。


GRヤリスを用いてFIA世界ラリー選手権、スーパー耐久シリーズや全日本ラリー選手権など、さまざまなモータースポーツへの参戦。レースなかで得た知見をフィードバックすることで、クルマ作りにおけるさまざまな性能面の向上へとしっかりつなげている。
気がつけばスポーティコンパクトはいつも身近な存在だった!

[日産]ノート NISMO(2014)
2代目ノートに設定されたNISMOには、1.2ℓエンジンのCVT仕様と併せて、1.6ℓと5速MTの仕様もあった。最高出力は140馬力に高められ、サスペンションやブレーキも変更している。峠道では楽しい運転感覚を満喫できた。

[日産]マーチ12SR(2003)
3代目マーチをベースにした高性能モデルで、エンジンは1.4ℓではなく、チューニングとの親和性から1.2ℓとした。最高出力はベース車の90馬力から108馬力に強化された。サスペンションとタイヤも専用の設定で機敏によく走った。

[三菱]コルト ラリーアート(2004)
コルトに追加されたコンパクトスポーツで、エンジンは直4 1.5ℓターボ。最高出力は147馬力を発揮。この後も進化を重ね、ワイドフェンダーを装着して最高出力を154馬力に高めたバージョンRも加えられた。

[マツダ]マツダスピードアクセラ(2006)
初代アクセラの改良と併せて追加されたコンパクトスポーツで、エンジンは直4 2.3ℓのガソリンターボだ。最高出力は264馬力、最大トルクは38.7kg-mと強力で、当時の前輪駆動車では最高峰の走行性能を発揮した。
走りを楽しむ SPORTS COMPACT CAR 01
AURA NISMO【オーラニスモ】
ニスモモードで“激速な加速”を体感できる特別なコンパクトカー

[日産]
オーラニスモ(現行型)
空力性能を高めた専用エクステリアデザインをまとい、e-POWERとNISMOのモーター制御技術が生み出す鋭いレスポンスと加速を誇る。NISMO専用色(3色)を含む全7色のボディカラーを用意する。
新車価格:307.23~347.38万円
中古車価格帯:180.3〜472.6万円

キッチリと手が入れられたチューンドコンパクト!
元祖e—POWER搭載モデルとしてコンパクトカー新時代を切り拓いたノート。オーラはインテリアなどの質にこだわった上級モデルだ。
そのオーラをベースとしてNISMOが手がけ、スポーティに仕上げたのがオーラニスモだ。まずは見た目からして硬派。精悍な専用エアロは見た目だけでなく、空力も徹底的に検証されたもの。ニスモのアイデンティティである“赤”もセンスよく採り入れられ、スペシャル感は十分だ。車内も同様に赤いシートベルトやステッチなど、走りへの期待感を高めてくれる演出がなされている。
走り出してもその期待感が裏切られることはない。足まわりは実用車ベースとは考えられないほど硬めに引き締められていてシャープなハンドリングが楽しめる。段差などの当たりはしなやかなのはメーカーチューニングならではの絶妙ポイントだ。
モーターの制御も専用チューニングが施され、NISMOモードを選ぶと強烈な加速が可能。また減速時の回生も控えめでその分ブレーキで意のままにコントロールすることができ、積極的に走れるのも理屈抜きで楽しい。こういった味付けはスポーツカーレベルと言っても過言でなく、それをコンパクトハッチで実現しているのは貴重な存在だ。
文:近藤暁史

【ポイント】 ベース車との違いはココだ!

走りの期待感を高めてくれるインテリア
シートは専用表皮となる。サウンドシステムはオプションで、ニスモチューニングが施されたレカロシートも選択可能だ。シートベルトも赤と、ニスモらしさにあふれる。

軽量ホイールと高性能タイヤの組み合わせ
ホイールは軽量かつスポーティ。足もとから引き締めるこだわりのデザインだ。タイヤはミシュランのパイロットスポーツ4を標準装着する。サスペンションも専用だ。

専用の走行制御はボタンで切り替え
NISMOのロゴがあしらわれたレッドカーボン調のパネルが印象的。走行モードはシフト右横のスイッチで切り替えられる。NISMOモードではシャープな加速が楽しめる。

高揚感あふれるメーターグラフィック
出力状況を表すパワーメーター(左側)にもNISMOレッドを採り入れることで、運転時でもひと目で分かる特別感を演出する。明瞭なメーターグラフィックで視認性も高い。
ベース車はこちら!
[日産]オーラ(現行型)
ノートをベースとし、切れ長のヘッドライトや専用ホイールといった洗練された外装や上質な素材を採用した高級感のある内装が特徴。フロントモーターの出力が高められ、力強い走りが楽しめる。
新車価格:277.97~315.15万円
中古車価格帯:139.4〜340万円

※中古車価格はグーネット2025年8月調べ。記事中の価格は参考であり、中古車価格を保証するものではありません。
走りを楽しむ SPORTS COMPACT CAR 02
FIT RS【フィットRS】
スポーティさを演出する専用の足まわり気軽に颯爽とした走りが楽しめる

[ホンダ]
フィットRS
RS専用サスペンションパーツを徹底チューニングしたことで、操る楽しさと質感の高い爽快な乗り味を実現。ステアリングにあるパドルで減速を行えるので、マニュアル車に近い運転感覚も楽しめる。
新車価格:221.87〜261.69万円
中古車価格帯:162〜279.8万円
※試乗車は、e:HEV RS

目を見張る足まわりの強化、自然で奥深さを増した走り
初代シビックにルーツがある、ホンダ伝統のスポーツグレードといえばRSだ。その響きも含めて走り好きの心をかきたてるものがある。
現行型のフィットRSは今や4代目となり、ガソリン車とe:HEV(ハイブリッド)の両方に設定されているのも注目だ。今回試乗したのはe:HEVモデル。動力系には専用チューニングはされていないものの、ベース車自体が先代型からモーター出力が14ps(ガソリンは20ps)もアップしているので不満はなし。コンパクトカーらしからぬ、力強い走りを楽しむことができる。
RS専用で手が加えられているのは前後バンパーなどでのスタイルアップで、ほどよい精悍さを醸し出すスタイルを実現しつつ、全長は85㎜も延長されて存在感も増している。
気になる走行性能ではサスペンションまわりがRS専用となる。高減衰ダンパーと強化スプリングを装着し、e:HEVでは強化スタビライザーとそのブッシュも専用となる念の入れようだ。その結果、ハンドリングの向上や安定したコーナリング姿勢などを実現し、RSならではの気持ちいい走りが楽しめる。その味付けはあくまでもスポーティで、普段使い中心で、気持ちよく流すような走りが好みの方にオススメだ。
文:近藤暁史

【ポイント】 ベース車との違いはココだ!

大人のスポーツを演出するシート
RSのシートはフロントがプライムスムース&ウルトラスエードの専用表皮で、サラッとした座り心地だ。リアはウルトラスエードに代わってファブリックとの組み合わせ。

完全RS専用となる足まわり
アルミホイール&タイヤは16インチの専用となる。スプリングとショックアブソーバー、スタビライザーにまで手を加えることで、RSの走りを足もとから演出する。

RSの真骨頂、可愛いから精悍へ!
パンパー、グリルなどがRS専用のスポーティなデザインに変更されている。表面をピアノブラック塗装で仕上げることで高級感もうまくプラス。RSのロゴも映える。

e:HEVなら走行モードも切り替え可能
RSでもe:HEV専用で装着されているのがドライブモードスイッチ。メーター横のボタンを押すことで、ノーマル/スポーツ/エコを簡単に切り替えることができる。
ベース車はこちら!
[ホンダ]フィット
個性の異なる4つのタイプ(HOME/BASIC、CROSSTAR、LUXE、RS)を用意。パワーユニットはe:HEVとガソリン車を設定し、幅広いニーズに応えるホンダを代表するコンパクトカーだ。
新車価格:177.65〜292.93万円
中古車価格帯:84.1〜299.8万円

※中古車価格はグーネット2025年8月調べ。記事中の価格は参考であり、中古車価格を保証するものではありません。
走りを楽しむ SPORTS COMPACT CAR 03
SWIFT SPORTS【スイフトスポーツ】
軽快な走行性能と扱いやすいサイズ感、コスパ抜群の本格コンパクトスポーツ

[スズキ]
スイフトスポーツ
ちょうどいいサイズのボディは、剛性の向上と軽量化を高い次元で両立。自分の手足のような感覚で一体感のある運転を楽しめるスポーツハッチ。標準車は2025年2月に生産を終了。ぜひ復活してもらいたいモデルだ。
新車価格:232.98〜245.41万円※
中古車価格帯:98.5〜390万円
※特別仕様車「ZC33S Final Edition」

高いパフォーマンスを発揮。操る楽しさは唯一無二
実用車ベースで“ワクワクするスポーツハッチ”というのがスイスポのキャラ。登場当初はWRCに参戦していたこともあり、エンジンには鍛造ピストンを採用。ダウンサイジングターボをスポーツに振るなど、スズキの本気度が全開のモデルといえ、他社を含めても稀有な存在として、走り好きのユーザーの心を掴んだ。
現行のZC33S型は、若干マイルドな設定になったとはいえ、足まわりは硬めでスポーティな味付けは健在。FFでもよく曲がる。ターボラグがなく、タイトコーナーでスピードが落ちてもストレスなく立ち上がり、加速するのでとても爽快だ。現在、特別仕様車「ZC33S Final Edition」が2025年11月までの期間限定生産で販売中。今後は新車での購入ができなくなってしまうのが惜しまれる。
【ポイント】 ベース車との違いはココだ!

赤のステッチがスイスポの証
ドライブフィールにも直結するシートは、サイド部分が高く、しっかりホールドしてくれる。赤いステッチが運転時の気分を上げてくれる。

軽快な走りを支えるターボエンジン
NAにこだわってきたのが一転してターボ化。140psは車重970㎏には十分でライトウエイト&小排気量ターボというのは貴重な存在。

操る楽しさを実感できるドライブフィール
硬めの足で多少の突き上げ感はあるが、乗り心地は至って快適。軽量ボディとターボの組み合わせにより、キビキビとコーナーを走り抜ける。

スポーティさをより演出するマフラー
2本出しマフラーがスイスポの証で、ベース車とは別格であることをアピールする。加速に応じて心地いいエキゾーストを響かせる。
※中古車価格はグーネット2025年8月調べ。記事中の価格は参考であり、中古車価格を保証するものではありません。
自動車評論家のみなさんに聞いてみました お気に入りの“スポーツコンパクト”を教えて!

新車から旧車、メンテナンスまで…と幅広いジャンルを網羅し、編集&執筆を行う。日本自動車ジャーナリスト協会会員。
マツダ マツダ2

今や希少な6速MTを駆使して、キビキビした走りを満喫
走行性能まで手が入ったスポーツグレードは設定されていないものの、ワクワク感あふれる、キレのあるクルマ作りがマツダの身上だけに抜かりなし。マツダ2はレアなMTでしかも6速だけに、各段引っ張りながら走れる文句なしのスポーツコンパクトだ。ディーゼル(現在はカタログ落ち)よりも、ガソリンのほうが高回転まで回せて走りは軽快。足まわりもレベルが高く、懐の深いコーナリングを実現している。

クルマのある生活を「実用・趣味・エコ」など、さまざまな視点から提案するカーライフ・ジャーナリストとして活躍。
ホンダ CR-Z

俊敏な走りと優れた燃費性能を両立。スポーツタイプのハイブリッドカー
躍動感いっぱいのスポーティなデザインに、小回り性能が高いボディサイズ、狭いけど後席のあるパッケージ。実用とワクワクを両立する要素に、発売当時はMT設定のある世界初の量産スポーツハイブリッドカーだったため、環境性能とモーターアシストを賢く使う新たな楽しさまで兼ね備えていたCR-Z。じつは私もCVTモデルに10年以上乗った元オーナー! 今でも貴重なMT入門モデルとしてオススメです。

数多くのクルマをしっかり試乗。その経
験値に基づきクルマとその周辺情報を分
析するユーザー目線の自動車評論家。
ダイハツ ブーン X4

まさに公道を走るラリーカー。運転の楽しさを存分に味わえる
今でも欲しいコンパクトスポーツといえば、2006年にダイハツブーンに追加されたX4。モータースポーツのベース車で、直4ターボの排気量は規則に合わせ936㏄に抑えた。5速MTはギア比の間隔を小さく抑えて扱いやすく、最高出力の133馬力を確実に引き出せた。1トンを下まわる車重との相乗効果で運転感覚も軽快だ。試乗した際には、1980年代のコンパクトスポーツの面影を思い出して胸が熱くなったのを覚えている。
まとめ
ワンランク上の走りをコスパよく、楽しめるコンパクトスポーツで出かけよう

今回、スポーティな走りが楽しめるコンパクトカーを紹介してきた。じつは、スポーツコンパクトは、いつの時代も身近な存在であることに改めて気づかされた。やはり、実用車をベースとして専用パーツやスペシャルなセッティングが施されているにもかかわらず、コスパがよく、サイズ的にも扱いやすいのが多くの人に愛される理由といえるだろう。手が届きやすい価格のモデルが多いため、この秋はスポーツコンパクトを駆ってワンランク上の走りを楽しんでもらいたい。