カーライフ
更新日:2025.06.06 / 掲載日:2025.06.06
アウディS1オーナーのホンネ。藤島知子が語る「その世代でしか味わえないステキな経験」

アウディを愛用する自動車ジャーナリストの藤島知子さんが語る「その世代でしか味わえない魅力がある」
文●藤島知子、ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス ※ナンバープレートは、すべてはめ込み合成です。
(掲載されている内容はグーワールド本誌2025年7号「新型モデル続々上陸![アウディの未来]」記事の内容です)
日頃からたくさんの新型車を取材する自動車ジャーナリストという立場にありながらも、購入から9年目になるS1を愛用している藤島さん。乗り続ける理由や気になる信頼性など、オーナーの立場で語ってもらった。
購入から9年を経ても色褪せない味わいがある

アウディの小粒でハイスペックなハッチバックモデル『S1』。その出会いは、とある自動車メディアの撮影で筑波サーキットのコース2000を走ったことに始まった。
夕暮れ時に差し掛かるドラマティックな時間帯に貸し切りで走行する贅沢なものだったが、「A1をベースにした、クワトロ(4WD)で、ハイスペックなMTモデルなのよね……?」と軽く頭に浮かべながら、徐々にペースアップしていくと、それまでのコンパクトカーで感じたことのないレベルにある、あまりに緻密な操縦性に鳥肌がたった。
ステアリングを握ったのは3ドアのハッチバックで、眩いほどの艶やかさを放つ特別色のベガス イエローのモデル。ブラックのコントラストルーフはひと目でベースモデルのA1とは一線を画す、尖ったモデルであることを主張していた。
小柄な体躯に2Lの直噴ターボエンジンを搭載。クワトロシステムを詰め込むために燃料タンクの配置を変更。さらに、リアのサスペンションはトーションビーム式から4リンク式に変更されている。走ることを考えて生まれたモデルゆえに、2ペダルのSトロニックは存在しない6速MT専用車である。S3のデチューン版となる231馬力のエンジンは、伸びのよさもさることながら、6速MTはヌメッとした操作感を与えるもので、プラットフォームを共有するVWポロ GTIのMTとはまったくの別モノに仕上がっていた。タイヤは常に路面を捉え、高い次元の安定性をもたらし、脳内の神経と車両挙動がつながっていると錯覚したほど。クルマを降りるときには、この仕様を買おうと決めて、すぐにディーラーへ駆け込んだ。
新車で購入したS1は試乗車とほぼ同じ仕様にした。9年目を迎える現在も、選んでよかったなと思えるオプションはレザーシートとBoseサウンドシステム。アウディは五感に響くクルマづくりを行うブランドだが、『聴く』ことにもこだわりがある。設計段階から音づくりが行われているというだけあって、コンパクトカーだと思えないほど音の質が豊か。勝負を前に気持ちを昂らせていくときも、リラックスしたいときもブルートゥースでスマホをつないで音楽を楽しんでいる。身体を預けられるシートはクワトロの安定性の高い走りも相まって、長距離やワインディングの移動で疲れにくい。
購入して9年目を迎える私のS1の走行距離は16万5000km。幸いにも酷いトラブルには出くわすことはなかったが、よく耳にする故障とは向き合ってきた。3年目の車検を迎えた日にクワトロのハルデックスカップリングのエラーが出たり、10万kmを超えてLEDヘッドライトの片目の基盤が故障して交換。車輪のセンサーが故障したこともあった。最近ではクーラント液の滲みも気になってきているので、そろそろウォーターポンプの換え時かなという段階でもある。
仕事のキャリアを積んで初めて手にすることができたアウディ。過去を振り返れば、その時期にしか登場し得なかった魅力的な作品が多い。今後は電動化に舵を切るアウディだけに、過去のモデルをあえて今乗っておくのも素敵な経験になると思う。
Profile:モータージャーナリスト 藤島知子
幼い頃からのクルマ好きが高じて、2002年から量産車からフォーミュラカーなどレースに挑戦。クルマの楽しさを多くの人に伝えようと、雑誌やTVなど各種メディアで活動中。
小さなボディに技術を詰め込んだアウディ最小のスポーツモデル

S1はショートボディの3ドアと5ドアのスポーツバックのふたつのタイプが存在した。足もとには18インチのアルミホイールを標準装備。シンプルなスタリングは計算され尽くされたディテールで、今なお色褪せない。フロントにS1のバッジを配し、エキゾーストは4本出しで、さりげなくハイスペックをアピール。
