カーライフ
更新日:2023.07.10 / 掲載日:2023.07.10

圧倒的“コミュ力”カーの世界

クルマとコミュニティから見えてくる新しいクルマ愛のカタチ

世の中には魅力的なクルマがたくさん存在する。なにもそれは、超高額な高級車やバケモノ級の走行性能を備えたスーパーカーばかりじゃない。設計・販売に至るまでのストーリーや、人間の叡智が生み出したデザインや機能だって、人に感動を与えてくれる。そして、やはりそういった魅力的なクルマには人が集まってくる。驚愕か色気か、はたまた未来なのか───さまざまな魅力が奇跡のごとく一体となった“コミュ力(りょく)”カーはたしかに存在する!

構成・文/フォッケウルフ 撮影/茂呂幸正、木村博道、森山良雄

(掲載されている内容はグー本誌 2023年7月発売号掲載の内容です)

クルマ好き仲間を増やすツールにもなり得る

 おそらく多くの人にとって、クルマ好きになった原体験というものがあるはずだ。それは、スーパーカーブームやモーターショーだったり、友人に連れて行かれた峠や、たまたま訪れた夜の高速パーキングエリアだったり、あるいは近所の中古車販売店だったかもしれない。
 ただ、そういったそれぞれの思い出のなかで、ひとつ共通点として挙げられるのは、必ずクルマに人が集まっていたこと。言い換えれば、いつの時代でも、人を集めるクルマが存在していたということだ。
 本来移動のための道具として生まれたクルマは、ファッション性を表現し、高い性能を象徴し、オーナーのステータスを表すものとなった。マニアはもとより、積極的にクルマに興味がない人であっても、オーラをまとったクルマには惹かれる。
 環境への影響や維持費の高額化といった問題はたしかにある。だからレンタカーやカーシェアを利用するという人もいるだろう。しかしクルマは人とつながるコミュニケーションツールになり得る。人が集まるクルマ、自分のクルマ愛が伝わるクルマを選べば、仲間が増え、さらにカーライフは充実したものになるはずだ。

ところでコミュ力が高いクルマってどんなクルマだろう?

世界でも人気の高い日本車は、高く評価されるだけの魅力を備えている。それは周囲に人を集める求心力や、人との会話を弾ませる話題性といった、コミュニケーション力である。そして、コミュ力が高いクルマを選ぶことで自分のクルマ愛が人に伝わることは、クルマを所有することの喜びにもつながる。クルマってやっぱり最高だ。

人を集める魅力を備えた日本車が存在する!
 現在、日本車は海外で広く販売され、多くの人から高く評価されている。レースで日本メーカーが活躍すれば欧州で高く評価され、その信頼性の高さから中東でも数多く流通している。また、映画『ワイルド・スピード』シリーズで描かれたように、アメリカ西海岸で日本車ブームが巻き起こったことなども記憶に新しい。
 このように海外で多くの人を惹きつける魅力を持つ日本車だが、日本人は意外とその魅力に気づいていない。日本車にも、さまざまなルーツを持ち、人に語れるストーリーがある。そして多種多様なデザイン力や、世界トップクラスで競争を続ける高い性能を備えている。さらに、年月を経ても再ブームを生み出すクラシックなクルマだって存在する。
 ときには欧米の真似をしたり、大衆に歩みよったりして、人を集める魅力=コミュニケーション力を継承してきた国産車。“コミュ力(りょく)”カーはそこかしこにある。
 今や、クルマのコミュ力というものは全世界で認知されている。クルマの魅力を共有し、心と心で通じ合う。「コミュニケーション」という人間にとって根源的でピースフルな行為を導く、魅力的な愛車を選ぼう。

1.人々の興味を惹きつけるストーリーやヒストリーを持つ

 欧州で産声をあげた自動車が日本へ伝わり、初めての国産車が生まれたのは1900年代の初め、つまり明治時代であった。それからすぐに多くのメーカーが誕生して、現代においても、他の国であまり見られないほど多い、8社もの乗用車製造メーカーが存在している。それぞれが異なる歴史を持ち、その開発秘話や歴史物語はクルマ好きの興味をひいてやまない。

2.デザインや走行性能などに圧倒的な力がある

 デザインや形には人を惹きつける魅力がある。「カッコいい」「可愛い」、ときにエキセントリックだったとしても、見た人の感情を揺さぶり、もっと近くで見てみたいという思いを抱かせるものだ。また、クルマの機能のひとつでもある「速く走る」ということは、人によっては憧れであり、驚きの感情を巻き起こすことがある。「運転してみたい」と思うのは必然だ。

3.年月が経っても色褪せない引力のような魅力を持つ

 古き良きものを大切にするというのは、クルマでなくても大切なこと。古いクルマに長く乗っている人を見つけると、深いクルマ愛が感じられるというものだ。そしてもちろん、古いクルマのデザインや個性、あるいはその存在自体には貴重性という価値がある。もう手に入らないものだからこそ、手に入れたい、あるいは見てみたいと思う感情が生まれる。

圧倒的“コミュ力”カーと風景01

CONVERSATION

岡本幸一郎
若い頃より自動車評論家になることを夢見てメディアの門を叩き、昭和臭のする編集部で揉まれてきた苦労人。そのおかげか、自動車専門家としての得意ジャンルは幅広い。現役のカー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

清水草一
フリーのライターとなってから30年の間に、数多くの自動車媒体で連載を持ち、数々の単行本を出版してきたベテラン評論家。購入してきた愛車は50台を超え、現在は軽自動車とシトロエンとフェラーリの3台。

RARE CAR[めずらしい・貴重なクルマ]

悪く言えば「あまり売れてない」、いや、あえてこう言おう。「レア」なのだと。見ることが少ないからこそ、必然的に人が集まる。峠やパーキングエリアなどに停めれば、クルマ好きたちに囲まれること間違いなしである。

1.欲しくても手に入らない幻級の珍車

清水「ランエボもインプレッサWRX STIも消えた今、こういうクルマを出せるのは、トヨタだけなんだよね!」
岡本「トヨタだけがメーカーごとの燃費規制で余裕がありますから。その立場を利用して、こういうマニアが喜ぶクルマを次々と出してくれるところが頼もしいです」
清水「目立ち度はどう?」
岡本「迫力が凄いですし、ハンパなく見られますよ。特に2シーターのMORIZOエディションは、マニアが食いついてきます!」
清水「わずか70台の限定だもんね」
岡本「通常のGRカローラも当面500台限定。凄い倍率の抽選だったじゃないですか。レア物にはみんな飛びつくんですよ!」
清水「宝くじの一等当たり券みたいなもんだ」
岡本「盗まれないように気を付けないといけませんね!」

トヨタ GRカローラ
GRヤリスのハードを活かした、ラリー車級の走行性能と外観を持つ特別なカローラ。まず500台が抽選販売され、現在は、次の販売が待たれている状態だ。「MORIZOエディション」(写真)は豊田章男現会長の肝煎り企画で70台が限定販売された(完売)。
新車価格 525万円(MORIZOエディションは715万円)
中古車中心相場 流通車両なし

2.親しみやすいキャラで視線が集まりやすい

清水「コペンは、この世で唯一、カッコ付けないで乗れるオープンカーじゃないかな?」
岡本「そのせいか、中高年男性に人気があって、販売台数が増えてるんです。子どもも手がかからなくなったし、そろそろこういうのに乗りたいっていう人が多いみたいです」
清水「オープンカーなのに、親しみやすいキャラなんだよね」
岡本「なにしろ軽ですから。軽ならいいわって、奥さんの許しも出やすいみたいです。購入のハードルが低いんですよ」
清水「視線を向けるハードルも低いよね。カッコいいスポーツカーって妬みを買うから、見ちゃいけないみたいな空気があるじゃない。でもコペンなら遠慮なく見てもらえる。意外と視線が集まるんだよ」
岡本「声もかけられやすいと思いますよ。キャラがフレンドリーですから!」

ダイハツ コペン
軽自動車の小型オープンカーで、現行型は2014年から販売されている2代目モデル。ボディ外板を交換できる専用方式を採用し、ローブ、エクスプレイ、セロ、そしてトヨタとのコラボモデル・GRスポーツ(写真)をラインアップする。
新車価格 188万8700〜243万7200円
中古車中心相場 90万〜260万円(現行型)

圧倒的“コミュ力”カーと風景02

DREAM CAR[憧れの・夢のクルマ]

クルマ好きなら一度は夢見るクルマ、クルマ好きでなくても憧れの対象となる超高級車。見るだけで「はぁ〜」とため息をついてしまうようなドリームカーがそこにあれば、人々の目線は釘づけ。いつかは見せる側になりたい!

3.年月を経てさらに人気が高まる日本の宝

岡本「GT-Rは本当に凄いクルマです」
清水「日本の宝だね」
岡本「今のGT-Rが出て、もう16年目ですけど、スカイラインGT-R時代からの蓄積もありますし、クルマ好きじゃなくても、誰でも知ってるのが強みです」
清水「戦艦大和みたいなもんだね」
岡本「GT-Rに乗ったことのある人って少ないじゃないですか。でも、誰でも凄いクルマだって知ってるし、尊敬されてるんですよ」
清水「戦艦大和は無敵だ! みたいな(笑)」
岡本「性能的にも、ますます凄くなってます」
清水「おもしろいのは、16年前と比べると値段がものすごく上がったのに、人気はどんどん上がってることだな」
岡本「今度の2024年モデルなんか、抽選倍率が数十倍だったらしいです」
清水「最高2900万円もするのにね!」

日産 GT-R
スカイラインGT-Rの時代から数えて50余年。「スカイライン」でなくなっても、クルマ好きの間では常に日本最強のクルマとして憧れの対象だった。2007年デビューのロングセラーモデルだが、ほぼ毎年のように改良され続けている。
新車価格 1375万〜2915万円 中古車中心相場 670万〜1400万円

4.高級車の覇王「Gクラス」に匹敵する注目度

清水「このクルマは、現在のクルマ界で最大のスターだと思うな」
岡本「そうですか!」
清水「ランクルでも凄い視線が集まるけど、レクサスLXはその上を行く。歩道を歩く人がこんなに振り返るクルマは久しぶりだ」
岡本「なにげにレクサスブランドも浸透してますしね」
清水「おもしろいのは、メルセデスのGクラスオーナーから、ものすごい視線が刺さることなんだ。今までGクラスは地上の帝王だった。そこにレクサスLXが現れて、地位を脅かしている。それくらい凄い存在なんだよ」
岡本「スピンドルグリルも迫力満点ですしね」
清水「GT-Rも凄いけど、一般ウケではレクサスLXが頂点だ!」
岡本「女子もこういう頑丈そうなクルマが大好きですから!」

レクサス LX
日本ではまだなじみが薄いが、かつてトヨタの「ランドクルーザーシグナス」として販売されていた、ランクルのレクサス版。2015年から日本へ導入され、現在のレクサスブランドの最大モデル、SUV最上級モデルとして君臨している。
新車価格 1250万〜1800万円
中古車中心相場 1690万〜1800万円(現行型)

圧倒的“コミュ力”カーと風景03

MODERN CAR[時世の・今どきのクルマ]

EVの存在がクローズアップされる時代だが、実際のところ、まだ街を走っているEVはそんなに多くない。充電施設も数が限られているなかで、ちょうど充電している車両があれば、当然、注目を集める。高嶺の花である今を満喫したい!

5.個性的な作りのEVは次の一手にも注目

清水「残念ながらあまり売れてないね」
岡本「ほとんど見ません。でもだからこそ、レア物として価値があると思います!」
清水「観音開きのドアが注目を集めるし?」
岡本「あの観音開きドア、ウチみたいに小さな子どもがいる家庭には便利なんですよ。後ろに乗せておけば、勝手にドアを開けられないので安心なんです」
清水「そういう利点もあるにはある」
岡本「それと、間もなくこのクルマには、ロータリーエンジンのレンジエクステンダー付きEVが発売されるじゃないですか。そうなったらまるで変わると思います」
清水「だね! 一気にスターになる!」
岡本「今からロータリーファンは大注目してますし、その影響で、ロータリーじゃないモデルにも注目が集まるはずです」
清水「これロータリーですか? って尋ねられたりね!」

マツダ MX-30(EVモデル)
ハイブリッドモデルデビュー後、マツダ初の量産型EVとして2021年に登場した小型SUV。ベースはCX-30と共通だが、観音開きドアや特徴的なルーフデザイン、内装のコルク風素材などオリジナリティ溢れる作りを特徴としている。
新車価格 451万〜501万6000円 中古車中心相場 360万〜410万円

さらにコミュ力をアップ!オーナーズミーティング参加のススメ

クルマ好きが集まるところへ行こう! 同じクルマを愛する人々が集まって、
お互いの愛車を見せ合い、会話を交わす。オーナーズミーティングはそんな場所だ。
話が弾めば、仲間が増える。そうすれば、自ずと愛車は“コミュ力”カーになる。

同じクルマに興味を持ちクルマを愛する仲間たち
 近年、SNSの発達にともない、同じ趣味を持つ人とつながりを持つことが容易になった。もちろんクルマ趣味も同様で、かつてのように販売店や自動車雑誌などが媒介しなくても仲間を見つけやすくなっている。
 どれほどコミュ力の高いクルマに乗っていても、人と話す機会がなければ意味がない。クルマ好きが集まるスポットを訪れてみるのもいいが、オーナーズミーティングなどに参加することも直接的でおすすめだ。
 そこで出会えるのは、同じクルマに興味を持つ人ばかり。当然、話が弾むのはもちろん、愛車に関する新しい知識を得ることも可能。そしてなんといっても、新たな友人、知人が増えること間違いなし。受け身でいるだけでなく、あえて人とコミュニケーションをとれる場を訪れ、人に話しかけてみるのも一興である。

そもそもオーナーズミーティングってどんな場所?

 同じ車種のオーナーたちの集まりが「オーナーズクラブ」で、そのメンバーが実際に顔を合わせる場が「オーナーズミーティング」だ。その規模は少人数から100人以上集まるものまでさまざま。場所を決めて集まるだけでなく、同じ目的地までドライブするツーリングなども開催されている。

自分と同じクルマを愛する人と話ができて楽しい
「私の愛車は結構レアな部類に入るクルマで、普段、なかなか同じクルマの人を見つけることができません。だからオーナーズクラブで愛車の話をできるだけで楽しいんです」(50代男性)

愛車を人に見てもらえて褒めてもらえるのがうれしい
「ミーティングにはオーナーさんの連れや、そのクルマが欲し
いって人も集まるんです。彼らが私の愛車を眺めている姿を見ると、これを選んだよかったなぁって気になります」(30代男性)

他の人がそのクルマをどんな風にいじっているかわかる
「愛車を買ってからひとりでカスタマイズを進めてきたのですが、本当にこれでよかったのか迷うときもあります。だから
ミーティングで人の愛車を見て参考にしています」(40代男性)

まとめ

欲しいのはコミュニケーションツールとしての愛車
 クルマは人にとって道具でありながら、趣味でもあり、自分を表現するアイデンティティでもある。そして、ときにはコミュニケーションツールにだってなり得る。クルマという物体に投じたオーナーの愛は、見た人にその熱が伝わることで、ときに会話の糸口となり、人と人との新たなコミュニケーションを生み出すのだ。だから、クルマを所有することには意味がある。この先もクルマが人を乗せて走るものであるかぎり、コミュ力カーが人と人との物語を生み出し続ける。

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グーネットマガジン編集部

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また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
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