車種別仕様・中古車評価・まとめ
更新日:2018.11.15 / 掲載日:2015.07.23
【徹底紹介】フォード フィエスタ

欧州での人気を裏付けるたしかな実力の持ち主

日本には数多くの欧州車が輸入されている。だが、それは欧州での人気や勢力図をじかに反映したものではない。日本での知名度は低くても、現地で大人気という例があるからだ。フィエスタは、その好例だろう。
VWポロ、ルノー・クリオ(日本名ルーテシア)、プジョー208などの強豪を抑えて、Bセグメントのトップを定位置とする国や地域が多い。さらに誕生して39年、現行型で7代目(ビッグマイナーも含む)と、歴史も長い。なのに、日本での知名度が乏しいのは・・・歴代の多くのモデルが日本未導入だったからだ。
つまり、「未知の大物」といえる欧州コンパクトがフィエスタなのだ。
そこで新型フィエスタに注目すると、まず目を引くのはボディスタイル。先代で採用したキネティック(躍動的な)デザインをさらに進化させることで、スポーティなフォルムを築き上げている。とくに、アストンマーティンを思わせる台形グリルは、最新のフォード車を強く印象づけるアイキャッチになっている。

欧州では3ドアも人気だが、日本に導入されたのは実用性の高い5ドアのみ。全幅が1720mmとワイドなため「3ナンバー」となるが、3995mmの全長と1475mmの全高はBセグメントの水準レベル。最小回転半径も5mとさほど大きくはないから、取りまわし性は良好だ。
で、個性的なルックスに負けないほどの魅力を放つのは、「インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー」でも高く評価される心臓だ。すでにフォードの新世代ユニットとして名が知れている「エコブースト」だが、フィエスタはその中で最小の3気筒1Lユニットを積む。
たかが1L、所詮3気筒となめた目で見ていると、まさに目から鱗。走りの力強さと気持ちよさにノックアウトされてしまうだろう。欧州仕込みのシャシーも高度なバランスを誇り、「なぜフィエスタが欧州で人気なのか」の謎は、ステアリングを握ればすぐに解明されるはずだ。
文●森野恭行 写真●GooWORLD
お問い合わせ●フォードお客様相談室 TEL:0120-125-175
Detail

フォード フィエスタ 1.0エコブースト(6速AT・パワーシフト)
全長×全幅×全高 | 3995×1720×1475mm |
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ホイールベース | 2490mm |
トレッド前/後 | 1470/1460mm |
エンジン | 直3DOHCターボ |
総排気量 | 997cc |
最高出力 | 100ps/6000rpm |
最大トルク | 17.3kg m/1400-4000rpm |
サスペンション前/後 | ストラット/トレーリングアーム |
ブレーキ前/後 | Vディスク/ドラム |
タイヤサイズ前後 | 195/45R16 |
モデル主要変遷
2014.02 | 新型フィエスタを発売 1L 3気筒を搭載する新型フィエスタ。グレードはひとつのみで、雨滴感知ワイパーやオートヘッドライトなどの装備が充実。 |
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2014.10 | 特別限定車「レザーパッケージ」を設定 専用本革シートを採用するほか、専用ボディカラー「ディープインパクトブルー」と「コッパーパルス」を設定。限定80台。 |
2015.04 | 特別限定車「スポーツプレミアム」を設定 限定60台の「スポーツプレミアム」。17インチアルミホイールに加え、本革スポーツシート、シートヒーターなどを装備する。 |
ファミリーユースに対応する優れたユーティリティ性能

現行フィエスタは、インテリアにもキネティックデザインを反復している。曲面構成のインパネとブルー指針の2眼メーターが、スポーティムードを演出するポイントだ。
質感の面では、ダッシュアッパーに使用したソフトパッドと、センターのピアノブラック調クラスターが見どころ。ダッシュセンターの上部に4.2インチ液晶ディスプレイを配置するなど、情報表示系も充実したものだ。トータルとして見て、今のトレンドを的確に捉えている。
なら、キャビンの快適度や広さは?チルト&テレスコピックステアリングやシートリフターを装備することもあって、運転席は幅広い体格の人に理想的なドラポジを提供する。後席はとくに広くはないが、180cmクラスの乗員が無理なく前後に座ることができるのだから、コンパクトカーとしては合格だ。
つまり、ファミリーユースにも適合する居住性を備えているわけ。全長4mを切るBセグのハッチバックとしてはラゲッジも大きく、日常生活からレジャー、小旅行までをカバーするユーティリティを有する。
また、キー操作なしにドアの解錠・施錠やエンジンスタートができるキーレスエントリーや、ブルートゥース対応のプレミアムオーディオ(撮影車はオプションのカーナビを装着)のほか、オートスピードコントロールや多機能ステアリングスイッチも標準で装備。充実した快適&便利装備も大きな魅力となっている。
定員乗車時276L、2人乗車時で最大960Lという十分な荷室を持つ。後席は6対4分割のダブルフォールディング式。
ドア付けのアウターミラーにターンシグナルを内蔵する。
伝統あるブルーオーバルのエンブレム。
リヤビューカメラを標準装備。センターディスプレイに表示する。
195/45R16・84Vサイズのタイヤの性格はスポーティなもの。もちろん、アルミホイールも標準のアイテムだ。
最新トレンドを採用した高効率パワートレーン
「ダウンサイジングターボ」と「デュアルクラッチトランスミッション」という2つの技術トレンドを、早くからキャッチアップしたブランドのひとつがフォード。現行フィエスタも、そうした技術開発の上に成り立つ。ちなみに、6速DCTのパワーシフトはゲトラグフォード製。スイッチによるセレクトシフトにも対応する。
軽量高強度のボロンスチールを要となる部分に採用するなどして、クラストップレベルの衝突安全性を実現した。エアバッグは、運転席ニーエアバッグを含む7つを標準装備。
3気筒ながらバランスシャフトを持たないシンプルな設計。フライホイールとクランクプーリーに、回転のアンバランスを打ち消す工夫を盛り込んでいる。
前がストラット式、後ろがトーションビーム式、コラムアシスト式電動パワステと一般的なメカだが、チューニングにフォードの秘伝がある。
後方の障害物を検知して警告音で知らせるリバースセンシングバックソナーを標準装備。リヤビューカメラと合わせて2重の防御で固める。
十分な力を持つエンジンにしなやかなフットワーク

高速走行でのゆとりと快適性は、コンパクトカーの水準を超えたレベル。パワートレーンのよさはもちろんのこと、高い安定性と安心感をもたらすシャシーのできのよさも光っている。
1400~4000回転の広い回転域で、1.8L相当のトルクを生み出すのが1.0Lエコブースト・ユニットのカギ。トルクの谷にはまることはなく、登坂も、高速域の加速も難なくこなしてくれる。2000回転手前からググッとトルクが盛り上がり、6000回転オーバーまでパワー感を保つフィーリングは、スポーティと表現してもいいほどだ。
ミッションは6速DCTのパワーシフト。過給によるトルクの立ち上がりがやや急な面があり、そこに変速が重なると加減速のリニア感やスムーズさを損なうこともあるが、クラッチミートや変速は総じて上手。ストレスのない走りに躾けられている。とくに光るのは、スムーズかつ静かな高速クルーズ。ゆとりを含めて、実力は1.8Lクラスと言える。
逆に、アイドリング時には3気筒に起因する揺すられ振動がやや気になるが、中高回転域ではいたって回転はスムーズで、バランスシャフトなしの3気筒とは思えないほどだ。
そして、シャシーの能力も高い。剛性感に優れるボディときれいにストロークする足が要点で、接地性は抜群の域にある。うねりのいなし、ハンドリングの正確性、限界域の扱いやすさともハイレベルで、ついスポーティ走行を楽しみたくなる性格を持つ。加えて乗り心地も良質だ。
総合力ではクラストップレベル 走りにこだわるなら注目の1台
実力派揃いの欧州Bセグメントでフィエスタが高く評価されるのはズバリ、「総合力」。トルクフルで、しかもまわして楽しい1.0Lエコブーストの心臓と、接地性抜群の足は大いに魅力をアピールする点で、欧州車らしい走り味にこだわる人に向いている。今回の試乗車は、中高速域におけるステアリング中立の締め感がやや人工的で、16インチ45タイヤが低速域で伝える上下入力も少しきつめに感じたが、たぶん個体差によるものだろう。これまで経験した個体は、よりバランスがよかった。
中古車市場データ
中古車市場データ
デビューからおよそ1年半しか経過していないため、中古車はかなり少ない状況。新車保証が十分残る美車が多いなか、160万円前後の車両も多いので、中古車としては美味しい。