車種別仕様・中古車評価・まとめ
更新日:2020.04.06 / 掲載日:2015.05.28
【徹底紹介】ボルボ V60

新時代の到来を告げるスタイリッシュなワゴン

ボルボといえば、ステーションワゴンがスタンダードなのではないかと思ってしまうほどポピュラーな存在。眺めてみてしっくりくる造形は、やはりさすがだ。
ボルボにおける「V」は、多様性を意味するバーサティリティの頭文字。いまは無きV50や、現行の3代目V70までの世代の「V」モデルは、エステートと呼ばれていた時代のワゴンモデルから受け継いだ、スクエア基調のスタイルを特徴とする。
しかし、2011年投入のV60で、ボルボは大胆な変革を実践した。そう、荷室優先のパッケージや、ハコっぽいスタイルに別れを告げ、スポーツワゴンとしての新たな一歩を踏み出したのだ。当初はあまりの変わりように戸惑う声もあったが、多くのファンはスポーティに変身した新世代のボルボ「V」を支持した。
そんなV60は、セダンのS60(2代目)とのコンビにより、Dセグメント市場を広くカバーする存在。2775mmのホイールベースや、Bピラーから前方のボディ構造やデザインは、基本的に両車共通だ。
そこで注目するのは、日本向けモデル専用に設計されたアウタードアハンドルやドアミラーのステー。全幅を1865mmから1845mmにナロー化することで、取りまわし性を高めている。ボルボが日本市場を重視する証と言っていいだろう。

そして走り。すでにXC60で変化は表れていたが、ボルボが明確にスポーティ路線を打ち出したのが現行S60&V60だった。ステアリングギヤレシオのクイック化やサスの剛性アップなどで、フットワーク全体をダイナミック方向へとシフト。とくに「Rデザイン」はハンドリングコンシャスなセッティングだ。
シリーズ構成については、デビューから3年ほどは直4 1.6L直噴ターボを積むFFモデルと、直6 3Lターボを積む4駆モデルの2本立てとなっていた。これが、現在のT4とT6 AWDにあたる存在だ。
だが、2014年のフェイスリフトを機に、中間に位置するT5を追加する。心臓は新開発の直4 2L直噴ターボで、組み合わされるミッションはアイシンAW製の8速AT。Dセグメントのワゴンとしては最適なパワーソースで、V60の人気を再加速させるカギとなった。
さらに、サイクリスト検知機能を追加するなど、毎年のように進化するオートブレーキも、V60の高い人気を支える魅力となっている。
文●森野恭行 写真●内藤敬仁、北川 泉
お問い合わせ●ボルボお客様相談室 TEL:0120-922-662
Detail
ボルボ V60 T5 SE(6速AT・ギアトロニック)
全長×全幅×全高 | 4635×1845×1480mm |
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ホイールベース | 2775mm |
トレッド前/後 | 1590/1585mm |
エンジン | 直4DOHCターボ |
総排気量 | 1968cc |
最高出力 | 245ps/5500rpm |
最大トルク | 35.7kg m/1500-4800rpm |
サスペンション前/後 | ストラット/マルチリンク |
ブレーキ前/後 | Vディスク/ディスク |
タイヤサイズ前後 | 215/50R17 |
新車価格
V60 T4(6速AT・ギアトロニック) | 415万円 |
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V60 T4 SE(6速AT・ギアトロニック) | 450万円 |
V60 T4 Rデザイン(6速AT・ギアトロニック) | 515万円 |
V60 T5 SE(8速AT) | 475万円 |
V60 T5 Rデザイン(8速AT) | 540万円 |
V60 T6 AWD(6速AT) | 585万円 |
V60 T6 AWD Rデザイン(6速AT) | 665万円 |
モデル主要変遷
2011.06 | V60を発売 ミドルクラスの新世代エステートとして登場したのがV60。1.6L 4気筒ターボと3L 6気筒ターボの2つのエンジンを設定。 |
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2012.05 | V60の1.6LターボにRデザインを設定 デビュー当初は6気筒ターボ「T6」にRデザインが設定されていたが、1.6L 4気筒ターボ「T4」にも設定。専用サスと内外装が魅力。 |
2013.08 | 2014年モデルを発売 エクステリアデザインを大幅変更。外観が落ち着きのあるスタイルになったほか、シティセーフティにも一部改良が施された。 |
2013.10 | 新型のRデザインを発売 新世代V60にスポーツモデル「Rデザイン」が登場。フロントグリルなど精悍なエクステリアと専用サスペンションが特徴となる。 |
2014.02 | V60に新世代エンジンを設定 2L 4気筒ターボ「ドライブE」と8速ATを搭載した新世代T5エンジンが登場。最高出力245馬力と14.4km/Lの燃費を達成する。 |
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2014.09 | V60に「ポールスター」を設定 レースカーを手掛けるポールスター社と共同開発したスポーツモデルが登場。6気筒に専用ターボを組み合わせ、350馬力を発揮。 |
2014.10 | 2015年モデルを発売 安全・運転支援機能をパッケージ化した「IntelliSafe10」を全モデルに標準装備。内外装の仕様も一部変更を受けた。 |
北欧伝統のやさしさが生きる室内空間

ボルボに乗ると自然とリラックスできるのは、空間設計のよさと優秀なデザインによるところが大きい。シンプルでありながらセンスがよく、質感の高いインテリアは、日本でも人気のある北欧家具に共通する。
近年のボルボ車の大きな特徴は、インパネから浮き出たように見えるフローティングセンタースタック。スイッチ類を集中配置することで、モダンな造形と高い機能性を融合させている。ちなみに、パネルの裏側は小物収納のスペースとなる。
2014年の改良時にはインテリアもリフレッシュされたが、いちばんの見どころはV40の流れを汲むデジタル液晶メーターパネルだ。「エレガンス」、「エコ」、「パフォーマンス」の3つのテーマに合わせて、メーター表示を切り替えられる。また、イルミネーテッドシフトノブも、最新ボルボを象徴するアイテムとなる。
シート素材は、ベース車がテキスタイル、「SE」がT-Tec/テキスタイルまたは本革、「Rデザイン」が本革/パーフォレーテッドレザーと、それぞれのグレードにあったものをチョイス。内装色や加飾パネルとの組み合わせにより、多彩な世界観を表現している点にも注目したい。
人気の「Rデザイン」は、バケットタイプの専用フロントシートや専用レザーステアリング(現行型はパドル付き)に加えて、アルミニウムパネルやスポーツペダルも標準で装備。内装色はブラックとして、精悍な印象のコクピットに仕立てている。

ボルボらしくシートはやさしい掛け心地。前席8ウェイパワーシートやレザーシートを幅広いモデルに設定する。後席の足元や頭上の余裕は長身のひとにも十分なもの。

後席は40対20対40の3分割可倒式。シートを倒せば、広く、平らなスペースを生み出せる。荷室容量は430~1241L。加えて助手席を倒せば、約3mの長尺物だって積み込める。
いまも最優先事項はセーフティ性能
横置きFFベースながら、「T6」にV6ではなく直6の3Lターボを搭載するのは、安全を最優先するボルボ・フィロソフィーの表れ。目的は前部クラッシャブルゾーン(つぶれしろ)を有効に確保することにある。さらに、いまのボルボは予防安全の分野でもトップランナーのひとつに数えられ、歩行者・サイクリスト検知機能付き追突回避・軽減オートブレーキに代表される先進技術を積極的に展開している。
新しい「T5」ユニットは明確なロングストローク設計。1500から4800回転の広範囲で35.7kg mを生むトルクフルな心臓だ。スタート/ストップ機能の新採用も注目できる。
予防安全に注力する近年のボルボだが、当然のようにパッシブセーフティの技術も日々進化している。長年蓄積したノウハウが、V60のボディ構造やエアバッグに活きている。
バランスのよさならT5がベストだろう

2014年のフェイスリフトで、強化されたのはエレガントさや上質感。ヘッドライト形状も変わったが、操舵にあわせて照射範囲を広げるアクティブ・ベンディング機能は踏襲されている。
ボルボ最新の2L直噴ターボと8速ATを組み合わせた「T5」は、V60シリーズのなかでもとくにバランスに秀でたモデル。1.6L直噴ターボの「T4」に、65馬力&11.3kg mの性能差をつけるだけでなく、回転フィールの滑らかさ、静粛性の高さでもワンランク以上上を行く。
しかも、トルコンを使う8速ATの変速も、「T4」が使うパワーシフト(6速DCT)よりもグッとスムーズで洗練されたものだから、走り味は上質そのもの。かといって、「T6」のようにAWDをマストとすることはなく、FFでもトルクやパワーを持て余さないから、V60にとってベストの心臓といえるだろう。
それはシャシー性能にもあてはまる。ハードな走りになるとノーズの重さが気になる「T6」とは違って、ノーズが素直に向きを変え、限界域まで正確なハンドリングを維持してくれるから、走りのスポーティさにこだわる人も納得させられる。
でも、そんな「T5」にも気になる点はある。それは、電動油圧式から電動式に変更されたパワステ。戻しの際のフリクション感の大きさと、中立の人工的な締め感が、ドライブフィールの気持ちよさを若干だがスポイルしている。でも、ボルボのことだから、そうしたウィークポイントもほどなく克服することだろう。
満足度の高い「T5」が本命 走りを追求するなら「T6」
さすがはダウンサイジングターボといった印象で、「T4」のエンジン性能は自然吸気2.4L相当。動力性能や快適性の不満は抱かせないから、バリュー度を重視するなら「T4」がお薦め。でも、ゆとりや上質感に重きを置くなら、ひとつ上の「T5」を選びたい。「T4」以上に優れたJC08モード燃費値も注目すべき点で、エコの観点で見ても「T5」は魅力ある存在だ。とくに4駆が必要ないなら、「T6」を選ぶ意味は大きくない。それでも、「ポールスター」は別格。刺激的なスポーツワゴンがほしいのなら、マークしておくべき1台だ。
中古車市場データ
中古車市場データ
デビューから4年が経ち、中古車は充実している。マイナーチェンジ前なら100万円台後半の物件も少なくない。フェイスリフトした14年モデルを含めた全体の相場は約290万円だ。