車種別仕様・中古車評価・まとめ
更新日:2020.04.06 / 掲載日:2013.12.26
【徹底紹介】MINI

MINI特有の魅力が凝縮された高い完成度

どちらが新型なの?新旧の2台を並べてもそんな声が聞かれるほど、07年のMINIのモデルチェンジ(欧州では06年の投入)はキープコンセプトに徹したものだった。
でも・・・MINIのファンは目新しさを求めているわけではないのだから、なにより「MINIらしさ」を重視した世代交代は大正解。MINIが開拓したプレミアムスモール市場での存在感を、現行型となり一段と高めることに成功した。
ちなみに、BMWが手がけて2代目となる現行MINIは、ノーズが少し伸びたことを特徴とする。これにより、歩行者保護性能が大きく高まり、エンジン搭載に関する選択の自由度も増したというわけだ。
そこで心臓に注目すると、初代はクライスラー系のSOHCユニットを積んでいたが、2代目はPSA(プジョー・シトロエン)と共同開発したDOHCユニットを搭載。自然吸気ユニットと組み合わされる2ペダルミッションが、評判が芳しくないCVTから6速ATに変更されたのも注目点で、性能、効率、洗練度のすべてをレベルアップさせた。
しかし、より以上のトピックはボディバリエーションの増殖だろう。初代はハッチバックとコンバーチブルの2本立てだったが、2代目となってすぐに往年のトラベラーのDNAを継承する「クラブマン」が追加され、ひとまわり大きなボディを持つクロスオーバー(海外ではカントリーマンを名乗る)も登場。
さらに、スポーティに特化した2シーターのクーペおよびロードスターや、ペースマンも誕生した現在は、MINIの世界は百花繚乱という印象だ。とはいえ、中核に位置するのは当然、3ドアハッチバック。
キュートさ、走りのおもしろさ、そして扱いやすさという、MINIの根源的な魅力が、コンパクトなボディのなかに凝縮されている。「もっともMINIらしいMINI」という表現に、異論はないはずだ。
文●森野恭行 写真●佐藤亮太
お問い合わせ●MINIカスタマー・インタラクション・センター TEL:0120-3298-14
Detail
MINI ワン(6速AT)
全長×全幅×全高 | 3740×1685×1430mm |
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ホイールベース | 2465mm |
トレッド前/後 | 1460/1465mm |
エンジン | 直4DOHCターボ |
総排気量 | 1598cc |
最高出力 | 98ps/6000rpm |
最大トルク | 15.6kg m/3000rpm |
サスペンション前/後 | ストラット/マルチリンク |
タイヤサイズ前後 | 175/65R15 |
新車価格
MINI ワン(6速MT/6速AT) | 219万9000円/232万9000円 |
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MINI クーパー(6速MT/6速AT) | 261万円/274万円 |
MINI クーパーS(6速MT/6速AT) | 303万円/316万円 |
MINI ジョン・クーパー・ワークス(6速MT/6速AT) | 390万円/403万円 |
発表・発売:2007年2月
HISTORY
2007.02 | MINIをフルモデルチェンジ MINIが全面改良を受けて新型に。デザインは先代を踏襲するが、内外装の質感や走りの性能は大幅に向上。1.6L直4の「クーパー」とターボを装着する「クーパーS」が設定された。 |
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2007.05 | MINI ONE(ワン)を追加設定 エントリーモデル「ワン」が登場。エンジンは、クーパー系とは異なり専用に新開発された1.4L直4(95馬力)を搭載。トランスミッションは6速MTと6速ATを組み合わせる。 |
2008.09 | MINI JCWを追加設定 MINIの高性能ブランド「ジョン・クーパー・ワークス」の名を冠したモデルが登場。エンジンは、最高出力211馬力を発揮する1.6L直4ターボ。外観や足まわりなども専用設計となる。 |
2008.11 | MINIにJCWチューニングキットを設定 MINIクーパーSをジョン・クーパー・ワークス仕様に仕立てられるチューニングキットが登場。スポーツマフラー、エンジンプログラムなどにより192馬力にまでパワーアップ可能。 |
2010.03 | MINI JCWを一部改良 ジョン・クーパー・ワークスが一部改良を受けた。それまでオプション設定だったフロアマット、クロムラインエクステリアを全モデルに標準装備することで質感が高められた。 |
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2010.05 | MINIのエンジンを改良 すべての車両にブレーキ回生システム、MT車にはアイドリングストップ機能が搭載され、シリーズ各モデルの燃費性能が向上。またMINIワンのエンジンが1.4Lから1.6Lに変更された。 |
2010.10 | MINIをマイナーチェンジ 外観デザインが変更され、よりスポーティな造形になったほか、エアコンやオーディオスイッチ色がブラックになり、精悍な印象に。オプション装備やボディカラーも変更された。 |
2012.12 | MINI JCW GPを限定発売 トップモデル「ジョン・クーパー・ワークス」をベースに、さらに性能を高めた200台の限定車が「GP」。7馬力アップした高出力エンジン、専用サス、レカロシートなどが奢られる。 |
換えのきかない超絶な個性は隅々まで

スモールカーの多くは、空間効率の追求や低コスト化にまっしぐら。そこには大きな意義があるが、「クルマは機能性だけでは語れない」という、大切なことを教えてくれるMINIのようなクルマも存在する。
クラシック・ミニを知る人だけでなく、まったく知らない若者をも虜にするインテリアが大きな魅力で、その効能は乗った瞬間に気分を高揚させるほど。超大径のセンタースピードメーターや、レトロ感あるトグルスイッチはその象徴で、低いドラポジ設定と相まって、MINIだけの世界をつくりあげている。
さらには、クオリティの高さもスモールカー随一のレベル。細部に至るまで隙がない。エンジニアリングはドイツ・BMWの主導だが、デザインに関しては英国調を強く意識し、クラシック・ミニ由来の造形モチーフも上手にちりばめている。この英独の絶妙なコラボこそが、現代のMINIの魅力の礎になっている。
後席スペースは、大柄な人を乗せたり、長距離移動をするのにはまるで適さないが、「なんとか4人が乗れる」というだけで重宝するシーンは少なくない。ラゲッジも同様で、後席シートバックを倒せばけっこうな大物も積み込むことができるのだから、実用性は十分と言っていい。
ミリ単位で実用性を追求したら、これほど愛らしい容姿や楽しい室内空間を生み出すことはできなかったはず。MINIには、平凡なスモールとはまるで異なる価値観がある。
乗車定員は4人で、後席は5対5分割の可倒式。倒せば、160Lの荷室容量を680Lにまで拡大できる。
入念なラゲッジトリムが並みのスモールとの違い。高級なつくりだ。
スタート・ストップ機構、ブレーキエネルギー回生、電動パワステを全車に設定。環境対応でも「ミニマリズム」を体現。
効率性と走りの楽しさが磨き上げられている
スモールカーの設計でも、けっして手を抜かないのがBMWらしいところ。そのシンボルと言えるのは、E46・3シリーズを起源とするリヤのマルチリンクサス。このクラスで4輪独立サスを採用するFFモデルは極めて希だ。
そしてエンジン。SOHCだった先代の心臓と比べると、可変バルブの技術が一気に高度化した。そのうえで、過給機をスーパーチャージャーから直噴+ツインスクロールターボに変更したのも見逃せないところで、BMW流の表現なら「ツインパワー・ターボテクノロジー」となる。直噴ならではの高めの圧縮比設定と、排気干渉がない高度なターボの合体が、全域高性能を実現するカギだ。より刺激ある加速を生むオーバーブースト機能も採用する。
FFスモールながら、リヤに高度なマルチリンク式サスを採用。アルミ製トレーリングアームを使う現行型は、ばね下重量の軽さも自慢。
直噴+ツインスクロールターボというハイテク構成により、クーパーS用で184馬力、JCW用で211馬力のハイパワーを実現している。
あくまで伝統に沿ったテクノロジーの進化

MINIの走りのキャッチフレーズは「ゴーカートフィーリング」。クラシック・ミニのクーパーから引き継ぐ伝統で、クイックかつダイレクト感のあるハンドリングを最大の特色とする。先代のクーパーSなどは、とんがりすぎていて危なっかしい一面もあったが、現行型はずっと洗練されたマナーも身につけている。
なら、モデルごとの個性は?速さと刺激性を求めるなら、クーパーSをさらに辛口に仕立てたJCWにとどめを刺す。SPORTスイッチを押すと、1.6L直噴ツインスクロールターボのレスポンスとパワー感はさらに研ぎ澄まされ、ステアリングの手ごたえ感も増すから、つい本気になってしまうというわけだ。
それでいて、エンジンにナーバスなところはなく、街乗りでも十分扱いやすいのがいいところ。乗り心地は正直ゴツついているが、ランフラットタイヤを履くことを考えれば納得がいく快適度に仕上がっている。
そんなJCWと比べると、クーパーSはよりバランス型。で、刺激性よりも爽快感が光るのが、122馬力の自然吸気1.6Lを積むクーパーだ。軽快感あるフットワークが快感のポイントで、ビギナーでもエンジンとシャシーの性能をフルに使って楽しめる間口の広さを持っている。高い人気を誇るのも当然だろう。
多彩な顔ぶれながら見事なまとまりの大家族
クーペとロードスターは、ハッチバックと共通の2465mmのホイールベースを採用するが、キャビンは2シーター。MINIを母体とするスポーツカーという位置づけだ。そしてクラブマンは、ホイールベースを80mm、全長を235mm拡大して、右側に「クラブドア」を加えたユニークなモデル。後席、荷室ともハッチバックより広いから、家族ユースにも十分対応する。
なら、クロスオーバーは?SUVの方向に進化させたMINIで、余裕あるロードクリアランスとALL4と呼ばれる4駆メカ(FFモデルも設定)が明確な差別化点となっている。だが、違いはそれだけではない。ふたまわりほど大きなクロスオーバーと、そこから派生したクーペのペースマンは、じつはプラットフォームのレベルから異なる設計を採用している。
コンバーチブル
ペースマン
ロードスター
クラブマン
クロスオーバー
クーペ
MINI本来のテイストはどのグレードでも満喫できる
MINIの世界を気軽に楽しむのなら、98馬力の1.6L標準ユニットを積むワンで事足りる。でも、MINIといえば・・・やはり「クーパー」のイメージが強い。ゆえに、ルックスと走り味の両面で「MINIらしさ」を存分に味わいたいのなら、クーパーを選ぶのが正解だ。で、そこから先はややマニアックな世界となるのだが、日本ではターボエンジンを積むクーパーSやJCWの人気が例外的に高いのもまた事実。そこでのトピックは、激辛仕様のJCWでも6速ATが選べるようになったこと。選択の幅が一段と広がったことを、歓迎するファンは多い。ちなみに、3代目MINIがいよいよ東京モーターショーでお披露目されるが、完熟の2代目をあえて選択するのも粋というものだ。
中古車市場データ
中古車市場データ
現行型MINIは中古車市場に数多く流通するので探しやすい。このグラフはハッチバックのみのデータ。グレードで価格が異なるが、3年落ちの「クーパー」だと170万円が相場である。