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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.11.27

アルトターボRSはアルトワークスの再来か?

車名はワークスじゃないの?

走りのポテンシャルは高いのだが…… 64psのターボパワーと670kgの軽量ボディにより鋭い加速を見せるが、トランスミッションのAGSのレスポンスがイマイチのため気持ちよさに欠ける。しかしワインディングで豹変する!

走りのポテンシャルは高いのだが…… 64psのターボパワーと670kgの軽量ボディにより鋭い加速を見せるが、トランスミッションのAGSのレスポンスがイマイチのため気持ちよさに欠ける。しかしワインディングで豹変する!

【本記事は2015年4月にベストカーに掲載された記事となります。】なんで今回のアルトの元気モデル、車名はワークスじゃないの? こう思っている人の疑問に応えるべくプロフェッショナルドライバーの大井貴之氏に試乗してもらい実力診断!必要最低限のスペースを持ち、燃費がよくてメチャクチャ安い! という軽自動車の基本に立ち返った感じのあるスズキアルト。コストと燃費を追い求めた結果として、車重800kgを超えるライバルが多いなか、アルトは最軽量モデルが610kg! 4WDでも660kg! 結果としてターボが付いていなくても非力さを感じないクルマができ上がった。そこにターボ! NAでも充分なパワーがあるのにターボエンジンを搭載し、「ターボRS」という強そうなエンブレム。車重は2WDモデルで670kg。パワーはもちろん軽自動車の自主規制枠いっぱいの64ps。走りに期待ができないはずがない!

ターボRSは、目が違う。

ターボRSは白、赤、黒の3色。白、黒はレッドアクセントが印象的

ターボRSは白、赤、黒の3色。白、黒はレッドアクセントが印象的

試乗は箱根。空は晴れ渡っていたが、朝方まで降っていた雨により路面はウェット。CM撮影にも使えそうなシチュエーションでターボRSとご対面。ベースとなるアルトは見るからに必要最低限。そこを逆手にとってデザインとしているところは面白いが、チープさは否めない。と思っていたのだが、ターボRSは、まず目が違う。アルトはヘッドライトユニットにポジションからウインカーまでオールインワン設計だが、ターボRSはプロジェクターヘッドランプを採用。これだけで雰囲気がガラリと変わる。しかもアイラインはもちろん、ポイントポイントにメッキをあしらい、前後バンパーのロアガーニッシュ、ドアミラー、ルーフエンドスポイラー、そしてボディサイドにも赤いアクセント。これに切削加工のアルミホイール(ENKEI製)が装着されて大変身! ベースのアルトはいわゆるすっぴん。化粧をするとドキッとするほどカワイイっていうタイプだったのだ。と、クルマを眺めるには最高のシチュエーションだったのだが、路面はウェット。オレの記憶にあるハイパワー軽自動車にとっては、……ちょっとデンジャラス。まあ、アクセルを踏まなきゃいいんだと心に決めて乗り込んだ。ポンと座った印象だけど、シートはもうちょっとバケットにしてほしかったし、できればセレクターレバーのデザインを変えてほしかったが、黒を基調とした内装もしっかりと化粧が施され、演出は充分。さあ、スタートボタンでエンジン始動! Dレンジでスタート。

軽自動車なのにこんな加速

アルトターボRSに搭載される直3DOHCターボのエンジン型式はR06AとワゴンRスティングレーやハスラーのターボモデルに搭載されているエンジンと同じながら、最大トルクを0.3kgmアップさせている(発生回転数は同じ)。当然アイドリングストップも装着

アルトターボRSに搭載される直3DOHCターボのエンジン型式はR06AとワゴンRスティングレーやハスラーのターボモデルに搭載されているエンジンと同じながら、最大トルクを0.3kgmアップさせている(発生回転数は同じ)。当然アイドリングストップも装着

それは強烈なインパクト! 思わず「オイッ!」って叫んでしまった。軽自動車なのにこんな加速をしていいのか? と叫びたかったところなのだが、シフトが遅い!! 加速に備えていた上体がガクッと前へつんのめった。オレの気分も同じくらいガクッですよ。今回、ターボRSは2ペダルのみの設定。しかし、ミッションはこのクラスの定番であるCVTではなく、新設計のマニュアルトランスミッションを電動油圧式のアクチュエーターユニットで操作する自動変速機を装着しているAGSを採用。すでに軽トラのキャリイやベース車のアルトに採用されている技術だ。MT車と同レベルの燃費性能を得られるうえ、ドライブフィールもダイレクト。しかもATみたいなクリープ機能があるから車庫入れも楽チンという新技術。まあ、最新型のレーシングカーもクラッチ操作は発進&停止時のみ。ほぼ2ペダルなのでそこは受け入れるとしても、このAGS、残念ながらキャリイやベースアルトではなく、ターボRSに装着されている自覚がないようだ。だから、グイグイっと加速~一旦休憩~グイグイっと加速って状態。ハッキリいって、一気に冷めた。

アルトターボRSは670kgと軽量にもかかわらずフロア剛性が非常に高い。そのためサスペンションの動きがよくポテンザ050との相性もバッチリ!

アルトターボRSは670kgと軽量にもかかわらずフロア剛性が非常に高い。そのためサスペンションの動きがよくポテンザ050との相性もバッチリ!

しかし、撮影もしなきゃならないし、お仕事なので萎えた気分でワインディングへ向かいパドルを使ってみると、これはイケる! 軽量だがフロア剛性の高い新設計のプラットフォームを採用しているアルトは、そもそも走りがいいが、さらに各部を補強し、専用設計のポテンザRE050を装着した威力を発揮! 高いフロア剛性によってサスペンションの動きがよく、ポテンザとのマッチングもバッチリ。乾き始めているといってもまだ濡れている路面をしっかり捕らえ狙ったラインをトレースしてくれる。コーナリング後半ではトラクションコントロールの作動ランプが点滅することもあったが、ロードホールディングがいいのでトラコンが効いてもストレスを感じることはない。ひと言でいえば、しなやかで速い! 路面が荒れている低速コーナーを攻めると足の追従性がイマイチな面もあるが、それはかなり贅沢な要望かもしれない。ワインディングからの帰り道。再びDレンジを使ってみたが印象は変わらず。しかし、ターボRSにとって本来の場所といえるシーンで、しっかりした走りを体験すると、こっちから歩み寄る気持ちが芽生える。コイツはのんびり屋だからなぁとDレンジの制御を見越してドライブすれば我慢もできる。まあ、そういう気持ちがエコドライブに繋がるんだけどね。

過激なクルマではなかった

ノーマルのアルトでも目力はあるが、ターボRSはさらに特徴的になった

ノーマルのアルトでも目力はあるが、ターボRSはさらに特徴的になった

というのがターボRS。走りのレベルは相当に高かったものの、BC編集部と多くの読者が期待していたであろう過激なクルマではなかった。でもね、コレって多分スバルでいうとWRXなんですよ。どういうことかって? WRXであって、WRX STIではないってこと。アルト的にSTIというとワークスですよ! 今回のモデルにMTが設定されていないって不自然でしょ。それを前提に予測すると、ワークスは6MT! そろそろ64ps規制をぶち破っちゃったりして……という話はスクープ班に任せるとして、そんな妄想をしてしまうほどのポテンシャルを秘めたターボRSでございました。

大井貴之のじゃじゃ馬ランキング

ヴィヴィオはWRCにも参戦したように軽自動車としてはハイポテンシャルだった

ヴィヴィオはWRCにも参戦したように軽自動車としてはハイポテンシャルだった

大井貴之のじゃじゃ馬ランキングオレの記憶に残るじゃじゃ馬系軽自動車というと、スバルヴィヴィオRX-Rかな。否、やっぱりスズキアルトワークス。ワークスでいうと2代目かな。5バルブDOHCエンジン+ターボの三菱ミニカダンガンなんてクルマもあった。空気を読まずにいうと、そもそも、今回のテーマではじゃじゃ馬が美化されている傾向にあるが、じゃじゃ馬っていうのはろくでもないってこと。とはいえアクセルをガバッと開けさえしなければ大人しいもの。あり余るパワーが余裕となり、時には安全のためにも役に立つ。しかし敢えてアクセルを踏み込み、じゃじゃ馬な面を呼び起こし、それを乗りこなすことが男の子の夢になるワケなのだが。好意的な目で昔を振り返ると、最初に挙げたどのクルマも軽自動車のイメージを超えたパワーの持ち主だった。ヴィヴィオRX-Rを筆頭に挙げたのはスーパーチャージャーを装着していたところ。ハイパワーなターボ車はターボが効き始めたところでグワァ~と大きなトルクがかかるからそこをコントロールしなきゃならないのだが、スーパーチャージャーはハイレスポンス。ターボエンジンの弱点といえるアクセルコントロールに追従しないターボラグがないのだが、トラクション性能が充分でないとその利点が裏目に出てしまう。その最もわかりやすい例がヴィヴィオRX-R。コーナーでアクセルを開けた途端、エンジンは素早くレスポンスするが、トラクションがかからない。駆動力が路面に伝わらなければ加速はしない。素早く反応するエンジンを搭載した意味がない。しかも最もパワーを必要とする単純加速でターボのような伸びがない。文句が多くかき回すが、結果的にたいした仕事をしないヤツって感じ。5バルブのミニカダンガンは、スペックのわりに不発。学歴ばっかで使えないヤツ。ミラターボTR-XXは完成度が高かったが、マジメなスポーツマンタイプ。面白味に欠けるクルマだったと記憶している。結婚するにはよかったかもね。

完成度が高く、じゃじゃ馬な要素はない

今の軽自動車では小さく見えるアルトターボRSだが、旧規格のワークスと並べるとデカい! 今回持ち込んだアルトワークスは3代目で、’98年の最終モデル。つまり旧規格のため全長が10mm、全幅が80mm違う。全高は120mmの差がある

今の軽自動車では小さく見えるアルトターボRSだが、旧規格のワークスと並べるとデカい! 今回持ち込んだアルトワークスは3代目で、’98年の最終モデル。つまり旧規格のため全長が10mm、全幅が80mm違う。全高は120mmの差がある

いろいろ振り返ると、じゃじゃ馬ナンバーワンは、やっぱりアルトワークス。コイツは相当なワルが更正した感じ。当時はハイパワーエンジン搭載車としてかなり出来損ないだったが、ピンポイントを捉えれば恐ろしく速く走ることができた。ちょいワル系で、怒らせたらマジで恐いって感じ。さて、それでは新しいアルトターボRSはどうなのかというと、残念ながらじゃじゃ馬ランキングに入るクルマではなかった。といっても、ターボRS登場を盛り上げるためのランキングなのに、主役が入らなかったことが残念。ターボRSの走りは完成度が高く、じゃじゃ馬な要素はない。これはとてもいいことなのだが、それはそれで物足りないというのが本音だ。

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グーネットマガジン編集部

ライタープロフィール

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
グーネットでは軽自動車から高級輸入車まで中古車購入に関する、おすすめの情報を幅広く掲載しておりますので、皆さまの中古車の選び方や購入に関する不安を長年の実績や知見で解消していきたいと考えております。

また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

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