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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.11.27
ムーヴVSワゴンR ハイトワゴン 戦線異常あり!?
進化の影に熟成あり、視線は国産コンパクトにあらず

【本記事は2015年2月にベストカーに掲載された記事となります。】筆者が千葉県某所にて「ムーヴの走り、スゴイな」と感心していた頃、都内ではスズキが軽量・超低燃費のアルトを、ホンダがユニークなコンセプトを持つN-BOXスラッシュを発表。ボディサイズや排気量に制限のあるなか軽自動車のモデルラインアップはますます多様化し装備も充実、技術の向上に凌ぎを削ることにも余念はない。このところの軽自動車界の群雄割拠ぶり、胸の奥のゾワゾワが止まらない。そんななかでフルモデルチェンジした6代目ムーヴ。私は“進化の影に熟成あり、視線は国産コンパクトにあらず”とみた。モデルチェンジのポイントは新開発の軽量高剛性ボディ、足回りの改良による基本性能の向上。後方誤発進抑制制御機能の追加されたスマートアシストや欧州車ではすでにお馴染みのワンタッチターンシグナル付きのウインカーなど軽初採用となる数々の先進装備を搭載している。
ターボ車の走りの実力は?

こちらは新型ムーヴカスタムRS"ハイパー"のインパネ。ギャラクシーマーブルに塗装されたインパネガーニッシュはハイパーだけの装備。通常のカスタムはシルバーとなる
初めにターボエンジンを搭載するムーヴカスタムRS“ハイパーSA”を試乗。劇的な進化を感じたのは走行フィールだった。車内の空気すら震えそうにないほど車体の隅々までガッシリと作り込まれているのがわかる。今回サスペンション形式などに変更はないが、ボディ骨格の一部であるサイドアウターパネルのリーンホースを抜き、代わりに板厚のハイテン材を用いるなどの軽量&剛性を施し、アンダーボディの補強は足回りの剛性アップと併せて行っているものも含め、かなり大掛かりに行われていた。足回りではムーヴ全車に前後ショックアブソーバーの大径化や大型スタビライザーを採用。軽量化について追記すると、外板樹脂化をすすめ全体で20kg軽量したぶんをボディ補強などに回す手法がとられているのだ。結果、ハンドルを切った時の応答性と俊敏さは欧州のコンパクトカーにも近い。それなのに同乗者の頭のふらつきが抑えられ、快適さも向上していた。ショックアブソーバー内部に新採用されたシールが微小な動きを制御し切り始めのスッキリとした操舵感を与えているのだとか。路面からの音や細かな振動が作る雑音もかなりの高レベルで遮断されている。静粛性も極めて高い。乗り心地はチーズのようだ。ボディはしっかりと詰まっているが硬すぎることはない。ただし私には少々ハンドルの操作感が重かった。タイヤサイズによるところが大きいらしい。ボディのロールや足回りのストローク感も少なく15インチタイヤがさらに路面を捉えるものだから、かなりタフ。14インチを選んでもよいかもしれない。エンジンは加速性能はもちろんNAと比べてもさまざまなシーンでの力強さを頼もしさと感じる機会が多かった。
新型ムーヴNAの走りをワゴンRと徹底比較!!

左右分割式のリアシートをワンタッチで倒せば、ご覧のとおり広大なラゲッジスペースが出現
続いてNAエンジンを搭載するX“SA”に乗ると、ボディ剛性の高さや静粛性の高さはそのままながら、街中を走らせた印象は優しい。エンジンの動力性能は発進のスムーズさも含め、個人的には不満はない。が、この新型ムーヴには登坂路での再加速で「もう少し力をください……」という場合にステアリング上に“パワーモード”スイッチが加えられている。これはCVTのシフトレバーのSモードがシフトマネージのみであるのに対し、シフト+エンジン制御によりアクセルレスポンスが向上。ターボエンジンでもより力強い走りをするが、NAであってもこのスイッチにより登坂路でのモタつきも解消される。途中、ワゴンR(NA)にも乗ってみると、ムーヴとの違いは発進のスムーズさやボディの塊感による走行性能、静粛性などが明確に異なるとわかる。ワゴンRの走りには満足度の高い軽としてのお馴染み感がある。ボディにしっかり感はあるものの、音振動、エンジン&ステアリングレスポンス、乗り心地に若干のユルさが感じられるが、コレはコレで悪くはない。ストローク感やロール感はけっして不快ではないのだ。ところが再びムーヴに乗ると、やはり運転操作が楽であり軽自動車であることを忘れてしまいそうだった。新型ムーヴの話に戻る。フロントシートは運転席シートを含め背もたれの高さを増やし、座面内部の設計を変更。大ぶりでサポート性も向上したシートはダイレクトに乗り心地の重厚さがうかがえた。視界も良好だ。大きなガラスとサイドミラーの最適な配置、そして払拭性能や空力を考慮して採用されたエアロワイパーはフロントウィンドウにペタッと押し付けられ視界に入りにくい。ドライブフィールはもちろん装備も含めさまざまな点に注目してみても、もはやムーヴは国産コンパクトカーというよりも、意識は欧州コンパクトカーに向けられているように感じたほどだった。輸入車コンパクトカーからのダウンサイザーの受け入れも視野に入れているとか。多種多用なモデルが揃う軽自動車。ニーズに合った役割を担うモデルはほかにもある。ムーヴはダイハツの軽の本流=本質の底上げを実現したようだ。
ハイトワゴン3大ライバル実用性チェック!!

軽自動車として初の後方誤発進抑制制御機能搭載も新型ムーヴのアピールポイント
まず居住性は、前席は改善を施した新型ムーヴが腰の周辺のサポート性が優れ1位になる。ワゴンRとN-WGNは同レベルだ。後席は、頭上の空間は3車種とも充分。足元にも不足はないが、膝先空間で差が付く。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る同乗者の膝先空間は、N-WGNが最大で握りコブシ3つ少々。次はワゴンRで3つぶん。ムーヴが2つ半になる。座り心地も異なり、N-WGNとワゴンRは、着座位置が適度で快適だ。ムーヴは床と座面の間隔が不足して、足を前に投げ出す。大腿部のサポート性も少し甘い。座面の柔軟性も乏しく、足元空間も狭めだ。だからN-WGNとワゴンRは同等で、ムーヴは3位に下がる。シートアレンジはワゴンRが1位。後席を小さく畳めて左右独立のスライド機能も備わる。ムーヴは後席のスライドを左右独立式にしたが、背もたれを倒すと座面も下がる機能は省いた。なので広げた床に段差が生じて2位になる。N-WGNは後席のスライドは左右一体で、なおかつ昇降機能もない。シートアレンジは簡素で3位になる。その代わり、N-WGNでは後席の下に横長の大型トレイが備わり、収納設備の使い勝手は1位。2位はワゴンRで、助手席の下に大容量のボックスがあり、フタの付いた収納設備が豊富に備わる。3位はムーヴで収納設備の数に不足はないが、特徴が乏しい。安全装備では、赤外線レーザーによる低速用の衝突回避支援機能は全車が備える。ムーヴはこれに後方へ向けた音波センサーも加え、時速10km以下での後退、ペダルの踏み間違いによる事故を防止する。なので1位だ。2位はN-WGN。ムーヴと同様、サイド&カーテンエアバッグを装着できる。3位はワゴンR。ライバル車に比べてエアバッグが乏しい。
買い得グレード比較で最も優れるのはどの1台?

価格は買い得グレードで見るとムーヴX・SAは130万6800円、ワゴンR・FZが137万2680円だ。6万円少々の差があるが、ワゴンRにはエアロパーツが備わり、ムーヴには音波センサーによる後方に向けた安全装備が付く。買い得感は同等だが、先に述べたスタビライザーの装着などを考えるとムーヴが若干割安になる。N-WGNのG・Aパッケージは128万5715円。ライバルと比べ6万円相当のサイド&カーテンエアバッグを加えるが、アルミホイールやスタビライザーは付かない。後席のシートアレンジも単純で若干割高だ。つまり装備と価格のバランスはムーヴ、ワゴンR、N-WGNの順番だが、その差は僅か。今後のマイナーチェンジなどでN-WGNが装備を見直せば、順列が変わる可能性も高い。そしてユーザーのニーズでも買い得度の順番が変わる。走りを重視するなら、前述のように乗り心地と走行安定性のバランスが最も優れたムーヴだ。居住性、荷室の使い勝手、燃費性能を大切にするなら、JC08モード燃費が32.4km/LのワゴンRが注目される。ムーヴは31km/L、N-WGNは29.2km/Lだから、ワゴンRは居住性や荷室の機能が優れ、燃料代も抑えやすい。また、居住性と乗り心地のバランスというセダンの要素を重視するなら、N-WGNも魅力がある。