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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.11.29
突き詰めたFRの走りの神髄を体験せよ!! 500台限定スバル「BRZ tS」サーキット試乗!!
イベントで初披露

8月4日開催のイベント「Fuji 86 Style withBRZ 2013」で初めて披露されたBRZ tS
【本記事は2013年9月にベストカーに掲載された記事となります。】真夏の炎天下まっただ中の8月4日、富士スピードウェイを舞台に多くの86/BRZオーナーたちが集結する一大イベントが開催(※詳細はP.206~)。そのイベントに出展していたSTIブースで公開されたのが、8月19日の発表日を目前にお披露目となったSTI製コンプリートカー、「BRZtS」だ。数多くのBRZのデモカーがイベントで展示されていたなか、ひときわ来場者の目を引いたこのマシン。前号9/10号でBRZtSの置き撮りカットのみ速報としてお届けしたが、今回はそのイベント時に富士スピードウェイの本コースをBRZtSで走行した際のインプレッションについてお伝えしよう。
辰己氏に試乗時の印象を聞く

辰己氏がBRZ tSで目指したのはしなやかな乗り心地ではあるけど、これまでのSTIコンプリートカーをしのぐスポーティ度をまさに実現しているという
この時、BRZtSのステアリングを握っていたのは、ご存じSTIモータースポーツ統括部プロジェクト室室長でスーパーGTとNBRチームの総監督である辰己英治氏。初代レガシィをはじめ数多くのスバル車の操縦安定性の研究に長年携わり、’06年にSTIに転籍後、’09年からはニュルブルクリンク24時間レースのチーム監督を3年連続で務めた「ニュルマイスター」ともいうべき存在だ。走りについていっさいの妥協を許さない辰己氏だけに、市販を間近に控えたBRZtSの仕上がり具合をどう感じたのかはスバリストならずとも気になるところだが、果たしてどうだったのか。試乗時の印象を聞いた。
重心の低さからくる素のモデルのよさにより一層の磨き

大排気量のスポーツカーユーザーでも「乗ればその走りの面白さが必ずわかってもらえる」と辰已氏が胸を張るBRZ tS
■重心の低さからくる素のモデルのよさにより一層の磨き――実際に乗ってみて、まずどう感じましたか?辰己 そうですねえ、けっこうリニアなハンドリングに仕上がっていて、かなりいい感じになっていると実感しましたよ。なんといえばいいのかな、まさにスポーティな走りを体現できたんじゃないかなと思います。実際にサーキットを走ってみて「これなら自信を持って商品として送り出せる!」との思いがより一層深まりましたね。――では、狙いどおりの仕上がりだと考えていいワケですね?辰己 ええ。STIの標榜する「強靱でしなやかな走り」の実現に加え、「人車一体の気持ちよさ」「自由自在に操る愉しみ」を感じられる究極のハンドリングマシンとして仕上がったということでしょうね。BRZはベースモデルからして軽量でコンパクトですし、重心の低さといったベースのよさがありますから。――これまでのSTI製コンプリートカーとは違いますか?辰己 やはりインプレッサやレガシィは重心が高いので、BRZほど重心の低いスポーティな走りを実現させるのはベースから考えても難しいものです。背が高いモデルの場合、どんなに頑張ってもある程度の限界があるんですが、(BRZのように)重心が低いクルマの場合、これまでと同じようなチューニングを施してもレベルアップする度合いが大きいんですね。 例えばインプレッサだとどうしても重心が高く、ルーフが重いんです。そうなるとスポーティにしたくても重心の高さに阻まれてしまう部分が出てきます。それがBRZにはないんですね。開発していく過程でベースの素性のよさというのを大きく感じることができましたね。――そのあたりはユーザーが一般道で走行した場合でも明確に受け取ることができますか?辰己 ええ、そうですね。必ず乗ればわかってもらえると思いますよ。サーキットだけでいいクルマというのはあり得ませんから。サーキットで乗ってみて「いいクルマ」というのは、一般道で走らせてもやはり「いいクルマ」なんです。
tSモデルに準じたもの

強靱でしなやかな走りを目指し、STIがこれまでのtSモデルと同様のチューニングを施したのがこのBRZ tSだ
――今回のBRZtS、具体的にはどういった方向をねらったクルマなんでしょうか?辰己 考え方や使っているパーツなどは、これまでのtSモデルに準じたものですし、しなやかな乗り心地をねらっているのもほぼ同じです。つまり、今までのインプレッサWRX STItSやレガシィtSのようにSTIとしての取り組みは同じなんですけど、スポーティ度の高さが違っているんですよ。これは先ほどから述べているようにベースのよさなんですね。――辰己さんが試乗してみて気になった点はありましたか?辰己 基本的にはねらいどおりの仕上がりだと思ったので特に感じませんでしたが、ただひとつだけ、個人的な好みからいうと「素のモデルの音」からしてちょっとうるさいかなあ、と(笑)。私のような年寄りが乗るクルマとしてはですね、これはもう今さらどうしようもないことなんですが(笑)。(tSの)走りの質感は非常にレベルが高くなっているのですが、ベースが音に気を配ったクルマではありませんからね。遮熱材や防音材は少ないんですけど、これはまあ、それが軽量化からくるスポーティさにもつながるので、あまり声高にはいえませんが。
決してハイパワーではないが走る愉しさを実感できる

ノーマルモデルとの変更点はエンジンスタータープッシュボタンに真紅のSTI製パーツが採用。赤ステッチ入りのシフトブーツも同じ
■決してハイパワーではないが走る愉しさを実感できる――とはいえSTIが手がけるコンプリートマシンということで、ファンの期待も大きいと思います。それに応えられるモデルだとお考えですか?辰己 それはもちろん。走りの質感の高さには胸を張れるモデルになっていると思います。ただ、先ほどいいましたが個人の好みですけど、私の場合は走らせていると走りの質感と音の大きさにギャップを感じてしまうんですね。その代わり、これまでベースのBRZに乗っていた人がtSに乗ると、「こんなによくなったんだ!」と驚いてくれると思いますよ。そう思わせるだけのハンドリングカーとしての完成度ですから。――では、辰己さんがこのtSに乗ってほしいと思うのはどんなユーザーでしょうか?辰己 フェアレディZとかGT-Rなどといった大排気量スポーツに乗っている人たちですね。そういう人たちにとってtSは軽量でパワーはノーマルと同じ200psしかないから物足りないかもしれないけど、いざ走らせてみると意外に軽快に走る、手頃なサイズで面白く走れる、ということをぜひ感じてもらいたいです。新しいスポーツカーの世界がそこにはあるんです。――最後になりますが、このモデルを通じて辰己さんが最も訴えたいことを教えてください。辰己 実は先日、耐久レースに出場している友人が乗るハイブリッド車に乗って富士スピードウェイまで行ったんですね。そのハイブリッド車の後席に乗っていたんですけど、正直、「これはクルマじゃないな」と思ってしまったんですよ。言葉が悪いんですけど、フォークリフトのような機械、もしくは電車ですね。(個人的に)クルマってやっぱり内燃機関の動力で走るものだと思うんです。アンチハイブリッドというワケではありませんが、BRZは走らせる愉しみを持った「これがクルマだ!」という実感が持てるモデルです。決してハイパワーではないけれど、素直にクルマって愉しいと思えるのがtSなんです。tSに乗ればステアリングを握った瞬間からそれがわかると思います。期待してください。
山野哲也氏からもひと言

後続のGT300マシンのBRZで走行していた山野哲也氏はtSについて「GTウイングとサイドアンダースポイラーが精悍」と評価 STIならではのドライビングの愉しさを極限まで追求し、至高のハンドリングを実現!!
■山野哲也氏からもひと言同イベントでの本コース走行時、辰己氏が駆るBRZtSのすぐ後ろをBRZのスーパーGTマシンで走っていたのがBRZマイスター、山野哲也氏。tSに試乗はしていないが、次のように期待を込めて語っている。「後続で走っていてtSの挙動を見ていたんですが、ノーマルモデルのようなボディのロール量の大きさがなかったですね。さすがはSTIという感じでかなりしっかり足回りを仕上げてきたな、と。特にリアビューのカーボンウイングとサイドのアンダースポイラーは精悍でカッコよかった。これならボクも早く乗ってみたいですね」