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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.11.29
メルセデスベンツAクラスがプレミアムコンパクトクラスに旋風を巻き起こす
まずは新しいAクラスの実力を知らなくっちゃ!

Mercedes-Benz Aクラス 2代続いたトールワゴンスタイルと決別し、ワイド&ローのスタイルとなった新型Aクラス。さらに所属セグメントも、これまでのBセグメントから激戦区のCセグメントへ移行した。ベンツ製FFモデルはイマイチ成功していない感があるが、この新型Aクラスからはヒットの予感がヒシヒシと感じられる。
【本記事は2013年3月にベストカーに掲載された記事となります。】まずは新しいAクラスの実力を知らなくっちゃ!ゴルフやアウディA1といったドイツ勢に、シトロエンDS4&プジョー308といったフランス勢。それらのクルマに共通するのは、クルマのデキとしていずれも一定の評価を得ているということ。いっぽう国産車はどうかというと、特にプレミアム性を持たせようとして登場したコンパクト&HBは、どれも大きく成功はしていない。その「なぜ?」を検証するのが本企画の趣旨。が、まずはその前に1月17日発表の新型Aクラスの実力から見てみよう。新型Aクラスを語る前に、まず’93年のフランクフルトでデビューした“ヴィジョンA93”に始まるサンドイッチ・フロア・コンセプトを総括しなくちゃいけないだろう。ヴィジョンA93から2代目Aクラスまで継承されたこのユニークなボディ構造は、コンパクトカーの衝突安全性やEV/FCVへの適応性など、きわめて野心的なコンセプト。ただのコンパクトカーではなく、ベンツならではの新しい価値観を提案する試みだった。ただ、当初の思惑ほどEV/FCVの実用化は進まなかったし、コンパクト・メルセデスとしての市場評価もいまひとつ。むしろ、Cクラスやそれ以上のラインアップ間に大きなギャップを作る結果となってしまった。それゆえに、3代目Aクラスは過去のシガラミを捨ててゼロから作り直すことを決断せざるを得なかった。コンパクト・メルセデスそのものの再構築、それが3代目Aクラスに与えられた役割といえるわけだ。ゼロからの再構築はプラットフォームを見れば一目瞭然だ。シングルフロアのコンベンショナルなボディは、全長が40cm伸ばされ、車高は16cmもローダウン。結果として、アウディA3などのライバルとほぼ同等の“普通の”プロポーションが与えられている。デザインも一気にスタイリッシュ志向にシフトした。スリーポインテッドスターを中央にドーンと配したアグレッシブなフロントマスクは、メルセデスラインアップの末っ子とは思えない迫力。AMGのオプションパッケージがよく似合っている。パワートレーンは1.6L直噴ダウンサイズターボ(122ps)+7速DCTが基本となる。これはBクラスですでにデビューしているものだが、先代Aクラス後期の1.7L+CVTに比べると、走りも燃費も見違えるほど向上しているのはいうまでもない。
先代のAクラスとはまったく異なるスポーティさ

シートはヘッドレスト一体型のスポーティな形状のものを採用。ドイツ車らしいカッチリとした座り心地だ
コックピットにおさまると、先代のAクラスとはまったく異なるスポーティな感覚にちょっとビックリする。フロアが低くなったぶんヒップポジションも地面に近くなっているのは当然なのだが、上下にうすいグラスエリアのせいでキャビンに“囲まれ感”があり、全体によりスポーツカーっぽい雰囲気なのだ。そのいっぽうで、ヘッドレスト一体のハイバックシートを採用したこともあり、後席はちょっと窮屈な印象。ファミリー志向ユーザーはBクラスに任せて、かなり割り切ったキャラクター設定としているようにみえる。ただし、いったん走り出すと過剰にスポーティなセッティングではなく、ドライバビリティと乗り心地が上質なことに感心させられた。
低速域から頼もしいトルクの1.6Lターボ

1250rpmから20.4kgmという充分な最大トルクを発揮する1.6Lターボエンジンを搭載する
1.6Lターボは低速域から頼もしいトルクを供給し、7速DCTの歯切れのいいシフトフィールとともに軽快に加速。まずは、この基本的なドライバビリティがすごくいい。また、ワインディングでちょっと遊んでやろうなんていうときには、パドルを使って小気味いいマニュアルシフトが楽しめるし、高速クルージングでは7速の2300rpmで130km/hというハイギアリングで燃費もかなりの好データが期待できる。さらに、信号待ちではアイドル停止が賢く作動するなど、最新のパワートレーンとして文句のつけようがない優等生なのだ。
プレミアムコンパクトクラスに旋風を巻き起こす

BMW 1シリーズ Cセグメント唯一のFRというのが最大の特徴。全長×全幅×全高=4335×1765×1440mmのボディに、1.6Lの直4ターボエンジンを搭載する。出力はグレードによって異なり、売れ筋の116iは136ps、120iは170ps。JC08モード燃費はともに16.6km/Lとなっている。よりハイパワーなM135iも用意される。
価格的にも、284万円からというエントリープライスはおおいにアグレッシブ。すべてを一新して攻勢に転じたAクラスは、プレミアムコンパクトクラスに旋風を巻き起こすこと必至だと思ったね。輸入プレミアムコンパクト/HB隆盛の影で、国産プレミアムコンパクト/HB不振のワケ「小さなプレミアムカー」というのは日本車が何度となくトライしては失敗してきたテーマなのに、欧州勢はここでアッという間に強力なラインアップを築いてしまった。今回デビューしたAクラスもそうだけど、BMW1シリーズ、ミニ、アウディA1、シトロエンDS3/4など……。これ以外にも、ちょっとプレミアムなコンパクトカーは枚挙にいとまがないほどだ。
BMWの2枚看板のミニ

MINI ミニ 多くのボディバリエーションを持つミニだが、ここではベーシックな3ドアHBを紹介。エンジンは1.6Lだが、仕様や過給器の有無などで、98ps~211psまで発生出力の異なるモデルが用意される。最近のトピックは最もパワフルな「ジョンクーパーワークス」にATが追加されたこと。楽しいクルマです。
なかでも元気がいいのがBMW。BMWの’12年度年間販売台数は約185万台で、アウディの145万台、ベンツの142万台を大きく引き離しているが、その大きな要因は世界トータルで30万台を売るミニの存在。ミニと1シリーズの2枚看板で、プレミアムコンパクト市場で大きく稼いでいるわけだ。
コンパクトカーが本業の日本車は・・・

LEXUS CT200h レクサス初のCセグメント車。基本的なパワートレーンは3代目プリウスと共通で、JC08モード燃費は30.4km/L。’12年8月にはスポーツグレードの「F SPORT」が追加された。 全長×全幅×全高は4320×1765×1450mm。内装の質感は高く、レクサスブランドらしさを存分に感じさせてくれる。
対して、日本車はコンパクトカーが本業なのに、小さなプレミアムカーというと「うーん……」と首をひねるしかない。まぁレクサスCT200hは最初からプレミアムを狙ったクルマだからイイとして、あとはオーリス(かなり微妙だな?)、インプレッサ(4WDはちょっとイイかも?)、アクセラ(モデルチェンジ待ち?)、ベリーサ(何年前のクルマだよ!)といったあたりしか思い浮かばない。どーせ作っても売れないから、最近はもう最初からあきらめてる感すらある。このあたりに、日本車のプレミアムカー商売の限界があらわれている。クルマ本来の走りの機能をとりあえず別にすれば、プレミアムカーに重要なのはブランド力、デザイン、そして品質。ここをユーザーに評価してもらえなければ、割高なお値段を正当化できない。初代レクサスが北米市場で大ブレイクを果たして以来、Cセグメント以上では日本車もプレミアムカーとして成功する例が増えてきたけど、小さいクルマではサッパリ。日本車はコンパクトカーが“本業”ゆえにどうしても大衆車イメージが強いし、思い切った原価設定ができないから品質もほどほど。そしてデザインはご存じのとおり、ちょっとアカ抜けない。この負のスパイラルから脱出できないかぎり、今後も日本から魅力的なプレミアムコンパクトが登場する望みは薄いといわざるを得ない状態だ。だから、コンパクトクラスの日本車は、苦手なブランド力やデザインなどの「ソフトな価値創造」路線より、お得意の「機能の向上」に励んだほうがイイように思う。たとえば、プリウスはプレミアムカーとはちょっと性格が違うけど、あの車格で中核グレード250万円というのは決して安いクルマではない。にもかかわらず大ベストセラーとなっているのは、ユーザーがハイブリッドという機能を評価したから。「ハイブリッドなら燃費で元がとれる」と厳密にコスト計算して買うユーザーもいるだろうが、より多くの人はもっと単純に「ハイブリッドというプレミアムなメカにエクストラマネーを支払った」と解釈すべきなのだ。こういう路線で頑張るのは、メーカーにとってはシンドイ。だって、ブランドやデザインは構築しちゃえば原価ゼロだけど、高級なメカニズムは常にそれなりのコストを必要とするから。でも、こういう路線でプレミアム化するとうれしいのはライバルがそうやすやすと追いつけないこと。デザインなら著名なデザイナーを引き抜いてくればいいけどハイブリッドやSKYACTIVみたいな複雑な擦り合わせ技術は簡単にパクるのは不可能だもんね。このへんが「技術立国」を国是とする日本の自動車メーカーの生きる道。やっぱり日本車は華やかなプレミアムカー作りより地道な技術開発のほうが向いているんだなぁ。輸入車勢の攻勢止まらず! ’13年に登場する魅惑のプレミアムコンパクト新たな動きの萌芽は見られるものの、全般に成功しているとはいいづらい日本のコンパクト/HB勢。そんな国産勢を尻目に、さらに攻勢を強めるのが輸入車勢だ。’13年は前ページで紹介しているモデル群に加え、さらに強力なモデルが上陸してくる。
VWのゴルフⅦは強力

VW ゴルフⅦ
そのなかで最も強力かつ日本でも人気が出そうなモデルといえば、やはり4月にも発表されると見られているVWのゴルフⅦだろう。ボディサイズは全長×全幅×全高=4255×1790×1452mmと、現行ゴルフⅥより全長が45mm伸びるもののほぼ同等。外観の雰囲気も似るが、その中身は大きく変わっている。特徴は最新のプラットフォームを採用し、車両全体で約100kgもの軽量化を果たしたこと。エンジンの低負荷域では2気筒が休止する気筒休止システムの採用と相まって、現行モデルを大きく上回る燃費を実現して登場するのは確実。軽量化は現行でも評価の高い走りにも影響するはずで、総合的なパフォーマンスは、そうとうなレベルとなりそうだ。
ボルボV40は注目

VOLVO V40
次に注目すべきは最近絶好調のボルボから登場するV40だろうか。2月19日発表だが、外観はすでにメーカーサイトにも上げられているので確認できるはず。全長×全幅×全高=4370×1802×1445mmのボディは、ごらんのとおりのスタイリッシュさ。こちらもかなり話題となってくれそうだ。そのほかではアウディA3スポーツバックや、フォードのフォーカスにも注目。特にフォーカスは、170psを発生する2Lの直噴エンジン+2ペダルMTの組み合わせによる走りや、日本導入モデルはタイ生産になるなど、いろいろ気になる点が多い。4月発表とみられているが、ぜひ注目しておきたい。対する日本勢はというと、コンパクトモデルはフィットをはじめ注目車が’13 年内に出るものの、「プレミアム」とつくと、勢いが弱まる。年末にダウンサイジングターボ搭載のレクサス製SUVが出るが、コンパクトとはいえない。日本勢にも頑張っていただきたいが……。