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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.11.30
ウ~ンかっこう見るかぎり、走りがすごいとは思えないけれど…… ホンダN-ONEの走りは軽自動車No.1か?
N-ONEの実力は?

【本記事は2012年12月にベストカーに掲載された記事となります。】発売から11日間での受注は1万5808台と大ヒット確実のN-ONEだが、その実力はどんなものなのか? 従来の軽自動車に比べて新鮮な走りを見せるのか? ターボとNAそれぞれの実力をライバルたちと比較する
キュートなルックスが売りのひとつ

タイヤを4隅に置いた台形のフォルムはN360から培ってきたMM思想(マンマキシマム・メカミニマム)をほうふつさせる。写真は2トーンカラーで唯一ルーフが白となるイノセントブルーメタリック
ベストカーが早い時期からスクープし、注目していたN-ONEがついに公道に飛び出した。売りのひとつはキュートなルックスだ。大ヒットを飛ばし、軽自動車の歴史を変えたN360にも似ている。試乗したとき、多くの人がN-ONEに熱いまなざしを注いだ。赤塚不二夫のマンガに出てくる、おまわりさんと似た顔立ちも愛嬌がある。
実用的な広さのキャビン

質感が高く色彩も落ちつくコックピット
キャビンは前席だけでなく後席も実用になる広さだ。前席の下に燃料タンクを収めているため座面が高く、フロアもちょっと傾斜しているが、大柄な人でも最適なドライビングポジションをとることができる。後席はフロアがフラットで、足元も広々としているから気持ちよく座れた。プラットフォームだけでなく心臓部もN BOXから譲り受けている。658ccの直列3気筒DOHCエンジンは、NAとターボの2本立てだ。トランスミッションは全車CVTを組み合わせた。
ターボもNAも実用的な力強さ

ワインディングもなかなか俊敏。CVTの制御が利き、NAでも上り坂のワインでイングを粘り強く走る
最初にステアリングを握ったのは、売りとなるターボ搭載車だ。応答レスポンスは鋭く、アクセルを踏み込むと速やかに過給が始まり、気持ちいい加速を披露した。ターボはマイルドな味付けで、低回転域から威力を発揮する。排気量が大きいエンジンのような自然なトルクの盛り上がりだから運転しやすい。ワイドレンジのCVTとのマッチングがいいことに加え、800kg台の軽量ボディだから胸のすく軽やかな加速フィールだ。トップグレードのLパッケージにはパドルシフトも装備され、レスポンスもいい。走行中に発生することが多い不快なCVTの金属ノイズも大幅に減っていた。クルージング時のエンジンノイズも上手に抑えられている。100km/hクルージングは約2500回転をちょっと超えたあたりだ。このスピード域でも静粛性は高い。ターボ搭載車はフロントにスタビライザーを装着し、ブレーキもベンチレーテッドディスクにグレードアップされている。試乗車は14インチのヨコハマ製ブルーアースを履いていた。ハンドリングは安定志向で、コントロールしやすいように味付けされている。しかもサスペンションの動きはしなやかだ。エコタイヤでも地に足がついた高いスタビリティ能力を身につけていた。ボディとシャシーは剛性たっぷりだし、サスペンションも踏ん張りが利く。だから絶大な安心感がある。電動パワーステアリングも据りがよく、直進状態から切っていく時は軽快だ。もう少し操舵フィールに落ち着きと正確さが加われば、さらに印象はよくなるだろう。この点は惜しい。自然吸気のNAエンジン搭載車も軽やかな走りを見せつけた。エンジンのトルク特性がフラットで、CVTの変速制御も巧みだから非力な感じがしない。街中を主体とした走りのステージは得意だ。アクセルを踏み込むと低回転域からトルクが瞬時に立ち上がり、スッとクルマが前に出る。しかもフレキシブルだ。静粛性も高いが、急加速した時はエンジン音が一気に高まる。ターボには装着されないアイドリングストップシステムは違和感なく作動した。アクセルから足を離して減速した時のエンジンブレーキはちょっと強めの印象だが、違和感がなくエンジンは自動停止する。また、再始動も滑らかだ。フットワークもターボ搭載車と似ているが、軽快感とスタビリティ能力はターボに一歩譲る。気になる燃費はターボ、NAエンジンともに日常の走行ステージで17km/L台をマークしている。実用燃費はかなりよさそうだ。
激戦区のハイトワゴンに殴り込み

ワゴンR、ムーヴの牙城を崩せるか?
軽自動車の主役となっているのは、ちょっと背の高いハイトワゴンだ。容積追求型のトールワゴンも人気が高いが、幅広い層のユーザーから愛されているのは、やはりキャビンとラゲッジルームが広く、走りの実力も高いハイトワゴンである。ホンダN-ONEは、この激戦区に殴り込みをかけた。ハイトワゴン市場には手ごわいライバルがたくさんいる。その筆頭がスズキのワゴンRだ。また、スズキはMRワゴン(日産モコ)とラパンという違うキャラクターの軽自動車も持っている。軽自動車ナンバー1メーカーのダイハツは、ムーヴが直接のライバルだ。また、キャラクター的に似ているムーヴコンテやタントエクゼもライバルになるだろう。
レスポンスはワゴンR

レスポンスのいいワゴンR
ワゴンRに搭載のスズキの新世代3気筒エンジンは軽快なパワーフィーリングだ。レスポンスは鋭いし、スティングレーのターボも低回転域から威力を発揮する。パンチ力があり、応答レスポンスも鋭いから意のままの加速が可能だ。ダイハツの3気筒ターボも実用域のトルクから厚みがあり力強い。また、高回転域の伸びのよさとパンチ力に加え、扱いやすさの点でもN-ONEの3気筒ターボに肉薄している。ドライバビリティと滑らかさ、そして実用燃費は3車ともハイレベルな戦いだ。そのなかでわかりやすいスポーティ感とエンジン音に代表される静粛性において一歩(半歩か?)リードしているのはワゴンR。N-ONEより車重が30kg軽く、切れのいい加速を見せる。
静粛性とアイドリングストップ機能はワゴンRとダイハツ勢が一歩リード

しっかり感のあるムーヴ
NAエンジンはN-ONEの力強さが光った。応答レスポンスがいいだけでなく、こちらも軽量ボディが功を奏し、軽やかな加速と優れたドライバビリティを見せている。ただし、静粛性に代表される快適性能はワゴンRとダイハツ勢が鼻の差でリードだ。この両車は音量の数値レベルではなく音色が耳障りではない。また、アイドリングストップ機能もワゴンRとダイハツ勢が一歩リードしている。スムースな減速感と自然な再始動、振動の少なさは大きなアドバンテージだ。特にワゴンRは停止と再始動に違和感がないだけでなく停止時間は長いし、夏場でもエアコンの効きが悪くなりにくい。これは大きな魅力といえる。
フットワークとハンドリングはスティングレーが頭ひとつ抜きんでた

加速のいいワゴンRスティングレー
フットワークとハンドリングはN-ONEとワゴンRがトップ争いを演じた。この2車は上級の登録車と遜色ない質の高い走りを見せている。操舵フィールの洗練度、限界領域でのコントロール性と安心感はワゴンRのほうが少し上をいっている印象だ。特にフロントにスタビライザーを追加したスティングレーは頭ひとつ抜きんでる。ムーヴとMRワゴンも軽自動車のなかではトップランクの実力を秘めている。だが、電動パワーステアリングの操舵フィール、高速走行時のスタビリティ能力と安心感などは物足りない。乗り心地はワゴンRが一歩リードし、ムーヴとMRワゴン、N-ONEが横一線だ。ムーヴはカスタム系を含め、タウンユースでの乗り心地を意識したセッティングとなっている。このムーヴは年末にマイナーチェンジする予定だ。新型はN-ONEに食い下がれるだけの走りの実力を身につけて登場すると思われる。もう一点N-ONEは路面によってはショックの吸収に甘さを感じた。
リラックスできる空間で居心地がいいN-ONE

ワンアクションでフラットになる荷室
N-ONEのキャビンは持て余さない広さだ。ゆったり感と開放感ではワゴンRとムーヴに及ばないもののリラックスできる空間で居心地がいい。N-ONEはチルト機構やハイトアジャスターなどの調整機構も充実しているから大柄な人でもベストポジションを取ることができる。燃料タンクをシート下に収めているから頭上の余裕はワゴンRほどない。だが、アップライトな姿勢でアイポイントも高いから見切りがよく、運転しやすいと感じるはずだ。N-ONEのリアシートはスライド機構やリクライニング機構はないが、作りがしっかりしていて気持ちよく座れる。ひざ元空間と頭上空間もムーヴに迫る余裕だ。ムーヴはガラスエリアが大きいから視覚的な開放感を感じる。N-ONEはシートアレンジを欲張らなかったため、ラゲッジルームの拡大はワンタッチだ。簡単に荷室を拡大でき、フロアも低いのがいい。それ以上に魅力的なのが軽自動車レベルを大きく超えた充実の安全装備である。横滑り防止装置とエマージェンシーストップシグナル、ヒルスタートアシストは全車に標準装備だし、Lパッケージはサイド&カーテンエアバッグも標準とした。走りはターボ、NAとも2位の評価だが安全性を重視すればワゴンRを逆転する。また粋な2トーンのボディカラーや洒落たドレスアップパーツなど、走りや広さ以外のクルマ好きに訴える趣味性ならばダントツだ。
開発責任者が語る ライバルはリッターカーだ

ボディカラーは11色+ツートーン5色あるが、白が人気でツートーンなら赤/黒が人気だ
開発責任者が語る ライバルはリッターカーだLPL(開発責任者)の浅木泰昭さんはF1のエンジン開発に携わった技術者。「畑違い」の軽自動車開発だったが、NBOX、N BOX+、N-ONEとNシリーズを手がけてきた。「N-ONEがターボに力を入れているのは新しい軽自動車像を作りたいからなんです。欧州車はダウンサイジングターボが人気ですが、日本の道路事情にピッタリなのが、660ccターボだと思うんです。アベレージスピードが比較的低い日本なら1.5Lクラスと同じ仕事を効率的にできますよ」と語る。リッターカーを中心に自動車の生産工場がどんどん海外に移っていくなか、浅木さんはいい軽自動車を作ることで、国内の雇用を守ることができると語る。ライバルはリッターカーだと堂々と語る浅木さんが次に作るクルマも楽しみだ。受注は1万5808台(11/11現在)発売から11日間での受注は1万5808台(N BOXは1万8289台だった)で、ターボは31%、NA69%。グレード別ではG・Lパッケージが27%、プレミアムLパッケージ19%、G17%が上位3つ。ボディカラーはベースモデルでプレミアムホワイトパールが31%と人気。プレミアムではミラノレッド/ブラックの2トーンが20%と人気だ。