三菱アウトランダーをじっくり試乗して新型の全容を解明する！

【本記事は2012年12月にベストカーに掲載された記事となります。】10月25日にフルモデルチェンジされたNEWアウトランダー。グローバル化を進めながら、国内販売も出足好調という新型に試乗したが、洗練された大人のSUVに進化しているじゃないか。SUV市場に旋風を巻き起こしそうな予感がする。■走行安定性が向上日本のSUVに対するイメージは、野生味や迫力だろう。先代アウトランダーの外観は鋭角的で日本向けだったが、新型は欧州、ロシア、中国など海外の市場を重視しているようだ。柔和なヒネリの利いたデザインだが、日本向けのわかりやすいSUVらしさとは違う。このような疑問を持ちつつ試乗を開始すると、外観と運転感覚がピッタリと合っていることに気付いた。先代型は機敏に曲がるタイプ。スポーティだが、下り坂で危険回避のためにアクセルを閉じたりすると、後輪を横滑りさせる傾向が見られた。乗り心地も硬めだった。それが新型では大幅に洗練され、18インチタイヤ（トーヨーA24）を装着しながら、路面のデコボコを直接的には伝えない。コーナーでは相応にボディが傾くが、挙動の変化は穏やかに進んで後輪の接地性も充分。走行安定性と乗り心地のバランスが優れ、ヤンチャ坊主が大人に成長したような印象だ。このあたりが外観の変化と合致する。明らかに指向性が変わったので、理由を開発者に尋ねた。「三菱自動車が新たな出発をする時、社内でクルマ作りの方向性を話し合った。三菱の持ち味はパジェロとランエボ。信頼性を高めると同時に、運転の楽しさも表現したいと考え、先代アウトランダーを含めて機敏に曲がる車種が増えた。ただしこの傾向がいきすぎて、安定性に不満が生じたことも事実。現行型はそこを修正した」という。

試乗したグレードは、売れ筋になる最上級の4WD24Gナビパッケージ。2.4Lエンジンに、e-アシストと呼ばれる安全＆快適装備とメモリーナビを組み合わせる。エンジンはノイズが若干大きめに感じるが、幅広い回転域で充分な動力性能を確保。4000回転を超えた領域で吹き上がりが活発になる。CVTは特性を見直し、細かなアクセル操作による速度調節も行ないやすい。走行安定性と乗り心地の向上と相まって、リラックスできる運転感覚を身に付けた。

■内装、シートの質感向上内装は上質。カーナビの画面とエアコンのスイッチ類は、比較的高い位置に装着される。操作性、メーターの視認性もいい。フロントシートはサイズを充分に確保。体が適度に沈んだ部分でしっかりと支える。リアシートは体の沈み方が少なく、座面の奥行はフロント側よりも50mm短い。もう少し座面を伸ばし、ボリューム感を与えるとさらに快適になる。居住空間は広く、リアシートを後端までスライドさせた状態では、身長170cmの大人4名が乗車して、膝先に握りコブシ2つ半の余裕がある。荷室に3列目のシートを備えることも特徴。サイズは小さく、膝の持ち上がる補助席だが、先代型ではハンモック状だった座面をウレタンとスプリングを併用するタイプに変えた。体を柔軟に受け止める。以上のように、新型アウトランダーは長距離移動の快適なSUVに仕上げた。高速道路でレーダークルーズコントロールを使えば、ペダル操作を行なわずに先行車に追従走行できて、万一の時には自動的にブレーキを働かせる。走行レーンの逸脱も素早く警告してくれる。そして最近の新型車では珍しく、ボンネットがよく見えて、車両を走行レーンに合わせやすい。フロントピラーの形状を見直したから、斜め前方を含めて視界もいい。最低地上高は215mmを確保、4WDには多板クラッチの締結力を強めるロックモードも備わり、冬季ドライブの安心感も高い。アイドリングストップを含めて燃費を改善したから、長距離移動時の出費も抑えられる。SUVの本質は、ゆったりと移動できる快適性と、優れた走破力に裏付けられた安心感だ。新型アウトランダーは、最新のメカニズムでSUVの価値をさらに高めた。

新しくなった4WDが雪道で効果を発揮する！進化した4WDで注目したいのは、8.4万円でS-AWCをオプション設定したこと。ランエボXと違って後輪左右の駆動力を変化させる機能はないが、前輪側に多板クラッチによるLSDの作動を行なわせている。ブレーキも走行状態に応じて4輪を独立制御するタイプ。横滑り防止装置の機能に加え、旋回軌跡の拡大も抑えられる。S-AWC装着車は、乗り心地が快適なわりに、小さく回り込むコーナーでも車両がしっかりと内側を向いて走りやすい。

新三菱もいよいよ参入だ！ ライバルに勝っているか？スバルのアイサイトに似た機能を持つが、こちらはカメラとミリ波レーダーの併用型だ。安全性を高める機能として、まずは衝突被害軽減ブレーキがある。危険を察知するとドライバーに警報。それでも反応しない時は、第1段階として、乗員の体が少し前傾する程度にブレーキをかける。それでも障害物に接近すると本格制動。ごく自然なブレーキ感覚だった。カメラが車線を読み取り、逸脱しそうになると警報を発する機能は、ややうるさいが安心。快適性を高める機能はレーダークルーズコントロール。3段階の車間距離を選択できて、時速40～100kmの範囲で追従する。先行車が高速道路を降りた後の加速感も自然で、乗員に違和感を与えにくい。これらの機能を備えて価格は9.5万円と割安だ。

20日間で1000台超え人気は白29％、ナビパケ53％初期受注が好調な新型アウトランダー。グレード別では、e-アシストを備える上級パッケージ仕様が人気。合わせて82％と高い比率になっている。三菱初のシステムに関心が集まっているようだ。ボディカラーは、ポピュラーなパールホワイトが一番人気。こちらは意外と保守的だ。

Powered by ベストカー