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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.11.30

デビューから5年 日産GT-R2013年仕様 円熟の極み

GT-Rの進みたい方向

先代モデルと外観の変更なし

先代モデルと外観の変更なし

【本記事は2012年12月にベストカーに掲載された記事となります。】新型GT-Rの試乗会場であるスポーツランド菅生に到着し、2013年型として改良された点のリストを見て、正直な話「何も変わってないぢゃないの!」思った。エンジン出力は同じ。新しい機能を加わえているワケでもない。でもいつもの(「しつこい解説」で有名な)「水野節」を聞いていると、ジンワリと「GT-Rの進みたい方向」が見えてくるから面白い。そして試乗したら「う~ん! 国沢光宏、お世辞抜きで少しマイッタ!」。以下、水野節の意訳と私の印象などツラツラ述べてみたい。

第3世代の始まり

まず2013年モデルのテーマを問うてみたら「第3世代の始まり」だという。水野さん曰く「フェラーリの官能性能やポルシェのジャーマンエンジアニアリングは素晴らしい。でもボクは世界一速いというのも魅力のひとつだと思ってます。GT-Rは2007年の初期モデルで世界トップレベルの速さを確保しました。2012年モデルから世界一になったと認識しています。そして第3世代で世界ブッチギリの性能を狙います」。

圧倒的によくなった乗り心地

実動ロールセンターを測定し、ロールセンターを下げるとともにスプリング&ショックの仕様を変更するなど足回りも細かく改良を積み重ねている

実動ロールセンターを測定し、ロールセンターを下げるとともにスプリング&ショックの仕様を変更するなど足回りも細かく改良を積み重ねている

正直なところ「速さを追求して意味あるのか?」と思う。市販車は限界性能なんか使わないですから。時代錯誤、と言い換えていいだろう。ところが、でございます。菅生サーキットを全開で走ってみたら、私の「ドコかにしまい込まれていたナニか」が目覚めてしまった。楽しいのだ。世界に一台くらいこんなクルマは必要だと思う。そして日本人としてGT-Rを誇りたい。いささか感動しました。菅生サーキットを攻めたら、私がいいクルマとしている基準をすべての点で楽々上回っているではありませんか。アクセルに対するエンジンの反応。マニュアルミッションより速い変速。ブレーキの効き具合。そしてハンドル切った時のレスポンス、素直なコーナリング特性のどれを取っても「すばらしい!」としか表現できない。キッチリとセッティングされたプロダクションレース車両の如し。しかも乗り心地は2012年モデルから圧倒的によくなり、今や街乗り用として使えるレベルになった。改良を何度か受けてきた2011年モデルでもギクシャクし、変速タイミンングに違和感あったツインクラッチまで「滑らかですね」というレベルにグレードアップしている。2013年モデルは一段と精度が高くなったのだろう。もはやドイツ車のクオリティに負けておらず。

2013年モデルの改良点

燃料噴射量を高精度に制御できる高出力用インジェクターを採用するなどして中回転域のレスポンスと高回転域での加速の伸びを向上。また内装では2トーンの「ファッショナブルインテリア」をオプション採用。写真のアンバーレッドは専用の新色。本革はセミアニリンを使用する

燃料噴射量を高精度に制御できる高出力用インジェクターを採用するなどして中回転域のレスポンスと高回転域での加速の伸びを向上。また内装では2トーンの「ファッショナブルインテリア」をオプション採用。写真のアンバーレッドは専用の新色。本革はセミアニリンを使用する

改めて2013年モデルの改良点を紹介しよう。まずエンジン。スペック等はまったく変更なし。けれどニュルブルクリンクでの最高速を計測すると、2007年モデルが270km/h。2009年で290km/h。550馬力になった2012年は294km/h。そして2013年で300km/h。数字は変わってないのに、2012年の馬力向上の時を凌ぐ進化をしている。こういった進化、競技車両では普通に見られる。御存知のとおり競技車両って基本スペックを変えることなくシーズン中にドンドン速くなっていく。小さい改良の積み重ねでクルマの性能は上がっていくから面白い。もう少し具体的に書く。エンジンはクリーンルームの中でひとりが1基をすべて組み上げる(注/GT-Rのエンジンを組むのは6人)。ミッションも同じ。分業にすると誤差が出るが、ひとりで組めば人間の「巧み」のワザがキッチリ出てくるそう。水野さんによれば「エンジンの性能曲線を取ると、2007年モデルの頃はプラスマイナス3%程度でした。それでも世界レベルからすれば優秀ですが、今は出力計測してもバラ付きはプリンターの印刷線の幅を出ない。エンジンの精度が揃った結果、変速のプログラムもギリギリまで追求出来ました。シフトに掛かる時間は0.13秒です。ちなみにエンジンに手を加えるとミッションとの再調整が必要になります」。GT-Rは改造したら保証してくれない。最大の理由がこのあたりにある。シフトの際、エンジンの回転数を厳密に合わせなければ、シフト時に大きな負担が掛かってしまう。バラ付きのあるエンジンの場合、変速時間を長く取って回転数を合わせるなどの対応しなければならない。GT-Rの場合、バラ付きを無くして変速時間を追求した。だから大きなタービンに交換し、レスポンスが悪くなるとミッションに負担掛かってトラブルも出てしまうワケ。加速性能も向上している。何度も書くようにスペックは2012年モデルと全く変わっていない。されど0~100km/h加速は2.8秒から2.7秒になった。「ウサイン・ボルト選手が9.6秒から0.1秒短縮したら偉業です。2.8秒からの0.1秒がどんな難しいことかわかってもらえますか?」と水野さん。なるほど。これまた数値には出ない細かい改良の積み重ねによるものだという。

なぜ性能が上がったのか?

ボディ外観上の変更はないが、ドライカーボン製リアスポイラーとレイズ製アルミ軽量鍛造ホイールをセットでオプション設定するなど細かい点で進化している

ボディ外観上の変更はないが、ドライカーボン製リアスポイラーとレイズ製アルミ軽量鍛造ホイールをセットでオプション設定するなど細かい点で進化している

不思議なことに「なぜ性能が上がったのか?」を開発スタッフに聞いても納得できる返事が返ってこない。2012年モデルで乗り心地は明らかに改善されているのに「複数の場所に細かい改良を加えただけで、大きな変更点はありません」。山登りって1歩1歩上がっているときは実感出来ないけれど、しばらくすると「高い所にきました!」と思う。クルマの進化も同じようなモノだと昔から言われてます。参考までにエンジン関係の変更点を書いておくと、(1)高出力域で正確な燃料を吹けるインジェクターを採用。(2)横Gが掛かった際、オイルがクランクシャフトを叩いてフリクションにならないような偏り防止機能を追加。(3)ターボのオリフィスを変更し、立ち上がりトルクを上げた。というのみ。いずれも最高速や加速性能の大幅な向上に結びつくとは思えない。足回りも同じ。ブッシュの変更でロールセンターを低くしたのみ。こいつが相当利いているのだという。今後、第3世代のGT-Rの進化をワクワクしながら見守りたくなりました。

1年振りに吠える 水野和敏CEのGT-Rの進化は止まらない

1年振りに吠える 水野和敏CEのGT-Rの進化は止まらないBC/今回のマイチェンで最も見て欲しいところ、力を入れたところをひとことで言うとどこでしょう?水野和敏CチーフエンジニアE(以下、水野氏)/熟成と精度の向上です。エンジンはパワーもトルクも数値は変わっていませんが、乗ってもらえば違いがすぐにわかります。中速域のトルクが厚くなっているし、トップの伸びも違う。例えば0~100km/h加速は12年モデルが2.8秒だったものが、新型では2.7秒です。BC/パワースペックについて「変化なし」ということは、現状が最適ということでしょうか?水野氏/数字にあまり意味はないんです。実際に乗ってどうか? 狙った性能を出せているのか? お客さんが満足してくれるのか? そういったことが大切。ニュルのラップタイムは’12年モデルでは7分21秒でしたが’13年モデルは7分18秒。ストレートエンドのトップスピードは294km/hから300km/hになっています。BC/こうした進化はニュル24時間レース参戦から得られたものなのでしょうか?水野氏/とても大きな体験となりました。どの部分をもっと熟成させるべきか、ニュル24時間を走って再認識しましたし、実際の改良に役立ちました。BC/GT-Rは今後どのように進化していくのでしょう?水野氏/来年のことを言うと鬼に笑われちゃう……。けど、来年も再来年も、ちょうどこの時期に菅生のコースを押さえています。どういう意味かわかりますよね(笑)BC/かなり思い切った変化を期待していいのでしょうか?水野氏/基本的には熟成……。つまり精度を上げていくと言うことが中心です。毎年の進化のなかで、エンジンやトランスミッションなど、各部においてクルマを作り上げていく精度が高まって、本来設計上やりたかったことが実現できてきているということです。今後も精度を高め、設計上の理想を実現していくことを目指していきます。

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
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