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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.11.30
ワゴンR &ワゴンRスティングレー 試乗&全方位チェック風雲児の実力
驚異の燃費性能を試す

「日進月歩の技術競争の中でとりあえずトップクラスのものを用意しました」……鈴木修会長
【本記事は2012年10月にベストカーに掲載された記事となります。】9月6日の発表以来、TVCMを見ない日はない5代目ワゴンR。驚異の燃費性能を公道で試す9月6日、千代田区紀尾井町にあるホテルニューオータニ「芙蓉の間」にて、5代目ワゴンRの新型発表会が開催された。奇しくも前週よりインド工場の暴動が新聞紙面を賑わしていたタイミングであったが、壇上の鈴木修会長は開口一番「今日はインドのことはちょっと脇に置いておいていただいて、今日は新しいワゴンRの誕生日です」と紹介。「日進月歩の技術競争のなかで、とりあえずではありますがクラストップの性能を用意しました」と、新型ワゴンRが持つ高い技術レベルを誇りつつ、さらなる発展を約束する内容であった。

世界の渡辺謙もオーナーになった!!
続いて発表会ではゲストとして新型ワゴンRのTVCMに出演している俳優の渡辺謙氏が登場。実際に試乗してみてあまりの使い勝手のよさに驚き、1台注文してしまったそう。もちろんリップサービスだろうなと思っていたら「これ本当なんですよ。今から納車が楽しみです」と語っている。なおこの新型ワゴンR、前代未聞の「発売日前にリコール」という珍事があった。国交省に届けられた日付は発売日翌日の9月7日。8月24日~9月4日製造ぶんの新型ワゴンR後部ドア樹脂部分に不備があったが、発売前だったので消費者に影響はないという。なので謙さんの納車ぶんも問題ナシだ。
「エネチャージ」システム

電気の力でさらに省燃費その名もエネチャージ
さてそんな新型ワゴンR、最大の特徴はやはり省燃費性能。70kgという驚異的な軽量化と新アイドリングストップ装置、新世代エンジンとミッションのさらなる効率化に加えて、「エネチャージ」と呼ばれるエネルギー回生システム(減速時のエネルギーを回収して助手席の下に設置されたリチウムイオン電池に貯め、エアコンや電装系の電力に使用することで燃費を向上する)を使うことで、燃費はクラストップの28.8km/Lを記録(JC08モード燃費。ライバルのムーブは27.0km/L)。NAモデルの低燃費性能にも驚いたが、4WDターボ仕様(同25.0km/L)までエコカー減税100%レベルなのはスズキの底力を見せつけられた思い。今回は千葉県浦安市で実施された試乗会に参加し、自動車評論家の片岡英明氏が公道でその性能を存分にチェックした。
実燃費チェックでは22.5km/Lを記録

新型ワゴンRはスズキの次世代エース機、R06A型エンジンを搭載。吸排気VVTで省燃費と高出力を両立した
実燃費チェックでは22.5km/Lを記録第5世代のワゴンRがベールを脱いだ。遠くから見ると4代目と変わっていないように見える。が、近くで見ると先代よりデザインの洗練度は高く、面質も練り上げられていた。キャビンはライバルのムーヴより居心地がよく、快適性も一歩上をいく。驚いたことに、新型ワゴンRは全車が100%免税だ。それだけではなく新アイドリングストップシステムも全車に採用した。ターボ搭載のTを含め、全車が信号待ちなどでエンジンを自動停止する。従来のアイドリングストップ装置から大幅に進化しており、まったく違和感なくエンジンが止まり、再スタートする。これほどの制御技術を軽用に開発するとは。恐るべし。エンジンはMRワゴンと同じR06A型直列3気筒DOHC4バブルエンジン。トランスミッションは無段変速機のCVTだ。販売の主役となるNAエンジンは吸気側に加え、排気側バルブにも可変バルブタイミング機構のVVTを採用してエンジン効率を高めている。
ライバルと比較試乗!

◆ライバルと比較試乗!最初にステアリングを握ったのはNAエンジンを積むFXリミテッドだ。軽快なパワーフィーリングで、低回転域から力強いトルクが感じられる。フリクションを徹底的に減らした副変速付きCVTとの相性もいいから軽やかにスピードを載せていく。エンジンの回転数と車速との伸びのズレもほとんど感じない。同行させたムーヴの3気筒DOHCエンジンもいい仕上がりだった。だが、実用域のパンチ力、加速フィール、静粛性などはワゴンRが一歩リードしている。790kgの軽量ボディは軽やかな加速に大きく貢献していることを実感した。3気筒エンジン特有のこもった音色と細かい振動、CVTの不快な金属ノイズもムーヴより抑えられていた。ユーザーがもっとも重視するタウンユース主体の走りのステージは得意だ。アクセルを踏み込むとクルマがスッと前に出るなど、優れたドライバビリティを見せつけた。低速走行も余裕でこなすなど、フレキシブルで扱いやすい。静粛性も大きく向上した。注目のアイドリングストップシステムは大幅に実力を高めている。アクセルから足を離して減速すると、車速がゼロになる前にエンジンを自動で停止した。まったく違和感がなく、再始動もスムースだ。ムーヴも高評価だったが、ワゴンRはそれ以上である。また、空調ユニット内に蓄冷材内蔵のエバポレーターを採用したエコクールの効果もはっきりと感じ取れた。試乗した日の外気温は33℃前後だったが、エアコンを25℃に設定しても頻繁にアイドリングストップが働く。驚いたのは、エンジンを不用意に再始動させたとき、ちょっと前に動かしただけで再びエンジンが停止したことである。沈黙している時間もかなり長い。エアコンの効きが悪くなりにくいのも魅力のひとつだ。
ターボ仕様はどうか?

スティングレーもターボとNAが用意される。これはターボ仕様でキビキビとした加速が気持ちよく、ただでさえ楽しい走りがさらに強化。凄いゾ、ワゴンR
◆ターボ仕様はどうか?ターボで武装したスティングレーのTグレード64ps/9.7kgmを発生する。このエンジンは大排気量のNAエンジンのようにジェントルなパワーフィーリングだ。低回転域からターボが過給を開始し、ボディが軽くなったような鋭い加速を披露する。瞬発力は鋭いし、追い越しも俊敏にこなした。ステアリングから手を離すことなくマニュアル変速で自在に加減速を楽しめるパドルシフトも運転を楽しめ、かつ便利な装備だ。静粛性もNAエンジン搭載車より上の印象を受けた。遮音対策がゆき届いているし、日常の走行シーンでは風切り音やロードノイズも低く抑えられている。軽量かつ高剛性のボディは冴えたフットワークと上質な乗り心地も生み出した。ハンドリングは安定志向だ。足がしなやかに動き、ロール変化も穏やかだからコントロールしやすい。グラッとくる不安感がなく、リアの追従性も優れていた。ムーヴよりコントロール領域が広く、安定感と乗り心地も一歩上をいく。
電動パワステもいい仕上がり

機能優先の内装。写真はカーナビでなく純正オーディオが組み込まれるが、最近はスマホで代用する人も増え、それ用のOPも用意
電動パワーステアリングもいい仕上がりだ。ムーヴも自然な操舵フィールで扱いやすいが、ワゴンRのほうがスッキリとした印象で、軽快感がある。直進安定性も大きく向上した。ターボ搭載のTは、軽自動車とは思えないほど上質な走りを見せる。15インチのエコタイヤを履いているが、驚くほど高いスタビリティ能力と優れたトレース性能を身につけ、荒れた路面でも踏ん張りも利く。軽量ボディはブレーキ性能も大きく高めた。
燃費は?

高速道路(湾岸線)を60km、一般道を10km走る緊急燃費テストを実施。両車とも大健闘だが結果はムーヴ=21.9km/Lに対しワゴンR=22.4km/Lだった
気になる燃費は、FXリミテッドで計測を行なっている。高速道路と市街地を6対1の割合で走って22.4km/Lを記録した。ムーヴを0.5km/L上回り、燃費がいいことを証明している。5代目のワゴンRは、軽自動車の殻を破った魅力的なスモールカーだ。
「走りの楽しさ」という相乗効果

新型ワゴンR、最も「お買い得」グレードは!? 新型ワゴンRの価格は、燃費性能を高めたぶんだけ先代型よりも値上げされた。売れ筋のFXリミテッドで、車両価格は約3万円の上乗せだ。さらにフロントスタビライザーを省き、CDオーディオはオプションに変更。実質的に6万円高まった。スタビライザーの省略は走行安定性に影響するので注意したい。 それでも標準ボディのFXリミテッドは割安。FXにエアロパーツ、アルミホイール、キーレスプッシュスタートなど20万円相当の装備を加え、価格上昇は14万円弱に抑えたからだ。 スティングレーはどうか。ノーマルエンジンのXは、標準ボディFXリミテッドよりも8.4万円高い。装備はディスチャージヘッドランプやフロントスタビライザーを加え、LEDドアミラーウインカーは付かない。差し引きすると、加わった装備は5.5万円相当になる。価格アップは8.4万円だから、約3万円が内外装のデザインを変えた対価だ。 ターボのスティングレーTはXよりも16万円少々高い。ただしパドルシフトやLEDドアミラーウインカーも加わり、ターボ装着の換算額は約10万円になる。動力性能は1.1L並みに高まるから、100cc当たり2万円の一般レートでとらえると9万円相当だ。10万円でターボが付けば釣り合いは取れる。ちなみにノートのスーパーチャージャーは20万円も高い。 結論をいえば新型ワゴンRの買い得度は非常に高く、なかでも標準ボディのFXリミテッドが最も買い得。スティングレーも割高ではなく、ターボのTは登坂路の多い地域のユーザーに推奨したい。
さて、ここで編集部からもひと言。燃費チェックを担当した本企画担当Tも、ワゴンRの進化ぶりに舌を巻いた。特に驚いたのはハンドリング。走ってて楽しいのである。「なんでこんな省燃費モデルで楽しいの!?」と思ったが、よく考えるとボディを軽量化したのと超高張力鋼板を使うことで剛性もアップしており、走行性能の底上げがされてるということに気づいた。すでに「燃費が」ってだけではウリにならない時代。ワゴンRは「走りの楽しさ」という相乗効果も生み出した。