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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.11.30
BRZvsインプレッサG4
FF(4WD)のベース車両からFRを造った
【本記事は2012年4月にベストカーに掲載された記事となります。】共通点 水平対向エンジンの採用 基本的なプラットフォームとサスペンション決定的な相違点 FRか4WDか6ATかCVTか そしてエンジン搭載位置量産メーカーではファミリーカーのコンポーネンツを利用してスポーツカーを仕立てるといのがひとつの定番パターン。86/BRZとインプレッサの関係がまさにそれで、エンジンからシャシーまでいろいろなパーツが流用されている。しかし、86/BRZとインプレッサの関係が珍しいのは、FF(4WD)のベース車両からFRを造ったこと。ここが重要なポイントだ。量産車のコンポーネンツを流用してFRスポーツを作るというのは、じつはそう簡単じゃない。だって、もうすでに四半世紀ほども量産車といえば横置きFFばかり。そこからお手ごろ価格の後輪駆動スポーツカーを作ろうと思ったら、パワートレーンを後ろに移動してミドシップにするしか手がない。マツダのロードスターみたいに専用プラットフォームを起こさないと、ちゃんとしたFRスポーツは作れないのだ。
水平対向エンジンの新しい活用法
BRZは5速のATをラインアップしスポーツ性能を引きだす
水平対向エンジンの新しい活用法ところが、長年独自のクルマ作りにこだわってきたスバルには、縦置き水平対向FF/4WDという世界的に珍しい量産ユニットがあった。よくよく見ればコイツは大変貴重な資源。この資源をうまく活用しようと思い立ったことが、86/BRZプロジェクトのスタートだったといえる。ただし、この資源は採掘するとなると容易じゃない。インプレッサ4WDから前輪の駆動系を取り外せばほとんどコストをかけずにFRが作れるが、それではロクなクルマにならないのは目に見えている。FRとしてのポテンシャルをフルに発揮できるようなクルマを作ろうとすれば、エンジン搭載位置を最適化した新たなプラットフォームの開発が必要。しかし、スバル単独ではそこまでの投資は難しい。そこを突破するキッカケとなったのがトヨタからの提案だ。製品ラインアップからスポーツカーが消滅して久しいトヨタは“ファン・トゥ・ドライブ”を象徴する200万円台のスポーツカーが欲しい。そしてそれは、MR2/MRSの経験からいってミドシップよりFRの方がベター。FRであればAE86のブランドヘリテイジも活用できる……。かくして、トヨタの資金力によって埋もれていた水平対向FRという金の鉱脈は掘り出され、86/BRZとしてめでたく製品化されることとあいなったわけだ。
86/BRZは、かなり手間とコストをかけた独自のFRスポーツ
BRZ:前
こういう経緯だから、インプレッサのパワートレーンとプラットフォームをベースとしているといっても、それはあくまでもカタチだけのハナシ。86/BRZは、かなり手間とコストをかけた独自のFRスポーツとして作られている。大雑把な共通項としては、水平対向エンジンを縦置きにしている点がインプレッサと同じといえば同じだが、FFベースのインプレッサでは前車軸より前にオーバーハングしていたエンジンは、86/BRZではフロントミドといっていい位置まで後ろに下げられ、排気系レイアウトの許す限界まで低く落とし込まれている。
際立つハンドリング
BRZ:後
数字でいうと、エンジンの搭載位置は60mm低く、240mm後退しているのだが、この差はベラボーといっていいほど運動性能に違いをもたらしている。86/BRZに乗るとまず最初に感銘を受けるのが、切れ味がよくて素直なハンドリングだが、これはサスペンションの味つけ以前に、重量配分や重心高などの基本ディメンションが優れていることに起因する。重心高は460mmとポルシェ・ケイマンより低く、重量配分は前53:後47とまさにFRの理想形。これだけ基本的な素性がよければ、サスペンションなんかテキトーに作ってもいいクルマになるんじゃないか……。そう軽口を叩きたくなるほど86/BRZのハンドリングは際立っている。
安定性とスタビリティ重視にインプレッサ
インプレッサはCVTで燃費を向上させ、補助金、減税に対応
これに対して、インプレッサはスバルの伝統どおり安定性とスタビリティを重視したロングツアラー志向の走りが身上。路面状態に左右されず安心感のあるハンドリングがその持ち味だし、そのためにはやはり4WDであるほうがよりふさわしい。いずれにせよ、まったく対照的なキャラクターの4WDツアラーとFRスポーツが、ひとつの“卵”から生まれたというのは面白い。この2車は、世界でもっとも性格の違う“姉妹車”といえるんじゃないかな?