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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.11.30
ハードウェット下の最新FRの実力は? 雨×霧×BRZ 3月28日の発売を前にツインリンクもてぎで開催された事前試乗会に竹平素信が殴り込み!あいにくの雨模様の空の下、その実力を鋭くチェック!
FR特集第1弾

雨のおかげで思いがけずウェット路での安心感の高さも確認でき、満足した様子の竹平氏。満面の笑みだ
【本記事は2012年3月にベストカーに掲載された記事となります。】FR特集第1弾ついに販売開始まで1カ月ちょっとに迫ってきた、スバル渾身のFRスポーツ「BRZ」。そのデキバエを今回は竹平素信氏がリポートだ!試乗当日はあいにくの雨。が、FRが一般的に不得手とするウェット路面での挙動を、しかもサーキットという状況で確認できたことを考えると、かえって好都合だったかも?そうそう、竹平氏は兄弟車である「86」にもすでに試乗している。なので、その味付けの違いについても触れることができるはず。「実はドッチを買おうか迷ってるんだよねー」というアナタは必読ですゾ!
そのすべてが気持ちいい。BRZの走り

雨天の下でも積極的な荷重移動をしなければ破綻しない。BRZのスタビリティの高さが証明された
そのすべてが気持ちいい。BRZの走りいやいや、ホントに楽しかったぞ。昨年末、トヨタ86に試乗して大感激したが、今回のツインリンクもてぎで初試乗となったBRZにも感激だ。基本的には同じクルマでしょ、とはいってもスバル仕立てのクルマとなれば味わいも新鮮である。ホイールベースのほぼ真ん中、ドンと低いドラポジからのムードはまさしくスポーツカー。レッドゾーンが上部にくるタコメーター。ヒール&トゥもやりやすいペダル配置。小径でタッチもグッドなステアリングホイール。位置、操作感とも理想的と思えるシフトレバーなども、本物のドライバーズカーであることを物語っている。そのBRZの走りは、すべてが気持ちいい。パワフルかつ扱いやすく、吸気サウンドの演出もごきげんな2L、ボクサーエンジンは、ターボほどの豪快な加速とはいかないが、回すほどに気分が高まってくる。小ストロークで節度感もカッチリした6MTのフィールもごきげんだ。パワーバンドの広いエンジン特性もあり、6MTを駆使してのフル加速はリニアで息の長い加速Gが続く。そしてやっぱり軽快なハンドリング。低重心と前後重量配分にこだわりつつ、ボディ、シャシーを気合いを入れて作り込んだというだけに、その走りはまさに人馬一体。13対1というクイックなギア比を持つ電動パワステの仕上げもよく、フリクションを感じさせないリニアさが気持ちいい。コーナリング性能そのものもすばらしい。ワインディングだったら格上のスポーツカーもカモれそうだ。前述した優れたパッケージングがBRZの基本性能を大きく高めているのは確か。安定感の高いブレーキングもしかり。アプローチ、コーナリング、そして立ち上がるといった一連のコーナリングが実に気持ちいいのだ。待ちに待ったFRコンパクトスポーツ、BRZ。その走りは期待以上だった。
予想以上にデキがいいATの走り

86同様、スタイル自体はオーソドックスで嫌みのないもの。この端正なスタイルに、FRの楽しさが詰め込まれている
予想以上にデキがいいATの走りスポーツカーといえど、今どきATの設定は常識だが、GT-Rやランエボの高級AT(ツインクラッチタイプ)はコスト的にBRZにはムリで、採用されているのはフツーの6AT。が、今回乗ってみてビックリ。とにかくシフトレスポンスがシャープで、スポーツ走行ならアップシフトはそれこそ瞬時。トルコンの滑りを感じさせるのは、ゆっくりと発進&加速している時ぐらいか。しかもスポーツモードに切り替えるとレスポンスがさらにシャープとなり「バン、バン」と小気味よい、爽快なシフトが味わえる。シフトダウンもお見事。ブリッピングシステムで素早くギアを同調させ「スパン、スパン」とこれまた気持ちいい。MTでヒール&トゥするよりコッチのほうが確実だし、むしろ速かったりして。スポーツ走行ならマニュアルシフト(上級グレードにはパドルシフトもあり)がフツーだが、このATならDレンジ&スポーツモードにオマカセでもごきげんなスポーツ走行がOK。加速時はパワーバンドをキープしたシフトチェンジをしてくれるし、フットブレーキで急減速すればシフトダウンが積極的に介入し、エンジンブレーキ効果と再加速時の加速力アップをしてくれるのだ。実をいうと今回のウェットサーキットで安心してスポーツ走行できたのはDレンジだった。いやはやスポーツ走行もバッチリの実にナイスなATだ。AT免許しか持たないクルマ好きでも、これならBRZを本格的に楽しめるぞ。
両方乗ったからわかる、86との違い

ツインリンクもてぎの本コースにて雨天の全開アタックを敢行。トヨタ86とBRZの違いは足回りのバネレート。BRZは86に対してフロントのバネレートがやや高く、リアはやや低い
両方乗ったからわかる、86との違いユーザーにとってはチョット気になるトヨタ86との違いだが、走りに関する部分はバネとダンパーの仕様のみだ。詳しくはバネレートが86に対し、BRZはフロントがやや高く、リアはやや低い。ダンパーはバネレートにマッチングさせた特性。常識ではバネレートを上げれば縮み側が弱く、伸び側が強くなる方向の減衰力特性となる。スタビやブッシュなど、他のサスパーツは共通で、サスジオメトリーも同じとのことだ。これだけの違いだが、走りに関してはこれが大きく違ってくる。特にハンドリングが命のFRスポーツにとっては極めて大事なこと。走り比べればフロントの入りがより軽快で、ドリフトのキッカケ作りもしやすいのは86のほう。ドリフトさせなくてもワインディングでより軽快なハンドリングが味わえるハズだ。BRZはやはりスタビリティ重視といえる。しかし、ここは個人の好みが大きく反映される部分。運動性能のポテンシャルの高さはどちらも高次元で共通しており、乗れば両車とも「これぞFRスポーツ!!」と思わせるハンドリングで感激させてくれる。86の軽快さか、BRZのスタビリティか。ほかでも言われているだろうが、やはりお好きなほうを、ということになる。
「FRは雨が苦手」は、もう過去のもの

VSC(VDC)の操作で5つの走行モードが VSC(VDC)のON/OFFと、VSCスポーツモードの切り替えの組み合わせで、5つの走行モードを選択可。VSCとトラコンの完全カットもできる
「FRは雨が苦手」は、もう過去のものツインリンクもてぎ、それもウェットコンディションだったのは、BRZの真のポテンシャルを発見するのには絶好だった。軽量、コンパクトなFRスポーツにとってウェット路はニガ手、というのはフツーだが、BRZは違った。スタビリティの高さ、これぞBRZがこだわったチューニングであり、キャラクターでもあるが、ウェット路を攻めての安定感たるや、ワシの想像を超えていたのだ。VDCオンなら何の破綻もない。勝手に姿勢制御してくれるから安心して走れる。VDCスポーツモードなら大きめの挙動変化が発生してから制御介入となるから、そこそこのスポーツ走行気分になる。が、注目はトラコンも作動しないVDCオフの走りだ。これでもリアのグリップが高く、遠慮気味の走りではなかなか滑りださない。LSD付きだとプッシングアンダーが出るほど。ウェットでもテールオーバーでコーナーインするには思い切りのいい荷重移動が必要だ。そこからはトラクションの強さで(LSD付きが条件)、アクセルとステアリングワークを上手くこなせば、ダイナミックで立ち上がりも速いドリフトコーナリングがこなせる。キッチリやるにはそれなりのスキルが求められるが、駆動輪を主とした接地能力重視のサスチューン、さらには四輪の接地能力を最大限追求したBRZのパッケージングがあってこそだ。ウェットでも接地&トラクションが高く、操舵にもしっかりと反応。実にお見事な走りだった。これだけスタビリティが高ければビギナーでも安心して走れるし、上級者なら思い切り攻められる。ウェットサーキットを走ってBRZのポテンシャルの高さを見せつけられた。やはりトヨタ/スバル渾身のFRスポーツだけのことはあった。久しぶりにいい汗をかかせてもらったぞ。