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更新日:2019.01.27 / 掲載日:2017.11.30
トヨタ86に続きスバルBRZプロトに試乗! ボクサーエンジン+FRスバルの新たな挑戦
BRZの市販モデルが世界初公開

トヨタの直噴技術、D-4Sを盛り込んだ新開発の2L、水平対向4気筒エンジンの型式はFAで、ヘッドカバーにはトヨタとスバルの名が刻印。
【本記事は2012年1月にベストカーに掲載された記事となります。】トヨタとスバルが共同で開発したブランニューの小型FRスポーツは、トヨタでは86(ハチロク)、スバルではBRZとして販売される。ハチロクに比べて情報があまり流れていなかったBRZもようやく東京モーターショーでその市販モデルが世界初公開された。BRZは全長4240×全幅1775×全高1285mm(ルーフ高)という現代のクルマとしては全長が短く超手頃なサイズ。ホイールベースは2570mm。車重を1220kgに抑えているのも見逃せないポイントだ。エクステリアデザインは、ショート&ワイドが強調されていて、FRスポーツとしては異例のノーズの低さを誇る。エンジンはスバルの2L水平対向エンジンにトヨタの直噴技術であるD-4Sを盛り込み、ハイオク仕様で最高出力は200ps/7000rpm、最大トルクは20.9kgm/6400~6600rpmをマークする。トヨタのサウンドマネージメント技術を盛り込み、室内に入ってくるエンジン音にこだわったサウンドチューニングがスポーツ心をくすぐる。気になるBRZの燃費は、まだ公表されていないが、ハチロクと同じ12.4km/L(JC08モード)となるのは間違いない。
トランスミッション

トランスミッションはMT、ATとも6速:ショートストロークの6MTの軽快なシフトフィーリングは期待を裏切らない!
トランスミッションは、6MTと6ATをラインアップ。どちらも専用チューニングが施されている。

トランスミッションはMT、ATとも6速:6ATはモード切り替えスイッチでイージーにもハードにも走れる。パドルは標準装着
6MTはダイレクトに、IS FのAT技術をさらに進化させた6ATはイージーかつスポーティに走ることができるのが魅力。
リアシートに大人2人は厳しい

リアシートは正直狭い!:ヘッドクリアランスは問題ないが、レッグスペースが狭いため、大人2人が乗車するのは厳しい
FRスポーツのある意味キモとなるサスペンションは、フロントがストラット、リアがダブルウィッシュボーンを採用。乗車定員は2+2の4人。リアシートに大人2人が座るのは厳しい面もあるが、エマージェンシー用というほど狭くはない。このワクワクするようなスペックのBRZに早くも試乗できるチャンスを得た。ステアリングを握ったのは鈴木直也氏だ。
いざ試乗!

乗降性には慣れが必要:ルーフが低く、サイドシルが高いため、最初は乗り降りしづらいが、慣れればノープロブレム!
いざ試乗!東京モーターショーでは黒山の人だかりでロクに見られない人も多かったスバルのBRZ。ショーが閉幕した翌日、12月12日に千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイでコイツに試乗するチャンスが訪れた。それにしても、実車を見てあらためて感じるのは「やっぱり手頃なサイズのFRスポーツはイイなぁ!」ってこと。四隅に手が届きそうなコンパクトボディ。自分のクルマのルーフが目線のずっと下にあって、ヒョイと頭をかがめて室内に体を滑り込ませる乗車感覚……。ふだんミニバンやSUVばかり乗ってるから、地上400mmのヒップポイントがもたらすドライビングポジションが新鮮で、ドアを閉めた瞬間に退屈な日常生活からポーンと別世界にワープした気分になれる。
一定のレスポンスを見せる扱いやすいエンジン

適度なタイト感がドライバーの心をくすぐる:365φの小径ステアリングを採用。カーナビはセンターコンソールの黒いふたの部分にオプションで装着。インパネはセンターにタコメーターを配置。
ダッシュボードの下部分に配置されているスターターボタン(乗り込んですぐには位置がわかりづらい)を押してエンジンに火を入れる。トヨタと共同で専用開発された水平対向2Lは、直噴とポート噴射を組み合わせたトヨタのD-4Sシステムを採用。NAながらジャスト、リッター100psの200ps/20.9kgmを発揮する。このエンジンの第一印象は、予想以上にフラットトルクで吹け上がりがリニアなことだった。昔のホンダVTECのような高回転で弾けるような感覚はなく、どこで踏んでも一定のレスポンスを見せる扱いやすさを持っているのだ。だからといって高回転域がイマイチということはなく、トップエンドで頭打ちする感覚は皆無。今回の試乗でも、ピットレーンから加速してコースインする際、ミラーに気をとられてついリミッターに当てちゃったくらいで、バランスに優れた水平対向らしく7400rpmのレッドゾーンまでストレスなくキレイに回りきる。
BRZは全開で走らなくても楽しめる!

BRZはステアリングをきった瞬間に素性のよさがわかる!:BRZはドライバーの意図次第でどんな走りにも対応してくれる自由度の高さが魅力
BRZは全開で走らなくても楽しめる!今回試乗できたのは、6MTのみだったが2速、3速とMAXまで引っ張って袖ヶ浦の緩い2コーナーを全開で加速してゆくと、短いストレートでも4速150km/h弱に到達。ショートストロークの6MTのフィールもよく、カツンとブレーキングして3コーナーのアペックスをかすめ、さらに減速して4コーナーにアプローチする。ここでビックリするのは、ハードに減速しつつターンインするというクルマにとって一番厳しい状況でも、クルマが予想よりはるかに安定していることだ。並のクルマならアウト側前輪に思いっきり負担をかけるような場面でもお茶のこサイサイ。いわゆる“ハコグルマ”とはとても思えないほど地面に吸いつくように曲がる。この感覚がすこぶる気持ちいい。この感覚は言葉で説明するとちょっと嘘っぽくなってしまうくらい。とにかく、はじめて乗れば誰もが「なんて素直でイージーに曲がるんだ!」って感動すること請け合い。なにも全開で走らなくても、ちょっと転がして、ステアリングをヒョイときったただけでわかるレベル。
優れた基本パッケージ

BRZをドライブすると、クルマをコントロールする楽しさを再確認することができる。グリップ走行、テールを流してのドリフトも自在。
その秘密は、間違いなく優れた基本パッケージにある。トヨタ86(ハチロク)/スバルBRZのエンジン搭載位置は、インプレッサより60mmも低く、前後位置も240mm後退させている。エンジン高に至っては120mmも低くしている!これによってクルマの重心高は460mmとポルシェケイマンより低く、前後重量配分も53対47という数字を実現している。要するに、エンジンやサスペンションをウンヌンする以前に、スポーツカーとしての基本的な素性がめちゃめちゃ優れているわけだ。だから、このクルマの操縦性は「どんな色にでも染められる」と表現したい味わいだ。袖ヶ浦の4コーナーを立ち上がってヘアピンへ向かう連続左コーナーは、どんなクルマでもちょっとしたきっかけでテールを振り出すスリリングな場所だが、ここでBRZはベタッとグリップさせてタイムを詰める走りも得意だし、ちょっと早めのステア操作でクイッとノーズをインに向けてやれば簡単にドリフト状態にも移行する。FRだからドリフトが楽しいといった単純なレベルではなくて、ドライバーの意図次第でどんな走りにも対応する自由自在の対応性を備えているのだ。多くのドライバーにこういう「コントロールする楽しさ」を味わってもらうには、200psほどのパワーと215/45R17くらいのタイヤがちょうどいい。最近は500psオーバーの高性能車すら珍しくないけど、こういった“等身大のスポーツ感覚”を備えた現実的なスポーツカーは改めて探してみるとホントに少ない。「そうそう、オリンピックじゃなくて市民マラソンの楽しさが大事なんだよね」思わずそうつぶやきたくなる等身大のアスリート感覚がこのクルマの魅力だと思った。