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更新日:2019.01.27 / 掲載日:2017.12.02
新型マーチは安くて便利で可愛い!……のか!?
衝撃的だった3代目マーチのデビュー

先代モデルと並べるとどことなく似ている……かな? 歴代モデルの世界累計販売台数は565万台だ
【本記事は2010年8月にベストカーに掲載された記事となります。】思い起こせば’02年2月、3代目マーチがデビューした時は衝撃的だった。キュートなフロントマスクと特徴的なボディライン、豊富なカラーバリエーションと高い使い勝手は若い女性を中心に大ヒットを記録し、現在まで続くコンパクトカーブームの火つけ役のひとつとなった。あれから8年半、今年最大の注目車種である新型マーチがいよいよこの7月13日にデビューした。正直いってフロントマスクのデザインやフォルムは先代のほうがはるかに刺激的であったが、このクルマのウリは別のところにある。それはずばり価格。コストを切り詰めるために海外生産(タイ製)することで、最低価格99万9600円(12S)を実現させている。今までこのクラスで100万円を切る価格は、ライバル他車でもモデル末期や特別仕様車として設定するのが精いっぱいだった。ではそんな格安マーチの実力はいかほどか? 以下、細かくチェックしていきたい。
ボディサイズ&デザイン

アイドリングストップ付きの12Xなら26.0km/L(クラストップレベル) 取材協力/日産サティオ群馬高崎店(群馬県高崎市 027-361-2331)
新型マーチは全長3780×全幅1665×全高1516mmで、先代に比べると全長で55mm長く、全幅で5mm広く、全高で10mm低い。先代までのマーチはコンパクトカーのなかでも全長が短く、取り回しのうえでは有利だった。積載性や室内スペースに若干の難があったが、現行型ではライバルと比べて(わずかではあるが)全長が短いので「取り回しが楽」という特徴を生かしつつ、パッケージングも大幅に向上し、広々とした室内空間を持っている。有効室内長(前席のアクセルペダルから後席の座面奥まで)は1688mmで、これは先代マーチと比べると20mm長い。ヴィッツやフィットといったライバルと比べてもトップクラス。また先代に比べてヒップポイント地上高を前席で10mm、後席で20mm高くしており、乗降性が向上。アイポイントが高くなることで見晴らしもよくなっている。さらに運転席からフェンダーやヘッドライトが見えるデザインを採用したことで、運転に不慣れな女性や免許取り立ての若者でも安心できる取り回し性の高さもグッド。マーチはこの4代目から本格的なグローバルカーとなり、160カ国・地域で販売する(生産はタイ、インド、中国、メキシコの各工場で行なう)。そのためか一見するとアクのないサッパリとしたデザインだが、特徴的だった先代のデザインは、丸みを帯びたヘッドライトやアーチを描くサイドウィンドウに継承されている。
走りの実力とメカニズム

3気筒となった1.2L、HR12DEエンジン。中速トルクが太く街中で使いやすい。アイドリングストップ付きなら26.0km/Lの実力!!
今回いち早くディーラーから試乗車を借りだして走行性能をチェックしたところ、1.2Lとは思えないエンジンの質感の高さに本企画担当、ビックリした。同じ1.2Lでも先代とは比べものにならないほどキッチリ回り、3気筒とは思えない実力を持つ。少なくとも4気筒、1.5Lと言われても普通に信じられるほどの出来映え。さらに驚いたのはアイドリングストップ。信号待ちで何度かエンジンが止まったはずなのにまったく気づかない。それくらいアイドリングが静か。これは新開発のアウターバランサーを採用した成果。クランクプーリーやドライブプレートにアンバランスマスを設け、エンジンが発する縦方向の振動を横方向の振動に変換するシステム。これによりアイドリング時の振動を大幅に軽減させた。3気筒化された新開発のHR12DEエンジンは電制スロットルチャンバーや真円ボア加工、大量EGRの採用などで、力強い中速トルクと高燃費を両立。これにジヤトコ、スズキと共同開発された新世代エクストロニック(副変速機付き)CVTが全車組み合わされ、アイドリングストップ機構付きの12Xと12Gで26.0km/Lというクラストップの燃費を実現した。さてマーチに初採用となるアイドリングストップ機構だが、マツダのi-Stopやトヨタのインテリジェントパッケージと比べると、「エンジンが止まったことがわからない」というのが最大の違い。アイドリング時の振動が少ないためスムーズにエンジンが止まり、始動時の振動も少ないためスムーズに再始動する。
4代目マーチの特徴
特徴をザッと書くと、(1)最初にエンジンを始動してから一度20km/h以上にならないとアイドリングストップは起動しない(駐車場から道路に出るさいは起動しない)(2)ブレーキを踏んで停止すると1秒後にエンジン停止、踏んでいるあいだは停止し続け、離すと0.4秒後に再始動(3)ブレーキを踏んだままでもステアリングに力を加えると始動(4)渋滞時の低速前進(8km/h以内)と停止の繰り返しでは起動しない(5)アイドリングストップ時、エアコンは送風に切り替わる(ナビ、オーディオはそのまま) といったところ。後発なだけにかゆいところに手が届く性能になっている。
国沢光宏の「ここがマーチの最大進化ポイント」
最も進化しているのは、やはり燃費だと思う。全長を伸ばしリアシートの居住性を向上させながら、重量増を抑えたのはたいしたもの。衝突安全性向上ぶんの重量増だって無視できなかったと思う。実質的には大幅な軽量化努力したということです。ルノーやベンツにも供給されるだろうVプラットホームのポテンシャル、なかなか。出力こそ少ないものの、フリクションの少ない3気筒エンジンを採用したのも英断だと思う。燃費向上だけでなくコストダウンにも大きく寄与しているんじゃなかろうか。ちなみにパワーを追求すると3気筒エンジンの弱点が露呈しちゃう。低い回転域でプルプルし、高回転域になると微振動を出す。タイで試乗した新型マーチのエンジン、4気筒と比べれば厳しいが、まったく不満を感じないレベルに仕上がっていた。さらにアイドリングストップを安価に実用化したのも評価できる。果たしてフィットや3気筒のヴィッツと燃費勝負させたら、どのくらい勝てるのだろうか? 大いに楽しみでございます。旧型からの進化度は110%。
渡辺陽一郎の「ここがマーチの最大進化ポイント」

後席の居住スペースも拡大。特にヘッドクリアランスも大幅に向上した。座り心地もよく、コンパクトカーのなかでは後席の快適性はトップレベルといえそう
最も進化したのは燃費だと私も思う。10・15モード燃費は12Sが24km/L 、アイドリングストップ付きは26km/Lになる。先代型はCVTの1.5Lが19.8km/L、4速ATの1.2Lは19km/Lだから、大幅な改善だ。ただし、燃費以外に目立った機能の向上はない。後席の頭上は少し拡大したが、足元空間はさほど変わらず、シートアレンジも平凡。そしてマーチの新旧比較で重要なのは、先代型が割高だったこと。主力は1.2Lに4速ATを組み合わせた12Sで、機能や装備は平凡ながら価格は120万円を超えた。価格はフィットと同等でも、動力性能、居住性、荷室の使い勝手で下まわった。従って新型マーチが機能と割安感を少し向上しても、フィットには対抗できない。加えてヴィッツやスイフトも一新する予定だ。その価格と内容次第では、マーチが埋もれる心配がある。コンパクトカーは日本車のなかでも進化と競争が激しい分野。もう一歩先んじるべきだった。旧型からの進化度は118%。
内装の質感&装備チェック
まず内装やシート、外板パネルの仕上げについてはまったく問題なし。タイ製とはいえ日産、気合いの入った品質チェックをしているようでプラスチック部品やモケット地の触り心地、ボタン類の使い心地も問題なし。日本製コンパクトカーと同等かそれ以上の実力を持つ(正直いってパッソやヴィッツのほうがかなり安っぽい)。では装備はどうか。ライバル車にあってマーチ12S(99万9600円)にない装備というとUVカットガラス。それにリアシートが分割式でなくベンチタイプの一体型可倒式になる。また新型マーチのウリであるアイドリングストップやインテリジェントキーの設定もない。これらはそれほど気にならない人も多いと思うが、1点本誌が気になったのはタイヤ。マーチは12Sも122万5000円の12Xも台湾製のマキシスMA-307というタイヤを履いている。ライバルが国産タイヤを履いているなかで、これは気になるポイント。
1年後にスーパーチャージャー搭載のスポーツモデル登場
新型マーチ発表の3日後、日産は1.2Lの「HR12DDR」エンジンを技術発表した。これは新型マーチに搭載されるHR12DEエンジンをベースに、ミラーサイクル化、ガソリン直噴システム、高効率スーパーチャージャーを採用したもの。アイドリングストップと併用することで、1.5Lなみの動力性能と高い燃費性能を両立させることができる。このエンジンは来年前半にも欧州仕様に先行投入され、日本仕様は来年夏、つまり1年後に追加される見通し。スポーツグレードである「12SR」が復活すると考えていいだろう。
価格とお薦めグレード

マーチのグレード構成は格安量販グレードの12S(99万9800円)、中間で売れ筋グレードとなるであろう12X(122万9550円)、豪華装備の12G(146万8950円)の3つにモーターアシスト式の4WDが組み合わされる。最安グレードの12Sは100万円を切る戦略価格で、UVカットガラスやアイドリングストップ機構などの設定がない。それでも割安と言える価格で買い得感は高いが、やはり新型マーチのウリのひとつであるアイドリングストップが付かないことや、オプションでさえUVカットガラスを装着できないことを考えると、売れ筋は中間グレードの12Xとなるであろう。マーチの月販目標は4000台。先代が0’2年にデビューした時は8000台だった。時代が違うとはいえ少し控えめな数字に見える。タイでは3月に発売開始し、すでに1万6000台を受注しているというが、果たして日本のユーザーは受け入れるのか? 楽しみだ。