中古車購入
更新日:2020.07.21 / 掲載日:2017.12.02
本誌独占試乗 Supasse-V(スパッセV) 疾る!!
紆余曲折を経てここまできた!

存在感は負けちゃいない!! ドイツの雄アウディR8、イタリアンスーパーカーのガヤルドと一緒に並んでも、古さと新しさが同居するスパッセVは見劣りせず!
【本記事は2010年5月にベストカーに掲載された記事となります。】昨年の東京モーターショーは、外国メーカーの相次ぐ出展辞退、エコカー一辺倒の出展内容などが不評だったが、そんななか、異色の存在として注目されたのがスパッセV。スパッセVは鈴商(愛知県・名東区)が手がけるカスタムスポーツで、鈴木社長の長年の夢を具現化したモデル。鈴商が’04年から販売しているロータススーパーセブンタイプのインボードサスのスパッセで培ったノウハウを生かし、新たなチャレンジとして’07年頃からプロジェクトが立ち上がった。BCではその存在をどこよりも早くキャッチし追ってきた。東京モーターショーに間に合わせるための突貫作業、ボディの塗装などなども目にしてきたし、社長の熱~い思いを誌面にも掲載してきただけに、今回スパッセVの走る姿を世界初公開できるのは感慨もひとしお。
手作業のクルマならではの魅力にあふれている

パワーウエイトレシオ3.22kg/psの痛快スポーツ900万円前後で年末登場予定!! 真横からのアングルは、スパッセVの前後フェンダーの尋常じゃない抑揚を強調。そしてキャノピー形状のキャビンもよくわかる。着座位置も低く、スパルタン。走る姿はまさにスーパースポーツ!
スパッセVは、全長3873×全幅1953×全高1160mmというボディサイズ。850kgと、現代のスポーツとして軽量なのが何よりも魅力的。’60年代のレーシングカーを彷彿とさせるエクステリアはMIMデザインの三村建治氏がデザイン。三村氏といえば、マキエンジニアリング時代にマキF1を手がけたことで有名。その三村氏は、スパッセVのシャシーを見て本気になったみたい。BCが塗装現場に立ち会った時に、そこの大将が同じ大きさのクルマと比べると塗装面積は約3倍、とコメントしていたが、デザインは躍動的なラインが組み合わされていて、面構成もかなり複雑。自動車メーカーの作る大量生産スポーツカーとは違う、手作業のクルマならではの魅力にあふれている。

エンジンカウルは外されていたが、抑揚の強いフェンダーなど、このクルマの特徴はわかるはず。カッコイイぞ
今回は天日の下で実車を目のあたりにしたが、迫力に圧倒された。微妙なラインが太陽の光を受け、独特のムードを醸し出していたのが印象的。そしてワイド&ショート&ローというライトウェイトスポーツの王道的フォルムがスポーツカー好きの担当の五感を刺激してくれた。ちなみにショーモデルではフロントカウルははめ殺し状態だったが、デザインはそのままで整備性を高めるため、ボンネットの一部を開くようにしたり、リアカウルを簡単に外せるように改良。
ドライバーを納得させその気にさせるスポーツカー

低いサイドシルを乗り越えて運転席に収まると、自然に走りたくなる。スーパーカーの資質、大アリだ!
今では珍しくなくなった跳ね上げ式ドアもスパッセVの個性を際立たせるアイテムで、全高は低いが乗降性は悪くない。インテリアについてはまだ作業を進めている最中で、デザインを云々いうレベルではないが、包み込まれるようなコクピット、低いシートポジションは、やっぱりスポーツカーはこうでなきゃ、とドライバーを納得させその気にさせる。2シーターゆえに、狭さは感じず。
技術力の高さには驚かされる鈴商の工場
いっぽう三村氏も気に入ったというシャシーは、鈴商オリジナル。鈴木社長の原案やスケッチを息子さんがCADで図面を引いて形にしたという鋼管サブフレーム付きアルミ製ツインチューブモノコックを採用。鈴木社長は昔のローラ、マーチのレーシングカーを所有していたこともあり、フレーム構造のシャシーに関するノウハウをたくさん持っている。通常なら2年くらいかかる作業を誰からのアドバイスもなしに、すべて鈴商の工場でわずか1年強で仕上げたというから、その技術力の高さには驚かされる。

ミドに搭載するマツダ製2.3L直噴ターボ。264psの最高出力
エンジンはマツダスピードアクセラの2.3L、直4DOHCターボで264ps。まだ開発段階で全開走行というわけにはいかなかったが、マツダスピードアクセラが1450kgなのに対し、スパッセVは前述のとおり850kg! 600kgも軽いからその動力性能は推して知るべし。それは3.22kg/psのパワーウェイトレシオからも一目瞭然で、これはロータスエキシージをも凌駕するスペック。キーをひねるとスムーズにエンジンは始動。見た目はスパルタンだが、気むずかしさがまったくない。どんなサウンドを奏でるかワクワクしていたが、まだ消音器が装着されていなかったので、これはデビュー時に期待しよう。
東京モーターショーでも注目度は抜群に高かったが・・・。

試乗車はまだ内装が完成していなかったので、昨年の東京モーターショー出展時のインパネを紹介だ
このクルマには速さよりもキレで勝負する速球派のピッチャーのような爽快感、魅力がある。ヘンな小細工をせず、すべてストレート勝負。シートに乗り込むだけでワクワクしたり、ハンドルを握った時に感じる高揚感は大量生産車では味わうことができない。低いドラポジからの眺めは、非日常を演出してくれ、とにかくダイレクトにクルマ好きのハートを刺激する。型式を取得するか否か。社長自身は型式取得を切望しているが、なにしろ鈴商単独プロジェクトゆえに予算はかぎられている。東京モーターショーでも注目度は抜群に高かったが、「ホントに市販できるの? 単なるショーモデルで終わってしまうのでは……」というネガティブな意見があったのも事実。「当初考えていたよりも難航している」(鈴木社長談)3月頭の段階で、国交省に数度書類を提出し、その都度試験項目をクリアしていくという気の遠くなるような仕事の連続。「5年前に比べて認可を取得するのが非常に難しくなっていて大変。自動車メーカーのように自分のテストコースを持っているわけではないので、走行テストはサーキットなどのクローズドコース」(鈴木社長談)

この国交省の試験というのが、鈴木社長を一番悩ませている。基本的に国交省の要求してくる試験データを出すためには、お金を払えばできるテストがほとんどだが、なかにはお金を払ってもできないものが存在するのだという。これまで独力でスパッセVを開発してきたが、スパッセVを市販するためには、自動車メーカーなど、中小企業ではできない試験ができるところの協力を仰ぐことも今後考えているという。やはり、和製スポーツカー誕生までの障壁は、決して低くないようだ。しかし、スパッセVは着々と市販に向けて進化していた! 気になるデビュー時期は、試験結果にもよるが、今年の年末となるもよう。そして価格は、国交省の試験をパスしてから正式決定されるが、900万円前後になりそう。デビューまであと半年、カウントダウンが始まった!