“無限”のパフォーマンス！！無限シビックタイプRユーロ　3ドアシビックタイプRを無限がチューニングするとこうなる

【本記事は2010年1月にベストカーに掲載された記事となります。】エアアウトレットが開けられたボンネットフード（FRP製）、ブラックアウトされたフロントグリル、後方にエアアウトレットが装備され、ワイド感を感じさせるフロントフェンダー（全幅は変更なし）、存在感をアピールするリアウイング……。迫力のエクステリアのシビックタイプRユーロは、無限ブランドのM-TECが開発したエアロパーツ。ゴールドのアルミホイールにローダウンされた足回りが挑戦的なフォルムを作り出している。先に言ってしまうけど、走ってみると、これがまた、見た目以上に刺激的！！ 「これぞタイプR！！」と目が覚める思い。ビシビシステアリングをとおして刺激的な鼓動が伝わってくる。

無限は、4ドアシビックタイプRをベースにした初のコンプリートカーを‘07年6月に発売したが、基本的にパーツ販売が主で、今回のユーロ用の各種専用パーツも、すべてパーツ単体での販売で、コンプリートカーとしての販売の予定はないとのこと。だけど、もちろんホンダ車を知り尽くした無限ならではの徹底的な仕上げで、シビックタイプRユーロの特徴をより引き出すスタイリング。スッキリとまとまっている3ドアシビックのスタイルを崩すことなく、よりスポーティな雰囲気を醸し出している。

エンジンフードはノーマルのスチール製からFRP製となったことで約3.7kg軽量化されている（8.9kg→5.2kg）。また、フロントフェンダーもスチール製からFRP製となったことで1.6kgの軽量化（4.6kg→3.0kg）。フロントまわりで合計5.3kg軽くなったのは、ハンドリング性能に少なからぬ好影響を与える。足回りは無限の豊富な経験に裏打ちされた専用チューンのスポーツサスを装備。前後ともスプリングを固め、ダンパーは前後とも伸び側の減衰力をやや弱めつつ、逆に縮み側の減衰力を5～7％程度高めるセッティング。車高はフロントが10mm、リアが5mmローダウンする。

エンジンはノーマル同様、イグニッションキーを捻り、インパネ右のプッシュボタンを押すことで始動する。“クォーン、クォーン”吹け上がりはノーマルよりワンランク軽やかな印象。やや高周波のサウンドは、いかにも高回転型チューンドエンジンの雰囲気で、気持ちが高ぶる。エンジンは本体には手を入れてはいないが、「ハイパフォーマンス・エアクリーナー＆ボックス」で吸気レイアウトを最適化。吸気温度を下げることでより高密度の吸気とし、エンジンの効率を高めている。また、排気系では専用設計の4-2-1ステンエキマニ、同じくステンレス製のスポーツエキゾーストシステムが装着されており、トータルで吸排気系のファインチューンが施されている。ノーマルとは明らかに違う、高周波を含んだシビれるサウンドは、このステンエキマニの効果によるところが大きそう。軽くブリッピングしただけで、ひと味どころではなく、二味も三味も違うことがよくわかる。

やや重めのクラッチペダルは無限オリジナルの「カッパーファイバー・クラッチシステム」。つながりがダイレクトで、確実なシフトチェンジとトラクション伝達してくれる。スポーツクラッチというと、やたらと踏力が重かったり、ミートポイントがシビアだったりするものも多いが、このクラッチは、若干ノーマルに対して踏力は重くなっているものの、ミートポイントは探りやすく、つながりもスムーズなので、都内の渋滞路などでもストレスを感じることはなかった。

さて走り出す。駐車場からクルマを出すためにハンドルを大きく切って前進すると、フロントタイヤが引き摺られるような感覚。「おっ、これはかなり強烈なLSDが入っているな！！」。嬉しくなる。ちょっと急発進的にクラッチをつなぐと、“キュキュキュキュキュ”とタイヤをならしながらズバッとスタート。ホイールスピンの気配もない。スポーツ指定部品の機械式1ウェイLSDの強烈な効きを実感する。路面にうねりがあったりすると、強烈すぎるトラクションで、ステアリングが大きく振られることもあり、こりゃあ、こっちも気合いを入れて運転しないと、このクルマにやり込められてしまうぞ、と気を引き締めながらも、思わず顔がニヤリとしてしまう。最近のクルマには、この荒々しさがなかったんだよなぁ。行儀よくしつけられたスポーティカーもいいんだけど、ドライバーが手なづけながら乗りこなしていく楽しみってのもある。無限は、そのあたりをよくわかっているんだよな。

迫りくるコーナー。軽くブレーキングでフロントに荷重を乗せてターンイン。気持ちよくノーズがクリップを捉える。コーナー出口に向けてアクセルを踏み込むと、舵角を与えた状態でもフロントイン側タイヤが路面を掻きむしることはなく、グイグイハンドルを切った方向に向けて加速をしていく。この感覚は、初代インテグラタイプRや現行型4ドアシビックRと同じ。バランスされたリアの接地とフロントタイヤの高いトラクションで効率よくコーナーを駆け抜けていく。

正直、乗り心地についてはノーマルの3ドアタイプRにはかなわない。4ドアタイプRほどガチガチではないが、無限タイプRは、ノーマル3ドアと4ドアタイプRの中間よりもやや4ドア寄り、といったところだろうか。この足を組むには、やっぱり相応の覚悟はいる。ドライバーには気持ちよくても、助手席や、リアシートの家族からはクレームが出るかもしれない。ノーマル3ドアタイプRが街乗りからワインディングをターゲットにしているとしたら、無限タイプRはワインディングを中心に、たまにはサーキットでガンガン走りたい、というオーナー向き。4ドアタイプRは完全サーキット指向である。

ただ、これは凄いな、と思ったのは、これほどハードな足を組んでいるにもかかわらず、ボディ補強をいっさいしていないということ。元々のボディ剛性、シャシー剛性が高い、というのもあるのだろうが、ボディ、シャシーとのバランスをまとめ上げながら、サーキット走行レベルまで対応するサスペンションをくみ上げるあたり、ホンダ車を知り尽くした無限のワザを見た気がする。

最初にも書いたとおり、今回の試乗車はあくまでもパーツ販売される各種専用パーツを装着した無限推奨のデモカー。だが、この完成度を味わってしまうと、コンプリートカーとして販売してほしい、と思ってしまう。ちなみに外装パーツをすべて装着すると59万7450円（塗装費用、取り付け工賃別）、吸排気系パーツは54万7050円、LSDが14万4900円、クラッチが6万3000円、サスペンションキットが15万7500円。さらにブレーキやアルミホイール、追加3連メーターなどが装着され、総額200万円程度のパーツが装着されている。コンプリートカーとして450万円程度ってのはいかがなものでしょう！？

Powered by ベストカー