中古車購入
更新日:2019.01.27 / 掲載日:2017.12.03
レクサス家に嫁いだRX350(旧姓ハリアー) レクサス流英才教育の成果は?
レクサス家へ嫁いだハリアー

後ろにいるのは初代ハリアー。ハリアーから派生したRXだが、現行モデルでレクサス専売モデルとなり成功できるか?
【本記事は2009年3月にベストカーに掲載された記事となります。】レクサスは基本的に世界統一スペックかつ、トヨタブランドのクルマとは併売しない、というポリシーから、トヨタブランドの大人気SUVのハリアーは、トヨタ家からレクサス家へ嫁ぐことになってしまった。まぁこれには喜んでいる人ばかりではなく、嘆いている人もいるが、レクサスサイドとしては、日本で販売する初のSUVということで気合い充分、英才教育を施した。トヨタ家のクルマは、かゆいところに手が届く至れり尽くせり感があり、信頼性抜群。この点はレクサス家のクルマも同じなのだが、それを買い得感の高い価格で提供しようというトヨタ家に対し、レクサス家は、商品に見合ったユーザーに媚びない強気な価格設定としているのが特徴。まぁ、それが日本で苦戦している要因でもあるのだが、価格設定に関してはトヨタ、レクサスは対極にある。世界的にみて、旧型RXはレクサス家で最も販売台数の多かった車種で、いわばドル箱的存在。同じくトヨタ家としてもドル箱であったハリアーを嫁に出したのだから成功してもらわねば困る。そのRXは魅力的か? 英才教育の成果は? 竹平素信氏があらゆるポイントをチェック!
プレミアム感がある室内

ドライバーが接する機会が多いインテリアはある意味エクステリア以上に力を入れている
スタイルにしてもスペックにしても、あるいはプラットフォームがカムリベースであることなど、専門家の目からRX350はハリアーの後継と考えてしまう。スタイルは一見してハリアーっぽく、ボディサイズも大きく立派に見えるが全長、全幅でそれぞれ40mm伸び、全高は10mmアップした程度で大差はない。しかし、まったくの別物に仕上げられている。といっても一般の人は見た目が肝心で、どっちがRXか、迷うかもしれない。これが唯一のウィークポイントというか、ハッキリとハリアーと差別化しなかったのが不満といえば不満。しかし、コックピットに身をゆだねてみれば格段にプレミアム感があり、スポーティなムードに包まれているし、パソコンのマウス感覚でナビ画面をポイント操作する『リモートタッチ』と呼ばれる新アイテムなど、魅力的な装備もいっぱい。本革シートや内装のマテリアルもいちだんと上質感を増し、満足感は大きい。ハリアーとはひと味異なる世界を演出。そして走ってみれば、レクサスならではの気合いの入った作りの深さが伝わってくる。
乗り心地

重厚かつしなやかな乗り心地、280psをマークするパワフルな3.5L、V6による加速はプレミアムカーとして満足度が高い。
まずは乗り心地。重厚かつしなやかというもので、ペースアップするほどに心地よさ、安心感が高まってくる。ハリアーに比べて明らかに硬めだが、不快感はまったくなく、すこぶる上質なところがプレミアム!それからステアリングフィールもごきげんだ。RX350になってようやく油圧制御から電動パワステに変更されたのだが、コイツの出来がすばらしい。しっかりとした手応えでフィールも実にナチュラル。電動パワステにありがちな曖昧なフィールが見事に払拭されている。ハリアーの軽いステアリングフィールに比べると大差がある。そしてアジリティ(機敏さ、軽快感)、スタビリティに卓越した操安性能。ワインディングを軽快に走らせる能力と高速での安定性能を高次元で持ち合わせた走りは、さすが高い金取るだけある、と感心させられた。
レクサスらしい走りの味を追求

コーナリング中のスタビリティが高く、ドライバーに安心感を与える
乗り心地、操安性能を主とする走りの作り込みは、レクサスらしい走りの味を追求して開発スタッフが特別に力を入れた部分だ。そのためには何よりも基本性能を高めることが先決。「リアサスを新開発しただけではなく、ボディやサス取り付け部の剛性アップをバランスよく入念にやりました」というのは、レクサスチームの走りのまとめ役である古賀氏のコメント。なるほど、おおいに納得である。改良された3.5L、V6エンジン、5速から6速へと進化したATもあり、ハリアー以上にスムーズで力強い加速も魅力的だ。かなりの重量増にもかかわらず、動力性能もさらに向上した感じがする。
ラインアップ

RX350の一番のお薦めがエアサス搭載モデル。乗り心地の上質感はコイルスプリングサスのモデルとは一線を画す。ソフトタッチだがビシッと引き締まったフィールも最高!
ラインアップ中、レクサスらしいプレミアムさを最も感じさせてくれたのはトップモデルのエアサス仕様(バージョンLのAWDにのみ設定)。ハッキリいってコイツの乗り味は極上。ゴツゴツ感もフワフワ感もない。ソフトタッチながらビシッ、と引き締まっており、ロールやピッチの制御も巧みで、フィールもナチュラル。聞いてみれば、「レクサスで開発した新しい制御システムを投入しました」(前出・古賀氏)同じAWDでもコイルサスになるとそのフィールは異なる。エアサスの上質なフィールが特別なだけに大きな差を感じてしまうわけだが、これも仕上がりはとてもいい。重厚でフラット感に富んだ乗り心地や、切れば切っただけ曲がるレベルの高いハンドリングなど上質なスポーティ車そのもの。リアデフ前に電制カップリングを配置したAWDもスポーツ4WDでないが、オンロード性能重視のAWDとしては不満なし。雪道でもウェット路面でも威力を発揮してくれるハズだ。いっぽうFFの2WDはイマイチ。ボディやサスなど、骨格のしっかりしたRXだから、FFでも剛性感の高いハンドリングやスタビリティの高さを見せてくれるが、AWD仕様に比べると乗り心地、走りの質ともにレクサスとしてはもの足りない。特に低速時のトルクステアの大きさは高級感を謳うレクサスらしからぬ出来。3.5L、V6の2GRIFEは280ps/35.5kgmととてもパワフルだから、FFでジェントルな走りを構築するのは難しい。19インチタイヤを装着し、ダンパー、パワステ特性を専用チューニングしたスポーツグレードのバージョンSはどうか?コイツのスポーツ度の高さはかなりのもの。不整路でこそ硬さがやや気になるものの、いちだんと高まったハンドリング性能、コーナリング性能でワインディングもおおいに楽しめる仕上がりをみせていた。走り好きにはぜひ試してほしいモデル。しかもレクサスとしての気品、質感は損なわれていない。このラインアップでお薦めしたいのはやっぱりエアサス仕様だ。レクサスはもともと高価なブランドだし、お金に余裕のある層をターゲットとしているのは間違いない。ならば一番上質で、走りもプレミアムなモデルを選ぶのがベスト。FFよりはAWDがお薦めだし、コイルサスよりもエアサスがお薦め。エアサスはコイルサスの25万円アップだから許容範囲。
価格設定は高いか、安いのか?

どんな風景にもマッチしなければプレミアムカーとはいえないがRXは合格!
では、ハリアーに比べて約150万円アップした価格設定は高いか、安いのか?単純に装備やパフォーマンス、走り味、乗り味だけを比べれば、普通の人にとっては高いイメージ。これ、間違ってませんよ。でも、50万円程度のカーナビや質感の高い素材などが盛り込まれているのを差し引けば、実質約100万円アップ。これがレクサスのブランド料で、つまり100万円で信頼感、安心感、プレミアムなサービス、満足感を買うということ。この不況下、それを受け入れることができるなら決して高い買い物ではない。だからこれを購入できる人が羨ましい。ワシにもその財力があれば、国内外の数あるSUV選びで筆頭候補になることは間違いないのだが……。