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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.12.03
走りの進化はケタはずれ! フェアレディZに熱視線!!
世界不況に果敢に立ち向かっているZ

初期受注の内訳はAT67%/MT33%、バージョンST50%/バージョンT18%/標準仕様18%/バージョンS14%、プレミアムパールホワイト28%/ブレードシルバー20%/ダイヤモンドブラック19%など。3月までに6000台の受注が目標だと
【本記事は2009年2月にベストカーに掲載された記事となります。】なにしろ世界経済がこんな状況だけに、新しいZの登場を「時期が悪いね」と思っている人も多数いるようだ。聞いた話だが、発表会で「なぜこんな時にスポーツカーを出すのか?」という質問も飛び出したという。そりゃまぁ、タイミングが悪いのは確かだろう。ちょっと前の好景気の時なら、こんな質問は出なかったはず。それだけでもニューZの“不運”を感じてしまうが、開発責任者である湯川伸次郎CPSはまったく動じていないのだった。「旧型のZ33も日産がどん底の時に復活の象徴として出したクルマでしたし、Zは逆境に立ち向かう運命にあるクルマなのかなと思いますね。でも、スポーツカーのお客さんは正直で、いいモノを出せば買ってくれるし、また、景気に影響されないお客さんが多いんですよね。この時期だからこそスポーツカーなんだと私は思っています」実際、日本では1月8日時点(発売から1カ月と1週間ほど)で1466台を受注。計画は1カ月に500台だから約3倍のスタートで、アメリカも北米日産からは「絶好調!」との報告がきているという。Zは世界不況に果敢に立ち向かっているのだ。
驚くべき完成度の6MT

V6、3.7Lは336ps/37.2kgmを発生。10・15モード燃費は6MT、7ATともに9.8km/L(標準仕様)となっている
■驚くべき完成度の6MTさて、このニューZ。乗ってみると、その迫力は旧型の3割増しくらいになっていた。3.5Lから3.7Lに排気量アップしたV6エンジンは336ps/37.2kgmを発生する。そのフィールは7500rpmのレッドゾーンまで「力ずくで持っていく」感じ。開発陣は「速さよりも楽しさ」と強調するが、「これ以上速くなくていいです」と思える動力性能だ。
世界初のシンクロレブコントロール

本文では触れるスペースがなかったが、パドルシフト付きの7ATもシンクロレブが付いており、MT並みのレスポンスを誇る。インテリアは劇的ともいえるほどに質感が向上
バージョンSとバージョンSTの6速MTには世界初のシンクロレブコントロールが付く。これはシフトダウン時に自動的に回転を合わせてくれるもので、いわば“自動ヒール&トウ”といえるもの。興味津々で試したこの機構は驚くべき完成度で、楽しく、気持ちいいものだった。まさにプロドライバーになった感覚が味わえる。「気を遣わずにMTを操る」ことを目的としたものであるとの説明を受けたが、それ以上に娯楽的な効果がある。なお、「こういうお節介な装置はいらん」という硬派な方や「俺がやったほうがうまい」という天才ドライバーの方のためにオフスイッチも付いています。
ゴツさと柔らかさが同居している乗り味

大きく張り出したリアフェンダーと、絞り込まれたリアエンドが印象的。日産がブーメラン形と呼ぶライト形状はリアにも採用されている。コーナリングの限界は果てしなく高い
■ゴツさと柔らかさが同居している乗り味今回は最上級グレード、バージョンST(19インチ仕様)の6MTと7ATに乗ったのだが、最初は「ゴツい」と感じた乗り味が、走るにつれてだんだんと柔らかさを感じるようになってきたのが印象的だった。ニューZはゆっくり走っていても質の高さや楽しさを感じられるのがいいところだ。これは一般ユーザーにとっては重要なことで、日常ユースでそのクルマのよさを感じ取れるかどうかは大事なことなのだ。限界性能に関しては、もはや一般ドライバーが語れるレベルをはるかに超えている。275/35R19のリアタイヤがガシッと路面をつかんでいるのだ。低中速中心のワインディングならともかく、今回試乗の舞台となった某所のような高速コーナー中心の道路では、本当の限界性能など試せるわけがない。それでも感じ取れるのは、ものすごくしっかりしたクルマに乗っているという安心感があること。走りの質感はそれこそジャンプアップ(開発のキーワードです)している。そして、走り以外にも魅力アップのポイントが数多いこともニューZのいいところで、インテリアの質感は大幅に向上しているし、また、本革+スエード調シート(バージョンST、Tに標準)の出来もすばらしい。
Zは幸運のスポーツカーだ

GT-RスペックVの特別映像も! ベストモータリング3月号は現在発売中。価格は2100円(消費税込み)
■Zは幸運のスポーツカーだただし、気になるところももちろんある。決定的なのは視界の悪さで、ディーラーオプションのフロントサイド+バックビューモニター(10万5000円)は欲しいところ。また、シート後ろの物置きが大きくなったのはいいが、荷物を取り出す時にシートを前に倒せないのがけっこう面倒。ワンタッチで、少しだけでもいいから倒せれば楽なのに……と思った。それとステアリングにテレスコピック機構がないのも残念だし、さらにいうなら、MT操作を楽にするためにシンクロレブ機構を付けたのなら、坂道発進時のストッパーも備えるべきだろう。とはいえ、Zのようなクルマは多少の不便は受け入れる覚悟も必要。スポーツカーとして必要な何かを優先するために省いたのだとすれば、それはひとつの方法だとは思っている。考えてみれば、ニューZは「タイミングが悪い」というよりも「よく間に合った」というべきなのだろう。スポーツカーを中心に、開発の中止や延期の情報が続々と流れてくる今、Zはそうした波に飲まれることなく世に出てきたわけだ。我々クルマ好きは、その“幸運”に感謝しようではありませんか。(本誌・飯干俊作)