中古車購入
更新日:2018.12.30 / 掲載日:2017.12.04

5-7-8人乗りのフリードは小さく広い!!

【本記事は2008年7月にベストカーに掲載された記事となります。】ホンダは面白い会社で、車名に対するこだわりがほとんどない。1代かぎりで終わった車名は数知れず、青山のホンダ本社には、その墓碑が乱立している部屋があるという(←もちろんウソ、だと思います)。このたび登場した最新モデル、フリードもそのひとつである。車名は新しいが、モビリオとモビリオスパイクの後継車。しかし、車名と同じく、スタイルもモビリオの面影をまったく残さない姿で登場した。

フリードが生まれた背景

真四角のモビリオから一転、シャープなデザインになったフリード。でも広さは充分

真四角のモビリオから一転、シャープなデザインになったフリード。でも広さは充分

ここで国内販売の最新状況を説明しておこう。昨年1年間の国内販売データで、ジャンル別のシェアは軽自動車が35%、コンパクトカーが23%、ミニバンが18%、セダンが13%、SUVが6%、ステーションワゴンが5%となっている(ホンダ調べ)。このうちミニバンだけのデータを抽出すると、5ナンバーサイズが約70%、スライドドア仕様が69%を占め、フリードが属するコンパクトミニバンの割合は7%にすぎないとか。つまり、ミニバンはやはりある程度の大きさが求められているということなんですね。そこでホンダは考えた。ミニバンも5ナンバーサイズが多く売れるということは、大きなボディを持てあましているお客さんが多いということ。室内の広さが確保されるのであれば、ボディは小さいほうがいいのだろうと。小さいボディで広い室内を確保するというのは、開発者なら誰もが理想とするが、実現するのは簡単なことではない。しかし、フリードは見事にその不可能を可能にした。

フリードは小さいのに広い!

オープンカフェをイメージしたという開放的なインテリア

オープンカフェをイメージしたという開放的なインテリア

フリードに乗って驚くのは3列目シートが“マトモに座れる”ことだ。身長182cmのわたくし、本誌・飯干が運転席で好みのドライビングポジションを取り、2列目シートには膝元に少し余裕をもたせて座り、そのまま3列目に移動しても狭くない。つま先を2列目シートの床下に入れられることもあって、けっこう余裕があるのだ。これには驚いた。全長4215mmしかないのに、1~3列目まで182cmの人間がしっかり、ちゃんと座れるのだ。これってすごいことでしょう! もうこれだけでフリードには大いに価値があることがわかった。GT-Rがニュルをいかに速く走るかと同じくらいに、ミニバンは3列目シートの居住性が大事。わたくし、個人的にはそんなふうに思っております。しかもフリードはコンパクトなボディで、それを実現しているのだからすばらしい。

5-7-8人乗りの3種類

全長4215mmのコンパクトサイズなのに3列すべてにきっちりと人が座れるパッケージ。フリードの最大の魅力は小さいのに広いことだ!

全長4215mmのコンパクトサイズなのに3列すべてにきっちりと人が座れるパッケージ。フリードの最大の魅力は小さいのに広いことだ!

全長4215×全幅1695×全高1715mm、ホイールベース2740mmのフリードは2列シートの5人乗り(フレックスというサブネームがつく)と3列シートの7人乗り、8人乗りの3つのシートバリエーションを持つ。このうちホンダがメイン機種と目論んでいるのが7人乗りで、2列目がセパレートシートになっているため、1~3列目まですべてウォークスルーできるのが特徴。どのドアから、どのシートにも行けるので、狭い場所での駐車もOKというのが最大の売りなのだ。また、8人乗りも、1.5Lクラスではこのフリードが唯一となる。ラゲッジスペースは3列シートを立てた状態で142L、3列目シートを収納した状態(5対5分割跳ね上げ式)で8人乗りが615L、7人乗りが672L。そして、3列目シートのない5人乗り仕様は715Lというクラス最大の広さを誇る。また、7人乗りは3列目シートを収納しておけば、2列目シートのスキマを利用して27インチの自転車をハンドルやタイヤを外すことなく、立てたまま載せられるのも特徴。ある開発者いわく、「私もそういうケースがよくあるんですけど、駅まで自転車で行って出勤して、帰りが雨になって妻にクルマで迎えにきてもらうことがあるんですよね。そういう時に自転車をそのまま載せられるのは本当に便利なんです」なるほどね~。こういうクルマは、そうした生活に密着した視点が大事なのですね。

走りは……普通です!

エンジンは直4、1.5Li-VTEC。118ps/14.7kgmで、10・15モード燃費はFF車が16.4km/L、4WD車が14.0km/L。レギュラーガソリン仕様で、燃料タンク容量は42L

エンジンは直4、1.5Li-VTEC。118ps/14.7kgmで、10・15モード燃費はFF車が16.4km/L、4WD車が14.0km/L。レギュラーガソリン仕様で、燃料タンク容量は42L

以上のように、ボディが小さいのに室内が広い、使い勝手がいいということに関しては賛辞を惜しまないが、いざ走り出してみると、困ってしまった。最近、自動車評論家諸氏の話によく出てくるのが「どんな原稿を書いていいのかわからないクルマが多くて困る」という話。つまり「悪いところはないんだけど、特徴がないクルマが多い」ということなのだ。正直にいって、フリードの走りがまさにそれ。エンジン(1.5Li-VTEC)、サスペンション(前ストラット、後トーションビーム)、トランスミッション(FFはCVT、4WDは5AT)のすべてが“普通に”よくできていて、「ちゃんと走りますね」としかいいようがないのだ。フロントが大きくスラントしている形状のため、運転席からボンネットがまったく確認できず、車幅感覚がつかみにくいという欠点はあるものの、もともと小さなボディだし、最小回転半径も5.2mと小回りがきくため運転がしにくいということはない。乗り心地に不満はないし、118ps/14.7kgmのエンジンも動力性能に不満なし。つまり、フリードは誰にでも安心して薦められるクルマだが、ドライビングに楽しさを求める向きにはどうかな? というのが正直な感想。「それで悪いか?」と問われたら「いえ、それで充分です」としかいいようがないのだが、パッケージングがすべてのクルマなのである。

ホンダの遊び心はいずこへ?

5人乗りフレックスのFパッケージ、エアロのFF車には大型スカイルーフがオプション設定されている。価格は10万5000円で、残念ながら3列シート車には設定されない。

5人乗りフレックスのFパッケージ、エアロのFF車には大型スカイルーフがオプション設定されている。価格は10万5000円で、残念ながら3列シート車には設定されない。

この原稿の導入に、ホンダは面白い会社で、車名に対するこだわりがほとんどないと書いた。また、車名だけではなく、コンセプト自体をガラリと変えて、「それが何か?」とすました顔をしている。路面電車をモチーフにデザインしたというモビリオは、好き嫌いが明確に分かれるものの、強烈な個性と遊び心を発揮したクルマだった。しかし、そんなモビリオから一転、このフリードは万人向けの無難にスタイリッシュなデザインを採用し、遊び心より実用性を最重視したクルマとなった。この変わり身の早さはさすがホンダ。他メーカーではここまで思いきって「前のはなかったことにしよう」という決断はできないだろう。この柔軟性がホンダの面白いところであり、魅力であることは確かだが、フリードに関するかぎり、モビリオにあった遊び心がなくなってしまったのがちょっと残念。ただ、そんななかでもホンダらしいなと思ったのは、「モビリオが広く見えるスタイルで実際の室内はそれほど広くなかったので、フリードはそんなに広く見えないスタイルで実際は広いのを目指しました」というある開発者の言葉。このヒネクレ度合いこそ、ホンダの真骨頂だと思いましたね。いや、皮肉じゃなくて本当に。ホンダはトヨタになってほしくないですからね!

フリードは安いか?

TEXT/渡辺陽一郎今日のミニバン市場の価格体系を踏まえると、フリードは少し高い。それは1.5LのVTECエンジンを搭載してエアロパーツを付けたモビリオX(170.1万円)と、フリードGエアロ(185.85万円)を比べればわかりやすい。モビリオXには左側の電動スライドドアが装着され、フリードGエアロにはエアコンのオート機能、ドアミラーウィンカーなどが付く。装備の水準は互角だ。しかし、価格はフリードGエアロが15万7500円上まわる。クルマの価値は装備だけでは判断できず、両車の価格差は少し割り引いて考える必要があるが、それでもフリードは約10万円割高だ。ここで問題が発生。180.6万円で設定されるストリームの売れ筋、1.8Xとのバランスだ。フリードが1.5Lである以上、主力グレードの価格が1.8LのストリームXを超えたら割高感が生じてしまう。その結果、安価なGに左側の電動スライドドア、ドアミラーウインカー、エアコンのオート機能などの実用装備を加えたG・Lパッケージ(178.5万円)を販売の主力にすべく割安にした。Gに13万円相当の装備を加えて、価格上昇は9万4500円に抑えた。それなのに、横滑り防止装置はGエアロLパッケージ以上でないと装着できない。事故を避ける安全装備は、たくさんのクルマに装備されて事故防止に役立ってこそ開発した意味がある。少なくともG・Lパッケージには用意してほしい。

この記事はいかがでしたか?

気に入らない気に入った

グーネットマガジン編集部

ライタープロフィール

グーネットマガジン編集部

1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
グーネットでは軽自動車から高級輸入車まで中古車購入に関する、おすすめの情報を幅広く掲載しておりますので、皆さまの中古車の選び方や購入に関する不安を長年の実績や知見で解消していきたいと考えております。

また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

この人の記事を読む

1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
グーネットでは軽自動車から高級輸入車まで中古車購入に関する、おすすめの情報を幅広く掲載しておりますので、皆さまの中古車の選び方や購入に関する不安を長年の実績や知見で解消していきたいと考えております。

また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

この人の記事を読む

img_backTop ページトップに戻る

ȥURL򥳥ԡޤ