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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.12.05
ただでさえ速いのにR2つだとどれだけ速いのか? 無限の夢が走り出す! 限定300台! 477万7500円!! ホンダ シビック無限RR
日本市場にホンダスポーツの遺伝子を

【本記事は2007年9月にベストカーに掲載された記事となります。】最近は「ホンダってミニバンのメーカーでしょ?」と言われちゃうくらい、スポーティな車種が減っちゃったホンダ。これは別にホンダが悪いわけじゃなくて、日本市場でスポーツ車がまったく売れなくなっちゃったという市場の問題なんだけど、それでもホンダのなかの人にとってはフラストレーションが溜まっていることは間違いない。そもそも、ホンダの技術者っていうのは他社よりずっと血中レース&スポーツ成分が濃ゆい人が多いんだから、おとなしいミニバンやコンパクトカーばっかり作って満足してるようなタマじゃない。で、インテグラタイプRが生産終了となったあとを受け、今度はシビックでタイプRの生産を継続。S2000とともに、なんとか日本市場にホンダスポーツの遺伝子を残そうと頑張っているわけだ。
FFスポーツの究極

シビック無限RR
こんなふうにスポーツモデルが“絶滅危惧種”になりかかっているのが影響しているのか、新しいシビックタイプRは中途ハンパな実用性を拒絶するかのように、走り(それもサーキットラン)に徹したクルマに仕立てられている。これはたぶん、最初のインテRがものすごいマニアックなクルマだったのに対し、後継モデルがロードカーとしてソコソコの実用性を盛り込もうなんて考えて、結局はピントがボケちゃったことを反省してのことだと思うけど、一般道での乗り心地なんか尋常じゃない固さ。「半端なマニアは乗らんでイイ!」って感じの、どえらく潔いピュアスポーツに仕上がっている。こういうふうに究極までいかないと評価されないのが、よくも悪くも日本市場におけるスポーツモデルの特徴ではあるんだけど、今度のシビックタイプRはもう完全に開き直ってソッチ方向に刃を研ぎ澄ませてきた。誰にでもお薦めできるクルマじゃないけど、FFスポーツの究極に乗りたいならコレしかない。まさに、抜き身の日本刀みたいにギラギラした魅力を放射するクルマになっている。ところが、世のなかには上には上がいるんだねぇ。このシビックRじゃ飽き足らず、さらにその走りを研ぎ澄ませたクルマが登場した。それが、今回ツインリンクもてぎで試乗することになったシビック無限RRだ。
クォリティの高いパーツでグレードアップ

RRのロゴが刺繍された専用レカロ製バケットシートはカーボン製シェルで、リクライニング機能付き。ホールド性は抜群
無限といえばホンダのセミワークス的なスポーツブランドとして知られているけど、この無限RRは同社として初めてのコンプリートカーであることが大きな特徴。限定300台を477万7500円で販売するというなかなかに野心的な計画だ。これだけのプライスをつけるからには内容も相当に頑張っていて、誰もが「もう限界だろ」と思っていたK20Aからさらに15psを絞り出しているのをはじめ、アルミボンネット、専用サスペンション、専用レカロシートなど、かなりの広範囲にわたってクォリティの高いパーツでグレードアップされている。
いうまでもなく“速い”

セッティングの巧みさで定評のある無限だけにその性能は抜群!
そんなわけだから、もうこのクルマを試すにはサーキットしかねぇだろうということで“もてぎ”にやってきたわけだが、このシビック無限RRの印象はかなり鮮烈なものがあった。まず、ひとつはいうまでもなく“速い”ということだ。もともと2L NAで225psも出しているエンジンだけに「あと15psパワーアップしたくらいでどうよ?」と思うかもしれないが、サーキットではトップエンドでのパンチとか「あと500回転」の伸びがものすごく効いてくる。
限りなくレーシングバージョン

エンジンは15ps、0.3kgmアップ! 無限の得意とする吸排気を中心にチューンし、カムプロフィールも専用。ノーマルに比べると吹け上がりのよさが段違い
6速MTのギア比の関係で、シビックタイプRだと2コーナーや4コーナーなどで立ち上がり直前にシフトアップのタイミングとなるケースがあったりするのだが、無限RRはシフトアップタイミングが「アレッ?」というくらい早くなる。最初は「ひょっとしてギア比が違う?」と思ったほど各シフトポイントが手前にズレてくるのは、コーナリング速度が速いのとトップエンドがより伸びることの相乗効果。ドライバーはそんなに攻めてる意識はないのだが、クルマのほうが無理なく速く走っちゃってるのだ。さらに、ノーマルより確実に速いそのコーナリング速度を維持しながら、けっこう好きなようにラインを変えられる。こりゃまぁボクが本当の限界まで攻めきれていないということもあるんだろうけど、高速のS字なんかで「オッと、ここは早めに左側につかないと次の右が苦しくなるぜ」なんてトロいドライビングをしていても、クルマのほうががぜんぜん余裕でついてきちゃう。ノーマルだと、1発目の進入をしくじるとけっこうあとまで響くのに対し、無限RRはよりペースアップしてるのに余裕。限りなくレーシングバージョンに近いソリッドなコーナリング感覚なのだ。
楽に減速できるクルマ

専用開発されたポテンザRE070を履き、ブレーキはパッド、ローター、ステンメッシュブレーキラインで強化している
こうなると、ブレーキにも絶大な信頼がおけるから、下りのストレートなんか100m看板近くまで余裕の鼻歌まじり。到達速度は190km/hを超えてるのに、こんなに楽に減速できるクルマはレーシングカー以外にはあり得ない。3ラップ目くらいでブレーキがヤバくなるノーマルとは、ここが決定的に違うポイントといっていい。
公道での乗り心地は無限RRのほうがベターかも?

ノーマルのタイプRでもそのままサーキット走行が可能なほどのクルマだが、無限RRと乗り比べるとその差を歴然と感じてしまう
さらに、これは一般公道を試していないからハッキリとはいえないけど、無限RRのサスペンションは固さのなかにもフリクション感が少なく、ロール/ピッチは粘っこく抑制されているわりに上下の突き上げがあまり気にならない。ひょっとすると、公道での乗り心地は無限RRのほうがベターかも? そう思わせるしなやかさがある。こういうサーキットで鍛え上げられたサラブレッドを公道に持ち込むと、路面条件やアタック速度の違いによって意外にその魅力を発揮できないことも多いけれど、この無限RRは究極まで行っちゃったクルマだけが持つある種の凄みを一般道でもちょっとは味わえそうな予感がある。500万円近いお金をシビックに投じるのはかなり酔狂なことだけど、あえてそれができる粋な人ならこのクルマの魅力が理解できるに違いない。