砲弾型VSタマゴ型　シルエット一番勝負！　ダイハツ ソニカはカッコも走りもi（アイ）を超えたのか？

【本記事は2006年8月にベストカーに掲載された記事となります。】ビジネスの世界では、「絶頂期こそ最大の危機」と言う。イケイケでウハウハな時期には、かならず凋落の芽が生まれるってことね。現在の軽ブーム最大のキーワードは「広さ」。広いのがアタリマエ、広くなきゃ軽じゃない、みたいなノリだ。が、いつまでもそれでいいのか？ と振り返るのが真の強者ってことで、ダイハツがリリースしたソニカは、言わば将来への抑え。今は小さな市場しかないGT系軽に、今こそ手を打っておくべし！ という深慮遠謀が感じられるスポーツツアラーなのだ。フォルムはウェッジシェイプの砲弾型でやや古臭く、iやR2みたいなきらめきは感じられない。だけど、乗るとこれが実にスバラシイ！エンジンはエッセに採用された新型ロングストローク3気筒エンジンをベースに、ターボ化したもの。もとからトルクのあったこのエンジンにターボを組み合わせたことで、軽最良のパワーユニットになったと断言できる。そして、ミッションは新開発のダイハツ自社製CVT。これが実に静かで、データ上の燃費も軽ターボとして最高。かなり飛ばして走った試乗時でも、平均燃費計はリッター14km以上を示していた。この新開発ターボエンジン＆CVTのコンビが醸し出す雰囲気は、まるで未来のコミューター。「ぴいいぃぃぃぃぃぃぃぃ～～～～ん」という電気モーター的な高周波音を奏でながら、実にスムーズに力強く走ります。こんな未来的な感覚、プリウス以来かも～。足も、しなやかでスポーティ。フォルムが低くて安定しているうえに、タイヤがボディの四隅にあって、しかも標準でポテンザのロープロファイルタイヤが奢られている。タイヤのグリップが強すぎて、ボディへのショックが強めに出てはいたけれど、軽としては異次元の安定性と操縦性だ。ソニカよ、オマエの走りにやられたぜ……。

居住空間はジャスト4人サイズ。高すぎない天井が醸し出す適度なタイト感がオトナの雰囲気である。インテリアもシックでステキだ。惜しむらくはセンターコンソールの質感がモロにプラスティックで安っぽいこと。しかしこれも、オプションでカーボン調、アルミ調、ブラックウッド調のパネルが選べる。ソニカ、それは軽のロイヤルストレートフラッシュ。エンジン、ミッション、足回り、すべてに最高の素材をブチ込んだ夢の軽だ。軽の潜在力はここまで高い！ と見せつけてくれた。

i（アイ）と比べてどうか？三菱i（アイ）は、軽自動車のワクを超える雰囲気を持った軽。明らかに別クラスのオーラを漂わせている。対するソニカは、あくまで軽の最上級モデルで、そこまでのものはない。が、走りの本質に関しては、ソニカはiを上回るものを持っている。

まずエンジン。iのそれも非常にいいが、ソニカはそれ以上にトルク感がある。しかも、組み合わされるのが新開発CVT。コイツが効率も静粛性もベストときている。フツーの4速ATのiは、この点かなわず、カタログ燃費でもiの18.4km／Lに対して、ソニカは23.0km／Lと圧倒している。もちろん、ミドシップのiは、独特の操縦感覚を持ち、マニア度は猛烈に高いが、そこまでの趣味性を求めないなら、FFのソニカのほうが素直で扱いやすい。さらに、決め手は車両重量。iはミドシップ化による重量増があり、900kgとかなり重く、これが燃費にも響いている。対するソニカは、820kg。この重量差が、すべてに効いているのだ。

居住性は、見事なほど両車ほぼ互角。4人がちょうどいい包まれ感とともに乗車でき、窮屈さはない。軽の定番である鬼のような小物入れも、両車生活感を嫌ってか、過剰には装着されておらず、オトナの雰囲気だ。

ラゲッジもまた、ビックリするくらい互角にミニマムに近い。両車とも、荷物を積む時は後席を畳むのが前提と考えたほうがいいが、とにかく互角だ。

実際乗り込んだ雰囲気は、明らかに未来的なiに対して、ソニカにはそこまでのものはない。iには別世界のワクワク感があるが、ソニカにはかつてのスポーティハッチ的な、慣れ親しんだ落ち着きがあると言っておこうか。輸入車からの乗り換えもありそうな「脱・軽」のiに対して、「軽のロイヤルストレートフラッシュ」ソニカは、トールボーイ系軽に飽きた軽のハードユーザーが、最後にたどり着く軽のエルドラド、と言うとわかりやすいんじゃないかな

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