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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.12.06
ホンダ ストリームvsウィッシュ 仁義なき戦い 長き抗争にこれで終止符を打つのか!?
ウィッシュの一大王国に殴り込み

「なに殺る? いつでも来ない。相手になってあげるけん」(『仁義なき戦い・決戦篇』より)
【本記事は2006年8月にベストカーに掲載された記事となります。】村上組との血みどろの戦いに勝って以来、岡組は、広島での法の裏側における一大王国となった。角川文庫刊『仁義なき戦い・決戦篇』の書き出しである。著者は飯干晃一、私の父。では、息子たる私が自分の仕事に合った原稿に変えるとどうなるか。こうなります。ストリームとの血みどろの戦いに勝って以来、ウィッシュは、5ナンバーサイズミニバンにおける一大王国となった。天国の父上。息子はこんな原稿を書いて生活しています。「好きなことを仕事にしなさい」とおっしゃっていたあなたです、きっと笑って許してくれるでしょう。というか、なんのこっちゃわからんですか?説明しましょう。平成18年、あなたが亡くなってもう10年になる今、日本はミニバンが大ブーム。メーカー間で熾烈な競争が繰り広げられてきましたが、なかでも’03年1月に勃発したホンダ・ストリームとトヨタ・ウィッシュの抗争は、まさに“仁義なき戦い”でした。ホンダに「ポリシーはあるか」とCMでののしられながらも、トヨタは5ナンバーサイズミニバンの市場を制圧したのです。一方的に打ちのめされたストリームは、もうまもなく7月13日に2代目が登場。あなたが描いた昭和30年代後半の広島ヤクザのセリフ風に言うと、「おい、わりゃわしにええ恥を掻かしてくれたのう。ひとをあんまり舐めんなよ。大ケガさせたるど!」とばかりに、再びウィッシュとの血みどろの抗争が始まる……と誰もが思ったのですが、意外や意外。ストリームはウィッシュとの直球勝負を避け、変化球を投げ込んだのです。「もうトヨタに真似できんやろ」とドスのきいた声でこうつぶやいたという。3列目シートのヘッドクリアランスを犠牲にしながらワゴンルックを追求。全高はミニバンとしては驚異の1545mm! あのオデッセイより5mm、従来型ストリームより45mmも低い数値でやってきたのです。これにより室内高は従来型の1310mmに対し1250mmにダウン。それはすなわち、従来型ストリームとまったく同じ数値をマークしていたウィッシュとの差にもなるわけで、ミニバンなのに室内スペースよりもスタイルを優先することにしたのです。拳銃や日本刀やダイナマイトなどの道具を用意し、新しいストリームの来襲に備えていたウィッシュはさぞかし拍子抜けしたことでしょう。これまた広島ヤクザのセリフ風に言うと、「なんならそりゃ……」と目が点に……という感じでしょうか。
ストリームがモデルチェンジしても追いつかないレベルのウィッシュ

’03年1月ストリームの人気を見るや、まったく同サイズのウィッシュをトヨタは投入した!
思えば’03年1月。ウィッシュが登場した時、開発主査は、「ストリームがモデルチェンジしても追いつかないレベルにしてあります」と言ったものですが、それに対し2代目ストリームは、「イモじゃイモじゃ」との回答を出したという見方もできるでしょう。『仁義なき戦い』によると「イモじゃ」というのは「手を引く」という意味だそうです。とはいえ、ストリームは憎きウィッシュと盃を交わした(手を結んだ)とはとうてい思えません。それどころか、抗争終結のふりをして別の武器を用意してきたと読んだほうが自然だと思えるふしがあります。エンジンは従来型の1.7Lと2Lの組み合わせから1.8Lと2Lに変更。これはウィッシュと同じ構成で、1.8Lはウィッシュの132ps/17.3kgmに対し140ps/17.7kgmとリードし、2Lはウィッシュの155ps/19.6kgmに対し150ps/19.4kgmと若干下回るものの10・15モード燃費は14.8km/Lとウィッシュの13.2km/Lを大きく上回ります。そうです。「イモじゃ」と言いながらも、その実、ヤル気満満であることがうかがえるのです。もちろん、この場合のヤル気は殺る気と書くヤル気でしょう。初代ストリームに対しウィッシュは全長、全幅、全高が1mmたりとも狂わぬまったく同じボディサイズで登場し、相手を激怒させながらも完膚なきまでに叩きつぶしたのですが、2代目ストリームは、ミニバンなのに“室内スペースを小さくする”という戦法に出たのです。
ストリーム対ウィッシュは、こ予測のつかない新たな展開へ

’03年1月ストリームの人気を見るや、まったく同サイズのウィッシュをトヨタは投入した!
それがクルマ界においてどれだけ異例のことかというと、『仁義なき戦い』の広島ヤクザたちが「暴力よりも話し合いで決着を」と言うくらいのレベルかもしれません。戦後のヤクザ抗争事件史上、最大の争いといわれたあの抗争で、そんなノンキなことを言うヤクザなどいなかったはずです。ストリーム対ウィッシュの仁義なき戦いは、こんなふうにまったく予測のつかない新たな展開を見せ始めたのです。双方の要求や主張や不満が対立し、まさに戦争寸前となる時、政治は最後のまやかしにいっそうの磨きをかける。和戦同様の構えなどともっともらしいことをいうが、政治は最後の最後まで、甘言を囁き、相手を籠絡しようとし、詭計で相手を欺こうとする。(『仁義なき戦い・決戦篇』より)2代目ストリームがまやかしのミニバンと言いたいわけではありません。逆に、いかにもホンダらしい挑戦的なクルマと言うべきでしょう。しかし、この戦法はトヨタにとって予測不能のまやかし(=フェイント)に思えたことも確かではないでしょうか。そしてその結果、このストリーム対ウィッシュの戦いのレベルは確実に上がることになりました。おそらくウィッシュは再来年早々にモデルチェンジすることになるでしょう。もしもその時、新しいコンセプトで勝負に出た2代目ストリームが人気モデルとなっていたら、ウィッシュはどう出るのでしょうか。今から想像するだけで恐ろしいではありませんか!みたび『仁義なき戦い・決戦篇』から引用しますが、あなたはこう書いていますね。まことに争いははじまりがあって終わりはない。争いの結果は、また新しい戦いの原因となるのだ。このフレーズは、ストリーム対ウィッシュの新たな抗争に、そのまま当てはまるような気がしてなりません。もしかして父さん、あなたはこの時を予測して『仁義なき戦い』を書いたのではないですか!えーといま、あの世から「ええかげんにせい!」と激しいツッコミが入りました。江原啓之さん、こういう時は、すぐにでもお墓参りに行って謝ったほうがいいのでしょうか?
新型ストリームのグレードは4タイプ

全高は3列シートのクルマにしては異例に低い1545mm。ルーフはリアに向かって緩やかにラウンドしており、スタイリッシュなスタイルを作り出している
新型ストリームに用意されるグレードは4タイプ。1.8Lと2Lにそれぞれ17インチタイヤとスポーティチューンされた専用サスを持つRSZと、標準タイプの2グレードが設定される。1.8Lには5速AT、2LにはCVTが組み合わされ、4WDは全モデルに設定されている。4WDはホンダならではのデュアルポンプ式を採用。価格は2LのRSZが227万8500円、1.8LのRSZが206万8500円、さらに2L標準タイプのGが203万7000円、1.8L標準タイプのXが180万6000円となる。4WDはプラス25万円。
NEWストリーム走りは超スポーツ

とにかく走りを徹底的に磨き込んだな、というのが新型ストリームに対する率直な感想。ハンドリングはすばらしい
走りに関しては、最近のホンダ車はものすごい勢いでレベルアップしている。新型ストリームはオデッセイをもしのぐハイレベルの操安性能と乗り心地を実現していると言ってよかろう。特にサスペンション取り付け部の剛性が高められており、質感の高い乗り心地を実現している点を高く評価したい。ハンドリング性能に関しても、スポーティなミニバンというレベルを超えたハイレベルなもの。ゴツゴツした乗り心地になることなく、これほど高いハンドリング性能を実現しているのはお見事だ。エンジンは1.8Lと2Lが用意されているが、トルクやパワーの差はおおよそ10%程度。この程度の差だと、感度の鋭い人は違いを感じるものの、一般的には明確な差として感じない程度。エンジンによる動力性能の差は大きなものではない。それよりも1.8Lはバランサーシャフトなし、2Lはバランサーシャフト付きで、2Lのほうが質感の高いフィーリングとなっている。RSZと標準グレードの違いだが、17インチタイヤを履いているかどうかというのが大きな違いでハンドリング性能に決定的な差はない。標準グレードでも充分スポーティなハンドリングだと言うことである。(国沢光宏)