中古車購入
更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.12.06
強敵、エスティマも戦々恐々? 最新ミニバン徹底解剖 BIGチェンジしたホンダ オデッセイ(対)人気ミニバン
オデッセイがマイナーチェンジ

標準タイプは新デザインのフロントグリルやバンパー、リア回りはLEDコンビネーションランプ、テールゲートガーニッシュが変更になった。パッと見でも明らかに新しくなったことがわかる。特にリアスタイルはテールガーニッシュがついたせいかカッコよくなった
【本記事は2006年6月にベストカーに掲載された記事となります。】4月13日にオデッセイがマイナーチェンジを受けた。正直、どうしてこのタイミングなの!? と思った。1月にエスティマ、2月にはMPVがフルモデルチェンジを受けており、この2車はオデッセイの宿敵。先代オデッセイのユーザーが新型のエスティマやMPVに代替えすることも充分に考えられるわけで、そこから2~3カ月後にマイナーチェンジというのは、どう見ても販売面で不利だろう。今回のビッグマイチェンの内容は正常進化でおおいに納得できる。特に今回はスポーティなアブソルートに力を入れた。タイヤサイズは215/55R17から225/45R18にグレードアップ。スプリング、スタビライザー、ブッシュまで強化し、ショックアブソーバの減衰力やギアレシオのチューニングも見直した。18インチタイヤの採用はライバル車であるMPV23T、エスティマアエラスSパッケージにも対応したもの。マイナーチェンジのタイミングは悪かったが、中身はライバル2車のフルモデルチェンジに充分応戦できるほど大がかリなものだ。
アブソルートは専用タイプ

アブソルート ヘッドライトはブラック&スモークタイプのヘッドライトで精悍。フォグはアブソルート専用
外観の処理もアブソルートは専用タイプとなり、フロントグリルとテールゲートガーニッシュをダーククロームメッキ化。ヘッドランプとリアコンビネーションランプをブラック&スモークタイプにしている。ほかのグレードも外観には大幅なアレンジを加え、フロントグリル&バンパー、テールゲート、リアバンパーが新デザインになった。特にフロントマスクは中央に1本の太いバーを通し、インパクトの強い顔立ちだ。グレード構成も改め、ベーシックなB、Mエアロパッケージを追加。’05年のマイナーチェンジでベーシックなSを廃止し、’06年にBとして復活させた点にはホンダの迷いも感じるが、現行オデッセイは登場して2年半を経過する。今後は買い得な特別仕様車を設けることもあるだろうから、そのベースとして活用する意味でも安価なグレードは不可欠だ。実際、225万7000円というBの価格は、以前のSより約5万円安い。
オデッセイの走りはどう変わった? 人気のライバル車とマルチチェック!!

オデッセイ 1550mmという立体駐車場にも入る全高が特徴。ミニバンというよりちょっと大きい走りのいいワゴンという感じ
オデッセイの走りはどう変わった? 人気のライバル車とマルチチェック!!TEXT/渡辺陽一郎ROUND1 ハンドリング対決オデッセイは低床プラットフォームの採用で全高を1550mmに抑えた。全幅は1800mmに達するから、ボディの縦横比は5ナンバーサイズのワゴンに近い。ボディを入念に作り込んで剛性も高めたから、16インチタイヤにノーマルサスペンションを組み合わせたMでも走行安定性は高水準。素早い切り返しを強いられても左右に振られる腰高感がなくミニバンではかなり安定したハンドリング。アブソルートは、そのバランスが取れたハンドリングを素直にレベルアップさせたもの。18インチタイヤと硬めのサスペンションで以前のアブソルートより曲がりやすいが、過度に向きを変える子供っぽい性格ではない。後輪を安定させるセオリーを守ったうえで、スポーティセダン風の回頭性を身につけた。家族で乗るミニバン本来の使い方を想定すれば、快適性に優れたMが魅力的だ。しかし、オデッセイの性格を明確に表現しているのはアブソルート。快適性を損わずにスポーティセダン並みの走りを楽しめる。エスティマは、フラットフロアのハイルーフミニバンでは全高が1730mmと低め。それでも重心はオデッセイよりも高く、セダンに近いハンドリングとはいえない。従ってノーマルサスペンションに17インチタイヤを組み合わせたアエラスやGがベスト。18インチには少々粗さを感じる。ただし、V6エンジン搭載車は4気筒版よりもフロント荷重が約70kg重く、スポーティに走ると少々曲がりにくい。V6で素直な操舵感覚を求めるなら、18インチのアエラスSパッケージを選ぶ手もあると思う。そしてMPVはオデッセイとエスティマの中間的な乗り味。エスティマよりは重心の低さを感じるが、オデッセイほどセダン的でもない。そしてミニバンのわりには曲がりやすさに重点を置いていて、コーナリングの状況次第では後輪の安定感が乏しく感じることもある。しかし挙動の変化が分かりやすく、上手なドライバーには運転を楽しめるタイプだろう。安定指向のオデッセイに対し少々趣味性の感じられる味つけだ。
ROUND2 エンジン対決

オデッセイ(2.4NA、標準は160ps、アブソルートは200ps) オデッセイの今回のビッグマイナーチェンジではエンジンの変更はなし。標準タイプは160ps/22.2kgm、アブソルートは200ps/23.7kgmを発生する2.3L直4エンジンを搭載している。アブソルートは、足回りが強され、18インチタイヤを装着
ROUND2 エンジン対決オデッセイのMとアブソルートでは、加速感がかなり異なる。Mは実用トルクを重視しており、スロットルを大きく開いて加速するよりも、アクセル開度を抑えて街中を走っている時にメリットを感じる。フル加速では効率のいい回転域を使って速度を高めるが、それゆえにCVTは最大トルクを発揮する4500回転付近を多用。最高出力を発揮する5500回転付近まで、一気に回転を高めることはない。その点、アブソルートは6800回転で200psを発揮する。しかもATが有段ギア式の5速だから、エンジン回転の上昇も俊敏。Dレンジでフルにアクセルを踏み込むと、5000回転を超えた領域で吹け上がりが鋭くなり、6800回転付近まで回り切る。Mではほとんど使われない高回転域が楽しい。ゆったりと巡航するならM、高回転域まで使ってスポーティに走るならアブソルートだ。ただ星なしは今時いただけないので減点。エスティマにも2種類のエンジンがあるが、これは性能も性格もまったく違う。V6の3.5Lは当然のことながら非常にパワフル。最大トルクを4700回転で発揮する設定とあって、4000回転を超えた領域で速度の上昇に拍車がかかる。ここからシフトアップが行なわれる6000回転付近までは実にダイナミックだ。逆に2.4Lは、車両重量を考えるとトルクが不足気味。実用エンジンという印象を受ける。MPVもノンターボは動力性能がネック。街中は良いが、高速道路の登坂は少々辛い。ただし、3800回転付近から吹け上がりがよくなり、動力性能は高くないがドライバーのストレスは意外に溜まらない。これが2.3Lのターボになると、かなり力強い。発進直後の1500回転前後でも相応のトルクを発揮する。実用トルクを高めた3Lくらいのエンジンを積んでいる感覚だ。 結論をいうと、エスティマの2.4LとMPVのノンターボは実用指向。オデッセイのMのほうが滑らかで快適だ。これがハイパワーユニットの比較になると、力強さという点でオデッセイのアブソルートを凌ぐ。しかし「加速感」としてみれば、アブソルートの魅力も捨て難い。
ROUND3 動力性能対決

アブソルートの吹け上がりのいい200psの2.3L直4ユニットとMPVターボとの差はどうか?
ROUND3 動力性能対決オデッセイのアブソルートとMの加速タイムを比べると、当然のことながらアブソルートの方が優れた数値だ。ところが、体感されるほどの違いはない。両グレードでは最高出力に40馬力の差があるが、160馬力仕様のMもCVTによって効率のいい加速をしているわけだ。性能の違いよりも、アブソルートはダイナミック、Mはスムーズという感覚的な部分に選び分ける価値があるように思う。その意味では、CVTにも7速の疑似変速モードが備わるが、これはあくまでもオマケ的な機能。セレクトレバーはDレンジに固定し、変速操作はCVTに任せるのが本来の使い方だろう。フィーリングに応じて2種類のエンジンを用意するあたりは、走りにこだわるホンダらしさだ。いっぽう、エスティマとMPVに用意される2種類の上級エンジンは、感覚的な面だけでなく動力性能の違いも大きい。高回転域まで伸びる気持ちよさならオデッセイのアブソルートだが、絶対的な性能となれば、エスティマの3.5L V6エンジンやMPVの2.3Lターボがモノをいう。加速タイムを見ると、停止から時速100kmまでの所要時間はエスティマ、中間加速はMPVが有利だ。エスティマは高回転域の伸び、MPVのターボは実用トルクが優れており、それがタイムに表現された。双方ともにパワフルだが、特にエスティマの3.5Lは料金所を抜けた後の加速などで、その楽しさを味わえる。
ROUND4 居住性対決&ROUND5 ラゲッジ容量対決

2列目シートは6対4分割可倒式でダブルフォールディングが可能。3列目から乗り降りしやすいウオークイン機構も備える。3列目シートはシートバックを倒し、全体を手前に反転し、スピーディに床下に収まる。2台に比べヘッドスペースに狭さを感じるが低床フロアのため2列目シートは快適
ROUND4 居住性対決2列目シートはオデッセイ、エスティマ、MPVともに、サイズを充分に確保して快適だ。エスティマとMPVの取材車両にはオットマンも付いていた。これは、座面の下側にあるパッドを持ち上げるとふくらはぎが支えられてリラックスできるもの。エスティマの場合、スペースに余裕があるからとバックレストも後方に倒して寝そべって座ると、着座姿勢が不安定になる。走行中に使用する場合は、極端にオットマンを持ち上げたり、バックレストを倒したりしないほうがよい。3列目は、3車とも2列目ほど快適ではない。特にオデッセイは低床プラットフォームで床の高さを抑えたが、3列目の床下には燃料タンクがある。そのために床も高まり、座ると膝が大きく持ち上がる。低重心と引き替えに、3列目の居住性が妨げられたわけだ。MPVの3列目も膝が持ち上がりやすいが、オデッセイほどではない。座面にSバネを採用して座り心地にも配慮し、多少は快適だ。エスティマは3車のなかで唯一全高が1700mm以上。フラットフロア構造で3列目に座っても床から座面までの寸法を充分に取れるはずだが、実際は膝が持ち上がる。現行型では3列目を床下格納にしたため、座面やバックレストも薄手だ。もう少し座面の前方を持ち上げると、大腿部が座面から離れにくくなって快適に座れるだろう。オデッセイにオットマンはないが、その分、座面の角度などはちょうどいい。ただし、ミニバンとしては、もう少し2列目シートを後方に寄せたいところだ。そうすれば3列目を使っていない時、ゆったりと座れる。ROUND5 ラゲッジ容量対決オデッセイは床下収納、MPVも同じ作りだが座面も連動して格納は一瞬だ。エスティマは収納スペースは充分だが収納にちょっと時間がかかる。
ROUND6 質感対決

マホガニーの木目調パネルが組み合わさる新色のビスタ。右上はアブソルートに新設定されたウォームグレーのインテリア。立体自然発光メーターはレッドからブルーに変わり見やすくなった
ROUND6 質感対決上質な雰囲気が感じられるのはエスティマ。キメの細かな作り込みで洗練された印象だ。オデッセイは若者向けでスポーティ。しかしそれでいてよく見ると質感も高い。MPVは全体的にシンプルな印象。スポーティだが、大人っぽい雰囲気に仕上げている。3車とも印象は違うが多くの人が質感が最も高いと感じるだろう。
ROUND7 乗り心地対決

アブソルートはスプリング、スタビライザー、ブッシュ類を強化するとともにダンパーの減衰力特性を最適化。またアブソルート専用の新デザインの18インチホイール(225/45R18)を採用
ROUND7 乗り心地対決オデッセイのアブソルートは、18インチタイヤの装着に加えてスプリングやスタビライザーも強化したから、乗り心地は硬めの設定だ。しかし、乗員に不快感を与える粗っぽいものではない。適度に引き締まった印象があり、高速でウネリを通過した時などはむしろ快適。クルマの土台となるボディの骨格をしっかりと作り込んだことで、そこに取り付けられたサスペンションも正確に働いていると感じる。硬めではあるが、不快感は伴わない。また、18インチのタイヤを履くなら、この程度の硬さは必要。ただし、スポーティセダン並みの性能を求めず、走行ルートも市街地が中心。そこでミニバンらしい快適性を重視するならMがいい。乗り心地に優れ、低重心によってミニバンでは走行安定性もいい。CVTの滑らかな加速感も含め、走行性能のバランスが全般的に優れる。いっぽう、エスティマはオデッセイに比べると重心が高く、やや腰高な印象を伴う。しかし、現行型はプラットフォームから見直しを図っており、アエラスやGに装着される17インチタイヤ装着車であれば、乗り心地とのバランスも図られている。注意したいのは18インチタイヤを装着したアエラスSパッケージだ。硬めの乗り心地が視線の高さと不釣り合いに思える。フロント荷重の大きなV6モデルをしっかりと曲げるには18インチの必要性も感じるが、ファミリーカーとして使う場合は17インチがベストだろう。それでも先代型のアエラスSに比べれば、かなり快適になった。MPVは、開発段階で基本となった23Cスポーツパッケージの17インチタイヤ装着車がベスト。純粋に乗り心地だけを求めるなら23Cや23Fの16インチだが、これは動きに少々鈍さが感じられ、MPVらしさが希薄になる。乗り心地と適度に反応するハンドリングの両立という点では、23Cスポーツパッケージのバランスがベストだ。オデッセイのMに比べると若干腰高な印象だが、乗り心地は悪くない。多人数乗車を前提にすれば、このくらいの硬さがちょうどよいと思う。
総合結果は?

総合結果は?各項目の採点を合計すると、MPVが1位、6点差でオデッセイが2位、エスティマが少々差を付けられて3番手になった。ただし、今回は試乗記を軸にした採点とあって、ハンドリングの評価を細分化している。その累積点数が総合得点に響き、高重心のエスティマが不利になったことも事実だ。ちなみにハンドリングの評価を除くと、オデッセイ62点、MPVが71点、エスティマが78点になる。この3車は比較的運転の楽しさを大切にしているが、その中でも特に走りに特化させたのがオデッセイとMPV。エスティマは居住性や乗り心地、質感にも重点を置いたバランス型。