輸入車
更新日:2022.06.09 / 掲載日:2022.06.04
BMW 3シリーズ/気になる中古車【試乗判定】

文●竹岡 圭、ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス
※中古車参考価格はすべてグーネット2022年5月調べ。
(掲載されている内容はグーワールド本誌2022年7月号の内容です)
※ナンバープレートはすべて、はめ込み合成です。
一般ユーザーが乗っている使用過程車をテストすることで、新車ではわからない実力をチェックするのがこのコーナー。売れ線中古車の本当のトコロを厳しい目線でインプレッション! 果たしてその結果やいかに!?
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自動車ジャーナリスト【竹岡 圭】
カーライフのサポーターとしてTVやラジオなどでもおなじみの人気自動車ジャーナリスト。全日本ラリーにも参戦経験を持つ。2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
運転支援技術を進化させたスポーツセダンの定番
変化しつつあるBMWを象徴するような1台

編集部●気になる中古車を実際に試乗することで、その実力をチェックしようというのがこのコーナー。今回はBMW、そして輸入車を代表するスポーツセダンである3シリーズが登場です。お借りした車両は2019年モデルで、グレードは「320i」、走行距離は2万2000kmです。
竹岡●なんかずいぶん立派になったよね現行型3シリーズ。
編集部●気になって調べてみたのですが、ボディサイズはE39型5シリーズとほとんど変わらないんですよ。ここ20年でクルマはずいぶん大きくなったんだと実感しました。
竹岡●ユーザーニーズに応えていくためには仕方ない部分なのかもね。今のポロは昔のゴルフと同じだし。それにしても今度の3シリーズは大きくイメージチェンジしたよね。
編集部●はい。何より、ブランドアイデンティティであるキドニーグリルが左右がつながる新デザインに変わりました。また、スタイリングは全体的に立体的でキャラクターラインを強調しています。
竹岡●もっと変わったのがインテリアだよね。ナビ画面がタッチ操作に対応するようになってレイアウトが手前になったし、メーターもフル液晶タイプを採用した。先代モデルは先進運転支援技術にあまり積極的じゃなかったのに、高性能な3眼カメラも搭載して渋滞時にはハンズフリーまで実現しちゃった。
編集部●はい。一気にクラスをリードする内容になりましたね。
竹岡●ブランドの考え方が変わったんじゃないかと私は考えてるのね。これまで、「クルマはドライバーが操るもの」っていう方針だったのが、時代の変化に合わせて運転支援技術や電動化を積極的に受け入れ、かつBMWらしい使いこなし方に重きを置いている。例えば、メーターは液晶だけど、タコメーターや速度メーターの部分はモードを切り替えても場所や大きさが変わらない。
編集部●メーターは運転に関わる根本なので、利便性よりも大切という認識なんですね。たしかにそれはBMWっぽいなと思います。
竹岡●BMWってメルセデスやVWに比べたら企業規模は小さいわけじゃない。だからこそ、自分たちの存在価値がどこにあるのかを真剣に考えつつ、時代に合わせて挑戦していってるんだろうね。
編集部●そんな現行型3シリーズが日本に導入されたのは2019年3月で、184馬力の「320i SE」、「320i」、「320i Mスポーツ」、258馬力の「330i Mスポーツ」でスタート。同年5月にディーゼルで190馬力・4WDの「320d xDrive」と292馬力のプラグインHVの「330e Mスポーツ」、そして387馬力のハイパフォーマンスモデル「M340i xDrive」が追加になりました。また、2020年には、環境モデルにお買い得な「エディションジョイ+」が設定されています。また、2020年に設定された「318i」は、先進運転支援技術を搭載しながら価格を抑えたモデルです。
竹岡●改良というよりも、装備の見直しがメインってことね。
編集部●そうですね。では、そろそろ試乗のほうをお願いいたします。
「BMWが新しい時代に向け挑戦していることが伝わってくる変化」

DETAIL CHECK
SUVとの差別化を目指したのか走りは想像よりもかなりスポーティ

編集部●さて、試乗から戻ってきましたので、感想を伺います。
竹岡●かなりスポーティでびっくりした。速度が高くなると動きが安定してくるタイプだから、高速でロングドライブしても疲れにくいだろうね。ステアリングの反応がかなりクイックで、ちょっと手を動かすだけでクルマが反応するから、ドライバーは楽しいんだけど、同乗者は車酔いするかもしれないから、ていねいな運転を心がけてほしい(笑)。
編集部●わかります。4ドアセダンなのに、まるでクーペみたいに走りますよね。
竹岡●先代モデルに対してターボを改良した効果がかなり出ていて、アクセルを踏んだときの反応がいい。でも、惜しいのがエンジンが高回転域で頭打ち感があるところ。そこは「330i」をどうぞってことなのかな。「320i」は、久々にターボチューンしてみたくなった。そういう楽しみ方もありだと思うよ。
編集部●乗り心地も引き締まってはいますが、後席でも大丈夫でした。
竹岡●BMWはランフラットタイヤを長年使い続けてきているけど、タイヤの硬さがほとんど気にならないくらいセッティングが上手になった。それで肝心な中古車相場だけど、どうなってるの?
編集部●今回の試乗車と同じような条件で探すと、300万円半ばから400万円といったところでしょうか。台数は多く探しやすいです。
竹岡●現行型だし、クルマの内容を考えると納得かな。イメージ的にも3シリーズってそのくらいの金額で手に入れたいから、中古車は大いにアリだと思います。

一気にクラストップレベルに 進化した先進安全装備

現行型モデルの大きな進化となるのが、高速道路での渋滞時に手放し運転に対応するなど先進安全装備の充実。また、ナビまわりの操作は自然対話式の音声認識が導入され、クルマと会話をするようにエアコンやナビの操作が可能。
ボディサイズ拡大の恩恵はゆとりを増した後席空間

前輪と後輪の距離を広くしたことで、後席の足もと空間が広くなり、大人4人でも長距離移動が快適になった。写真はベーシックグレードだが、「Mスポーツ」では室内色が黒基調となり、シート形状もスポーティなテイストになる。
ガソリン仕様は同じ排気量でグレードで最高出力が異なる

エンジンは主に2L直列4気筒で、ガソリンとディーゼルが用意される。ユニークなのが、ディーゼルは4WD仕様となり価格的にもガソリンよりも上に位置すること。そのため、現行モデルの人気グレードは「320i」となっている。
セダンであることがデメリットにならない広々としたトランク

ラゲッジ容量は480L。後席は3分割可倒式となっているため、荷物の長さや乗車人数に合わせたアレンジも豊富になっている。背もたれを倒すためのレバーはトランク側にあって使いやすい。
試乗判定レビュー

竹岡 圭
ポジショニング[10点]
3シリーズは、ボディサイズも大型化しパワーもアップしたこともあって、従来の5シリーズの役割もこなすような存在になりましたよね。室内もかなり広くなりましたが、立体駐車場の幅で困る方もいるかも……。だからといって保守的になるのではなく、独自のサポート技術など新しい試みにチャレンジする姿は、さすがBMWといったところです。
装備[10点]
センターディスプレイが手が届くところに位置して、タッチ操作が可能になったり、「OK!BMW」の呼びかけに応えるボイスコントロールも導入するなど、i-Driveにこだわりすぎない姿勢が、フレキシブルに感じられて好印象。デジタルメーターのスピードメーターとタコメーターの位置とサイズは変化させないというこだわりはアッパレですね。
走り[9点]
じつは320iも330iも同じエンジンで、制御によってパワーをコントロールしているタイプ。その分320iは使い切っていないゆとりがありますが、逆に無理に抑えている感を感じる方もいらっしゃるかも。でもターボを上手に扱うことで、低回転域からしっかりトルクも出ているし、小まわりも驚くほど利くので、毎日のお供としてつきあいやすさ抜群です。
グーワールド 編集部
ポジショニング[10点]
「定番のスポーツセダン」と紹介されがちな3シリーズですが、現行モデルは時代の変化に合わせてキャラクターを微妙に変えています。大型化で存在感と使い勝手を高める一方で、従来からの個性であるスポーツ性能はクーペレベルにまで高められました。つまり、スポーツセダンとしての3シリーズの個性をより強くしたと解釈できます。
装備[10点]
これまでBMWは、ドライバーの自主性を重んじたクルマ作りをしてきましたが、最新世代では一気にサポート機能が充実。より安全で快適なクルマになりました。一方で、駆け抜ける歓びというブランドコンセプトはさらに鮮明に。特にMスポーツのステアリングは驚くくらい太くなりました。内外装の質感はベーシックグレードでも十分高いです。
走り[9点]
ドライバーの思考をクルマが先読みしているかのようなシャープなハンドリングに驚きました。ハンドルをクルクルと回さなくてもクルマが向きを変えてくれるので、ボディが大きくなったこともそれほど気になりませんでした。都市高速を走ったときの爽快感は格別で、ベーシックモデルの「320i」でも力不足を感じることはありませんでした。
[BMW M Performance]別格の実力!Mパフォーマンスモデル/BMW M340i xDrive

標準モデルとBMW Mモデルの中間に位置する高性能グレードが「M340i xDrive」。エンジンはシリーズで唯一の直列6気筒ターボで排気量は3L。最高出力387馬力とハイパワーで乗り心地も快適という欲張り仕様だ。



