輸入車
更新日:2022.04.06 / 掲載日:2022.04.04
メルセデス・AMG E43 4マチック/気になる中古車【試乗判定】

文●竹岡圭、九島辰也、ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス
(掲載されている内容はグーワールド本誌2022年5月号の内容です)
※中古車参考価格はすべてグーネット2022年3月調べ。
※ナンバープレートはすべて、はめ込み合成です。
一般ユーザーが乗っている使用過程車をテストすることで、新車ではわからない実力をチェックするのがこのコーナー。売れ線中古車の本当のトコロを厳しい目線でインプレッション! 果たしてその結果やいかに!?
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自動車ジャーナリスト【竹岡 圭】
人気TV番組「おぎやはぎの愛車遍歴」の進行役としてもお馴染みの、人気自動車ジャーナリスト。2021-2022 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

自動車ジャーナリスト【九島辰也】
長年にわたり男性ファッション誌や一般誌でも活躍し続ける自動車ジャーナリスト。その知見は広く、プライベートでも各国のクルマを乗り継ぐ。
AMGが手掛けたハイパフォーマンスセダン
拡大を続けるAMGで保守本流的な位置付け

編集部●気になる中古車を実際に試乗することで、その実力をチェックしようというのがこのコーナー。今回は、メルセデスのサブブランドであるAMGからEクラスをベースにしたE43 4マチックが登場です。お借りした車両は2017年モデルで、走行距離は9万2000kmです。
九島●いい機会だから現在のメルセデスのブランド戦略を簡単におさらいしよう。まず中心になっているのが「メルセデス・ベンツ」。その下に、電動化ブランド「メルセデス・EQ」、ラグジュアリーを極めた「メルセデス・マイバッハ」、そして今回紹介するパフォーマンスを重視した「メルセデス・AMG」という3つのサブブランドを展開している。
竹岡●AMGも種類が増えたよね。AクラスからSクラスまで全部にAMGモデルがあって、さらに性能と装備によってグレードも用意されてるんだからよりどりみどり。ちなみに命名ルールは、モデル名の下に性能を表現した二桁の数字の組み合わせになる。Eクラスだったら、「E43」、「E53」、「E63」で、甘口、中辛、辛口みたいな(笑)。
九島●わかりやすい(笑)。AMGというとまず「63シリーズ」を思い浮かべる人も多いんだけど、この「43シリーズ」って、通好みというかじつは人気あるんだよね。
竹岡●高性能で見た目もスポーティなんだけど、やり過ぎてないっていうところが絶妙なのかも。「63シリーズ」は存在感も性能も凄いけど、普段乗りにするんだったら「43シリーズ」はいいチョイスだと思う。
九島●専用グリルやボンネットのパワードームが備わってるおかげで、普通のEクラスの「AMGライン」装着車とも差別化できてる。後期はパナメリカーナグリルになったからもっとグッドルッキングになった。
編集部●今回試乗していただくのは、2016年にフルモデルチェンジした現行型EクラスをベースにしたAMGモデルです。「E43」は3LV6ツインターボで401馬力、「E53」は3L直6ターボ+モーターで435馬力、そして「E63」が4LV8ツインターボで571馬力と612馬力(E63S)という布陣です。
竹岡●全車が4WDの「4マチック」になってるのもポイント。雪国仕様じゃなくて、パワーをしっかりと路面に伝えるためのスポーティなやつね。これのおかげで雨が降っても安心して乗れちゃう。
九島●そうそう、サスペンションもAMGモデルは全車エアサスペンションが標準。快適性はむしろベースモデルよりも上かもしれない。スポーティなだけでなく、安全性と快適性をないがしろにしないのは流石メルセデスだね。
編集部●改良にまつわる情報なのですが、注目したいのは2020年のマイナーチェンジです。ここで内外装のリフレッシュが行われ、インフォテインメントシステムも「MBUX」にアップデートされました。
九島●そういえばSクラス、Cクラスとフルモデルチェンジしているから、来年あたりEクラスも改良されるかもしれないね。
竹岡●逆に言えば今のEクラスは熟成されて完成度が高いと。
編集部●ではそろそろ試乗のほうをよろしくお願いします。
九島「クルマ好きにはたまらないよくできた高性能セダン」
竹岡「個人が手に入れられるクルマの最高峰に位置する存在」

【モデルバリエーション】究極の高性能を追求するAMGモデルたち


「究極のハイパフォーマンスを追求する」というのがAMGモデルの立ち位置。Eクラスでは、頂点に4LV8ツインターボの「E63」が君臨。現行モデルでは「E43」に代わり3L直6ターボにモーターを組み合わせる「E53」が存在する。
DETAIL CHECK
Eクラスだから得られる世界がたしかにある

編集部●さて、試乗を終えられた二人に感想をうかがいましょう。
竹岡●見た目は優しい系だけど、中身はしっかりAMG。V8ほどの高性能はいらない、でも普通のEクラスじゃつまらない……っていう人たちに受け入れられているのも納得。最近はダウンサイジングエンジンが多いけど、排気量の大きなマルチシリンダーって、やっぱり独自の魅力がある。パワーもちょうどいい感じでとにかく乗りやすい。
九島●そうだね。普通に走らせてる分には普通に快適で、ダイナミックセレクトを「スポーツプラス」にしたらかなり楽しめた。音も迫力あるし。試乗車は走行距離が多かったけど、パワーも出てたし内装もくたびれてなかったな。なによりEクラスって、当たり前だけどCクラスよりすべてに余裕があるよね。改めてそれが印象的だったよ。
竹岡●Cクラスも新型になるたびに進化しているけど、Eクラスはパーソナルユースの頂点だもんね。そういう部分でも所有欲を満たしてくれるところはあると思う。
九島●個人的には「C43」のコスパに惹かれてたけど、乗り比べると「E43」の総合力は高いよ。それで中古車相場はどんな感じなの?
編集部●「E43」に限ると500万円から600万円といったところでしょうか。新車価格がおよそ1150万円だったので、ちょうど5年で半額くらいです。
竹岡●保証がしっかりしている物件だったらアリだと思う。パワーのある高級セダンって輸入車の華だし。
九島●これでまた中古車をチェックする時間が増えちゃうな(笑)。
Eクラスをもとにスポーティなあしらいを施したインテリア

2枚の液晶ディスプレイが横一列に並ぶコックピット。AMGモデルらしくパネル類のあしらいはスポーティかつラグジュアリー。2020年の改良でインフォテインメントシステムが自然言語対応型の「MBUX」に進化している。
快適性はそのままにスポーティな走りにも対応

座り心地のよさとサポート性能を両立させたAMGスポーツシートは標準モデルとの大きな違い。表皮も上質なナッパレザーが使われている。また、後席の広さはベースモデル譲りで、言い訳なしに使える快適な空間となっている。
ラゲッジルームの広さはベースモデル譲り

トランクルームは広く、3セットのキャディバッグをリアシートを倒すことなく搭載可能(Burmesterサラウンドシステム装着車を除く)。後席は3分割可倒式なので、長尺物を積載するときのアレンジも豊富となっている。
AMGモデルならではの高性能を誇るV6エンジン

276M30型3LV6ツインターボエンジンは401馬力を発生。ドライブモードによる多面性を備えていて、「Eco」や「Comfort」にすれば静かでスムーズな走りを味わえるし、「Sport+」にすればAMGに期待する猛々しさを表現する。
【メルセデス・AMGならではのメカニズム】AMGが隅から隅まで走りを磨き上げた

標準モデルとの違いはエンジンだけにあらず。サスペンションはエアサスが標準となり、ステアリング機構やトランスミッション、4マチックのセッティングもAMGモデル専用。駆動力配分は31対69でリア優勢のセッティングとなっており、スポーティな走りを実現する。
試乗判定レビュー

竹岡 圭
ポジショニング[10点]
他人とは違うメルセデスに乗りたいというニーズ。特にEクラスのレベルになると、必ずあると思います。となると、やはりAMGということになりますが、パワーはそんなにいらない、乗り心地もスパルタンじゃなく、そこまでスポーティじゃなくていいという方、意外と多いんじゃないかと思うんです。そんな方たちにピッタリなモデルだと思います。
装備[9点]
AMGモデルのなかではベーシックなグレードとなるので、いわゆるAMGの独特の感じは薄まっている代わりに、違和感なく使いやすいといったところでしょうか。でも必要にして十分だし、所有欲もバッチリ満たしてくれるという、ある意味コストパフォーマンスの高いモデルだと思います。「Hiメルセデス」以外は、ほとんどついてる感じですから。
走り[10点]
誰もが聞いたことのあるAMGのブランド力と高級セダンの王道であるEクラスの組み合わせは文句なし。AMGモデルのなかでパワーと使い勝手のバランスを重視した「43シリーズ」。それでも400馬力を超えるパワーは圧倒的だ。Eクラスもいまや2L直4が主流となっているが、大排気量エンジンならではの魅力を味わわせてくれる。
九島辰也
ポジショニング[10点]
誰もが聞いたことのあるAMGのブランド力と高級セダンの王道であるEクラスの組み合わせは文句なし。AMGモデルのなかでパワーと使い勝手のバランスを重視した「43シリーズ」。それでも400馬力を超えるパワーは圧倒的だ。Eクラスもいまや2L直4が主流となっているが、大排気量エンジンならではの魅力を味わわせてくれる。
装備[9点]
装備の充実具合や安全技術はクラストップレベル。むしろライバルとなるのは身内のCクラスで、こちらは新型だけあってSクラス譲りの縦型モニターを装備する。つまりコックピットデザインはひと世代前のものになることをどう判断するか。エアサスやAMG仕様の4マチックといったベースモデルにはない装備が備わっているのも好材料。
走り[10点]
自然吸気のV8エンジンを思わせるようなフィーリングにニンマリ。流石にサウンドはターボエンジン特有の低音が効いたものとなるが、それはそれで心地いい。スポーツモードではまるでレーシングカーのようなサウンドを奏でるが、近年のメルセデスはパワーだけでなく効率も重視。乗り心地もそうで、運動性能は高いが快適性も十分に確保されている。
グーワールド 編集部
ポジショニング[10点]
誰もが知っているAMGの高級セダンということで、一目置かれているEクラスのAMGモデル。かつて「E500」といったスーパーセダンに胸を躍らせたクルマ好きならば特に興味深いはず。注目は中古車の市場価格。SUV人気に押されて高級セダンは比較的に価格が下落傾向にあり、5年落ちで新車価格の半額あたりで購入できます。
装備[9点]
ベースモデルのEクラスですら最高峰の安全装備と快適装備を備えるところに、さらにスポーティなテイストと上質な素材を使っているのが「E43」。前期モデルは「MBUX」が搭載されていませんが、そこは後期モデルの中古車価格との相談となるでしょう。独自メカも多く、故障時には高額修理が想定されるため、保証付きをオススメします。
走り[10点]
とにかく獰猛さと過剰さが際立つ「E63」に対して、バランスに優れているのが「E43」です。パワフルであっても扱いやすく、ハンドリングだってどこまでも正確でありながら乗り心地はきちんと高級セダン。後席から苦情が来ることもないでしょう。このバランスのよさをつまらないと感じるか、完成度が高いと感じるかは、もう好みの問題です。
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