輸入車
更新日:2021.03.04 / 掲載日:2021.03.04

メルセデス・ベンツ Aクラス/気になる中古車【試乗判定】

2019年モデル メルセデス・ベンツ A 180

文●竹岡圭、九島辰也、ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス
(掲載されている内容はグーワールド本誌2021年4月号の内容です)
※中古車参考価格はすべてグーネット2021年2月調べ。
※ナンバープレートはすべて、はめ込み合成です。


一般ユーザーが乗っている使用過程車をテストすることで、新車ではわからない実力をチェックするのがこのコーナー。売れ線中古車の本当のトコロを厳しい目線でインプレッション! 果たしてその結果やいかに!?

Member Profile

  • 自動車ジャーナリスト【竹岡 圭】
    人気TV番組「おぎやはぎの愛車遍歴」の進行役としてもお馴染みの、人気自動車ジャーナリスト。2020-2021 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

  • 自動車ジャーナリスト【九島辰也】
    長年にわたり男性ファッション誌や一般誌などでも活躍し続ける自動車ジャーナリスト。その知見は広く、プライベートでも各国のクルマを乗り継ぐ。

高い実力と先進性を備えた「小さなメルセデス」

クルマとして高い魅力を備える現行モデル

編集部●気になる中古車を実際に試乗することで、その実力をチェックしようというのがこのコーナー。今回は、メルセデス・ベンツのコンパクトカーであるAクラスが登場です。お借りした車両は2019年モデルで、グレードは「A 180」、走行距離は1万4000kmです。
竹岡●最近はSUVのニューモデルが多いから、こうしてハッチバックを見ると、スポーティでいいね。
九島●このAクラスは現行モデルだよね。何世代目になるんだっけ?
竹岡●おにぎりみたいな形だったのが初代で、2代目でそれがちょっとカッコよくなって、3代目で普通のハッチバックになって……。で、これだから4代目だ。気がつけばAクラスも歴史あるんだね。
編集部●初代モデルが本国で発売開始されたのは1997年ですから、もう20年以上になりますね。
九島●え! そうなのか~。時間が経つのは早いね(笑)。もともとメルセデスは、初代Aクラスを開発するときに、環境問題を解決するための、次世代パワートレイン搭載車として企画していたんだ。
竹岡●電気自動車とFCV(燃料電池自動車)も企画して、そのメカを収めるために二重フロアにしたんだよね。おかげで、Aクラスは小さくても大型車に匹敵するくらい安全になった。
編集部●どうしてメルセデスは、経済性が重視される小型車でそんな凝った構造を採用したんですか?
九島●そこは自動車を発明したメーカーとしての責任感だろうね。当時から環境問題は深刻だったから、小型車に参入して販売台数を増やすだけでなく、同時に環境性能の高いクルマであるべきと考えたわけだ。
竹岡●メルセデスの凄いところだよね。結局、シティコミューターとしての役割はスマートに譲ったけど、そのことでAクラスはフルモデルチェンジするたびに“小さな高級車”として魅力的になってきたでしょ。
九島●そういうこと。ダウンサイザーの受け皿になったし、新しい顧客層を随分と獲得しているはずだよ。ブランドの若返りもAクラスの大切な役割だから。
編集部●2020年の輸入車販売ランキングでメルセデスは1位を獲得しましたが、Aクラスはブランド内で最も多く販売された車種として貢献しています。
竹岡●現行モデルは、ルックスもますますカッコよくなったし、「ハイ、メルセデス!」で起動するインフォテインメントのMBUXもすごく話題になったね。
九島●これまで新技術はSクラスから搭載されていたけど、MBUXはAクラスからだった。そういうところでも、新しい時代を感じるな。
編集部●そんな現行型が日本に導入されたのは2018年10月で、1.4Lガソリンターボの「A180」(136馬力)からスタート。2019年3月に2Lディーゼルターボの「A 200 d」(150馬力)が追加されました。
竹岡●ボディサイズも先代より大きくなって、ゴルフよりも立派な感じ、室内も特に後席が快適になった。
九島●メルセデスがコンパクトカーづくりにいよいよ慣れてきたね。
編集部●それではそろそろ、試乗のほうをよろしくお願いします。


九島「CLS風のルックスは小さくても存在感がある」

竹岡「大きなメルセデスから乗り換えても満足できる」

DETAIL CHECK

ボディは小さくても実力はメルセデス基準

編集部●さて、試乗が終わりましたので、お二人から感想を伺います。
竹岡●上手だよね。インテリアは質感が高くて、インフォテインメントまわりも上級モデルと同じイメージに仕上げられてる。だからもっと上のクラスから乗り換えても、きっと満足できると思う。
九島●走りも悪くなかったよ。メルセデスはFFづくりの勘所をつかんだね。その辺は先代モデルから確実に進化してる。ただ、今日試乗させてもらった「A 180」はガソリン仕様だけど、個人的にはディーゼル仕様の「A 200 d」のほうが好印象だったかな。コーナー出口での加速はあっちのほうが気持ちよかった。
竹岡●それは同感。ガソリン仕様はちょっと薄味というか、物足りなさがある。もちろん、走って遅いとか、加速しないって意味じゃないよ。後ろの席はどうだった?
編集部●はい。先代モデルに比べたら空間は確実にゆとりは増えましたが、全長からすれば、ライバルより特別広いわけではなかったです。
九島●ハッチバックはクーペ的なキャラクターだからね。後席を重視するならAクラスセダンかな。
竹岡●運動性能でもセダンはレベル高かったな。しっかりしてて。
九島●運動性能といえば、メルセデスAMGの「A 35」はいいクルマだ。「A 45」はちょっと街乗りにはハードすぎるけどね。
竹岡●日常での使い勝手は犠牲にしないのに、スポーティな走りをすればすごく満足できる。
九島●スーパースポーツオーナーのセカンドカーなんかにカッコいいね。そう考えると、Aクラスって幅広いキャラクターがあるね。中古車市場はどうなの?
編集部●さすが人気モデルだけあって高値安定です。300万円スタートで、中心価格は300万円から400万円といったところです。
九島●それだと新車が気になってくる……というところだけど、装備によっては500万円を超えてしまうから、妥当といえば妥当か。
編集部●そうなんです。人気と実力がバランスしているので、ある意味で間違いない選択だともいえます。
竹岡●価格と内容に納得できれば、どちらも買いってことね。

話題のインフォテインメント技術「MBUX」を初めて採用

 2枚の液晶モニターを並べたインフォテインメント系は、このAクラスから導入された。自然対話式音声入力にも対応する「MBUX」も話題となった。エアコンなど一部操作が音声で行えるのに加え、オンラインサービスを利用することで、各種情報をリアルタイムで取得できるのも魅力。

ボディサイズを拡大し後席空間の快適性を進化

 居住空間は、先代モデルに対してホイールベースを30mm拡大したことで、特に後席足もとのスペースが拡大。スポーティな装いとしながらも、居心地がいいのはさすがメルセデス。また、後席中央に格納されているアームレストには、2人分のカップホルダーも用意されている。

エンジンはガソリン仕様に加えディーゼル仕様も用意

 ガソリン仕様(A 180に搭載)は、1.4L直4直噴ターボで、トランスミッションは7速DCT。三角形をしたシリンダーヘッドによって小型・軽量としているのが技術的な特徴。ディーゼル仕様(A 200 dに搭載)は、2L直4直噴ディーゼルターボで、8速DCTと組み合わせられる。

先代モデルよりも広くなりアレンジメントも充実

 リアシートに4対2対4分割可倒式を採用したことで、アレンジメントは豊富。ラゲッジ容量は通常状態で370L、後席をすべて倒した状態で最大1210L。中央だけ倒せばスキー板のような長尺物も余裕で収納できる。大人4人が旅行するのに十分なスペースだ。

試乗判定レビュー

※各項目に対して5点満点評価。 ※ナンバープレートは、はめ込み合成です。

竹岡 圭

  • Aクラスがおもしろいのは、メルセデスがこのクラスで実験的トライをしようとしているのが見えるから。新しい装備や機能をいちばん早く投入しつつ、同時にメルセデスと聞いてユーザーが満足するような、質の高さなどはきちんと保たれているところはさすが。やはり、いまに続く自動車を初めて作ったブランドだけのことはありますね。

  • 入門カテゴリーだからといって手は抜いてないから、アッパークラスからのダウンサイザーも満足できる仕上がりになっているんですよね。むしろそこをねらっているというか、戦略的によくわかっているのを感じます。だから何の過不足もないのだけれど、時期やグレードにより安全装備などがオプションになっている場合もあるのでしっかり確認を。

  • メルセデスらしいインテリアに囲まれて気持ちは満足しつつ、カジュアルに扱いやすいモデルだと思います。単純に運動性能だけを見ると、セダンのほうが上だったりするけれど、やっぱり雰囲気や使い勝手を考えると、この選択になるのかな? ライバルと比べると十分なんだけれど、静粛性などもうひと頑張りしてもらえると、なおうれしいです。

竹岡 圭の試乗判定(1件)
平均点 4.8
  • ポジショニング 5.0
  • 装備 5.0
  • 走り 4.5

九島辰也

  • まず、CLS風になったスタイリングは好印象。初代Aクラスは革新的なクルマだったけど、理想を追求しすぎて、スタイリングという目線ではファニーに過ぎた。それが世代を重ねるごとに理想とユーザーが求める部分とのバランスがよくなってきたように思える。もっと大きなモデルからの乗り換えにも応えてくれるし、エントリーとしても十二分だ。

  • インテリアはデザイン、質感ともにいい感じ。装備だって望めば上級モデルと遜色ないレベルまで搭載する。Aクラスといえば、「ハイ、メルセデス」で起動する「MBUX」だが、これに関しては慣れが必要で、メルセデスがいう「話し言葉での対応」には限度がある。過度な期待をしなければいいのだが、さらなるバージョンアップに期待したい。

  • 見た目だけでなく、メルセデスらしい走りが楽しめるのも現行型のいいところ。イメージ以上にワイドトレッド感があって安定性は抜群だ。ガソリン仕様は先代よりも排気量が1.6Lから1.4Lへと減少しているのをトランスミッション含め上手にカバーしている。だが、予算が許すなら、ディーゼル仕様がおすすめ。分厚いトルクがクセになる。

九島辰也の試乗判定(1件)
平均点 4.7
  • ポジショニング 5.0
  • 装備 4.5
  • 走り 4.5

グーワールド 編集部

  • メルセデスがここ数年獲得し続けている「販売台数輸入車ブランドNo.1」に、大きく貢献しているのがAクラスです。価格的にブランドのエントリークラスになるというだけでなく、現行型は他ブランドと比較しても、先進的な「MBUX」やスポーティなルックスなど、欲しくなる要素がたくさん。中古車価格の高さは、まさにそうした人気の裏付けです。

  • プレミアムコンパクトクラスのクルマらしく、グレードやオプションによって見た目や機能性をどんどん拡充できるのがAクラスの特徴です。ですので、新車のスタートプライスだけを判断材料にすると中古車価格が割高に見えてしまうかもしれません。先進安全装備などもオプションとなっているものがあるので、詳細を必ず確認しましょう。

  • パーソナル感覚の強いコンパクトカーとして、現行型Aクラスは非常に高いレベルでまとまっています。ドライブモードを切り替えれば、想像している以上にスポーティにも走れます。メルセデスらしい安心感のあるライドフィールと高いレベルの運転支援技術のコンビネーションで、長距離ドライブでも疲労を軽減してくれるでしょう。

グーワールド 編集部の試乗判定(1件)
平均点 4.8
  • ポジショニング 5.0
  • 装備 5.0
  • 走り 4.5

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
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