輸入車
更新日:2022.03.25 / 掲載日:2021.11.04
BMW 3シリーズ ツーリング/気になる中古車【試乗判定】

文●竹岡圭、九島辰也、ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス
(掲載されている内容はグーワールド本誌2021年12月号の内容です)
※中古車参考価格はすべてグーネット2021年10月調べ。
※ナンバープレートはすべて、はめ込み合成です。
一般ユーザーが乗っている使用過程車をテストすることで、新車ではわからない実力をチェックするのがこのコーナー。売れ線中古車の本当のトコロを厳しい目線でインプレッション! 果たしてその結果やいかに!?
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自動車ジャーナリスト【竹岡 圭】
人気TV番組「おぎやはぎの愛車遍歴」の進行役としてもお馴染みの、人気自動車ジャーナリスト。2021-2022 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

自動車ジャーナリスト【九島辰也】
長年にわたり男性ファッション誌や一般誌でも活躍し続ける自動車ジャーナリスト。その知見は広く、プライベートでも各国のクルマを乗り継ぐ。
欧州で鍛えられた伝統のスポーツワゴン
欧州では常に人気のあるステーションワゴン

編集部●気になる中古車を実際に試乗することで、その実力をチェックしようというのがこのコーナー。今回は、BMWのコンパクトツーリングワゴンである3シリーズ ツーリングが登場です。お借りした車両は2018年モデルで、グレードは「318i Mスポーツ」、走行距離は2万2000kmとなっています。
九島●あれ? 先代3シリーズは前回試乗したような記憶が……。
編集部●はい。そのご記憶は正しいのですが、よくご覧になってください。前回はセダンでしたが、今回はツーリングワゴンです(笑)。
九島●なるほどね(笑)。たしかに、同じ3シリーズなんだけど、ワゴンとなるとまたちょっとテイストが変わってくるのはそのとおりだ。
竹岡●輸入車は昔からずっとワゴンをラインアップに用意してるよね。3シリーズだけじゃなくて、CクラスもA4もだし、それぞれ、その上のクラスにもワゴンがある。それって世界中でそうなのかな?
九島●ワゴンが人気なのは主にヨーロッパ市場向けのブランドだね。アメリカ車は1995年以降ほとんどワゴンはなくなってしまったし、日本車もそうでしょ。
竹岡●90年代は大人気だったのに。レガシィとかたくさん走ってたよね。カルタスワゴン好きだったなぁ(笑)。
編集部●どうしてヨーロッパではいまだにワゴンが人気なんですか?
九島●運動性能、走りだよ。積載量を確保しながらセダンやクーペに近い運動性能を求めたら、物理的にワゴンしかない。SUVの性能を高めても、フィーリングが違う。クルマ好きっていう原点があるなら、いま一度ワゴンを見直すべきだと思うよ。
竹岡●私もワゴンは嫌いじゃないよ。SUVは開口部までの地上高が高いから、どうしても荷物を持ち上げるのが大変。でもワゴンなら、ずるずる引きずって載せられる。あと、背が高いクルマのテールゲートって、開け閉めするのがおっくうなのよ。
九島●わかるよ。そういえば今日試乗する3シリーズツーリングはテールゲートとは別にガラスだけ開け閉めできる。これの使い勝手がいい。
竹岡●愛犬家たちにとっては、ワンちゃんが飛び出さないから安全だって人気があるみたいだよ。
編集部●さて、本日試乗していただく3シリーズツーリングは、2012年から2019年まで販売された先代モデルです。2L直4ターボを中心として、1.5L直3ダウンサイジングターボエンジンからディーゼル、ハイブリッド、駆動方式も伝統のFRに加えて4WD(xDrive)まで、豊富なパワートレインをラインアップしています。
竹岡●BMWはグレードの選択肢が豊富なのも大きな特徴だよね。内外装のテイストが変わるパッケージオプションの「スポーツ」、「ラグジュアリー」、「Mスポーツ」もあるから好みの1台が見つけられる。
九島●マイナーチェンジはセダンと同じで2015年ね。それとディーゼルエンジンの改良が2016年というのも覚えておくといいかな。
竹岡●「318i」っていうことは先月試乗したセダンと同じエンジン。Mスポーツなのが違うところかな。
編集部●それでは、そろそろ試乗のほうをよろしくお願いいたします。
竹岡「毎日乗る身近な存在として3シリーズは最高の相棒」
九島「走りにこだわるならSUVよりもワゴンが有利」

DETAIL CHECK
200万円台で購入できるハイレベルなスポーツワゴン

編集部●試乗から戻ってきましたので、お二人から感想を伺います。
九島●3シリーズはクルマとしての基本がちゃんとしている。それにエンジンバリエーションも多い車種だから、今日の「318i」なんて完全にシャシーがエンジンに勝っている状態で余裕がある。でも、アナログメーターとかナビ画面の小ささとかは、最新のクルマを見たあとだと気になる人がいるかも。
竹岡●乗りやすいし、いいクルマなのは間違いない。タイヤだけデシベル(ヨコハマタイヤ)みたいな静かなのに変えるだけで十分。だけど、私の身長(約160cm)だとシートを一番上に上げても前が見にくい。本当それだけが残念。いかにも「クルマ好きの夫を駅まで送る奥さん」みたいな感じ(笑)。
九島●「キスアンドライド」だ。Mスポーツだから余計にそう感じるのかもしれないね。ところで中古車相場はどうなってるの?
編集部●平均価格は220万円ほど。初期モデルなら100万円台の前半で探せます。お二人がもし乗るとしたらどのグレードを選びますか?
九島●うーんディーゼルかな。
竹岡●私もディーゼル。人気あると思うんだけど相場は高いの?
編集部●あまり変わりません。というのも、全体の半分近くがディーゼルなので。むしろ、今日乗っていただいた「318i」のほうが年式が新しい分、まだ高いですね。
九島●となるとやっぱりディーゼルがイチオシかな。あとは好みと予算で選んでいいと思う。
竹岡●3シリーズはワゴンになっても優等生でした。オススメ!

コックピット感満点のドライバーを中心としたデザイン

ドライバーを中心としたコックピットデザインはいかにもBMWらしいもの。ダッシュボードまわりの質感も高く、プレミアムブランドの優越感に浸れる。自動ブレーキやACCなどの運転支援技術も後期モデルは標準装備。
ファミリーユースにも十分な後席スペースと快適性

全長約4.6m、ホイールベース2810mmというパッケージングにより、後席でも大人がしっかりと座れる空間が用意されている。ルーフがラゲッジルームまでつながっていることで解放感はセダンよりも優っている。
アウトドアにピッタリなゆとりあるラゲッジルーム

ステーションワゴンの利点はラゲッジルームの広さと使いやすさ。SUVに比べて床が地面から高くないので、重い荷物の積み下ろしも苦にならない。後席は3分割タイプなので、長尺物や多人数乗車時のアレンジも豊富。
ガラス部分だけで開閉可能で日常の使い勝手に優れる

わざわざテールゲートを開けなくてもガラスだけ開くので、ちょっとした荷物の出し入れに非常に便利。雨の日や天井の低い駐車場でも安心して使える。これはライバルには採用されていないBMW製ワゴンの特徴でもある。
試乗判定レビュー

竹岡 圭
ポジショニング[10点]
90年代のブームの後、国産ツーリングワゴンってどこへ行っちゃったんでしょうね? でも欧州では必要なカテゴリー。だって便利ですもん。まずSUVより断然荷物が積めます。しかもラゲッジスペースの開口部が低いので、小柄な女性でも積み下ろしがしやすいんですよね。積みきれなければキャリアを装着して屋根の上なんて手もありますし。
装備[9点]
ツーリングワゴンのなかでも、リアウインドウだけ開けてカーゴルームにアクセスできるクルマって、少なくなりましたよね。狭い場所で荷物をちょこっと取り出すときの優れモノなんですが、じつは最近多いワンちゃん需要にもピッタリ。ハッチゲートと違い、これならいきなり飛び出すことはできませんから、いろいろな意味で安全性高いんですよね。
走り[9点]
シートリフターの調整幅、これだけなんとかして~。身長約160㎝の私の体格だと、少し足りないんです。他はね、適度なパワー感とサイズ感で、毎日乗る身近なアイテムとしても、本当に使いやすい。女性のライフスタイルを鑑みても扱いやすいし、嫌味がないのも美点です。最新のインテリアへのこだわりさえなければ、過不足感が少ない1台。
九島辰也
ポジショニング[10点]
どんなにSUVが進化しても、物理的な重心の高さは変わりようがない。だから走行性能にうるさいユーザーが多い欧州マーケットでは、スポーツワゴンは欠かせないモデルになっている。いわゆるジャーマン3もDセグ、Eセグに必ずワゴンを用意しているのがその証拠。SUVがこれだけ人気になってしまうと、カウンターとしての価値も出てきた。
装備[9点]
最近は国産車でもデジタルコックピットを採用するモデルが増えてきており、そういう目線からすると先代3シリーズのアナログ感あふれるインターフェースは古く見えてしまうのは事実。ナビ画面も小さいし。でも、そういうところを重要視するのでなければ快適装備は充実しているし、質感も十分高い。価格を考えれば満足できる内容だ。
走り[9点]
とにかくクルマとしての基本がしっかりしているといった印象。特に今回の「318i」はパワーが少ないので、ワゴンであっても安定感は抜群。ドライブモードを「SPORT」にするとBMWらしいキビキビとした走りになって心地よかった。足まわりの引き締まったMスポーツでも乗り心地も十分に快適。これならファミリカーとしても通用するだろう。
グーワールド 編集部
ポジショニング[10点]
輸入車のワゴンは豊かなライフスタイルのまさに象徴。高速道路をスマートに走る姿は憧れです。3シリーズツーリングは、そんな欧州ワゴンの代名詞で、ワゴンが売れないと言われている日本市場でも存在感を示しています。流通している台数が多いため中古車相場もこなれており、比較的手が出しやすいのもオススメできるポイントです。
装備[9点]
先代3シリーズが登場したのは2012年なので、デジタル化が進んだ最新モデルと比べてしまうと古く感じるかもしれません。しかし、自動ブレーキは早いタイミングで全車標準でしたし、ACCも2014年8月の改良で標準化されました。ですので、2015年のマイナーチェンジ以降のモデルを選べば装備面で不満を覚えることはまずないと思います。
走り[9点]
1台のクルマで多くの用途をハイレベルにこなしてしまうのが、3シリーズツーリングというクルマです。ひとりで運転しているときは「SPORT」モードで気持ちよく走ることもできますし、積載量はSUVよりも多いからキャンプのようなアウトドア用途にもピッタリ。より力強さを求めるなら2L以上のガソリン車かディーゼルエンジンがオススメです。