輸入車
更新日:2021.04.06 / 掲載日:2021.04.05
メルセデス・ベンツ Bクラス/気になる中古車【試乗判定】

2018年モデル メルセデス・ベンツ B 180
文●竹岡圭、九島辰也、ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス
(掲載されている内容はグーワールド本誌2021年5月号の内容です)
※中古車参考価格はすべてグーネット2021年3月調べ。
※ナンバープレートはすべて、はめ込み合成です。
一般ユーザーが乗っている使用過程車をテストすることで、新車ではわからない実力をチェックするのがこのコーナー。売れ線中古車の本当のトコロを厳しい目線でインプレッション! 果たしてその結果やいかに!?
Member Profile
自動車ジャーナリスト【竹岡 圭】
人気TV番組「おぎやはぎの愛車遍歴」の進行役としてもお馴染みの、人気自動車ジャーナリスト。2020-2021 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車ジャーナリスト【九島辰也】
長年にわたり男性ファッション誌や一般誌などでも活躍し続ける自動車ジャーナリスト。その知見は広く、プライベートでも各国のクルマを乗り継ぐ。
人も荷物もたくさん載せられるコンパクトカー
メルセデスの販売台数を倍増させた「NGCC」

編集部●気になる中古車を実際に試乗することで、その実力をチェックしようというのがこのコーナー。今回は、メルセデス・ベンツの多目的コンパクトカーであるBクラスが登場します。お借りした車両は2018年モデルで、グレードは「B180」、走行距離は1万8000kmとなっています。
九島●このBクラスは、2012年に始まったメルセデスの小型車戦略「NGCC(ニュー・ジェネレーション・コンパクト・カー)」の第1弾モデルだったんだよね。
竹岡●そうそう、Aクラスより先にこっちが導入されたのを覚えてる。
編集部●かつては大型高級乗用車のイメージが強かったメルセデスも、気がつけば数多くのコンパクトカーを取り揃えるブランドになりました。
九島●ユーザーニーズがダウンサイジングに流れることをいち早く察知していたのと、1台あたりの平均CO2排出量を下げるために小型車が必要になったからだね。
竹岡●他ブランドからの乗り換えやユーザーの若返りにもずいぶん貢献したと思う。昔のメルセデスって裕福な大人のためのクルマってイメージだったじゃない。それが、ハッチバックのAクラス、多目的タイプのBクラス、4ドアクーペのCLA、そしてコンパクトSUVのGLAって幅が広がった。現行ラインアップはさらにモデルが増えたんだから、まさにフルラインアップ。
九島●日本での販売台数も「NGCC」が出てから10年間で倍増している。その貢献度は非常に大きいね。
編集部●たしかに、街中でメルセデスを見かけることが多くなりました。
竹岡●今日のクルマは2018年モデルってことだから、先代の最終型なんだよね。
九島●そうなるね。最近は日本車でもマツダやレクサスが年次改良を取り入れるようになったけど、基本的には日本車は新型として発表されたときをピークにしている。それに対して輸入車はマイナーチェンジとは別に、年次の切り替わりで細かな改良を重ねてくる。だから熟成されたモデル末期のクルマを好んで乗り継いでいるファンも多いね。
竹岡●そうなんだよね。この間ゴルフ7に乗ったんだけど、すごくよくなってて驚いたもん。Bクラスの後期型は乗れてなかったから、どれだけ変わったのか楽しみ。
編集部●では、2代目Bクラスについて改めて紹介します。搭載するパワートレインは2種類で、1.6Lターボの「B180(122馬力)」、2Lターボの「B250(211馬力)」。2015年にマイナーチェンジを受け、デザイン変更に加えて自動緊急ブレーキやアテンションアシストが標準装備になっています。また、このタイミングで「B250」が4WDになりました。
竹岡●2017年の一部改良ってどんな内容だったの?
編集部●従来ではオプションだった「ベーシックパッケージ」(運転席電動シート、左右独立式エアコンなど)と「EASY-VARIO PLUS」が標準になっています。
九島●まさにこのクルマは、装備が充実した熟成モデルってことだ。
編集部●ではそろそろ、試乗のほうをお願いします。
九島「走りはしっかりメルセデス、コスパのよさが光る」
竹岡「最終モデルならではの完成度の高さに驚きました」

DETAIL CHECK

後期型ならではの完成度とコストパフォーマンスのよさ
編集部●試乗が終わりました。お二人から感想を伺います。
竹岡●初期型に乗ったときは、正直なところあまり走りにいいイメージがなかったんだけど、今日のクルマはずいぶんよくなってた。
編集部●どういうところに進化を感じましたか?
竹岡●走りのしゃっきり感がまるで違うのね。初期型は乗り心地はゴツゴツしているのにクルマとの一体感が薄かったのが、手ごたえとクルマの動きがしっかりリンクする感じ。
九島●僕も乗る前はあまり期待していなかった。初期型のイメージがあったのと、スタイリッシュなクルマではないから。でも、ちゃんとメルセデスしていて、これはこれで、選んでも後悔しないと思うな。
竹岡●中古車市場はどうなの?
編集部●はい、初期型であればコミコミ100万円以下で購入できますし、後期型でも総額200万円以下で探すことができます。
九島●この間試乗した現行型Aクラスの中古車は300万円の半ばだった。先代モデルとはいえ、ずいぶん価格差があるね。
編集部●人気の差もあるかもしれませんが、最近のクルマは新車価格がかなり上がっていますので、その影響は大きいと考えられます。2012年の「B180」は299万円からだったのが、現行型は422万円からです。
九島●装備が違うから単純には比較できないけど、先代でも熟成されたモデルならメルセデスらしさはある。
竹岡●それだけお手頃価格ならありかもしれない。ファミリカーとしての資質は間違いなくあるから。

メルセデスならではの充実した運転支援装備

2012年デビューの初期型でもすでにレーダー追従式ACC、被害軽減ブレーキを用意するなど運転支援技術が充実しているのが特徴。インテリアは、当時のフラッグシップスポーツモデルのSLSをイメージさせるエアコン吹き出し口が印象的。7インチ液晶は標準装備(ナビはオプション)。
背の高さを生かした空間設計で室内空間は後席も含め広い

初代モデルが高い床面に足を投げ出すように座る独特のポジションだったのに対して、高めのヒップポイントに背中を立たせて座らせる設計に変更。空間効率を高めたことで、後席足もとが大幅に広くなった。後席にスライド機構を用意するなど、ピープルムーバーとしての資質を高めた。
メインは1.6L直4ターボでハイパワーモデルは希少

パワートレインは「B 180」が1.6L直4ターボ(122馬力)、「B 250」が2L直4ターボ(211馬力、FFまたは4WD)でいずれも7速デュアル・クラッチ・トランスミッションとの組み合わせ。「B 250」は途中から追加となり、のちにラインアップから外されたため、中古車の物件数が少ない。
日本のミニバンもびっくりのアレンジ豊富なラゲッジルーム

開口部が広く、敷居の高さも抑えられているため、使いやすいラゲッジルーム。さらに後席スライド、背もたれ角度調整、床面高さ調整などを備える「EASY-VARIO PLUS」搭載車(グレードによりオプション)ならば、使用用途やシーンに合わせたアレンジが行え、さらに利便性が高い。
試乗判定レビュー

※各項目に対して5点満点評価。 ※ナンバープレートは、はめ込み合成です。
竹岡 圭
Aクラスがかなりスポーティ傾向を強め、パーソナル感が増したため、Bクラスはファミリーカーとして舵を切った印象ですよね。コンパクトなファミリーカーとしては、室内の広さや荷室の広さなど上手くまとまった印象ですが、やや個性が薄いのが強みでも弱点でもあるのかなと思います。メルセデスを選ぶならではのインパクトが欲しいかも。
マイナーチェンジと細かい年次変更によって、安全装備などもその都度ブラッシュアップされているのは好印象。そのあたりは、さすがメルセデスといったところですよね。この時期のクルマは、最近流行りの「ハイ!メルセデス」以前のものになりますが、そうした最新鋭のものを求めないならアリ! ファミリーカーとしてのお買い得度が高いですから。
正直にいうと、このクルマの導入初期のモデルはランフラットタイヤを含め、あまり印象がよくなかったのです……。でも最終モデルに近いものは、これだけよくなっているのか! と正直ビックリ。アイドリングストップの再始動の振動や音など、気になるポイントはあるものの、運動性能はシャキッと感バッチリ。ドイツ車らしさが味わえました。
- 平均点 4.7
-
- ポジショニング 4.5
- 装備 4.5
- 走り 5.0
九島辰也
メルセデスの小型車戦略「NGCC」を構成する1台で、パーソナルな雰囲気のAクラス、SUVのGLAに対してファミリーユースや多目的性をねらったパッケージングがBクラスの特徴だ。クルマのねらいや役割を分けたことで、小さくて使い勝手のいいクルマというBクラスの価値観がよりわかりやすくなったのは好印象。中古車価格も魅力的だ。
タブレット風のモニターは現在の流行だが、それを2012年から取り入れていたところに改めてメルセデスの先進性を感じる。ステアリングコラムに設置されたシフトレバーは使いやすく、パーキングブレーキも電子式。オートホールド機能も備えるので、赤信号ではフットブレーキから足を離せる。これら装備のレベルは標準を大きく超える。
試乗したのはオーソドックスな「B 180」だったが、結論としてはこれで十分だと感じられた。あふれるようなパワーはないが、クルマのキャラクターを考えれば必要以上。速度が上がっても車内の快適性は高かった。完成度は初期型よりも大幅に引き上げられていたので、先代Bクラスを買うなら、後期型をオススメしたい。
- 平均点 4.5
-
- ポジショニング 4.0
- 装備 4.5
- 走り 5.0
グーワールド 編集部
メルセデスの世界とファンを大きく拡大させたコンパクトカー戦略の1台で、2012年から2019年まで販売されていた先代モデルです。近年、新車が緊急自動ブレーキの標準装備化など、多機能化とともに価格が高くなっているなかで、先代Bクラスは手の届きやすい価格も魅力。中古車の台数も多いため、探しやすいのもオススメポイントです。裏付けです。
クラスを超えた安全装備を備えるメルセデスらしいところで、このBクラスにも衝突リスクを知らせる警報と衝突被害軽減するブレーキアシストが標準装備されています。ただし、自動ブレーキは後期型からの装備で、前期型に搭載されるのは、制動力を高める機能となるので要注意。それでも同世代の小型車より装備は充実しています。
ファミリーカーや趣味のサポートカーとしても活躍するクルマだけに、長距離走行時の快適性が気になりましたが、後席であっても乗り心地や静粛性は期待以上でした。高速道路を走らせてもエンジン音は低く、ステアリングに対する動きも素直で好印象。一方で街中での小まわりは思ったよりも利かず、それだけが残念でした。
- 平均点 4.8
-
- ポジショニング 4.5
- 装備 5.0
- 走り 5.0