輸入車
更新日:2021.03.04 / 掲載日:2020.08.05
アバルト 124 スパイダー/気になる中古車【試乗判定】

2017年モデル アバルト 124 スパイダー
文●竹岡圭、九島辰也、ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス
(掲載されている内容はグーワールド本誌2020年9月号の内容です)
※中古車参考価格はすべてグーネット2020年7月調べ。
※ナンバープレートは、すべてはめ込み合成です。
一般ユーザーが乗っている使用過程車をテストすることで、新車ではわからない実力をチェックするのがこのコーナー。売れ線中古車の本当のトコロを厳しい目線でインプレッション! 果たしてその結果やいかに!?
Member Profile
自動車ジャーナリスト【竹岡 圭】
人気TV番組「おぎやはぎの愛車遍歴」の進行役としてもお馴染みの、人気自動車ジャーナリスト。2020-2021 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車ジャーナリスト【九島辰也】
長年にわたり男性ファッション誌や一般誌などでも活躍し続ける自動車ジャーナリスト。その知見は広く、プライベートでも各国のクルマを乗り継ぐ。
70年代の名車をリバイバルしたオープンスポーツ

ベースになっているのは日本を代表するあの名車

編集部●気になる中古車を実際に試乗することで、その実力をチェックしようというのがこのコーナー。今回は、アバルトのオープンスポーツカーである124スパイダーが登場です。お借りした車両は2017年モデルで、走行距離は2万4000kmとなっています。
九島●来た来た! 124スパイダーはいま販売されているクルマすべてのなかでも、トップクラスに好きなんだよね。
竹岡●わかる! デザインもカッコいいし、走りも楽しいじゃない。なんでもっと人気が出ないのか不思議なクルマだよね。
編集部●お二人とも盛り上がってくださってよかったです。個性豊かなモデルが多い輸入車でも、124スパイダーのようなオープン2シーターは希少ですよね。当コーナーでも2シーターオープンが登場するのは、メルセデスのSLK以来です。
竹岡●都心だと複数台所有そのものが難しいし、輸入車のオープンカーって超高級車が多いからね。
九島●まずデザインがいいよね。70年代の124スポルト・スパイダーを上手にリファインしているんだ。正確に言うと、欧州ではこれのフィアット版があって、アバルト版は高性能モデルっていう位置付け。
編集部●70年代の初代アバルト124ラリーも、ラリー競技に参戦するために、フィアット124スポルト・スパイダーをチューニングしたものでした。
九島●そういうこと。特にフロントマスクやリアフェンダーの抑揚なんてそっくり。このクルマのベースがマツダ ロードスターだというのは有名だけど、少なくともスタイリングからはそれを感じさせない。いい仕事だよ。
編集部●九島さんがいま触れましたが、124スパイダーはFCAとマツダの協業から生まれたモデルで、メカニズムの基本をロードスターと共有していて、生産も広島です。
竹岡●マツダで聞いた話なんだけど、124スパイダーは、NDロードスターの開発でやりきれなかったことにも挑戦できたって。だから当時のロードスターよりも進化している部分もあるし、なによりこのクルマはターボなんだよね。ロードスターにターボエンジン載せたらっていうのは、クルマ好きならみんな考えること。でも、RFを含め全部NAだからね。それはそれで気持ちイイけど興味はあるじゃない。そういう意味でもこのクルマは価値がある。
編集部●170馬力を発生させる1.4L直4マルチエアターボエンジンはもちろん、ロードスターと124スパイダーは似ているようで、じつはかなり異なっています。外装部品は、ガラスまわりとミラー以外はすべて専用設計。インテリアもシートやメーターが専用。それから足まわりのセッティングもオリジナルです。
竹岡●ボディカラーも青、白、パールホワイトは共通だけど、赤はそれぞれオリジナル。マツダのソウルレッドもいい色だけど、この赤(ロッソ・コスタ・ブラバ)もいい色!
九島●ボンネットとトランクがマットブラックになるヘリテージルックもなかなか決まってるんだよなぁ。
編集部●ではそろそろ、試乗のほうをよろしくお願いします。
九島「個人的に欲しいクルマ デザインも素晴らしい」
竹岡「日本とイタリアお互いのイイトコ取りをしたコラボ」
DETAIL CHECK

日本とイタリアの幸福なコラボレーション
編集部●試乗から戻ってきたお二人に感想を伺いましょう。
竹岡●トルクがあるからもともと乗りやすいクルマなんだけど、今日の試乗車はATとの組み合わせで、特に運転しやすかった。
九島●そうだよね。MTだとちょっとターボラグを感じるところが、トルコンでカバーされてすごくいい感じなんだ。ATを見直したよ。
竹岡●単なるバッジエンジニアリングではなくて、アバルトとマツダ、それぞれのブランドが持ち味を生かしたコラボレーション。124スパイダーはそこがいいよね。
九島●デザインとエンジンがイタリアで設計と製造が日本なんて、夢のようなコラボだよね(笑)。イタリアの名門が日本のロードスターを相手に選んだっていうのもうれしい話。
竹岡●だから私もいろんな人にオススメしたいんだけど、残念なことに私くらいの身長だと、シートが低すぎて前が見えにくいのね。ここを改善してくれれば、もっと女性にも乗ってもらえるんだけどなぁ。
九島●けっこう真剣に知りたいんだけど、中古車相場はどんな感じなの?
編集部●それが、中古車物件が少ないんです。まだ新しいクルマというのもありますが、オーナーがあまりすぐに手放さないのかもしれません。1万km以上走ったものはほとんど存在せず、ディーラーのデモカーなどがほとんどといった印象です。
九島●となると相場も高いか。
編集部●中心価格は300万円半ばです。走行距離が伸びていても価格にあまり反映されていないことからも、人気の高さがうかがえます。
竹岡●こういうクルマは、買わないとあとで後悔しますよ(笑)。

大胆な色使いのメーターがやる気にさせるインテリア

鮮やかな色合いのタコメーターを中心とする3眼式メーターやステアリングがアバルトらしさを演出。トランスミッションは6速MTのほか写真の6速AT仕様も用意。さらに電子制御により走行シーンに合わせてエンジン制御を変えるシステムも備わる。
右ハンドルでもポジションに違和感がないのがうれしい

シートはアバルトのオリジナルデザインで、レザーとアルカンターラを組み合わせた表皮とクラシカルな造形が雰囲気を盛り上げてくれる。オプションとしてレカロ社製の赤黒ツートンの本革シートも用意された。ロードスターとメカを共有したおかげでドライビングポジションは適切だ。
ファン・トゥ・ドライブを提供する1.4Lターボエンジン

最高出力170馬力、最大トルク25.5kgmを発揮する直41.4Lターボエンジンはターボの存在感をしっかり感じさせるタイプで3000回転から元気よく加速態勢に移行する。機械式LSDを標準装備するため、コーナリング脱出時のトラクション性能も高い。
大人2人での旅行にも対応できるラゲッジスペース

外装デザインの違いからロードスターよりもむしろトランクがガバッと大きく開く124スパイダー。ラゲッジ容量は140Lで機内持ち込みサイズのキャリーバッグなら2つ分を収納可能。2シーターオープンでありながらも高い実用性を確保している。
試乗判定レビュー

※各項目に対して5点満点評価。 ※ナンバープレートは、はめ込み合成です。
竹岡 圭
日本とイタリアのナイスなコラボカープロジェクト。こういうの斜めから見る方もいらっしゃいますが、お互いのイイトコ取りができるし、歴史をひも解けばアバルトはカスタマイズ工房なわけで、まったく理にかなってるんですよ。しかもバッジ変更だけでなく、ちゃんとデザインが仕立てられていて、普通にカッコいいクルマなのが素晴らしいです。
元来オープン2シーターのクルマは、ほとんどユーティリティ装備を付ける場所がないんですよね。こちらももちろん多くはないですが、そこは日本のお家芸が生かされて、シートの後ろなど細かいところに物入れが設置されていたりします。驚くべきはトランクの広さ。2泊3日くらい用のキャリーバッグなら2個は入りますから、お泊り旅行もOKです。
ベースとなったマツダロードスターでは、「もう少しパワーが欲しいなぁ」という話もよく聞きました。こちらの1.4Lターボエンジンはトルクもパワーもかなりビッグなタイプなので、もの足りなさはまったくナシ。それに合わせて、各部が強化されていますので、本当に乗りやすいんです。トルクが太いのでATとの組み合わせもなかなかイイですよ。
- 平均点 4.7
-
- ポジショニング 5.0
- 装備 4.5
- 走り 4.5
九島辰也
アバルトといえばイタリアを代表するスポーツカーブランド。ごく普通の実用車を本格スポーツカーに変身させてしまう彼らの手腕は「アバルト・マジック」と呼ばれ、大いにリスペクトされたものだ。この124スパイダーにも、彼らの手腕が大いに発揮されている。ベースとなったロードスターも名車だが、アバルトチューンによる刺激がたまらない。
軽量化が正義となるスポーツカーだけに、あれもこれもと装備が盛りだくさんなわけではない。むしろごちゃごちゃといろいろなものが付いていないことがスポーツカーの場合、格好よさにつながるというもの。とはいえ、手動のホロも、運転席から身体をひねれば座ったまま開け閉めできる使いやすさ。そこはロードスターがベースだけに隙がない。
エンジンを始動させると野太いサウンドが響いていかにもスポーツカー的。シャシーはロードスターだが、エンジンはアバルトオリジナルの1.4Lマルチエアで、170馬力とパワーも十分。ハンドリングは軽快で、わざわざワインディングに行かなくても、交差点をひとつ曲がるだけで楽しめる。乗り心地のよさも特筆もので、フラットかつ快適だ。
- 平均点 4.8
-
- ポジショニング 5.0
- 装備 4.5
- 走り 5.0
グーワールド 編集部
全長わずか4mほどのコンパクトなオープン2シーター。魅力はなんといってもアバルトというブランドネームとそのデザイン。モチーフになったのは70年代の124ラリーで、六角形のグリルや抑揚のあるリアフェンダーなど雰囲気を上手に再現しています。広島の工場で生産されているため、日本での販売価格が世界一安いというのも隠れたポイント。
スポーツカーとしての装備はじつはかなり充実しています。まず機能面では、ブレンボ製ブレーキ、ビルシュタイン製ダンパー、トルセン式LSDが標準装備。インテリアでも、シートはアルカンターラ/レザーで、ペダルもアルミのスポーツタイプ。ATの場合はパドルシフトだって標準。このようにロードスターに比べてかなり装備は充実しています。
アバルトとマツダによるコラボレーション作品として知られる124スパイダーですが、乗れば乗るほど別物。エンジンは3000回転以上からパワーがみなぎるいかにもターボ付きといったフィーリングですし、マフラーのサウンドも野生的。トルクが太いので、運転がしやすいですし、アクセルに反応してクルマがグイグイ前に進む気持ちよさは格別です。
- 平均点 5.0
-
- ポジショニング 5.0
- 装備 5.0
- 走り 5.0