輸入車
更新日:2021.03.04 / 掲載日:2019.04.02
ジープ コンパス/気になる中古車【試乗判定】

2018年モデル ジープ コンパス ロンジチュード
文●竹岡圭、九島辰也、ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス
(掲載されている内容はグーワールド本誌2019年5月号の内容です)
※ナンバープレートは、すべてはめ込み合成です。
一般ユーザーが乗っている使用過程車をテストすることで、新車ではわからない実力をチェックするのがこのコーナー。売れ線中古車の本当のトコロを厳しい目線でインプレッション! 果たしてその結果やいかに!?
Member Profile
自動車ジャーナリスト【竹岡 圭】
人気TV番組「おぎやはぎの愛車遍歴」の進行役としてもお馴染みの、人気自動車ジャーナリスト。2019-2020 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車ジャーナリスト【九島辰也】
長年にわたり男性ファッション誌や一般誌などでも活躍し続ける自動車ジャーナリスト。その知見は広く、プライベートでも各国のクルマを乗り継ぐ。
アメリカンSUVテイストを身近にしてくれる存在

ほどよいサイズ感が魅力のコンパクトSUV
編集部●中古車を実際に試乗することで、その実力をチェックしようというのがこのコーナー。今回はジープ コンパスが登場します。お借りしたクルマは2018年モデルのロンジチュードで、走行距離は6000kmです。
竹岡●それにしても、最近は本当にSUVが増えたよね。そう言いつつ私もMINIクロスオーバーに乗ってるんだけどさ(笑)。
九島●みんな忘れてるけど、都市型SUVを出したのはジープの方がずっと先だからね。初代コンパスの前にあったパトリオットから数えたら、10年くらい前からコンセプトとしてはすでにあったんだよ。
編集部●パトリオットが発売されたのは2007年ですね。2012年にパトリオットと入れ替わる形でコンパスが日本でも販売されています。
竹岡●今回の試乗車もそうだけど、コンパスって歴代で顔つきがグランドチェロキーと同じなんだよね。
編集部●はい。本日試乗していただくのは、2017年にフルモデルチェンジした現行モデルとなります。
九島●日本のユーザーは「ジープ」と聞くと、幌屋根の軍用車をイメージしてしまいがち。だけど、いま日本で新車で購入できるジープブランドのクルマは5モデルもあるからね。
竹岡●レネゲード、コンパス、ラングラー、チェロキー、そしてグランドチェロキーね。
九島●そのとおり。それで当たり前のことなんだけど、各モデルごとにターゲットとキャラクターが作り分けられている。基本的にはすべてSUVで、みんながイメージしているようなクロスカントリー車は、ラングラーだけなんだよ。そういえば、このクルマはレネゲードとプラットフォームが同じだと思うんだけど、ボディサイズはどう違うの?
竹岡●フィアットと共同開発した「スモールワイド4×4アーキテクチャー」だっけ。500Xと同じ。
編集部●そのとおりです。レネゲードは、全長が4255mmでホイールベースが2570mm。それに対してコンパスは全長4400mmでホイールベースは2635mmです。
九島●ホイールベースの差が65mmなのに対して全長が145mm長いということは、後席だけでなくラゲッジのスペースもちゃんと大きくなっているということだ。
竹岡●つまりコンパスは、「普段乗りしやすいコンパクトサイズのSUVがほしいんだけど、レネゲードではちょっと狭いかも」っていうニーズにぴったりなわけね。
編集部●そんなコンパスですが、グレードは「スポーツ」(FF)、「ロンジチュード」(FF)、「リミテッド」(4WD)の3つで、エンジンは全車共通の2.4L直4(175馬力)。FFモデルが6速AT、4WDが9速ATを搭載しています。2019年1月に一部改良が行われました。これによりさらに装備が充実、「リミテッド」にアイドリングストップとパワーリフトゲートが標準に。「ロンジチュード」は先進安全装備が標準装備されました。
竹岡●ファミリーユースも多いクルマだろうし、装備が充実したのは嬉しいことだよね。
編集部●それでは、そろそろ試乗の方をよろしくお願いします。
竹岡「乗ってびっくり、意外なほど快適だし質感も高いですよ」
九島「SUVの本場から来ただけにツボが押さえられているね」

DETAIL CHECK

新しいモデルだけに高年式かつグッドコンディションの中古車が多い
編集部●さっそくですが試乗の感想を聞かせてください。九島●よかったですよ。というか文句の出ようがない(笑)。今回のクルマは年式も新しいし、走行距離も少ないでしょ。
竹岡●たしかに(笑)。私は乗って意外だった。良い意味でね。室内のデザインも今風で質感もしっかりしているし、装備も十分だと思う。
九島●日本でチェロキーが大ヒットしたのはずいぶん前の話だけど、こういうサラッとラフに付き合えるクルマを作らせるとホント上手いんだ。
竹岡●所々にフィアットの影響を感じるけど、これほどクオリティが高くて走りがいいとすると、ユーザーにとってはむしろメリットだよね。ちゃんとジープらしいテイストは感じられるし。コンパスの中古車市場はどうなってるの?
編集部●現在販売されている新車は、一部改良で装備が充実している関係もあって単純に比べるのは難しいのですが、中間グレードの「ロンジチュード」で369万円となります。それが、中古車は1年落ちで250万円くらいから探せます。
九島●1年で値落ち100万円というと普通だけど、元々の値段を考えると安いな。
編集部●中古車市場の特徴としては、現在はユーザーカーというよりは、ディーラーの試乗車だったようなクルマが中心になっています。
竹岡●つまり走行距離が少なくてコンディションがいいと。
九島●「ジープ」という名前にあまりこだわらずに、FFでサラッと街乗りするのにいいクルマだと思うよ。だって本国だってそういう風に使われているんだから。

従来のジープのイメージとは異なるラグジュアリーさ

デュアルゾーンエアコン、キーレスエンジン、プレミアムサウンドシステムといった快適装備(グレードによって内容は異なる)に加え、安全装備についても充実している。前方衝突警報や車線逸脱警報、ブラインドスポットモニター、リヤパークアシストと全方位的な内容で都市型SUVのライバルにも負けない。
コンパクトなボディサイズに大人5人の居住空間を提供

インテリアは大人5人が十分快適に移動できる室内空間を確保。乗車人数や荷物に合わせられるようシートアレンジも備えられている。シートは、スポーツとロンジチュードがファブリックでリミテッドがレザーとメッシュクロスのコンビネーション。クッションの厚みも十分で長距離でも快適だ。
タウンユース中心のニーズに合わせたFFモデルも用意

パワートレインは、エンジンが自然吸気2.4L直4マルチエアで、トランスミッションはFFが6速ATで4WDモデルが9速ATとなる。路面状況に合わせて車両を統合的に制御するセレクテレインシステムを採用。ジープの名前に相応しい走行安定性を提供する。
細かい気配りが嬉しいラゲッジルーム

ラゲッジのフロアは3段階で上下でき、後席シートバックとフラットにすれば、重い荷物でも移動しやすいし、低くすれば高さのある荷物の出し入れがしやすくなる。また、グレードによってはパワーリフトゲートも採用されており、手が塞がった状態でも荷室にアクセス可能。
試乗判定レビュー

※各項目に対して10点満点評価。 ※ナンバープレートは、はめ込み合成です。
竹岡 圭
【8点】イメージ的なポジションとしては、じつは微妙な存在かもしれません。いちばん小さいのはレネゲードがあるし、いちばんタフなのはラングラーがあるし、いちばん有名なのはチェロキーがあるし。ただ改めて考えると、サイズ的にも取りまわし的にも気軽に乗れるFFのジープとして、ちょうどイイ存在だということに気がつく、そんな感じなのです。
【9点】「こんなに質感高かったっけ?」失礼ながら改めてそう思いました。アメ車のインテリアは独特でちょっとね……という方もいらっしゃいますが、こちらはどことなく見慣れた欧州車っぽい感じもあって、いい意味で抵抗感が少ないかもしれません。スイッチ類もグローブを嵌めたままでも操作できるよう大きめに作られているなど、タフギアっぽさが光ります。
【9点】正直なところ街中+αというか、よほどじゃないかぎりFFで十分なんですよね。もちろん4WDはパワーを伝えるという面でも、安定感の面でも、パフォーマンスは高いですし、個人的好みを考えると絶対4WDですけど、軽快感やメンテナンス面で言うとFFも有利な面もありますし、もはやこだわる必要ないのかも。そう思わせるほどしっかりしてます。
九島辰也
【8点】日本でジープというと、どうしてもウィリス(1940年~)とそのイメージを受け継いだラングラーの印象が強い。だが、実際にはもちろんそれだけではなく、グランドチェロキーに代表されるSUVを数多く取り揃えている。今回試乗したコンパスはこちらのライン。市場のニーズに合わせたラインアップをジープは提供しているということだ。
【9点】300万円から400万円クラスのコンパクトSUVに求められる装備は十分備わっている。とくに再発進機能のついたクルーズコントロールは嬉しいもの。このように自動運転技術に関しても、十分実用的な範囲で採用されている。インテリアのクオリティだってライバルに負けていない。雪道など悪路での走破性を高めるセレクテレインシステムも採用されている。
【9点】乗ってまず感心したのがオンロード性能の高さ。ステアリングに対する応答性やボディの堅牢感のレベルが高く、ドライビングが楽しい。トランスミッションは一般的なトルコン式6速AT(4WDは9速)で、ガバッとアクセルを開けても駆動力がついてくる。4WDも用意されているが、ほとんどのユーザーにとってはFFでも十分まかなえてしまうだろう。
グーワールド 編集部
【8点】フィアットと共同開発したプラットフォームをベースに、ジープらしいデザインと機能性を与えたのがコンパス。フィアットの500Xが1.4Lエンジンを搭載するのに対して、コンパスはより大きな2.4Lエンジンを搭載しています。スタイリングも、ポップなデザインのレネゲードに対して、グランドチェロキー寄りのシックなテイストです。
【9点】現行型コンパスが登場したのは2017年のこと。世界各国の市場に向けて開発された国際商品らしく、装備については非常に充実している印象です。車間距離を自動的に調整するアダプティブ クルーズ コントロール(再発進機能付き)や前方衝突警報などといった、安全性と快適性を両立する装備が全車標準ではないものの用意されています。
【9点】グランドチェロキーを思わせるスタイルのとおり、コンパスの走りはシティクルーザー的なキャラクターです。自然吸気の2.4Lエンジンはトルク十分で、一般的な使い方をしているかぎり、エンジンやギヤの音が大きく唸りをあげるようなことはまずありません。角ばったシルエットは見切りもよく、ショッピングモールの駐車場などでも運転しやすいでしょう。