輸入車
更新日:2019.09.04 / 掲載日:2018.08.29
【VWアップ!】VWのスモールカー「アップ!」は国産軽よりも安いってホント?

国内導入されてから今年で6年が経つVWのコンパクトカー「アップ!」。新車当時、もっとも安いグレードで149万円と、国産コンパクトカーや軽自動車に匹敵するロープライスを実現していた。しかし、VWの販売台数の中心となるのはゴルフやポロであることは変わらず、大ヒットには至っていない。そのため中古車市場では驚くほど相場が下がり、手ごろな価格で手に入るのだ。
VWアップってどんなクルマ?
2012年10月に発表されたフォルクスワーゲンの末弟モデルが「アップ!」である。過去にもVWのスモールカーとして、「ルポ」や新興国向け(日本未発売)の「フォックス」などが存在したが、アップ!もそんな系譜にある1台と言えよう。3ドアと5ドアの2タイプから選ぶことができ、全長3545mm、全幅1650mm、全高1495mm(デビュー時)と、かつてのルポとほぼ同サイズで、一見するとかなり小さいクルマである。
エンジンは999ccの3気筒が搭載され、最高出力は75馬力。これにシングルクラッチ式の2ペダル式5速MT「ASG」が組み合わされる。しかし室内は外観から受けるイメージよりも広く快適で、前席はもちろん、後部座席にも大人がしっかり座れる空間を確保するから、ファミリー層のクルマ選びの候補にだって入ってしまう。安全面では、ESPやフロントサイドエアバッグ、さらに衝突回避・被害軽減ブレーキ「シティエマージェンシーブレーキ」も全車標準装備となるのも注目のポイントである。
ライバルは軽自動車!?

VWアップは、発売当初から軽自動車と比較されることが多かった。その理由は、ボディサイズと価格帯。軽自動車の大半は全長が3395mm、全幅1475mmだから、アップ!よりもやや小さい。一方、いま主力の国産リッターカー(アクアやフィットetc)は全長が4m前後となっており、アップ!の直接のライバルにはなりにくく、サイズに注目すると軽自動車に近い。また新車価格に着目すると両者は同価格帯にあり、モデルによっては軽自動車のほうが高値のケースがあるほど競合している。
そうは言っても、アップ!は軽ではなく普通車。軽自動車の大きなメリットである安い自動車税の恩恵は受けられないから、それを重視するユーザーの選択候補に入ることはないだろう。室内は、ダイハツ タントなどのスライドドア車はもちろん、ダイハツ ムーヴやスズキ ワゴンRと比べても、アップ!に大きなアドバンテージはない。しかし、VWファミリーに共通のつくりこまれた内外装や重厚感のある乗り味はアップ!に分があり、クルマとしての素性のよさでは軽を大きく引き離す。「小さく、安く、安全で運転しやすいクルマがほしい」というワガママにもきちんと応えるクルマ、それがVWアップ!なのである。
ここではアップ!と軽自動車の人気3モデルの中古車平均価格を比較してみよう。
モデル名 | 中古車平均価格 |
VW アップ! | 85万円 |
ダイハツ タント | 131万円 |
ダイハツ ムーヴ | 117万円 |
スズキ ワゴンR(先代) | 84万円 |
上の表からわかるように、最新型の軽よりもアップ!のほうがずっと安い。現行型ワゴンRはデビューが2017年だから、ここでは先代(2012年発売)の数字を算出したが、アップ!はそれとほぼ同程度の相場にまで下がっている。データからも、アップ!のお買い得感は一目瞭然だ。
年式別中古車平均価格

次に、アップ!のヒストリーを軽く振り返ってみたい。先に述べたように、2012年10月に発売がスタート。わずか3週間で受注台数が3000台に達するなど、好調なスタートダッシュを切った。2015年8月には、最低地上高を10mm上げて専用バンパーなどでSUVライクに仕立てた「クロスアップ!」も登場。2017年4月にはマイナーチェンジが行われ、内外装デザインの変更とともに、オートライトやレインセンサーなどの安全装備が標準装備された。ぱっと見の外観はそれほど変化がないものの、バンパーが一新されたことで全長が伸び、リヤデフューザーが付いたことでスタイリッシュさが増している。さらに2018年6月、600台限定の「GTI」が登場。こちらは排気量はそのままだが、最高出力を116馬力に高め、6速MTを搭載するのが見どころ。内外装も専用仕立てとなっており、スモールハッチバックでは数少ない硬派なモデルとして注目を集めた。それらを踏まえ、年式別中古車平均価格をみていこう。
年式 | 中古車平均価格 |
2012年式 | 60万円 |
2013年式 | 68万円 |
2014年式 | 77万円 |
2015年式 | 94万円 |
2016年式 | 121万円 |
2017年式 | 141万円 |
3年落ちの2015年式が狙い目
もっとも物件が多いのは5年落ち(2013年式)で、平均価格は68万円と驚くほど安くなっている。これは現行型の輸入車としては異例の低価格と言っていい。しかし、さすがに5年落ちは走行距離が5万km以上の物件も目立ってくる。一方3年落ち(2015年式)を見ると、物件ボリュームは減るものの、走行距離は3万km以下が多く、コンディションがよさそうなものが多い。今年の車検のタイミングで手放された1オーナー車のものが中心となるから、この辺りが安心して買える年式だろう。なお、2017年以降の後期型は、それほど多く流通していないものの、1万km未満の低走行車両が120万円前後で販売されているのを確認できた。新車購入を検討しているなら、高年式の中古車をチェックするといい。
グレード別中古車平均価格

アップ!の基本グレードは、ベーシックな「ムーヴアップ!」と装備充実の「ハイアップ!」のふたつ。前者は5ドアだけでなく、3ドアが選べるのも特徴。エンジンなど基本的なメカは共通だが、上級版「ハイアップ!」にはフロントフォグライト、15インチアルミホイールなどで見た目が差別化されるほか、室内は6スピーカー、クルーズコントロール、レザーステアリングなど室内も豪華になる。
ターゲットは「ハイアップ!」
両者は、平均価格で15万円ほど違う。新車時は25万円ほどの価格差だから、中古車はわずかにその差が縮まっている。装備内容を考えると、中古車で狙うならやはり「ハイアップ!」だろう。とくにクルーズコントロールは、あると便利な装備。アルミホイールもクルマを華やかにしてくれるポイントで、レザーがあしらわれた内装もVWらしい高品質を実感できるはず。「ハイアップ!」は平均価格が92万円だが、走行距離が5万km前後の物件を選べばコミコミ70万円の予算から探すことが可能。軽では味わえない、輸入車ならではの個性が光る。
「クロスアップ!」や「GTI」は買える?
アップ!には、現在まで個性的なグレードや限定車がいくつか設定されている。なかでも「クロスアップ!」と「GTI」は注目しているひとも多いはず。「クロスアップ!」は中古車として流通している数が非常に少なく、探しにくい状況。平均価格も148万円と少し高めだ。また6速MTのスポーツモデル「GTI」は、発売して間もないため、中古車はまだ存在していないようだ。ほかにもさまざまな限定車が存在するから、個性を重視するなら探してみるのも悪くない。
まとめ

数多くある輸入車のコンパクトカーのなかで、アップ!は非常に安くなっている。割合にすると、概ね3年落ちで4割減と言ったところだ。これは、値落ち幅が激しいと言われる1000万円オーバーのプレミアムカーに匹敵するレベルで、現行型ドイツ製コンパクトとしては珍しいケース。その理由は、やっぱり日本には軽自動車という牙城があるということ。最近の軽自動車は、リッターカー級の安全装備や室内空間を持ち、それでいながら税制で優遇されるという大きなメリットがあるため、海外のスモールカーが参入する余地はあまり大きくない。でも、日本での事情はどうあれ、アップ!の魅力は不変で、価格に対する満足度が大きいのもまた事実である。小型車を探しているなら、ぜひ検討しておきたい1台だ。