輸入車
更新日:2019.09.04 / 掲載日:2018.06.15
【メルセデスAMG】中古車が新車価格の半額以下ってホント?

C 63 AMG(先代)
AMG(エー・エム・ジー)というブランドをご存知だろうか。クルマ好きじゃなくても、一度は見聞きしたことがあるかもしれない。AMGとは、メルセデス・ベンツのハイパフォーマンスモデルで、現在は「メルセデスAMG」がブランドの正式名称である。メルセデスブランドのイメージを牽引するAMGは、メルセデスファンはもちろん、スポーツカーのファンや高級車ファンたちの憧れの存在。圧倒的なパフォーマンスが大きな魅力だが、それに支払う対価も極めて大きいことも忘れてはならない。 しかし、そんなAMGも中古車なら現実的な予算で手に入るという事実は、意外と知られていない。今回は手が出しやすく、パフォーマンス面でも申し分のない「63 AMG」を中心に相場を見ていきたい。
AMGとは
AMGのルーツはメルセデスとは別の組織であり、元々はレース用エンジンなどを手がけるエンジニアリング会社だった。創始者のAufrecht(アウフレヒト)とMelcher(メルヒャー)、彼らの育った地名Grosaspach(グローザスバッハ)の頭文字をとったAMG社が、今なお続くブランドの原点なのである。
AMGはメルセデスのハイパフォーマンスブランド
AMG社は、創立以降レース活動を通して知名度を上げていき、とくに1971年のスパ24時間レースにおけるクラス優勝、総合2位を獲得したことは、モータースポーツの歴史に残る偉業と言えよう。その後もサーキットで培った技術を活かし、メルセデスをベースとしたカスタムモデルをリリース。世界のセレブや自動車ファンの間で人気を獲得していく。そして1990年、ダイムラー・ベンツ社との間で、メルセデス販売網からAMG車を販売するという協定を結び、1999年にはAMG社株の過半数をダイムラー・クライスラー社に譲渡することで、メルセデスとの関係性を一層強めていった。2005年には、株を100%譲渡してダイムラー・クライスラー社の完全子会社となる。これを機に社名が「メルセデスAMG」に変更され、メルセデスのハイパフォーマンスモデルを手がけるメーカーとして、その地位は確固たるものとなった。
AMGはオリジナルモデルも出している
AMGはメルセデスのハイパフォーマンスブランドであるが、プレミアムブランドにおいて、ハイパフォーマンスモデルというのはとても重要な存在だ。BMWには「M」があるし、アウディには「RS」がある。メルセデスも強力なライバルに対抗すべく、AMGブランドを進化させ、今では独自「メルセデスAMG GT」などオリジナルモデルもリリースしている。
AMG中古車のおすすめは63シリーズ

C 63 AMG(先代)
ひと口にAMGと言っても、モデル構成は多種多様。昨今はほとんどのメルセデスにAMGバージョンが設定されているから、なおさらである。しかし、今回中古車として注目したいのは63シリーズと言われているモデル。ほかにもエントリーモデルの「43」、Aクラスなどに設定される「45」、12気筒エンジンを積むフラッグシップ「65」などが存在するが、なぜ「63」がオススメなのか。その理由は、CクラスからSクラスまで幅広く設定されながらも、メルセデスAMG社が開発した高性能なエンジンを搭載し、価格とのバランスに優れているからだ。ここでは、代表的な3モデルの相場を見ていこう。
モデル | 中古車平均価格 |
C 63 AMG(先代) | 330万円 |
E 63 AMG(先代) | 454万円 |
S 63 AMG(先代) | 387万円 |
※上級モデルの「S」や「4MATIC」なども含む。
ここで注目したのは、メルセデスの中核をなすCクラス、Eクラス、Sクラスの先代モデル(すべてセダンボディ)。なお、一部モデルには高性能な「S」バージョンが存在するが、このデータはそれも合算した。
今回は主要3モデルのみを紹介したが、ほかの車種のAMGでもこれらと同じ傾向にある(ただしAMG GTやSLS AMGなどのスポーツカーは例外的に高値)。しかも安いのは型落ちモデルだけではない。たとえ現行モデルでも、わずか数年で相場が数百万円下がることも珍しくないのだ。
C 63 AMGの特徴と中古車価格
先代C 63 AMGが登場したのは2008年7月で、デビュー当時の新車価格は1030万円だった。エンジンは6.2L V8の自然吸気が搭載され、最高出力は457馬力。コンパクトなボディサイズと相まって、ハイパフォーマンスカーであると同時に、スポーツカー的な走りの軽快感も持ち合わせる。そんなクルマが新車時のおよそ3分の1という相場なので、一気に手がとどくゾーンに落ちたと言っていい。今回の3モデルのなかでも、とくにイチ押しである。
E 63 AMGの特徴と中古車価格
先代E 63 AMGは、2009年8月にデビュー。C 63 AMGと同じく6.2L V8の自然吸気エンジンが搭載されるが、最高出力はCクラスよりも大きい524馬力を誇った。当時の新車価格は1495万円だから、値落ちの幅はC 63 AMGよりもさらに大きい。なお、2011年にはエンジンが5.5L ツインターボに置き換えられ、2013年5月のマイナーチェンジではより高性能なE 63 S AMGや4MATICなども追加されている。後期型以降は相場がやや高めなので、購入の敷居が低いのは自然吸気の前期型である。
S 63 AMGの特徴と中古車価格
最後に、値落ちの幅が極めて大きいのが先代S 63 AMG。こちらはSクラスのロングホイールベース仕様をベースに、6.2L V8の自然吸気エンジンを搭載したモデルだ。当時のSクラスには12気筒を積むS 65 AMGが先行投入されており、「63」はそれから若干遅いタイミングの2007年3月に投入された。当時の新車価格は2090万円と極めて高額なクルマだが、10年以上経過した現在の平均価格は、なんと387万円。新車時の2割以下という状態になっている。
E 63 AMG(先代)
S 63 AMG(先代)
AMG中古車は購入後の整備代にご注意を!

そんなに値下がりするなら、AMGは超オススメ物件なのか?と疑問を持つことだろう。でも、安いのはあくまで車両本体価格のみ。クルマは、購入後も維持費が掛かる。AMGの中古車は、入手することの敷居は低いが、維持し続けるのは意外と大変なことも知っておこう。
たとえばブレーキローターやパッドの交換費用は、標準のメルセデスと比べるとおよそ数倍の価格というケースもある。またタイヤ径が大きく、交換のたびに非常に大きな出費となる。ほかにも、AMGには専用パーツがあちこちに使われており、これらは標準車よりも価格が高く設定されている。
また大排気量車ゆえ燃費がお世辞にもよいとは言えず、たとえばC 63 AMGなら6.1km/L(10・15モード)。自動車税は、6.2L車ならば年間11万1000円と、1.8LのC200コンプレッサーの倍額以上となる。クルマそのものの信頼性は以前よりも上がっているとはいえ、トラブル時の出費は相当額を覚悟する必要があるのだ。
それでもやっぱりAMGに乗ってみたい!

AMGと標準のメルセデスは、乗り味も維持費も、まったくの別物と考えるべきだろう。ちょっと上級なセダンに乗りたい…程度の気持ちなら、AMGではなく、標準のメルセデスを買ったほうが満足できるはず。AMGの真骨頂は、なんと言っても圧倒的な動力性能を誇るパワートレーンと、それを取り巻く精緻なエンジニアリングにある。そこにはモータースポーツで長年培ってきたAMG社の魂が宿っており、そのフィロソフィーに共感したユーザーだけが乗る資格があると言っていい。いわば、究極の趣味グルマなのだ。
AMG中古車のおすすめは認定中古車
先の相場分析では、中古車の安さをクローズアップしたが、見るべきところは価格だけでなく、車両コンディションの確認も怠らないようにしよう。たとえばメルセデスの認定中古車は、保証が1~2年付帯し、購入後のサービスなども充実しているから、AMGを買うなら積極的に利用したい制度。たとえばC 63 AMGの場合、1年保証の2012年式/3.4万km/車検付きで428万円という物件を確認できた(2018年6月7日現在)。平均価格よりも高めの物件は、コンディションに不安のある個体を買ってトラブルに見舞われるよりも結果的に安くつくケースが多い。とくにパーツ代が高額なAMGを買うなら、低走行、高年式、保証付きの認定中古車がオススメだ。
中古車本体価格の安さに飛びつかず、購入後のメンテや維持費も含めたトータルの出費を考えることが、AMG購入の掟なのである。