輸入車
更新日:2019.09.04 / 掲載日:2017.12.22
【メルセデス・ベンツ Sクラス】先代モデル(W221)が新車時価格の5分の1? その安さの

メルセデスの旗艦モデルが安くなる秘密とは
クルマ好きのあこがれのブランドと言えば、メルセデス・ベンツ。最近はAクラスのようなエントリーモデルが用意されているものの、同クラスの国産車と比べると、やっぱり価格はプレミアム。しかし、そんなメルセデスも中古車となれば話は別で、低予算でもねらえるモデルはちゃんとある。そのなかの1台が、フラッグシップであるSクラスの先代モデル(W221)だ。デビュー当時の新車価格は987万円~1396万5000円(同時発売の限定車を除く)だから、「お買い得車」という言葉とは、いかにも無縁そうなクルマである。しかし、じつはこの手の高額車は、5年落ち~10年落ちの中古車になると急に価格が下がる傾向にあるのをご存知だろうか。先代Sクラスの場合、2017年12月1日現在の中古車平均価格が、なんと262万円にまで下がっている! これはAMGも含めた全グレードを集計対象とした数字だから、いかに安いのかよくわかるはず。
でも、こんなに安いとクルマになにか問題があるでは…と思ってしまいそう。ところが、価格が大幅に下落するのはなにもメルセデスにかぎったことではなく、BMW 7シリーズ、アウディA8、ジャガー XJなども同じような傾向にある。これらの共通点は、プレミアムブランドのフラッグシップモデルで、かつ実用的なセダンであること。同じ高額車でも、ポルシェやフェラーリのような趣味性の高いスポーツカーは、こんな極端には安くならない。いったいどうして、最上級のプレミアムセダンが安くなってしまうのだろうか。
Sクラスのようなフラッグシップセダンは、法人や資産家からのニーズが大半となっている。そのようなひとたちは、どんなに車両価格が高くても新車購入が基本で、中古車で購入するケースはあまり多くないと言われている。つまり、このようなフラッグシップセダンは、いちど中古車になって市場に流通してしまうと、購入層が薄くなってしまう傾向にあるのだ。ニーズが少なければ当然相場も下がる。だから、経年による相場下降の相乗効果で、1年また1年と時間が経つたびに、市場価格は加速度的に下がってしまうわけ。
しかし、中古車ハンターとしてはそこがねらい目でもある。たとえ価格は安くても、ターゲットはメルセデスのフラッグシップという大物なのだから、クルマの出来は文句無し。とくにメルセデスは歴史的にみても、クルマ造りの本流はフラッグシップモデル(現在はSクラス)にあるから、実際に乗ってみると「C」や「E」では味わえない、奥深い世界感を堪能することができるのだ。
グレード間の相場が逆転する理由とは?

先代Sクラスのデビュー時(2005年10月)の新車価格は、S350が987万円、S500(ショートホイールベース仕様)が1260万円となっている。しかし、2017年12月時点での相場は逆転しており、上級モデルのS500のほうが安くなっている。なぜ、こんな現象が起こるのだろう。じつは、これもフラッグシップセダンではよくある傾向なのだ。新車購入時だと通常3年間のメーカー保証が付帯するから、大排気量モデルでも安心して乗れる。一方、保証期間が過ぎた中古車は、万一故障などトラブルが発生した場合に修理費は基本的に自己負担になってしまう。ユーザーは極力トラブルが起きにくく、維持費も安いモデルを選ぶ傾向にあるから、S500よりもS350のほうが中古車市場では人気がある。
3.5L V6エンジンのS350と5.4L V8エンジンのS500を比べると、熱トラブルが発生しやすい後者のほうがリスクは高く、さらに自動車税、車検整備費用などランニングコストを考えると、一般ユーザーからは敬遠されてしまい、結果的に相場が下がるのだ。
ちなみに5.5L V12エンジンを搭載するS600は、新車時価格が1900万5000円と非常に高額だったが、現在の相場は311万円。値下がり幅は非常に大きいが、こちらも新車保証のない中古車という世界では、簡単に手を出すユーザーが少ない。中古車市場では新車時の価値はもちろんだが、さらに需要と供給のバランスが影響して価格が決まるため、グレード間の相場の逆転現象が起きてしまうわけだ。
先代Sクラスのベストチョイスはどれ?

先代Sクラスには多くのグレードが存在する。前述のように、V6搭載のS350、V8搭載のS500(07年以降はS550)、V12搭載のS600に加え、2009年には3.5L V6にモーターを組み合わせたハイブリッド(後にS400ハイブリッド)、さらにAMGバージョンとしてS63 AMGとS65 AMGも設定される。またホイールベースは、標準仕様(3035mm)とロング(3165mm)の2仕様が存在するほか、一部モデルは2WDのほかに4WD(4MATIC)もあるから、ひと口にSクラスと言っても、選べる幅は非常に広い。
物件数がもっとも多いのはS500/S550で、全体の半数以上を占めている。ランニングコストを優先するならS350一択となるが、メルセデスの濃厚な世界観を味わうなら、V8のS500/S550を強くオススメしておきたい。200万円前後の予算でも十分探せるし、ボディとエンジンのバランスがよく、クルマとしての完成度がとても高い1台だ。一方でV12のS600はお買い得度は高いものの、物件数はかなり少ない状況。またハイブリッド系も数が少なく、手がだしにくい。
次に年式別の中古車平均価格をチェックしてみよう。
年式 | 中古車平均価格 |
2005年式 | 208万円 |
2006年式 | 208万円 |
2007年式 | 245万円 |
2008年式 | 231万円 |
2009年式 | 262万円 |
2010年式 | 326万円 |
2011年式 | 381万円 |
2012年式 | 393万円 |
2013年式 | 392万円 |
まず驚くのが、最終型である2013年式の平均価格が392万円にまで下がっているということ。この年式だと現在は新車保証が付かないが、わずか4年で新車時の3分の1程度まで下がっているから、かなりお買い得に感じる。少し高くなるが、もし認定中古車を選べば新車とほぼ同様のサービス内容の保証が受けられるので、Sクラスのようなプレミアムモデルを買うなら積極的に探したい。
しかし、少しでも安く…というなら、2009年式以前の前期型がターゲット。メルセデスの認定中古車は初度登録から10年未満が対象だから、前期型の認定中古車も存在するし、なにより物件数が多く相場が低い。250万円の予算があれば、かなり広く探すことが可能だ。
パフォーマンスモデル「AMG」の相場動向は?

最後に、AMGシリーズの相場はどうなっているかチェックしておこう。W221にはV8エンジンの「S63 AMG ロング」とV12エンジンの「S65 AMG ロング」が存在する。前者は、6.2L V8DOHCの自然吸気モデル(07年~10年)と5.5L V8 DOHCツインターボ(10年~13年)があり、大きくわけると全3タイプが存在することになる。いずれも新車時は2000万円以上の超高額モデルだったが、現在はどこまで下がっているだろうか。
グレード | 中古車平均価格 |
S63 AMG(6.3L) | 356万円 |
S63 AMG(5.5L) | 536万円 |
S65 AMG | 582万円 |
さすがにAMGシリーズは、中古車になっても標準のSクラスより高値。ただ新車時の価格を考えると、値落ちの幅はとてつもなく大きいのがわかる。市場には12気筒のS65 AMGはあまり流通しておらず、AMGを買うなら必然的にS63 AMGになりそう。とくに初期の6.3Lが大半で、こちらは平均価格が356万円と手が出しやすいこともあってねらい目だ。このモデルに搭載されるエンジンは、AMGがオリジナルで設計した高回転型だから、スポーティさを重視するユーザーだって楽しめるクルマ。フラッグシップの、さらなる上の極みを味わうならチャレンジしてみるのも悪くない。
全体をまとめると、W221の中古車は、現在大変お買い得になっている。価格が安く物件豊富、かつメルセデスらしい重厚な走りが楽しめる前期型のS500がベストバイで、予算は250万円。メルセデス、しかもSクラスなんてとても無理…と思いがちだが、案外手が届く気がしないだろうか。今週末、お店にぜひ足を運んで、ナマのSクラスを見にいこう!