輸入車
更新日:2022.08.04 / 掲載日:2022.08.04
アウディ A8/気になる中古車【試乗判定】

文●竹岡 圭、ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス
※中古車参考価格はすべてグーネット2022年7月調べ。
(掲載されている内容はグーワールド本誌2022年9月号の内容です)
※ナンバープレートはすべて、はめ込み合成です。
一般ユーザーが乗っている使用過程車をテストすることで、新車ではわからない実力をチェックするのがこのコーナー。売れ線中古車の本当のトコロを厳しい目線でインプレッション! 果たしてその結果やいかに!?
member Profile

自動車ジャーナリスト【竹岡 圭】
カーライフのサポーターとしてTVやラジオなどでもおなじみの人気自動車ジャーナリスト。全日本ラリーにも参戦経験を持つ。2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
最先端の技術を満載したフラッグシップセダン
アウディ最高級セダンはハイテク技術の塊

編集部●気になる中古車を実際に試乗することで、その実力をチェックしようというのがこのコーナー。今回は、アウディのフラッグシップセダン、A8が登場です。お借りした車両は2019年モデルで、グレードは「55TFSIクワトロ」、走行距離は3万㎞です。
竹岡●これまた大きいクルマだねぇ。ボディサイズってどのくらいなの?
編集部●全長が5170mm、全幅が1945mmです。移動しているときはあまり感じなかったのですが、改めて駐車場で見ると大きいですね。
竹岡●枠から鼻先が出てるから、ちゃんと駐車できてないんじゃないかって確認しちゃった(笑)。
編集部●アウディは上級モデルほど数字が大きくなり、「8」はフラッグシップに使われます。
竹岡●それにしてもアウディってやっぱり緻密というか、高品質な雰囲気出てるよね。外装デザインはプレスがピシッとしているし、パネルとパネルの隙間も狭い。いかにも生産技術が高い感じ。でも、それをわざと控えめなビジネスライクなデザインで表現しているのがアウディらしいところ。メカニズムとか装備からすると、もっと格上のベントレーとかと比べられる内容なのに。
編集部●おっしゃるとおりで、A8は2018年に現行型である5代目にフルモデルチェンジしましたが、本来であれば世界で初めて自動運転レベル3の機能を備える予定でした。残念ながら法規の関係で実装されませんでしたが、力の入ったクルマであることは間違いありません。
竹岡●そうだったね。アウディはブランド設立から「技術による先進」をスローガンにしていて、これまでクワトロやオールアルミボディといった技術を開発してきたじゃない。だからフラッグシップのA8で、自動運転技術やインフォテインメントシステムを刷新して、これからのアウディの姿を示してるんだね。
編集部●そんな現行型A8のラインアップは4種類です。3LV6ターボを搭載する「55TFSIクワトロ」(340馬力)、4LV8ターボを搭載する「60TFSIクワトロ」(460馬力)、そして「60」のロングホイールベース版(130mm拡大)。そして高性能モデルの「S8」(571馬力)です。全車4WDを採用しています。
竹岡●ロングホイールベース版があるってところも、このクルマの性質を表しているよね。
編集部●登場時から先進的な装備を満載していただけあって、大きな変更は今年7月のマイナーチェンジまでありませんでした。
竹岡●シングルフレームグリルや前後ライトの形状が変わったんだっけ。
編集部●はい。それと、レーザースキャナーとカメラセンサーで路面状況を読み取り、先読み制御する「プレディクティブアクティブサスペンション」も用意されています。これがまたハイテクで、側面からの衝突が避けられない状況になると、衝突する側の車高を上げて、強度の高い部分で衝撃を受け止める機能が備わっているそうです。
竹岡●なんかすごいね。まさに技術の集大成って感じ。
編集部●それでは、そろそろ試乗の方にまいりましょう。
「とても上質で高級なのにどこか控えめなところがアウディらしい個性」

DETAIL CHECK
控えめなキャラクターながら高級車としてのレベルは非常に高い

編集部●試乗から戻りましたので、感想をお願いします。
竹岡●アウディってさ、数字の大きなモデルになればなるほどありがたみがあるというか、いいクルマだって感じることが多いんだけど、まさにA8は最高峰だね。ボディサイズの大きさを感じないくらい運転しやすいし、高級セダンに求める要素がすべてハイレベルで備わっている。特にエアサスペンションは、しなやかさと運動性能のバランスがいい。もっと上の、2000万円クラスのクルマみたいな乗り味だった。
編集部●乗り心地よかったですね。私は高速道路で先進安全装備の制御が緻密なことに驚きました。長距離ドライブがかなり快適でしょう。まさに「個人用新幹線」ですね。
竹岡●間違いない。新幹線でもグランクラスね。内外装の作り込みもいいし。でもビジネスライク。なんか、ロゴを主張しないタイプの高級ブランド品という感じ。こういうテイストが好きな人にはたまらないと思う。特に理系男子とか好きそう(笑)。それで気になる中古車市場はどんな感じなの?
編集部●物件数はあまり多くないのですが、注目は価格です。新車価格1190万円からのところ、600万円前半から探せます。しかも認定中古車も含めてです。
竹岡●それは安い! まだ3年落ちとかでしょ。年式が新しいもので保証があれば故障リスクもある程度カバーできるし、いいじゃないA8。ボディカラーはどんな色が多いの?
編集部●黒白シルバー、黒多めです。
竹岡●白がいいな。爽やかに、おしゃれな感じで乗りこなしてほしい。

アウディの今後を示す近未来的なコックピット

MMIタッチレスポンス付きMMIナビゲーションを採用し、ボタンやスイッチを極力排した先進的なインテリア。エアコン吹き出し口も使用するときだけ電動でシャッターが開く。先進安全装備もクラストップレベルの内容。
高級ラウンジのような快適で上質な室内空間

まるで高級ラウンジにいるような感覚を味わわせてくれる室内。4ゾーンエアコンを搭載し、前席にはヒーターに加えて送風機能も搭載。後席ひじ掛けには取り外し可能なタッチパッドが備わり、各種装備をコントロールできる。
ボディサイズを生かしたゆとりあるラゲッジスペース

大型スーツケースをも難なく搭載するラゲッジスペース。ラゲッジ容量は505Lで、長尺物を搭載するために、後席中央へのトランクスルーも備わっている。また、床面には金属製フックが用意され、荷物などが固定できる。
全車にマイルドハイブリッドシステムを採用

パワートレインは2種類。「55 TFSI クワトロ」が搭載するのは3LV6ターボで340馬力。「60 TFSI クワトロ」は460馬力を発揮する4LV8ターボとなる。全車に48Vマイルドハイブリッドを組み合わせ、高効率と快適性を両立。
試乗判定レビュー

竹岡 圭
ポジショニング[9点]
アウディの正統派ラインのフラッグシップモデルではありますが、たとえばメルセデスベンツSクラスやBMW7シリーズ等と比べると、大人しい印象をお持ちの方が多いかも。強く個性をアピールするタイプではなく、いわゆるツウ好みの1台。実際、わかる人にはうなずきたくなるような、アウディらしいポイントがギュッと詰まっているのはサスガです。
装備[10点]
ブランドネームの入っていない高級オートクチュールのスーツのような感じでしょうか。パッと見の派手さはありませんが、手に取ってみれば上質な素材によって、しかも精緻な作り込みがなされているので、とても落ち着く空間に仕上げられています。前期型とはいえ、装備的には必要以上に十分揃っていますし、空間的な広さも申し分なしですね。
走り[10点]
エアサスペンションのフィーリングが素晴らしく、乗り心地はとてもコンフォータブル。ショーファーカーとしての趣も感じられます。しかしドライブモードを切り替えると一変、ダイナミックモードの選択で、ワインディングロードを攻められるレベルのドライバーズカーに早変わり。パワー的には余裕たっぷりなので、二面性を楽しめること請け合いです。
グーワールド 編集部
ポジショニング[9点]
いまや高級車セグメントまでSUVの人気が押し寄せていますが、やはりセダンにはトラッドとしての魅力があります。たとえていうなら仕立てのいい上質なスーツですね。アウディは高い技術力を武器にするブランドで、フラッグシップモデルであるA8はそんなアウディのすべてが凝縮されています。見て触れて走らせて納得できる完成度。
装備[10点]
細部にまで配慮が行き届いた、心地のよさを味わえるインテリアは、まさに移動できる高級ラウンジ。世の中の価値観が変化し、おそらく次世代モデルはレザーやウッドパネルといった素材が使われることは難しいでしょうから、そういったテイストを好むユーザーにとっても見逃せないモデルでしょう。先進安全装備もこの世代のトップレベル。
走り[10点]
すべてが調律され整った美しい走りがA8の個性。特に48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載パワートレインの完成度はピカイチで、内燃機関の心地よさと電動化によるなめらかで無駄の省かれたフィーリングがたまりません。全車に標準装備されるエアサスペンションにより、あらゆる速度域でしなやかに走るフットワークも見事。
[アウディ S8]スポーティな性格を強調したスーパーサルーン

A8の備えるラグジュアリーにアウディのスポーツ性能を加えたのがスーパーサルーン「S8」。搭載するエンジンは4LV8ターボで最高出力は571馬力。あらゆるシーンでスムーズかつ伸びやかな走りを提供する。


