輸入車
更新日:2021.03.04 / 掲載日:2020.12.04
アウディ A3 スポーツバック/気になる中古車【試乗判定】
2018年モデル アウディ A3 スポーツバック 1.4TFSI
文●竹岡圭、九島辰也、ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス
(掲載されている内容はグーワールド本誌2021年1月号の内容です)
※中古車参考価格はすべてグーネット2020年11月調べ。
※ナンバープレートはすべて、はめ込み合成です。
一般ユーザーが乗っている使用過程車をテストすることで、新車ではわからない実力をチェックするのがこのコーナー。売れ線中古車の本当のトコロを厳しい目線でインプレッション! 果たしてその結果やいかに!?
Member Profile
自動車ジャーナリスト【竹岡 圭】
人気TV番組「おぎやはぎの愛車遍歴」の進行役としてもお馴染みの、人気自動車ジャーナリスト。2020-2021 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車ジャーナリスト【九島辰也】
長年にわたり男性ファッション誌や一般誌などでも活躍し続ける自動車ジャーナリスト。その知見は広く、プライベートでも各国のクルマを乗り継ぐ。
華美に走らない上質さが魅力のプレミアムコンパクトカー
都市生活者に愛されるアウディの主力モデル
編集部●気になる中古車を実際に試乗することで、その実力をチェックしようというのがこのコーナー。今回は、アウディのコンパクトクラスの5ドアハッチバックA3 スポーツバックが登場です。お借りした車両は2018年モデルで、グレードは「1.4TFSI」、走行距離は1万6000kmです。
竹岡●出た、私的に奥様にオススメの輸入車ナンバーワン。
九島●なにそれ、どういうこと?
竹岡●ショッピングから高級ホテルまで、どんなシーンにも似合うアウディ車。さらに実用車なんだけど、だからこそ、「奥さんの普段乗りがA3ってことは、ご主人はA6やA8に乗ってそう」なんて奥行き感まで表現できちゃう(笑)。奥様はもちろん、男性でももちろんいいのよ。背伸びしない地に足のついたハイクラス感があるじゃない。
九島●なるほどね! メルセデスやBMWに比べると、アウディはいい意味でユーザー像が見えてこないというか、典型的なイメージがない。上質な暮らしをしたいけど、ボディサイズは小さいほうがうれしい。そんな都市生活者たちにA3やA1は支えられてきた。
編集部●そんなA3は、97年に初代モデルが日本に導入されてから、ずっとアウディの販売台数に貢献してきた柱となる車種です。スポーツバックという名称が初めて使われたのは2004年。2代目の追加モデルとして登場しました。スポーティなキャラクター性を表現することで、他の5ドアハッチバックと差別化を図っています。
九島●アウディはA5やA7にもスポーツバック(5ドアハッチバック)を追加して、クーペのようなカッコいいデザインの5ドアモデルという市場を作り上げた。最近はSUVにもクーペスタイルが追加されるようになってきたけど、アウディではそれにもスポーツバックという名称を与えてラインアップを強化している。
竹岡●ハッチゲートのほうがトランクよりも荷室が広くできる分、使い勝手はいいもんね。上手な戦略! それで、これから試乗させてもらうのは現行型なんだけど、結構モデルライフが長いよね。
編集部●3代目となるA3が導入されたのは2013年からで、5ドアのスポーツバックのみになったのが、従来との大きな違いです。パワートレインは、1.4Lターボ(122馬力)+7速SトロニックのFFと1.8Lターボ(180馬力)+6速Sトロニックのクワトロ(4WD)の2種類。2013年11月に、1.4Lターボに気筒休止技術を加えた「シリンダーオンデマンド」(140馬力)を追加し、中間グレード的な役割を与えました。2017年にマイナーチェンジを受け内外装をリフレッシュし、先進安全装備を全車に標準装備。その際、1.4Lは122馬力版のみにとなり、クワトロのエンジンが新設計の2Lターボ(190馬力)となっています。
九島●本国で今年9月に新型がお披露目されたから、早ければ来年には日本にも導入されるかもしれない。
竹岡●試乗車は、後期型のエントリーグレードってことだね。
編集部●はいそうです。それでは、試乗のほうをよろしくお願いします。
九島「実用的な5ドアなのにデザインがスタイリッシュ」
竹岡「豊かな暮らしを演出するカシミアのセーター」
DETAIL CHECK
日々の暮らしを豊かにしてくれるカシミアのセーターのようなクルマ
編集部●さて、試乗が終わりましたが、いかがでしたか?
九島●クルマの印象はよかったね。ジャーマン3(メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ)という目線で比較したときに、アウディは明らかに前輪駆動モデルを作り慣れている。2013年にデビューしたクルマなのに、いま乗っても完成度が高いよ。
竹岡●メカニズムの基本がゴルフと同じということもあって、走りのレベルが高いよね。それでさらに見た目の品質が上質なこともあって、A3は高級車に乗っている感じがする。洋服にたとえるとしたら、カシミアのセーター。見た目はシックで、着心地がいいっていう。
九島●それ、すごく合ってると思う。スポーティだとか、運転がすごく楽しいってことはないけど、これって1.4Lターボのベースグレードでしょ。3人乗って走っても不満なし。街乗りするにはちょうどいい。
編集部●私は九島さんの後ろに乗っていましたが、膝前に空間もありましたし、乗り心地も予想していたより快適でした。
竹岡●それから、A3 スポーツバックってCセグメントで唯一、普通のグレードとして4WDが選べるのよ。ゴルフだと4WDモデルは「R」だけだし、メルセデスのAクラスやBMWの1シリーズも、4WDはトップグレードのスポーティモデルだけ。そこは評価できるんじゃないかな。
九島●それで、中古車相場はどうなっているの?
編集部●ちょっと意外な結果でした。前期モデルは100万円~200万円前半。2017年からの後期モデルは200万円前半~300万円以上。新車価格からの値落ち率はあまり高くありません。じつはこれ、ジャーマン3共通で、Cセグメントモデルの相場が上がっていました。
九島●コロナ禍で、むしろ高級車の販売は好調だっていうからね。
竹岡●A3を買うなら、ボディカラーにこだわってほしいな。小さいクルマで黒だと路面と溶け込んじゃうから、安全性っていう見方でも、街が明るくなるような色がいい。
九島●そうだね、アウディには赤のイメージがあるけど、ブルーとかいいよね。さらっと、おしゃれに乗りこなしてもらいたいな。
プレミアムブランドを感じさせる各部の作り込みや充実した装備
Cセグメントのハッチバックのなかでも上質な部類に入るインテリア。2017年の改良でミリ波レーダーとカメラを使った自動ブレーキやACCを全車に標準装備。さらに上級モデルはメーターを液晶モニターとする「バーチャルコックピット」もオプション装着できるようになった。
居住空間は必要にして十分 質感の高さはさすがアウディ
全長4.3m級のボディサイズでありながら、前席だけでなく後席であっても大人がしっかりと座ることができる空間を提供。シートはデザインから想像できるとおり、サポート性と快適性をバランスさせたもので、長距離でも快適に移動できるだろう。
ベーシックモデルは前輪駆動 上級モデルにクワトロを用意
パワートレインは、ベーシック版が1.4L直4ターボ(122馬力)で、同じ排気量でシリンダーオンデマンドを採用した140馬力版と2種類が存在。高出力版は、デビュー当時が1.8L直4ターボ(180馬力)で、2017年のマイナーチェンジから2L直4ターボ(190馬力)に変更されている。
5ドアハッチバックならではの実用性の高さ
ラゲッジ容量は標準状態で380L、4対6の分割可倒式のリアシートを倒した最大状態で1220Lという収納力となっている。ラゲッジの形状はスクエアで使いやすく、ハッチバッククラスのなかでは仕立ても上質。プレミアムブランドであることを実感できる。
試乗判定レビュー
※各項目に対して5点満点評価。 ※ナンバープレートは、はめ込み合成です。
竹岡 圭
奥様に乗せたいクルマナンバーワンだと思います。「ボディサイズが適度で機動力が高いコンパクトカーだけれど、品があって上質な感じがある。どこへ乗って行っても気後れしないブランド力がしっかりある。アピール力はありながら嫌味はない。たまにダンナ様が乗っても、クルマの運転が楽しめる運動性能を持っている……」という感じでソツがないんです。
アウディらしいインテリアではあるのですが、正直なところカワイサはないんですよね。クール好みの方にはいいけれど、ともすればレーシーな雰囲気ではなく、もう少し温かみのある落ち着いた感じとか、きらびやかな感じとか……、そういったものを求めがちな女性からすると、少々物足りないかも。装備内容としては機能の基本は押さえられてます。
ドイツ車らしいカチッとした乗り味のコンパクトカーという感じで、精緻な雰囲気さえしますよね。毎日使うこのクラスとなると、クワトロ好きな私もFFでもいいかな?と思う一方、やはりライバルと比べるとクワトロモデルがあるというところが大きな差別化だったりもするので悩みどころ。割り切ってポップなカラーで楽しむのも一考だと思います。
- 平均点 4.8
-
- ポジショニング 5.0
- 装備 4.5
- 走り 5.0
九島辰也
近年どのクルマもボディサイズが大型化する傾向にあるなかで、Cセグメントのハッチバック車の手頃感が心地いい。なかでもアウディのA3 スポーツバックは、小さな高級車といった感じで年齢や性別を選ばない魅力がある。いわゆるジャーマン3のなかで、長年FF車を作り続けてきたこともあり、メルセデスやBMWと比べて手慣れているところも評価が高い。
アウディはVWグループのなかで、ブランド性でも技術でもプレミアムセグメントを代表する存在。R8やA8のメカニズムは、さらに格上のランボルギーニやベントレーに活用されるほどだ。そういったブランドだけに、実用車であるA3であっても、装備やインテリアのクオリティには説得力がある。このクールな世界観にハマれる人にはたまらないだろう。
まず褒めたいのが、スムーズなパワートレイン。1.4Lターボは122馬力という出力以上のパワー感で、アクセル操作によって望んだだけの加速を引き出せる。トランスミッションの反応も素早い。ボディは堅牢で、ステアリング操作に対する反応も正確。走らせていて精緻な部品が組み合わせられているフィーリングを感じるのが、いかにもアウディらしい。
- 平均点 4.7
-
- ポジショニング 4.5
- 装備 4.5
- 走り 5.0
グーワールド 編集部
いわゆる「ゴルフクラス」に属するA3 スポーツバック。取りまわしがよく、運転があまり得意ではないというドライバーでも運転しやすいボディサイズが大きな魅力です。プレミアムブランドだけあって、小さくても装備や品質はクラスを超えた内容で、まさに小さな高級車。大きなクルマを運転するのがおっくうになったダウンサイザーにもオススメできます。
アウディは「技術による先進」を社是にするだけあって、A3はデビュー年式が古いにもかかわらず先進安全装備が充実しています。デビュー当初はオプションだった緊急自動ブレーキとACCが2014年の一部改良で1.4Lターボシリンダーオンデマンドと1.8Lターボに標準に。2017年の改良以降はエントリーモデルを含めて標準装備化されました。
とにかく運転していてストレスが少なかったというのが、走りの印象で、加速、減速、コーナリングといった要素が高次元でバランスされているのを実感しました。特に乗り心地のよさはライバルに比べても好印象。ロングドライブに出かけても疲れにくいでしょう。クワトロはさらなる高性能が期待できますが、中古車のタマ数が少ないのが残念です。
- 平均点 4.8
-
- ポジショニング 5.0
- 装備 4.5
- 走り 5.0