車の歴史
更新日:2023.10.01 / 掲載日:2023.10.01

祝・ランクル70再再販! 世界に誇る本格オフローダーの歴史

世界に誇るリアル・オフローダーの歴史を辿る

ランドクルーザーは、北米市場で初めて認められた日本車だ。1957年に初めて太平洋を渡りながら、返り討ちに遭った初代クラウンの敵を討った武器は、地の果てからでも生きて帰れる信頼性。それは今もなお世界で支持されている。

●文:横田 晃

TOYOTA ランドクルーザーヒストリー

軍用車として企画されて民間の現場に活路を得る
 世界のクロスカントリー4WD車の多くがそうであるように、ランドクルーザーのルーツも軍用車に求めることができる。ただし、誕生は第二次大戦後のことだ。

 戦後、日本を統治したGHQ(連合国軍総司令部)は軍国主義の復活を警戒して、当初は航空機はもちろん、自動車の生産も厳しく制限した。ところが、1950年に朝鮮戦争が勃発すると、日本に駐留していた米軍の戦力がそちらに割かれ、日本国内の治安維持・防衛が手薄になる恐れが出てきた。

 その頃には日本人の資質や国民性を理解し、民主主義が根付いたと判断したGHQは日本人自身に国土防衛を委ねることを決断、現在の陸上自衛隊の前身となる警察予備隊の発足を指示した。

 その制式車両として、軍用トラックの生産実績のあったトヨタと日産、三菱に4輪駆動の1/4トン積みトラックの開発が依頼された。それは米軍ではウイリスオーバーランド社製のジープが担っていた、万能車の車型だった。

 それに応えて開発されたBJ型が、ランドクルーザーの原型だ。同様に日産が開発したのが後のパトロール。三菱は当時進めていた、朝鮮戦争向けのウイリスジープのノックダウン生産車を提案した。

 制式採用は、米軍車両との整備互換性などの点で三菱ジープに敗れてしまったが、BJ型の完成度は高かった。そこでトヨタは警察や消防、郵便局や電力会社といった過酷な現場を持つ民生機関にそれを売り込み、普及させていく。

 当初はトヨタジープの名で売られたが、ジープがウイリス社の商標であることが発覚。1954年に改めて命名されたのが「ランドクルーザー」=陸の巡洋艦だった。

高い信頼性と走破性で世界のトヨタの礎となる
 民生向けオフロード4WD車市場の手応えを得たトヨタは、1955年に発売した2代目で、乗用車寄りのキャラクターをランドクルーザーに与えた。フリーウェイに合流できない低性能と揶揄された初代クラウンに代わり、北米市場でも信頼性と性能を高く評価されたのもこのモデルだ。

 1960年登場の3代目.40系で、走破性と快適性を両立させたランドクルーザーの人気は盤石になる。ホイールベースもエンジンも豊富にラインナップし、ボディもソフトトップから2ドア/4ドアバンにピックアップ、消防車仕様まで設定するワイドバリエーションを展開。国内外で支持されて、24年ものロングセラーになった。

 その後継となる70系はさらに長寿だ。1984年に登場すると、サスペンションのコイル化やフロント周りのデザイン変更などの改良を受けながら、今日までじつに40年近く世界で愛されてきた。

 走破性や信頼性、耐久性に優れる70系ランドクルーザーには、60年前の40系と互換性のある部品さえ足回りの一部に使われている。たとえボディがぼろぼろになって廃車されても、取り外した機能部品をストックしておけば、人々の足としていつまでも走り続けることができるからだ。

 地球には、タフなこのクルマでなければ生きて帰れない過酷な土地が、今も存在するのである。

多様化するニーズに応え3つのシリーズへと発展
 本来は実用車として誕生したランドクルーザーだが、販路が世界に広がるにつれて、そのニーズは多様化していった。まず求められたのは、後席にもきちんと乗れる広さと快適性を備えた、より乗用車ライクなモデル。そこで1967年に生まれたのが、50系と呼ばれるステーションワゴンだ。

 ロングホイールベースと大ぶりな車体は極悪路の走破性には不利だが、未開の大陸に延々と続く未舗装路をどこまでも走り続けるようなシーンでは、これ以上頼りになる乗り物はない。世界で好評を得たこのシリーズは、モデルチェンジのたびに快適性を増し、今日の300系へと繋がっていく。

 一方、日本が豊かになった1980年代になると、オフロード4WD車をレジャーの足として使うニーズが顕在化してきた。彼らは70系ほどの極悪路の走破性は求めないが、ステイタスとしてのオフロード性能と快適な乗用車としての使い勝手の両立を求めた。それに応えた企画が、トヨタではライトデューティ系と呼ぶシリーズだ。

 1985年の初代は3ドアのショートボディのみで、車名もランドクルーザーワゴンを名乗ったが、のちに5ドアを加え、プラドのサブネームを冠した。以後、1996の2代目ではフロントサスを独立化するなど、代を重ねるごとに乗用車らしさを深めた。プラドの名を廃し、250系を名乗ることになった新型は、その4代目となる。

ランドクルーザーの高い走破性は、極悪路を走り抜けるクロスカントリー競技でも実績をあげてきた。写真は40系がベースの競技車両。

ヘビーデューティ《BJ系/20系/40系/70系》

1951年〜《BJ系》

国産車として初めて富士山六合目までの登攀に成功した剛脚
 警察予備隊の依頼で1951年に開発され、1953年に民生向けに発売されたBJ型。小型トラック用のラダーフレームをベースに、戦時中に研究した実績のあるパートタイム4WDを組み合わせ、戦前にシボレーを参考に開発された6気筒3.4ℓのB型エンジンを積んだ。車名の由来はB型エンジンのジープだが、1954年に改めてランドクルーザーと改名されている。

外観はウイリスジープによく似ていたが、走破性は本家ジープより高く、富士山登攀試験の成績も、ライバルをしのいでいた。

1955年〜《20系》

走破性と信頼性で海外市場でも成功。トヨタの礎となる
 2代目ランドクルーザーは、民間向けを意識して内外装にも乗用車テイストを盛り込んだ。ホイールベースは当初2285㎜と2430㎜の2種で、1959年に2650㎜も加わった。エンジンは初代からのB型に加えて、3.9ℓのF型を搭載。1956年からはF型のみとなった。ボディはソフトトップ、2/4ドアバン、ピックアップに、消防車も設定されていた。

1960年〜《40系》

ファンには「よんまる」の名で愛される世界市場のベストセラー
 走破性と快適性、圧倒的な信頼性で、24年にわたる世界的なロング&ベストセラーとなったのが3代目の40系。3種(末期には4種)のホイールベースに先代同様の多彩なボディを用意。1973年に6気筒3.6ℓディーゼルエンジンも初めて搭載。1974年には4気筒3ℓディーゼルも加わった。3速のコラムMTに、2速の副変速機を備える。

その信頼性の高さは、生産が終了して40年近い今なお、世界に現役車が数多く存在することで証明されている。伝説的なモデルだ。

1984年〜《70系》

本格オフローダーの完成形にして地球上のどこにでも行ける万能車
 70系は、40系をしのぐロングセラー。日本国内では2004年に一度カタログ落ちしたものの、世界では販売が続き、道なき道を繋いできた。圧倒的な走破性と、乗用車ライクな快適性、使い勝手などを高度に両立したキャラはマニアから圧倒的な人気を集めている。エンジンも多彩で、4/5/6気筒のガソリン&ディーゼルに、V8のディーゼルもある。

登場30周年を記念して2014年に限定販売されたモデルは、たちまち完売。スーパーカーと同様に、都市では無駄な高性能もステイタスになるのだろう。
250系ランドクルーザーの発表と同時に、70系が日本国内市場に再導入されることもアナウンスされた。伝説の第二章の始まりだ。

ライトデューティ《プラド70系/プラド90系/プラド120系/プラド150系》

1985年〜《70系(プラド70系)》

RVブームから誕生した乗用車規格の快適で男前なヨンク
 アウトドアレジャー人気の高まりを受けて、商用バン規格車しかなかった70系に加わった乗用車規格車がライト系の起源。当初は3ドアのみでランドクルーザーワゴンを名乗るが、1990年に5ドアを加え、プラドのサブネームも冠した。

ライト系はサスも最初からコイル式。エンジンはターボディーゼルがメインで、ATも設定。当時大人気だったパジェロがライバルだ。

1996年〜《プラド90系》

3ナンバーボディに独立サス。4WDもフルタイム化される
 2代目プラドは乗用車色を強化。3ドア、5ドア共に3ナンバー規格のワイドボディ。4WDは従来のパートタイムからフルタイム化され、フロントサスも独立式になった。V6の3.4ℓガソリンや3ℓディーゼルターボなど、エンジンも強力。

2002年〜《プラド120系》

オン&オフの性能も快適性も大幅に高めた万能クルーザー
 3代目プラドはクルマとしての基本性能を向上。トルセンLSDセンターデフや、高度な登降坂制御が可能なアクティブTRCも設定。電子制御エアサスなどでオンロード性能と快適性も高い。直4V6のガソリンのほかにディーゼルターボモデルもあった。

2009年〜《プラド150系》

広い室内に3列シートでミニバン的に使える万能車
 4代目プラドの国内導入はロングボディのみ。3列シートでミニバンのようにも使える一方で、極悪路で極低速を保ち、ハンドル操作に専念できるクロールコントロールなど、オフ性能も万全。ガソリンは2.7ℓと4ℓ、ディーゼルは2.8ℓを設定。

ステーションワゴン《50系/60系/80系/100系/200系/300系》

1967年〜《50系》

未開の大地を駆けるキングオブ4WDの歴史の始まり
 基本的にバン(荷物車)として設計された40系に対して、乗用車としての快適性を盛り込んだステーションワゴンが50系。その顔立ちからムース(ヘラジカ)の愛称で世界で愛された。日本国内では全車商用バン規格車。

1980年〜《60系》

快適性を向上させて個人ユーザーも獲得
 RVブームが盛り上がった1980年代の冒頭に誕生した2代目ワゴンは、フロントシートのセパレート化やエアコン、パワーステアリングの設定など、個人ユーザーを意識した進化を遂げた。後期にはディーゼルターボやATも設定された。

1989年〜《80系》

国内向けも乗用車規格。大柄なボディと装備で高級SUVへとシフト
 バブル景気真っ盛りに誕生した80系から、日本国内でも乗用車規格車が発売された。全長4970㎜、全幅1930㎜の大柄なボディは、高級車の風格も漂わせる。サスペンションのコイル化やフルタイム4WDの設定など、装備も上級志向。

1998年〜《100系》

高級オフロードカーのプレステージ性を確立
 今日に繋がる高級オフロードカーとしてのプレステージ性を盛り込んだ、4代目ステーションワゴン。フロントサスに初めて独立式を採用。電子制御サスも設定して走破性と乗り心地を両立。V8の4.7ℓに副変速機付きフルタイム4WD。

2007年〜《200系》

電子制御で完全武装した、道を選ばないVIPカー
 内外装は完全に高級車レベル。一方、車高・減衰力の電子制御や、極低速を自動的に保って極悪路を走破できる、世界初のクロールコントロール、路面に応じて前後スタビライザーを制御するKDSSなどの先進技術で、走破性も最高レベルだ。

2021年〜《300系》

クルマとしての資質を磨き上げて世界の頂点へ
 TNGAに基づくシャシーにアルミや高張力鋼板などで軽量化したボディなど、クルマとしての基本を磨き上げた現行型。V6、3.5ℓのガソリンと3.3ℓディーゼルはともにツインターボ+10速AT。オンもオフも完璧にこなす世界のランクルだ。

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内外出版/月刊自家用車

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オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

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