中古車購入チェックポイント
更新日:2021.06.11 / 掲載日:2021.06.10
日産 エクストレイル/2013年~ ONE MAKE MARKET RESEARCH

文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス、日産
(掲載されている内容はグー本誌 2021年6月発売号掲載の内容です)
※中古車参考価格はすべてグーネット2021年5月調べ。
ミドルクラスSUVのなかでも人気の高いエクストレイル。はたしてその人気の理由は、アウトドアに便利だからというだけなのだろうか?
2017年式 日産 エクストレイル 20X ハイブリッド(CVT) ●全長×全幅×全高:4690×1820×1730mm ●ホイールベース:2705mm ●トレッド前/後:1575/1575mm ●車両重量:1580kg ●排気量:1997cc ●エンジン:直4DOHC ●エンジン最高出力:147ps/6000rpm ●エンジン最大トルク:21.1kgm/4400rpm ●モーター最高出力:41ps ●モーター最大トルク:16.3kgm ●サスペンション前/後:ストラット/マルチリンク ●ブレーキ前後:Vディスク ●タイヤ前後:225/65R17 ●中古車参考価格帯:100万円~360万円(13年~21年 ※全グレード)
アウトドアに最適な装備が揃うミドルクラスSUV

3代目となる現行モデルのエクストレイルは、初代や2代目の四角さから離れて丸みを帯びたデザインへ生まれ変わった。
実用的で価格は割安 ニーズに合致したクルマ
工藤●今回取り上げるのは、日産エクストレイル。初代デビューはちょっとした衝撃だったよね。
編集部●どうしてですか?
工藤●時、90年代のクロカンブーム(三菱パジェロやトヨタ・ハイラックスサーフなど本格的なオフローダーの流行)は完全に終わり、SUVというジャンルはもう先がないと思われていたんだ。
編集部●今では信じられませんね。
工藤●そうなんだけど、当時はそんな空気があった。そんななか、日産は「若者はこんなクルマを欲しがっている。本格的な悪路走破性はいらないから実用的で快適で、(それまでの“ヨンク”に比べて)割安に買えるのがコンセプト」として開発したのが初代エクストレイル。
編集部●なるほど。
工藤●今だから言うけれど、デビューしたときには「本当にそれが求められているの? 大丈夫か日産?」と思ったわけ。でも……。
編集部●でも?
工藤●初代エクストレイルは爆発的にヒットした。驚いたよ。
編集部●日産の読みは正しかったんですね。
工藤●そういうこと。あれから20年。今回紹介するのは、3代目だ。
編集部●3代目のポイントは?
工藤●ふたつあって、ひとつはエクストレイル初の3列モデルが用意されたこと。7人が乗れる。
編集部●年に数回だけ3列目を使うなら、こういう選択もアリですよね。
工藤●そうそう。そしてもうひとつの特徴は、ハイブリッドが用意されたことだ。
編集部●ハイブリッドは2015年4月に追加されましたね。
工藤●かなり凝ったシステムを積むハイブリッドで、燃費性能のポテンシャルは高い。ただ、システムレイアウトの都合から3列シート車の設定はなく、5人乗りだけの設定だ。
Profile 工藤貴宏:学生時代のアルバイトから数えると、自動車メディア歴が四半世紀を超えるスポーツカー好きの自動車ライター。2021-2022日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
[OFF-ROAD]オフロード走行も優秀な現行型エクストレイル

駆動方式はFFと4WDが選べるが、4WDはそのシステムも凝っている。「ALL MODE 4×4-i」と呼ぶシステムで、前後の駆動力配分を固定して悪路走破性を高める「LOCKモード」付きだ。
[モデルヒストリー]
2013年10月:フルモデルチェンジ

プラットフォームを刷新し、従来の直線基調から丸みを帯びたスタイルへとデザインも大きくスイッチしたフルモデルチェンジ。発売時のパワートレインは、2L自然吸気のガソリンのみ。CVTを組み合わせる。
2015年4月:ハイブリッドを追加

搭載するハイブリッドは、1モーター2クラッチ式で、エンジンを接続するクラッチを切ればモーターだけで走行可能。バッテリー搭載の影響などから7人乗りはなく、2列シートの5人乗りのみで展開する。
2015年12月:一部改良

ハイブリッドも含め全車に衝突被害軽減ブレーキを標準装備。すべてのガソリン車に暖房の効きが早まるPTCヒーターを標準搭載し、寒冷地での快適性を高めている。一部仕様には電動テールゲートを標準化。
2017年6月:マイナーチェンジ

フロントグリルを大型化してバンパー形状を改めるなど、外観のリフレッシュも含めたマイナーチェンジを実施。従来はドア中央付近にあった電動テールゲートのハンズフリーセンサーがバンパー下に移行した。
2019年1月:一部改良

ヘッドライトのハイ/ローの切り替えを自動化するハイビームアシストや、踏み間違い衝突防止アシストの歩行者検知機能を追加。さらに本革シートを備える上級仕様の「オーテック」も登場した。
2020年1月:一部改良

「20Xi」と「20Xiハイブリッド」の先進安全性能をアップグレード。新たにミリ波レーダーを搭載し、2台前を走る車両の動きを検知してより早くブレーキ警告を出す機能も採用している。
2020年10月:一部改良

全車に本革巻きシフトノブを標準採用するなど、インテリアの質感を向上。電動調整シートも採用を拡大した。「20Xi」グレードではフロントグリルなどをダーククローム化して外観の上質感も向上。
[インテリア]防水シートの採用がライバルにはないアイデア

工藤’sコメント「質感が上がった防水のシートは肌触りも滑らか。」
水が染み込まないシートを用意するのが、ライバルにはない特徴。ガソリン車ではこの仕様が標準設定となり、アウトドアレジャーに役立つだけでなく飲み物をこぼしても掃除がしやすいから子育てファミリーにも最適だ。ミドルクラスSUVだけあって、後席の居住性も十分といえる。運転席まわりは先代の跳ね上げられるハンドルなど奇抜な仕掛けはないが、上質な印象。


ハイブリッド車を除きラゲッジルームの床も防水素材で作られていて、雪が付いたままのスノーボードなども気兼ねなく積める。3列シート車の3列目居住性は「何とか大人も座れる」程度である。ルームミラーは、カメラからの映像を液晶ディスプレイに映す電子ミラーも設定。
[メカニズム]先進性を感じさせる先取りメカニズムの数々
ライバルに先駆けていち早く衝突被害軽減ブレーキを設定するなど、さりげなく先進機能が充実しているエクストレイル。ライバルに比べるとリーズナブルな価格設定ながら、これだけ技術が詰まっているのが凄い。エンジンこそオーソドックスなタイプだが、高速道路走行をアシストする「プロパイロット」など注目すべきアイテムは多い。
ENGINE

エンジンはハイブリッドも含めて全車とも2L自然吸気ガソリン。ハイブリッド用のエンジンは補機ベルトを廃止し、低フリクションのオイルシールを採用するなど徹底的な効率向上がはかられる。
HYBRID

高出力モーターとリチウムイオンバッテリーを組み合わせたハイブリッドは、WLTCモードで15.0km/L(FFモデル)の燃費性能を実現。燃費だけでなく、エンジンを止めて走る際の静粛性も特徴となっている。
ProPILOT

高速道路走行時に、前を走るクルマに合わせてドライバーがアクセル操作することなく速度を自動調整。加えて車線の中央を走るようにハンドル操作もアシストし、疲労を大幅に軽減してくれる。
アウトドアに便利な内装は現行型もしっかり受け継ぐ
編集部●エクストレイルといえば、アウトドアレジャーと相性のいい装備が特徴ですよね。そのあたり3代目はどうなんですか?
工藤●濡れた水着や雪が付いたスキーウェアのままでも気兼ねなく乗り込める撥水のシートを、ハイブリッド以外のモデルに設定している。
編集部●ライバルにはない、エクストレイルの象徴的な装備ですね。
工藤●そのうえフロアカーペットや荷室も水が染み込まない仕様になっているから、靴や荷物が濡れていても気にならないし、汚れたら水拭きで掃除できるのがいい。
編集部●荷室の広さはどうですか?
工藤●2代目はクラストップレベルだったけど、新型はそのあたりは控えめ。トヨタRAV4、三菱アウトランダー、マツダCX-5のほうが広いので、荷室容量重視ならそれらを選んだほうがいいかも。
編集部●そこはちょっと残念。
工藤●ところで中古車の状況は?
編集部●グーネットで調べてみると、流通台数は3145台と十分すぎるほど。価格も100万円から360万円と、かなりワイドレンジですね。好みに合わせて選び放題。年式のオススメはありますか?
工藤●予算があるならば、17年6月以降のモデルがいい。
編集部●理由は?
工藤●それは、衝突被害軽減ブレーキの性能が向上しているから。
先代モデルの相場動向は?

新しい車両でも8年前のモデルとなる先代だけあって、手ごろな価格で買いやすい状況といえる。流通量も多く、選べる車両が多いのもうれしいし、ディーゼル車やMTなど現行モデルにはないタイプを選べるのもポイント。ただし、車両コンディションはしっかり見極めよう。
●中古車参考価格帯:40万円~200万円(07年~13年 ※全ボディタイプ&全グレード)
[インプレッション]便利に使えて快適性も高いバランスのよさが魅力
エクストレイルの最大の素晴らしさはバランスのよさ。手ごろなボディサイズでありつつ居住スペースやラゲッジスペースがしっかり確保され、防水処理が施されたシートやフロア、荷室床面なども便利だ。新車時は、車格や装備の割に値段が控えめなのもユーザーとしては魅力といえるポイントだった。走りは、運転を楽しむようなキビキビとしたハンドリングというよりは、乗り心地がよく快適で、リラックスしたドライブができる味付け。みんなでワイワイと出かけるときに、同乗者がハッピーになれるクルマだ。
[マーケットデータ]

年式
2016年式が全体の2割以上を占める。マイナーチェンジ以降のモデルも少しずつ増えているが、割合は少なめだ。グレード
現行型にはエントリーグレード「20S」があるが、こちらは物件が非常に少ない。最も多いのは中堅の「20X」である。走行距離
3万km未満の物件は全体の半数近くを占め、全体的にコンディションが良好。安心したクルマ選びができるだろう。
工藤貴宏が注目するエクストレイルの「ココが○」
その1:アクティブに遊ぶユーザーにうれしい、防水のインテリア
その2:低年式モデルでもライバルに比べると充実の先進安全装備
その3:3列モデルやハイブリッドも選べるバリエーションの広さ