中古車購入チェックポイント
更新日:2019.04.11 / 掲載日:2019.04.10
スバル WRX【ONE MAKE MARKET RESEARCH】

※写真は2017年式 WRX STI
文●工藤貴宏
(掲載されている内容はグー本誌 2019年4月掲載の内容です)
※中古車参考価格はすべてグーネット2019年3月調べ。
WRXシリーズは、日本を代表するスポーツセダン。手の届きやすい価格で高い走行性能を備えた魅力的な車種だ。快適性の高い大人の高性能セダン「S4」も用意する。
●全長×全幅×全高:4595×1795×1475mm ●ホイールベース:2650mm ●トレッド前/後:1530/1540mm ●車両重量:1490kg ●最高出力:308ps/6400rpm ●最大トルク:43.0kgm/4400rpm ●サスペンション前/後:ストラット/ダブルウィッシュボーン ●ブレーキ前後:Vディスク ●タイヤ前後:245/40R18 ●中古車参考価格帯:210万円~400万円(14年~18年 ※全グレード)
「S4」と「STI」方向性が違う2つの柱
「WRX」はスバルにとって特別なモデルである。ルーツは1992年にデビューした「インプレッサWRX」で、これは小型軽量ボディに240馬力と当時としては驚くほど出力の高いエンジンを搭載した突然変異的なスポーツセダンだった。そして2014年に発売された現行モデルからは、インプレッサシリーズから独立。基本的な車体構造を共有しつつも、専用設計部分を増やしトータルパフォーマンスが強化されて「WRX」として単独車種になったわけだ。
WRXの本質を知るには、初代がデビューした背景を理解するのがもっとも近道だ。当初のもくろみは「市販車をベースに戦うWRC(世界ラリー選手権)で活躍するための戦闘力の高いベースモデル」であり、速さを求めたクルマづくりが施された。ところが進化の過程で「理想の市販車」と「戦うクルマのベース」としての理想が両立できず後者のコンセプトだけが残り、「WRX STI」として性能を突き詰めたモデルへ昇格。快適性は二の次となった。
しかし、現行モデルの「WRX」では(正確にいえば実質的な先代モデルにATを組み合わせた「WRXSTI Aライン」から)そのジレンマを解消。超高性能かつ快適なスポーツセダンを「WRX S4」として登場させ、快適性を忘れて競技に通用する戦闘力に走りを強化させた最速仕様を「WRX STI」と位置づけ、2本の柱でシリーズを構成しているのだ。
日本ではいずれも2Lターボエンジンを搭載するが、前者と後者ではエンジンが基本設計から別。前者は新世代タイプで扱いやすいトルク特性、後者は従来の競技レベルでの耐久性にも定評のあるタイプを採用している。さらに、トランスミッションも両者で異なり、「WRX S4」がCVT、「WRX STI」では6速MTとパワートレインは完全につくり分けられ、好みで選べる体制になっている。
[エクステリア]スポーティながらも洗練された姿

車体の基本骨格を先代インプレッサと共用しつつも、雰囲気はまったく異なる。その要となるのが前後フェンダー。インプレッサに比べて張り出しが増し”ブリスターフェンダー化”されていて、タイヤも外側へ出すことでしっかりと地面を掴む踏ん張った印象を得ているのだ。前後バンパーのダイナミックなデザインも特徴。
エンジンルーム内に空気を送るボンネットのエアスクープをはじめ、随所に速さを予感させる意匠が盛り込まれる。リヤスポイラーは有無が選べる。
[モデルヒストリー]進化を止めず、完成度を高める!


2014年8月:新型WRXがデビュー
インプレッサシリーズから独立した車種としてデビュー。ATの「WRX S4」は快適性も高いスポーツセダン、MTの「WRX STI」は絶対性能を追求したバリバリの体育会系スポーツモデルと立ち位置は大きく異なる。
2015年6月:一部改良
「S4」、「STI」ともに左側ドアミラー部のカメラや斜め後方の車両を検知し、ドライバーに伝える機能などの安全支援装備を新設定。「S4」はサスペンションの改良や静粛性向上を実施。
2016年4月:一部改良
フロントドアガラス部のウェザーストリップ2枚化などで静粛性を向上。ルーフトリムの素材を不織布からトリコットに変更してインテリアの質感も高めている。

2017年5月:マイナーチェンジ(STI)
「STI」に大改良を実施。DCCDと呼ぶセンターデフを全面新設計し、完全電子制御化することで進入時のスムーズな回頭性を実現。ひときわ高性能なブレーキも備え、外観の意匠も変更。

2017年7月:マイナーチェンジ(S4)
「S4」を大幅改良。外観のデザインをリファインし、サスペンションをはじめ走りや快適性を磨いた。「アイサイト」には高速走行時に車線を維持するステアリングアシストシステムも搭載。
2018年4月:一部改良
「S4」ではアイサイトの自動ブレーキ機能に改良を施し、認知能力を高めることで衝突回避の可能性を向上させた。「STI」は「タイプS」にサンルーフがオプション設定された。

2018年9月:STIスポーツを追加(S4)
「S4」に最上級グレード「STIスポーツ アイサイト」を追加。外装はドアミラーなど細部をブラック化し、インテリアは本革を使ったレカロ製シートを設定する。走りも磨いた。
[インテリア]実用性とスポーティ感の絶妙なバランス

※写真は2017年式 WRX S4
世界に通用するスポーツセダンでありながら、実用性も高いのが特筆すべきポイント。ステアリングやシートなどにスポーティなオーラを感じる一方、基本パッケージングは実用セダンのインプレッサと共通なので、後席もトランクルームも十分に広く、日常的な使い勝手に優れているのだ。ファミリーカーとしてもポテンシャルは高い。

フロントシートは身体をしっかり包み込んでサーキット走行にも対応するバケット形状。戦闘的なデザインのステアリングホイールとあわせ、スポーツカーのような感覚を味わえる。一方でトランクはゴルフバッグが4個収
レカロ社製スポーツシートはSTIとS4 STIスポーツのオプション品

世界中の高性能車にこぞって採用されるドイツの名門、RECARO(レカロ)社製のシートを設定。本革と肌触りのいい人工皮革の「ウルトラスエード」を表皮とし、電動調整機能を内蔵。「WRX STI タイプS」と「WRX S4 STIスポーツ」で選べる。
[メカニズム]「S4」と「STI」で異なるパワートレイン

[AWD]:「S4」が「VTD-AWD」と呼ばれる不等&可変トルク配分電子制御式。「STI」は手元で特性を切り替えられる「マルチモードDCCD」を採用。
全車とも2LのターボエンジンにAWDを組み合わせるが、メカニズムは「S4」と「STI」でまったく異なる。トランスミッションにCVTを組み合わせる「S4」は新世代エンジンを搭載し、MTの「STI」は競技での使用まで視野に入れた実績のあるエンジンに、好みで作動を変更できるAWDシステムを搭載。


[エンジン]:「S4」に搭載するFA20型は新世代設計の直噴ターボで、低回転から扱いやすい。一方「STI」のEJ20型は高回転まで気持ちよく回る特性。

[LSD]:「STI」はフロントにヘリカル式、リヤにはトルセン式のLSDを搭載。旋回加速時にタイヤの空転を防いで加速力を高める仕掛けだ。
[特別仕様車]伝統のSシリーズは中古車でも買える?
スバルのモータースポーツ系関連会社であるSTI(スバルテクニカインターナショナル)がWRXをベースに手を加えたコンプリートカーが「S207」や「S208」などのSシリーズ。いずれもエンジンやサスペンションなどに独自の味付けを施し、走行性能をレベルアップしているのが特徴。そして限定販売かつ、販売開始後すぐに売り切れる人気車だが、在庫はある。
[S208]中古車参考価格帯:約560万円(17年 ※S208)
[S207]中古車参考価格帯:500万円~520万円(16年 ※S207)
北米専用の限定車S209の性能は?

「S209」は北米で初めて販売される予定のSシリーズ。大胆なオーバーフェンダーと2.5Lエンジンの搭載に注目だ。
[市場データ]STIは高値安定、S4は初期型ならば買いやすい

同じWRXでも、S4とSTIでは相場が100万円ほど異なる。物件数は後者の方が多いが、5年落ちでも200万円台後半という高い相場。一方S4は、低年式なら相応に相場が下がっており、かなり買いやすくなっている。どちらも走行距離が少なめで、良質な物件が揃う。
グレード
S4の上級グレード「2.0GT-S アイサイト」がもっとも豊富だが、全体的に見るとS4のほうがやや少なめ。STIはまだまだ高額。年式
登場から5年経過しているが、どの年式も偏りなく流通している。とくに2016年式が豊富。ただし相場が手頃なのは2014年式辺りだ。走行距離
3万km未満が全体の7割以上を占めており、低走行な物件が目立つ。インプレッサ時代に比べて改造車が少なく、良質個体が多い。
自動車ジャーナリスト工藤貴宏の「スバル WRXのGOODとBAD」
【GOOD】極上の走行性能と実用性のバランス
「STI」はもちろん「S4」でも走行性能は国産最高水準の実力で、極上のドライビングプレジャーを満喫できるから運転好きにはたまらない。一方で居住性や荷室容量など実用性も高く、日常で不自由なく使えるトータルバランスのよさも絶妙だ。静粛性や乗り心地が高められて快適性も備えた「S4」は、運転好きパパのファミリーセダンとしても魅力的。
【BAD】「STI」は快適性が難「S4」はCVTが惜しい
走行性能を徹底追求した「STI」は、その弊害として乗り心地や静粛性などの快適性能が犠牲になっているのがウィークポイント。ハイレベルな走りに惚れ込んだら、そこは覚悟して購入しよう。一方「S4」は、トランスミッションがCVTなのが惜しい。CVTとしてはよくできているが、やはりATに比べるとアクセル操作に対する反応がリニアではないからだ。
編集部イチオシ!

買いのグレードは「WRX STI タイプS」
MTの運転をいとわないなら、オススメはWRXの走りの真骨頂を味わえる「STI」だ。「タイプS」は上級グレードで、19インチタイヤを標準装備し本革シートも選べる。