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更新日:2024.02.17 / 掲載日:2022.11.30
車のセルは回るがエンジンがかからない場合は故障?注意すべき点を解説
車を動かそうとセルモーターを回したものの、なぜかエンジンがかからないといったトラブルが発生することがあります。その原因は様々ですが、故障であったり、そうではないうっかりミスだったりということもあります。
ここでは、こうしたトラブルが起きた場合に考えられる原因や対処法、注意点を解説します。また、こうしたトラブルを防止するための方法や、JAFまたはロードサービスを利用する選択肢についても解説します。
この記事の目次
セルは回るがエンジンがかからない場合はどうすればいい?

考えられる原因として最も多いのが、プラグかぶりという現象やバッテリー上がりです。しかし、その他の要因が潜んでいることも珍しくありません。
以下では、こうしたトラブルが発生した時の原因パターンや自力でできる最も簡単な復旧方法などについて説明していきます。
考えられる原因について

以下では、プラグかぶりやバッテリー上がりなどの代表的なものや、それ以外についても解説していきます。
プラグかぶり
プラグかぶりというのは、点火プラグの発火口に必要以上に燃料が付着していることで、かえって発火が妨げられている状態のことです。この状態になるとプラグが湿ってしまうので火花が飛び散らず、点火がうまくいきません。
このトラブルは、車のエンジンを少しだけかけて、またすぐに止めてしまった場合などに発生しやすく、ごく短い距離だけを移動させることで起きることがあります。
例えば、玄関前にとりあえず停めておいた車をガレージへ移動させ、距離にして数十メートルほど走行してエンジンを切ったら、翌朝にプラグかぶりが発生したというケースがあります。
さらに、冬場の冷え込みが激しい時期だと発生する確率も高くなるので注意が必要です。
プラグかぶりの状態になっているかどうかを判断するには、セルを回した際に、エンジンが始動するキュルキュル音がするかどうかです。音はするがエンジンがかからないのであれば、プラグかぶりの可能性が高いでしょう。
ガソリンの劣化
ガソリンが劣化し、車両内部の金属部分が腐食したり、重要箇所で詰まったりすることがあります。そうなると、エンジンが始動不良を起こし、セルは回るがエンジンはかからないという状態に陥っていることも考えられます。最悪の場合、エンジンが破損するかもしれません。ガソリンは様々な成分の集合体なので、長い間放置すれば次第に酸性化していきます。こうして変質・劣化したガソリンは、もともとはオレンジ色だったのが褐色へと変わっていき、強い刺激臭を発するでしょう。
そして、燃料タンクは密閉されているとはいえ、高揮発成分は蒸発してしまうので、蒸発しにくい成分だけが残り、ドロドロの状態になります。
1年ほどで劣化し始め、2~3年でこうした状態になります。常に空気にさらされる上に気温も高いという劣悪な条件下であれば、約3カ月で劣化し始めるでしょう。
もしも数カ月単位で車両やタンク内のガソリンを放置していた場合は、専門家に依頼してガソリンの入れ替えを行ってください。
エアクリーナーなどの異常
エアクリーナーが汚れたり、詰まったりしていることで、エンジンがかからないこともあります。エアクリーナーは肉眼では見えないほどの埃や塵をキャッチする役割があるので、走行距離が長いほど目詰まりを起こしやすくなるのです。
エアクリーナーの目詰まりが進むと、アイドリングが不安定になる、加速時に調子の悪さを感じるなど、違和感のある症状が出てきます。
また、ガソリンの劣化によってキャブレターが詰まった場合もエンジントラブルを引き起こすので、注意しましょう。
バッテリー上がり
セルは回るものの弱々しいという場合は、バッテリー上がりの状態に陥っている可能性があります。電力を消費する機器をつけっぱなしにしていたり、長期間運転しなかったりすると、バッテリーの電圧が下がってしまいます。エンジン始動に必要な電力が不足すれば、車は動きません。
また、セルが弱々しいからといって連続して何度も回してしまうと、それだけで電力を消費してバッテリーの電圧低下が悪化したり、最悪の場合セルが壊れたりすることもあります。必ず一定の間を置くようにしてください。
バッテリーの電圧不足
完全にバッテリー上がりの状態になっていなくとも、電圧が下がっているためエンジン点火に至らないこともあります。車のバッテリーは、12.5V~14Vが正常な電圧だとされています。この範囲を超え出たり、下回ったりすれば、電圧不足と言えるでしょう。
このような電圧不足が起きる原因は、オルタネーターの故障やバッテリー本体の劣化などが考えられます。また、新車の場合でも車の運転スタイルや使用頻度によってはバッテリー上がりが起こりやすくなることもあるので注意が必要です。
車のバッテリーは、走行することで充電・蓄電される構造になっています。そのため、長期間運転しないままだと自然放電によって電圧不足が起きます。このような場合は、完全にバッテリー上がりになる前に長距離を運転することで回復させることが可能です。
また、オルタネーター(発電機)に不具合が発生すると、バッテリーを充電するための電力の供給ができません。こうなるとバッテリーの充電や交換だけを行っても効果はないでしょう。
点火プラグが作動しない
点火プラグやイグニッションコイルにトラブルが生じていて、点火するまでの指令系統が正常に機能していない可能性もあります。点火プラグは、燃料へ着火するためのパーツです。劣化すると燃費や加速の調子にも悪影響を及ぼします。点火プラグが異常な状態だとエンジンがかからなくなることもありますし、アイドリングの不安定さや排気ガスの異常などにもつながります。
また、イグニッションコイルはバッテリーから送られた電圧を高電圧に変換する変圧器で、これが正常に動かなければエンジンはかかりません。
点火タイミングのずれ
タイミングベルトが「コマずれ」を起こすことで、点火するタイミングがずれてエンジンの始動に影響することがあります。仮にエンジンがかかっても吹き上がりが悪かったり、異音がしたりするので、明らかに修理が必要な状態だと分かるでしょう。
コマずれの原因は様々で、ベルトの張りの調整不備や急激なトルクがかかることで発生します。すぐに対応すれば張りを調整して解決することもありますが、最悪の場合はエンジンの損傷に至るので、丸ごと交換になることもあります。
燃料ポンプの異常
燃料ポンプが不具合を起こしていて、エンジン始動に必要なだけの燃料を吸い上げられていないというケースもあります。この場合は、前述したコマずれのように異音はせず、むしろ反対にポンプの音がしなくなるでしょう。原因は、ブラシが摩耗したことによる経年劣化によって通電不良が生じた場合や長期間エンジンをかけなかったことでガソリンの揮発性の高い成分が蒸発し、残ったワニスやガム質によってモーターが動かなくなった場合が考えられます。こうなると、専門家による修理が必要です。
セルそのものの故障
セル(セルモーター)は10~15年で寿命が来るというのが一般的なので、セル自体が故障している可能性もあります。ただし、セルは基本的にエンジンさえかかえれば役目は終わりですし、構造もシンプルなので酷使することで故障するケースは稀です。
セルの故障の前兆として、歯車がかみ合わない「ガチッ」「ギギギ」という異音や、スタータースイッチが故障している「カチッ」という異音が挙げられます。
車が全く動かなくなった場合、セルを軽く叩くと動くことがありますが、これは応急処置なのでいずれにせよ速やかに修理しましょう。
防犯システムが作動している
キーが故障して、自動車防犯システム(イモビライザー)が誤作動を起こしている可能性もあります。鍵の頭の部分には自動防犯システム用のIDチップが組み込まれており、このチップがない合鍵の場合はエンジンもかからないでしょう。
こうした合鍵はドアの開閉はできますが、エンジンを始動させようとするとセル自体は回るもののIDの照合ができないので、エンジンもかかりません。車も動かないままなので、修理が必要です。
その他
前項までで挙げた理由の他に、ガス欠や寒さによってエンジンがかからなくなっていることも考えられます。ガス欠は燃料が減った状態で車体が傾くと燃料がうまく供給できず、平地でもエンストが頻繁に起きたりするのですぐに分かるでしょう。
また、冬場は厳しい寒さによってバッテリーの蓄電力が弱くなることがあります。電圧が低下し、セルを動かすのに十分な電力を得ることができなくなるので、エンジンもかかりにくくなってしまうのです。
復旧方法について

最も単純な方法は、アクセルを踏んでエンジンをかけるというものです。以下ではその方法と注意点を解説します。
アクセル+エンジン
セルは回るがエンジンがかからない場合の最も一般的な復旧方法は、「アクセルをぐっと踏み込んでそのままエンジンをかける」ことです。エンストなどのトラブルでJAFに救援を依頼すると、このような方法で解決することも多くあります。一度試してうまくいかなければ、10秒から数分くらいの間を置いてから再度チャレンジしてみましょう。セルを回す時、セルモーターを回しながら同時にアクセルを思いっきり床までベタ踏みするのがポイントです。
AT車の場合は、そもそもセルを回す際にブレーキを踏んだ状態になっているはずですが、左足でブレーキを踏みつつ右足でアクセルをぐっと踏み込んでみてください。こうすると燃料とともに空気も大量に供給されるため、点火しやすくなります。
プラグかぶりを懸念する方もいるかもしれませんが、それよりも大量の空気の供給による点火を優先することです。この操作でエンジンの回転が起きたらアクセルペダルをすぐに戻してまた踏み、また戻して踏んで…と様子を見ながら繰り返してください。
アクセルの踏み方を工夫する
上記の方法を試す際、アクセルの踏み方については様々な説があります。ベタ踏みがいいという情報もあれば、ベタ踏みから少し浮かす方法、あるいは強弱をつけて踏むやり方などを紹介しているサイトもあります。
車の構造上、最も確実なのはやはり最初にベタ踏みでエンジンをかけることです。
エンジンがかからないと発覚した時点で、10秒ほどセルを回しましょう。それでも駄目なら5分ほど置いてからアクセルペダルをベタ踏みして、その後に強弱をつけて踏むのを繰り返してください。
復旧時の注意点について

以下では、この復旧方法を実施する際の注意点などを解説します。
連続してセルを回さない
セルを回してもエンジンがかからないことが発覚した場合、連続してセルを回さないようにしましょう。これをやると、先に説明した「プラグかぶり」が悪化することがあり、余計にエンジンがかかりにくくなってしまいます。
トラブルが発覚したら、5分ほど間を置いてからセルの操作と、アクセルペダルをベタ踏みするやり方をあわせて試してみてください。
バッテリーは、しばらく時間を置くと勢いが復活することがあります。
バッテリー上がりに注意
エンジンがかからないからと言って連続してセルを回すのは厳禁だと前述しましたが、これにはプラグかぶりの悪化の他にも理由があります。あまりセルを立て続けに回すと、バッテリー上がりが起きることもあります。エンジンがかからない理由がバッテリーの電圧低下にある場合、セルを回しすぎるとそれだけで電力を浪費し、かえってバッテリー上がりが悪化するかもしれません。それでもセル操作を続ければ、セル自体が壊れるでしょう。
復旧後しばらくエンジンをかけておく
エンジンの復旧方法を解説しましたが、この方法でエンジンがかかっても、安心してすぐに止めないようにしましょう。仮にすぐに運転しないとしても、空ぶかしの状態でしばらくそのままにしておいてください。エンジンをストップするタイミングは、マフラーから白い煙が出てこなくなったあたりです。大抵の場合、5~10分程度でエンジン内に溜まっていた燃料が燃え尽き白煙は出なくなります。
その後は、念のため修理工場などに持ち込むといいでしょう。
「プラグかぶり」は一度エンジンがかかれば問題ない
プラグかぶりについては、トラブルではありますが故障というほどでもないので、一度エンジンがかかれば後は普通に走っても問題ありません。ただし、本当にプラグかぶりだけが原因なのかどうかは専門家でないと判断できないので、不安なら修理工場などで見てもらいましょう。
プラグかぶりを防止するには、ほんの少しだけ車を動かす、いわゆる「ちょい乗り」をしないことが大切です。もしもちょい乗りが必要な場合は、エンジンを切る前に一度、空ぶかしをしてください。
救援を呼ぶ場合

こうした場合に最も頼りになるJAFなどのロードサービスについて、以下で解説していきます。
JAF
JAFは、正式には「一般社団法人日本自動車連盟」といい、全国どこでも、高速道路や山道のような場所でも救援に駆け付けてくれます。会員制ではありますが、非会員でも有料で利用することが可能です。ただし、JAFが路上でできる復旧・修理作業はあくまでも応急的なもので、さしあたり車を動かせるようにするためのものと考えたほうがいいでしょう。
場合によっては、レッカー搬送も請け負ってくれますが、修理工場やディーラーなどできちんと点検・修理を受けるようにしてください。
ロードサービス
ロードサービスは、路上などでの車の急な故障やトラブルが発生した際に救援に駆け付けてくれるサービスのことです。JAFもロードサービスに入ります。ロードサービスは加入している自動車保険に自動的に付帯されていることが多いので、緊急時には利用することも検討しましょう。
ただし、保険会社によるロードサービスは会社や契約内容によって無料のサービスと有料のサービスの範囲が異なるなど、利用時の条件や制限があります。そのため、JAFを利用するのとどちらがいいのか、比較検討してみるといいでしょう。
セルは回るがエンジンがかからないトラブルの防止法

次に、エンジンの始動が鈍くなったと感じた時点で、すぐに点検してもらいましょう。
トラブルが起きる予兆としては、通称「ベルト鳴き」と呼ばれるキュルキュルという異音やセルの音が弱くなるなどの症状が挙げられます。こうした現象があれば、トラブルになる前に整備工場などへ持ち込んで相談しましょう。
セルが回らない場合は?

この場合は、まずハンドルロックやスマートキーの充電切れ、ギアがP(パーキング)に入っていることが考えられます。
本当に故障が起きているケースとしては、セルそのものの故障やバッテリー上がりの可能性が高いです。それ以外となると本格的な修理が必要ですし、素人が原因を突き止めるのは困難なため、ロードサービスなどに頼りましょう。
まとめ
①セル(セルモーター)は回るがエンジンがかからないというトラブルが発生することがある
②考えられる原因はプラグかぶりやガソリンの劣化など
③原因が不明な場合は、すぐに点検・修理に出したほうがいい
④最も有効な復旧方法は、アクセルを踏み込んでそのままエンジンをかけるというもの
⑤復旧時に連続してセルを回すとセルそのものの故障やバッテリー上がりを起こすこともあるので注意が必要
⑥プラグかぶりは一度エンジンがかかれば問題ない
⑦復旧方法を試してもエンジンがかからない場合は、JAFなどの救援を呼ぶこと
⑧セルは回るがエンジンがかからないというトラブルを防止するには、ちょい乗りを避けること
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