中古車購入ガイド
更新日:2022.08.22 / 掲載日:2022.08.22
【ホンダ シビック タイプR】中古車価格が高騰するタイプRの新型に注目が集まる理由

文●大音安弘 写真●ホンダ
11代目となる新型シビックをベースとしたシリーズのフラッグシップスポーツとなる「シビックタイプR」のフルモデルチェンジモデルを目前に控えた今、新型モデルへの注目が高まっている。
新型シビック タイプRは歴代最強モデルになる見込み
2022年9月に発売が予告されている新型の情報は、内外装デザインに加え、ボディカラーと主な装備内容を公表するに留まっているが、なんと歴代最速であることは証明済み。新型シビックタイプRは、先代のマイナーチェンジモデルをベースにサーキット指向を強めた限定車「シビックタイプRリミテッドエディション」が鈴鹿サーキットで記録した2分23秒933を上回る、2分23秒120のラップを叩き出したのだ。いずれも鈴鹿サーキットのFF車最速ラップであり、新型タイプRは、見事に記録を塗り替えたのである。特筆すべきは、先代の最速ラップを記録した限定車のような特別仕様ではなく、スタンダードスペックであること。つまり、新型はFF車最強スペックを目指し、開発された証であり、タイプRファンを中心に、新型への期待が大きく膨らんでいるのだ。

新型タイプRが注目される理由は、他にもある。先代シビックタイプRは、英国工場で生産されていたが、マイナーチェンジモデルの生産は、英国工場の閉鎖タイミングの影響で、標準仕様であっても生産台数に上限があり、日本に生産が移管された他のシビックとは異なり、購入を諦めざるえなかった人が多かったのだ。また当時は、自動車の電動化シフトの声が高まり出したタイミングでもあり、ピュアエンジンの魅力が味わえるスポーツモデルとしても、世界的に注目され、米国などの他の市場との争奪戦となったことも影響した。そのため、先代シビックタイプRの中古車価格は高値で推移しており、ほとんどが新車当時の価格を上回っているのが現状なのだ。このため、先代シビックタイプRのオーナーが、下取り価格に期待できることから、新型への乗り換えを前向きに検討しているケースも多いと聞く。
もちろん、コストの話だけではない。長年のシビックタイプRファンにとっては、最後のピュアエンジン車と考えられること。そして、先代のガンダムルックと異なるプレーンなデザインとハッチバックらしいリヤスタイルが、初代となるEK9型シビックタイプRを彷彿させることなど、歴代シビックタイプRのひとつの完成形として、その仕上がりに期待しているのだ。
高騰する中古シビック タイプRの現状とオススメモデル

それでは中古車としてのシビックタイプRはどうなのだろうか。まずは先代となるFK8型だが、上記のように、ほとんどが新車時を超えるプレミア価格となっているため、正直、狙い目とは言いにくい。2017年発売の前期型と2020年10月発売の後期型のふたつに分けることが出来るが、いずれも高値安定だ。ただメリットもある。登場から最長で5年とモデル自体が新しいことも有り、走行距離は少なめ。さらにプレミア化したことで、修復歴車も非常に少ないため、良い固体が探しやすいとはいえるのだ。価格帯は、440万円代~1500万円台までと幅広い。ただ極端に高いのは、超低走行のものと「リミテッドエディション」に限定される。中心となる価格帯は、前期型で500万円台と後期型で600万円台の後期型だ。流通数は、前期型の方が多めとなる。前期と後期の大きな違いは、装備や機能よりもスポーツカーとしてのセッティングにある。前期型は、サイボーグのような精密さが強く、人とマシンが一体となる感覚が強い。そのため、快適さや普段の運転の楽しみは少し犠牲になっている感じがある。一方、後期型は、走行性能を高めつつ、日常での快適さや運転のし易さを意識した磨き上げも行っているのだ。このため、タイプRらしさ前期の方が強いと言っても良いかもしれない。所有欲を満たすのではなく、純粋にタイプRを楽しみたいなら、前期型の価格の安いものから吟味していくのも良いと思う。

ネオクラシックとなる初代シビックタイプR(EK9)は、1997年から2001年に販売されていた。新車時は兄貴分となるインテグラタイプRの陰に隠れていた印象が強い。エンジンもインテRが1.8Lに対して、1.6Lエンジンを搭載しており、弟分的存在であった。ただ価格が200万円切るなど、タイプRエントリーとして、モータースポーツ愛好家や峠の走り屋たちに愛された。しかし、現在はハンドメイドのVTECエンジンやライトウェイトなどの魅力が再評価され、神格化。価格は200万円~500万円と幅が広いが、全体的に過走行車と修復歴車が多いため、リフレッシュ費用を含めた予算ぐみが必要となり、誰でも手の出しやすいタイプRとは言いにくい。また手頃さから走りを楽しむために活躍してきたため、フルオリジナル車も希少だ。それでも初代に思い入れがある人にとっては、今が入手のラストチャンスともいえ、一度、真剣に検討はすべきだろう。

個人的に、等身大の遊べるタイプRとしておススメしたいのが、2代目タイプR(EP3)だ。2001年から2005年に販売されたモデルで、日本仕様のシビックでは非採用の3ドアハッチバックボディであったこともあり、英国で生産された。仕様の違いからインテグラRよりも少し性能は落とされていたが、エンジン自体は、同形式のエンジンが搭載されていた。インテグラタイプRの存在感の大きさや、ビジュアル的にスポーティさが劣るインパネシフトのMTであったことなどの理由から、歴代モデルでは最も地味なタイプRとなったが、初代同様の3ドアハッチバックスタイルやライトウェイトな車重、高回転型自然吸気エンジンなどの魅力はしっかりと受け継いでいる。流通量も少なく、修復歴車も少なくないが、100万円台から狙えるのは、大きな魅力ではないだろうか。この価格ならば、メンテンナンスのついでにチューニングして楽しむこともできるだろう。

登場が目前に迫った新型シビックタイプRは歴代最強マシンであることは疑う余地はない。しかし、その時代のFFスポーツの面白さや凄みを追求してきた歴代モデルは、それぞれの個性と魅力が光るのも確か。このタイミングで、新車を狙うのもありだが、自分に最もふさわしいモデルを歴代モデルの中から選ぶのも楽しいかもしれない。