車のエンタメ
更新日:2017.05.31 / 掲載日:2017.03.08
新世代マクラーレン「720S」はだれもがドリフトできるマシンに!

文と写真●ユニット・コンパス
2017年3月8日、青山のマクラーレン東京ショールームで、650Sの後継であるニューモデル「720S」の発表会が行われた。ジュネーブショーのワールドプレミア直後ということで、多くの報道陣が駆けつけて、注目度の高さをうかがわせた。
マクラーレンブランドは、最上位のスーパースポーツ「アルティメットシリーズ」、主力スーパーカーの「スーパーシリーズ」、そして、エントリーモデルの「スポーツシリーズ」という3つのプロダクトレンジに分けられているが、720Sは、主力のスーパーシリーズとなる。「レース直系」を印象付けるスーパースポーツでありながら、快適性やユーティリティも考慮されるという「進化」を遂げている。
今回、ボディ構造、デザイン言語から一新され、「第2世代のスーパーシリーズ」と呼べる最初のモデルとなる。ドライバーに向けたインターフェースも大幅に強化され、ドライバーとクルマとの一体感においても、目覚ましいレベルアップが図られているという。通常走行とサーキット走行の時で、ガラリと見た目と表示が変わるといった、折りたたみ式のドライバー用ディスプレーもそのひとつだ。
折りたたみ式ドライバー用ディスプレーの操作紹介
「ハードワークとパッション」が込められたという造形は、全体にパワー感が強調されたもので、新たな方向性に向かったデザインとなる。大胆なエアインテークが目立つが、720馬力ものパワーを生み出すエンジンのクーリングに対しても積極的なアプローチが取られている。また、キャビンをフロントに近づけることで、良好な視界を手に入れるなど、機能性も重視されている。「グラスハウス」と呼ばれるルーフは、ほぼ360度の開放的な視界があり、スーパースポーツの室内としては異例の快適さがある。ルーフまで大きく切れ上がったドアも、上方に跳ね上がるタイプで、サイドに張り出すことがなく実用性も高い。
マクラーレンでは、ラップタイムだけでなく、「シアター」という概念のもと、削り出しのアルミニウムや上質なレザーによるラグジュアリー感のある内装に加えて、コンフォートにも対応する走りやエモーショナルなエンジンサウンドにも気が配られているという。サーキットからやって来たピュアなスーパースポーツというイメージから、よりドライバーにコネクトしたスーパーモデルとして生まれ変わった感がある。そして、それ以上のスポーティさを望むひとには、アルティメットシリーズがあるというスタンスなのだろう。
とはいえ、マクラーレンのモデルらしく、720Sのパフォーマンスは比類なきもので、時速341kmのトップスピードと0-100km/h加速2.9秒という、市販スポーツモデルの最高レベルの速さだ。そこには、700馬力オーバーの驚異的なパワーはもちろん、ハイレベルなボディの進化も見逃せない。「マクラーレン・プロアクティブ・シャシー・コントロール(PCC)II」システムにはさまざまセンサーが搭載され、それぞれのホイール・ハブにも、路面からのインプット、タイヤの接地面をを認識することのできるセンサーが装備される。得られた情報は、ミリ秒単位の速さで解析され、サスペンションの減衰力が直ちに最適化される。つまり、走行状況やドライバーの操作が細やかにモニターされ、ハイレベルな制御がつねに行われるのである。「コンフォート」や「スポーツ」さらには「トラック」のいずれかから、シャシー・モードを自由に選択することができ、好みに応じたパフォーマンスを得られるわけだ。
ところで、発表会の会場で映されたプロモーション映像では、積極的にテールスライドをしながらすべてをコントロール下においているハイレベルなパフォーマンスがダイナミックに表現されていた。この720Sの何よりの注目点は、「可変ドリフトコントロール」だ。ダイナミックパネルから、電子安定性制御(ESC)のレベルを指先で簡単に調整でき、ドライビングテクニックに自信がなくても、手軽にドリフト走行を楽しむことができる。しかも、ドリフトアングルまで自在に設定できるので、控えめな走りから、大胆なドリフトまで自在に楽しむことができる。マクラーレンでは、ただラップタイムを重視するだけではなく、普通のドライバーが手軽に、そして安全にドリフト走行を楽しめる、というエンターテイメント性も重視したことを明らかにしている。もちろん、ドリフトモードは、サーキットなどの高い安全性が確保された場所で行いたい。
「少しずつの正常進化は、マクラーレンらしくない」と語るアジア・パシフィックマネージングディレクターのジョージ・ビッグス氏は、今回の720Sは、マクラーレンにとっての大きな「ジャンプ」であると、その出来栄えに並々ならぬ自信を見せた。そんな720Sのキャッチコピーは「Raise your limits」。自らの限界を引き上げる意気込みで開発されたという。
この日、ジュネーブショーにおけるワールドプレミアの直後で、他国に先駆けて最初のプレスカンファレンスとなった日本だが、ビッグス氏は、「日本はマクラーレン全体の販売の6%に相当する地域で、ユーザーは非常に成熟し、スーパーカーとは何たるかをよく心得ている」と前置きしつつ、最初に発表した理由として「日本は、ユーザーが厳しい眼識を持つゆえにマクラーレンのプロダクトとフィットし、今後さらに大きな可能性を秘めているから」との考えを明らかにしている。
マクラーレンでは、今後6年間でおよそ10億ポンド(1400億円)を投資し、さらなる商品力の向上を目指していくとしている。
すべてがドライバーを中心に考えられ、これまでのマクラーレンの経験すべてがフィードバックされているという720S。価格は3338万3000円。7月からのデリバリーが予定されている。
【マクラーレン 720Sの主要データ(7速AT・SSG)】
全長4543mm
全幅2161mm
全高1196mm
ホイールベース2670mm
重量1283kg
エンジンV8DOHCツインターボ
最高出力720ps/7500rpm
最大トルク78.5kg/5500rpm
サスペンション前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ前後Vディスク(カーボンセラミック)
タイヤ前・後245/35R19・305/30R20
マクラーレン アジア・パシフィック マネージングディレクターのジョージ・ビッグス氏
ノースアジア リージョナル セールスマネージャーのピーター・セル氏
マクラーレン 720S