車のエンタメ
更新日:2018.11.11 / 掲載日:2017.01.30
遊園地のコースターからヒントを得たボルボの予防安全システム

ボルボは安全性能への意識がとても高い自動車ブランドのひとつ。1959年に3点式シートベルトも世界で最初に開発したのもボルボでした。現在、どこのメーカーのクルマにも3点式シートベルトが採用されているのは、「誰もがこの技術の恩恵を受けられるように」とボルボが持つ特許を無償で公開したからなんです。
交通事故というとクルマとクルマ、クルマと人などの接触事故をイメージしますが、実は死亡事故や重傷事故の多くは単独事故なのだそうです。アメリカでは交通事故死の約半数が車線逸脱事故、スウェーデンでも重傷事故または死亡事故の約3分の2が単独事故であることから、ボルボは「車両が車線を逸脱したら、事故を起こす可能性が高い」と判断して乗員を守る予防安全システム「ランオフロード・プロテクション(道路逸脱事故時保護システム)」を開発しました。
2016年に発売されたボルボのフラッグシップSUV「XC90」から搭載されているランオフロード・プロテクションですが、開発で役立ったのはちょっと変わったマシンだったんです。

道路から逸脱して崖に転落したり、オフロードで単独クラッシュしたりしたとき、乗員の安全性をいかに確保するかは自動車メーカーにとって大きな課題です。ボルボは、さまざまな条件で事故のシミュレーションを繰り返し行って、データを収集してきました。

ボルボは、ダミー人形を座らせたシートをアームに固定し、上下左右に大きなGをかける「ロボコースター」を開発。さまざまなタイプのランオフロード衝突実験から得た入力Gをロボコースターで再現することで、何度も繰り返してシミュレートできるようにしました。

安全装備の開発責任者、アンデシュ・アクセルソンさんは「クルマには、このアトラクションのようなハーネスはない」と、シートベルトの機能を高めることに。

従来のシートベルトには、衝突の衝撃を感知した際に自動的に巻きあげて乗員の身体を固定する「プリテンショナー」を備えていましたが、事故が起こる可能性が高い「道路からの逸脱」を感知した時点で巻きあげる「プリクラッシュテンショナー」を開発したのです。
また、ロードランオフ・プロテクションには、道路から飛び出した車両が勢いよく着地した際の衝撃を吸収し、脊椎の損傷リスクを軽減するシートも採用されています。
「2020年までに、新しいボルボ車での死亡者や重傷者をゼロにする」という安全目標「Vision2020」を掲げ、重大な事故を減らすための技術開発を続けているボルボ。テーマパークのアトラクションからヒントを得てシミュレーションマシンをつくっていたというのは、驚きですね。