オートサロン
更新日:2023.01.21 / 掲載日:2023.01.21
【東京オートサロン2023】会場で気になったクルマを振り返る【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス、アルピーヌ、トヨタ、日産
“東京オートサロン2023”が行われました。クルマ好きにとっては胸躍るビッグイベントです。流行病の自主規制が緩和され、自動車業界的にも久々の大規模なショーとなりました。

展示されるクルマはじつに色とりどりです。かつてはレーシーでやんちゃなカスタムカーが大半を占めていましたが、近年はワークス的に国産メーカーのブースが増え、さらには輸入車ブースも珍しく無くなりました。それを証拠に今回アルピーヌブースに立ち寄ったらA110Rが飾られていて驚きました。昨年後半マイナーチェンジでA110GT、A110Sに試乗して感動しましたが、その上をいくモデルがすでに飾られているなんて。みなさんホンキのようです。
ただ、このところのメインストリームはTOYOTA GAZOO RACINGではないでしょうか。豊田社長自ら出向いてコメントを発しています。それにトヨタイムズの「モルゾウと回る東京オートサロン」動画はおもしろい。会場の臨場感が伝わるし、マニアックな話もたくさん聞けます。この人とこの人は知り合いなんだ……とか。会場に行きたくて行けなかった人は是非観るといいでしょう。

その動画でも触れているのが、2つのAE86です。知れば知るほど興味深い内容になっています。名前は「AE86 H2コンセプト」と「AE86 EVコンセプト」。その名の通り、水素自動車と電気自動車です。前者はガソリンエンジンをそのままにヘッド部分を水素用に取り替えているのが特徴となります。つまり、ユニット交換のようなこの技術が市販されれば、環境規制が変わってもいつまでも今の愛車に乗り続けることができるかもしれないんです。夢のようなテクノロジーですね。
そしてEVとなった後者の見どころはマニュアルシフトを搭載していること。レクサスEVのマニュアルをニュースで見たことがありますが、それと同等の技術が搭載されていると思われます。技術的なところはここでは省きますが、やはりこちらも興味津々。早くテストドライブしてみたいです。
でもってこれらの技術をAE86というオールドスクールなモデルで試しているのがグッド。最近国産メーカーもようやく自社のヘリテージモデルにスポットを当てるようになりましたが、この傾向は歓迎です。個人的には英国ヘンリー王子(元?)のウェデングセレモニーを思い出しました。メーガン妃と二人で登場したクルマはジャガーEタイプのEV。当然ジャガーオリジナルの一台限りのコンセプトカーです。1960年代の価値あるクルマをEVに改造してしまうなんてすごいと思いませんか? 歴史あるブランドだからできるワザです。兄ウィリアムズの時はアストンマーティンDB6ヴォランテだったので弟は何に乗るか期待していたら、そんな必殺技を見せてくれました。ニクイ演出ですねー。
ただこうしたAE86ベースのコンセプトカーの展示は一見するとわかりにくいという難点もあります。遠くからでは旧車が置いてあるだけですから。「旧車ブームだからね」で見過ごした方もいらっしゃったのではないでしょうか。

その点わかりやすいのが日産でした。特設ステージの上では2024年型とされる日産GT-Rが先行発表されたのです。スタート30分前からカメラマンたちがフロントローを陣取り、ざわつく感じがモーターショーっぽさいっぱいでした。
発表されたのは、特別仕様車の「GT-RプレミアムエディションT-スペック」と「GT-R NISMOスペシャルエディション」です。前者はエアロパーツを最適化し高速時のクルマの安定を高めることでコントロール性能を高めました。高いトータルバランスを求めて設計されたようです。また、NISMOスペシャルではハンドリング性能を高めるためにフロントにメカニカルLSDを搭載するなど機械的な面で手を入れています。それに官能的なエキゾーストノートを響かせるためにマフラーの構造自体を新しくするなどしました。その辺はレーシングコンストラクターならではのカスタムポイントかもしれませんね。お見事です。
といった話を一台一台書いていたら本が一冊書けそうなのでこのくらいにしますが、話題には欠かないショーであることはおわかりいただけると思います。出展する街のショップにとっては一世一代の晴れ舞台的な感じもしますしね。みなさんかなり盛り上がっていて、会場は熱気ムンムンでした。クルマ人気というよりはカスタム人気が絶好調なのでしょうか。どのブースでも展示車両には熱い視線が注がれていました。