故障・修理
更新日:2025.08.20 / 掲載日:2019.12.17
クーラントの役割や種類、交換時期、補充方法まで整備士が徹底解説

クーラントは、エンジンを守る重要な冷却液です。ただ「交換時期は?」「色の違いは?」「減ったときはどうする?」と疑問を感じる人も多いでしょう。
実際放置すると、サビや腐食、オーバーヒートが発生し、高額修理が必要になることもあります。とはいえ、ポイントを押さえておけば安心してメンテナンスに取り組めます。
この記事ではプロの整備士が、クーラントの役割・種類・交換や補充の方法、注意すべきトラブル事例までわかりやすく解説します。安心して長く愛車に乗るための参考にしていただけたら幸いです。
1. クーラントとは

車のエンジンは走行中に非常に高温になります。適切に冷却できなければ、オーバーヒートを起こし、重大なエンジントラブルにつながります。
こうした過熱を防ぎ、エンジンを適正な温度に保つために使用されるのがクーラントです。
(1) クーラントの役割
クーラントは、エンジンが発生する熱を吸収して温度を安定させる液体です。エンジン内を循環しながら熱を吸収したらラジエーターで冷却され、再びエンジン内を循環するというのを繰り返しています。
冷却以外にも重要な役割があります。
まず、凍結防止効果です。冬の低温でも凍結しないよう、エチレングリコールやプロピレングリコールといった不凍成分が配合されています。冷却水が凍結すると配管やラジエーターの破損につながるため、不凍性は欠かせません。
次に、防サビ・防腐効果があります。エンジン内部の金属部品をサビや腐食から守る防サビ剤が含まれており、長期間使用しても部品の劣化を抑えます。
さらに、消泡剤効果によって泡立ちを防ぎ、冷却水の流れを安定させます。泡が発生すると冷却性能が落ちるため、消泡作用も必要です。
クーラントは冷却を中心に、複数の働きでエンジンの安全性と耐久性を守っています。
(2) ラジエーター液との違い
クーラントとラジエーター液は、基本的に同じ液体を指します。成分や性能に違いはありません。
どちらもエンジン内部の熱を吸収し、ラジエーターで冷却されたあと再び循環する仕組みで使われています。
呼び方は異なっても、エンジンの冷却に加え、凍結防止や防サビといった役割を備えている点も共通です。
2. クーラントの種類と選び方
エンジンを適切に冷却し、長持ちさせるためには、使用するクーラントの種類選びも重要になります。ここでは、実際に使われているクーラントの種類や色の違いについて解説します。
(1) クーラントの種類(LLC・スーパーLLCなど)
クーラントは大きく分けて「LLC(ロングライフクーラント)」と「スーパーLLC(スーパーロングライフクーラント)」の2種類があります。
違いは主に耐久性と交換頻度です。それぞれの性能を比較してみましょう。
① LLC(ロングライフクーラント)
LLCは、比較的短い周期で交換するタイプのクーラントです。
交換目安は2〜3年ごととされ、車検のタイミングで交換するケースが一般的です。
② スーパーLLC(スーパーロングライフクーラント)
スーパーLLCは、耐久性が大きく高められたタイプです。
7〜10年程度交換不要とされており、近年の国産車では新車時から採用されるケースが増えています。添加剤の性能が強化され、防サビや不凍性能も長期間安定します。
(2) クーラントの色の違い
クーラントには緑・青・赤・ピンクといった色があります。これは、主に添加剤の種類や耐久性によって色分けされているのが特徴です。
一般的に、LLCは緑や赤が多く、スーパーLLCは青やピンクに着色されることが多くなっています。
メーカー別に見ると、以下のような色が採用されています。
| メーカー | LLCの色 | スーパーLLC |
|---|---|---|
| トヨタ | 赤 | ピンク |
| 日産自動車 | 緑 | 青 |
| ホンダ | 緑 | 青 |
| マツダ | 緑 | 緑 |
| スズキ | 緑 | 青 |
| スバル | 緑 | 青 |
| ダイハツ | 緑 | ピンク |
| 三菱自動車 | 緑 | 青 |
どの種類・色のクーラントを使用するかは、車種やメーカーによってあらかじめ指定されているので、必ず車両指定の色や種類を守りましょう。
3. クーラントの交換・継ぎ足しのタイミング
基本的には、種類や車種ごとに推奨されているサイクルに沿ってクーラントを交換します。
ただし、使用環境や劣化状況によって、交換や補充が必要になるケースもあります。ここでは、その目安を整理します。
(1) クーラントの劣化サイン
クーラントは使用を続けるうちに少しずつ劣化します。
まず確認すべきサインが色の変化です。新品時は透明感のある緑・赤・青・ピンクですが、劣化が進むと茶色く濁ったり白く変色したりします。
防サビや消泡の性能も低下している可能性が高いため、早めの交換を検討しましょう。
また、クーラントが減る現象も注意が必要です。
通常、大きく減ることはありませんが、液面が下がっている場合は、漏れや冷却系統の異常が疑われます。減り方が早い場合は放置せず、整備工場での点検が必要です。
(2) 継ぎ足しが必要になるケース
クーラントは基本的に定期交換が前提ですが、減りが多い場合は応急的に継ぎ足して対応することもあります。
ただし、継ぎ足しはあくまで一時的な措置です。頻繁に減る場合は漏れや冷却系統の異常が疑われるため、早めに点検を受ける必要があります。
補充する際は、同じ種類・同じ色のクーラントを使用し、異なるタイプは混ぜないよう注意してください。
4. クーラントの補充・交換方法
クーラントは自分で補充や交換も可能ですが、正しい知識と注意が必要です。手順を誤ると冷却性能の低下やトラブルにつながる恐れもあります。
そのため、基本的には、ディーラーや整備工場などのプロに依頼するのが安全で確実な方法です。
ここでは、DIYに挑戦したい人向けに、作業の流れと注意点を参考までに紹介します。
(1) DIYで補充する方法
クーラントを補充する際は、必ずエンジンが冷えた状態で作業を始めます。
リザーバータンクのキャップを開け、液面が「FULL」または「MAX」になるまでゆっくり注ぎます。補充が終わったらキャップを確実に閉めて完了です。
なお、使用するクーラントには2種類あります。
ストレートタイプ(希釈済み)ならそのまま使用可能です。原液タイプ(濃縮タイプ)は水道水で希釈し、使用地域の最低気温に合わせて凍結温度を調整します。
希釈割合は製品ごとに異なるため、取扱説明書を確認してください。
(2) DIYで交換する方法
交換作業では、まずラジエーター下部のドレンプラグを開けて古いクーラントを抜き取ります。ラジエーターキャップも外すと排出が早くなります。
抜き終えたらドレンプラグを締め、新しいクーラントを少しずつ注入します。容量は車種によって異なり、1.5Lエンジンで約5L、2.0Lエンジンで約7Lが目安です。
その後エンジンを始動し、暖気を進めながら気泡が出た分だけ追加します。冷却ファンが作動し、気泡が出なくなれば交換完了です。
廃棄した古いクーラントは産業廃棄物扱いとなるため、専門業者へ処分を依頼してください。
(3) エア抜きの重要性と注意点
クーラント交換ではエア抜き作業が欠かせません。
冷却通路は複雑な構造になっており、空気が残ると冷却不良を招きます。抜け切らないまま走行するとオーバーヒートの原因になります。
エア抜きは、エンジンをかけてサーモスタットが開く(エンジンが温まる)まで、回転をやや高めに維持しながら実施してください。
暖機運転を続けていると、徐々に空気が抜けて液面が下がるため、その都度少しずつ補充を繰り返します。気泡が出なくなればエア抜き完了です。
5. 業者に交換を依頼する場合
クーラントの交換を業者に依頼した場合の費用は、1〜2万円程度が相場です。使用するクーラントや車種によって価格は多少変わります。
そのため、業者に依頼するか迷う人も多いですが、任せる最大のメリットはエア抜きまで含めて確実に仕上げてもらえる点です。専用の設備を使い、短時間で安全に作業してもらえます。
一方で、店舗によって価格やサービス内容は異なるため、事前に複数の業者から見積もりを取り、内容を比較して検討すると安心です。
6. クーラントのトラブルと対処法
クーラントは適切に管理すれば安定して使えますが、不具合が起こると重大な故障につながる恐れがあります。ここでは主なトラブルと対応策を紹介します。
(1) クーラント漏れの原因と対処法
クーラント漏れの原因には、ホースやジョイントの亀裂、ラジエーター本体の損傷、パッキン類の劣化などがあります。整備時の締め付け不良や破損がきっかけになるケースもあります。
放置すると冷却水不足になり、オーバーヒートやエンジントラブルを招くため、早めに整備工場で点検を受けましょう。
緑・青・赤・ピンクの液体が駐車場に垂れている、液量の減りが早い、甘い匂いがするといった症状があれば注意が必要です。
(2) 誤った混合・水の代用が招く不具合
クーラントは種類や色を混ぜると性能が低下します。成分が反応し、腐食防止効果が弱まり、沈殿物が発生して通路を詰まらせる原因になるのです。
さらに、水道水のみを代用すると防サビ効果が不足し、内部の金属部品が損傷します。冬季は凍結リスクも高まります。
必ずメーカー指定のクーラントを使用し、混合や代用は避けてください。
(3) 日常点検でのチェックポイント
日常点検では、液量・色・臭いを確認します。リザーバータンクの液面が規定範囲内に収まっているか確認し、不足時は補充や点検が必要です。
色の濁りは劣化、甘い匂いは漏れの兆候です。早めに異常に気付けば、大きな故障を防げます。
7. クーラントに関することはグーネットピットにお任せください
クーラントはエンジンを守るうえで欠かせない重要なメンテナンス項目です。交換時期を守り、正しい種類を使い続けることがエンジントラブルの予防につながります。
とはいえ、交換やエア抜き作業は専門知識や設備が必要になります。無理にDIYすると、トラブルにつながるリスクがあるため、少しでも不安があればプロに任せるのが安心です。
グーネットピットなら、経験豊富な整備士がクーラント交換をはじめ各種メンテナンスに対応しています。車種や状態に合わせた丁寧な作業を実施しますので、ぜひお気軽にご相談ください。