故障・修理
更新日:2020.07.28 / 掲載日:2020.07.28

Aピラー付け根に大穴が! AA63セリカ ラリー車製作プロジェクト

ここ数年、華やかなラリーイベントとして大人気を博しているのがトヨタGRラリーチャレンジ。トヨタの現行車をベースとするラリー車両が、参加車両の主なところなのだが、車両規格にさえ合致していれば旧車や他メーカー車両の参戦も可能。そんなTGRラリーチャレンジに参戦を目論むAA63セリカの製作模様をレポートしています。

 この連載が始まってから延々と続いているのが、錆びたボディの修復。切り貼り作業はもう見飽きたという方がもしいらっしゃるとしたら、スミマセン、今回もボディの切り貼りが続きます。 とはいえそろそろボディの錆との戦いも終わりが見えてきた……、と思いたいページ担当者であります。とりあえずボディの錆補修が一段落すると仮定して、今後ラリー車両にするために、どのような計画でいるのかを、この企画の仕掛人であるレーシングサービス・ロゴスの久保代表に聞いてみました。「とにかく近い内に、一度走らせてみたいですね。あまりにボディの状態が酷かったので、ボディの作業を優先的にやらざるを得ませんでしたけど、ラリーというモータースポーツに参戦するわけですから、エンジンや駆動系、足回りといった部分のコンディションも早く確認したいと思ってます」 確かにそろそろ走行テストを行ったり、ターマックラリーを走ることのできる車体作りを始めないと、今シーズンもまたラリー参戦ができないなんてことになりかねない。とはいえ今の姿からはとても走行テストを行うなんて想像もできないのですが……。「まあ、確かにそうかも知れませんけど、きっと海老名くんが何とかしてくれますよ。走らせる日程さえ決めちゃえば、今までレースでも間に合わなかったことはありませんから(笑)」 そんな久保代表の発言を、作業中の海老名メカは聞いていたのです。声にこそ出しませんでしたが、その表情は「マジかよ(汗)」というものであったのはいうまでもありません。 しかもその後、強度的にも重要なAピラーの根元にも錆による大きな穴が開いていることが発覚。果たしていつになったらラリー車製作的なレポートがお伝えできるようになるのか?

錆でグサグサとなった部分を 修理するにはガラスが邪魔 まずはフロントウインドウを外す

 カウルトップ部は錆で原型を留めない状態。その錆はフロントウインドウの貼付け面にまで及んでいる。鈑金修理するにはフロントウインドウを取り外す必要があり、ガラス屋さんの登場となった。他の部分は海老名メカが外しているのに、なぜフロントウインドウは専門家に任せるのかと聞いたところ、接着されているフロントウインドウは取り外す際に割れてしまう可能性も高いからだという。そしてもし割れてしまった場合、新たにフロントウインドウガラスを見つけられるかどうかわからないので、確実性を重視し、ガラス屋さんにお願いしたそうだ。ガラスの下側のボディパネルが錆びて酷い状態ながら、流石はプロのワザ、ガラスにもボディにも影響を及ぼすことなくガラスを取り外してくれた。しかし錆により欠損している部分を直した場合、ガラスとの合わせ面に変形が生じて、修復後ガラスが付かないこともあるとか。果たしてガラスが付く状態に無事修復できるのか?

ガラス取り外し作業は、まずモールを取り外した後、カッターを使ってウエザーストリップに切れ目をいれる。切れ目はガラスの淵に沿わせるそうだ。

切れ目から通称ピアノ線を通して、ボディパネルとガラスの間に入るゴムを切断する。この作業時にガラスが割れてしまうことがあるそうだ。

切り残しなくガラスの1周にわたりゴム部がカットできたらフロントウインドーを取り外す。これで錆びた部分の切り貼り作業ができるように。

ガラスを外すと患部の惨状が より明らかになりました(汗)

 フロントウインドウのガラス貼付け面が錆びて欠損しているのはわかっていたが、ガラスを取り外して改めてボディパネルを見てみると予想以上に酷そうだ。切り貼りをする場合、ボディ側は溶接できるだけの厚さがパネルに残っている必要がある。現在の辛うじてパネルとして残っている部分も、十分な厚さが無ければ削除しなくてはならないので、欠損部はより広域になると思われる。いずれにせよガラスと共に切り貼り作業時の障害となる内装を取り外していく。ダッシュパネルは既に取り外されていたが、その内蔵物となるブロワユニットやワイヤハーネスの束を分解していくと、錆がここまで広まった新たなる原因(?)を発見。エンジンからの熱や音を遮るために、バルクヘッドに装着される断熱防音用のスポンジマットが湿っていたのだ。その水分により内側からも錆が進行していたものと思われる。

ワイパーアームの 台座部分周辺が 錆びまくっているのも 大問題!!

前号でもレポートしたとおり、ワイパーアームの付く台座部分も激しく錆びている。台座部が元位置になるよう再生が必要だ。

内装側もバラしていくと、錆の原因発見!? 防音防熱用のマットが湿っていた……

エンジンと室内の隔壁に取付けられているスポンジ状のマット。この部分に錆穴から水が染み込み、内部から錆を広げたようだ。

朽ちて消滅している窓枠を再生 海老名メカが亜鉛鋼板を まるで厚紙のように(笑) ハサミで切って素手で曲げて なんとなく(?)元のカタチに

まずは溶接できる厚さが残っている部分と残っていない部分を見極めるべく、怪しい部分を中心にハンマーで衝撃を与えて状態を判断する。

錆びて朽ちてしまった部分は、カタチを整えることも兼ねて、ギザギザな部分を切り落としていく。鈑金ハサミで切れてしまう部分も多いのだ。

大まかに溶接可能な部分を残して、鈑金バサミでカットできる部分を切り落とした状態(といっても中央より助手席側のみ)。

切り貼りが必要な部分に大まかにサイズを合わせて亜鉛鋼板をカット。それをボディ側の曲げに合わせて曲げていくべく、折り位置をマーキング。

マーキングに合わせて鉄板を金床台と鈑金ハンマーを用いて曲げていく。この時点では曲げる角度はアバウトで、折り線を付ける感じ。

ボディに合わせて角度を確認。海老名メカは曲げ角を腕力で補正しながら、切り貼りするパネルを形作っていく。傍からみると厚紙を曲げているよう。

大まかにカタチが出来上がったら、溶接代を残してボディパネルをディスクグラインダーでカット。さすがにここは鈑金バサミでは切れないようだ。

カット部に合わせて、作ったパネルを再度調整し、余分は切り落とす。写真の状態ではまだボディと新造パネルの断面形状が合っていない。

出来上がった新造パネルをシャコ万で固定し半自動溶接機を使って溶接。溶接時もハンマーなどでパネルのカタチを調整していた。

新造したパネルが溶接できた状態。元パネルと新造パネルに段差ができているが、そこはアルミパテなどを使って帳尻を合わせるという。

懸念されていたワイパー軸の 固定部もそれなりに(?)固定完了

錆びの激しい運転席側Aピラー下側の補修。まずは窓枠の一部を再現すべく新造パネルを作る。新造パネルを溶接。窓枠だけでなくワイパー台座もあるので大きくは切り貼りできず、少しずつカタチを再現していく。

一部再現した窓枠部とワイパー台座部を新造パネルで繋げるべく、鉄板を切り出す。辛うじて繋がる各ボディパネルに合わせて新造パネルを曲げていく。出来たパネルを溶接。これでワイパー台座部の強度も確保。

中央のワイパー取付け台座部も写真のように鉄板を溶接し位置をそのままに補強。広く大きな面が錆で失われているので、ワイパー台座など位置が重要な部分から、少しずつカウルトップ部を再構築していく。

「まだこんな状態ですが……」と前置きしつつ、「近日中に動かしてみたいと思ってます」という久保代表。果たしてそんな事が可能なのか?

フロントウインドウの枠部分、 そしてカウルトップ部の大穴は 何とか復元できそう……?

 いわゆるレストア作業だと元の形状に復元することがマストであるが、このセリカはあくまでラリー車両の製作なので、機能さえ整ってくれれば、細かな形状にこだわらず切り貼り作業が進められている。つまりワイパーとフロントウインドウが問題なく付けばいい。まずフロントウインドウとの合わせ面は何とか再現できそう。そしてしっかりと元の位置に残っている台座部を固定できないと、ワイパー作動時に問題が出そうだと懸念されていたワイパー台座部分の修正も、実際にワイパーが付いてみないと何とも言えないところだが、とはいえ恐らく元の位置や角度でワイパーアームの付くシャフトを固定できる目処は立った。つまりはあとはカウルトップ部のパネルをそれなりに作ればOK。……と思っていたら、カウルトップ下の袋の部分、その底面に錆による大穴が! さらには他の部分にも錆が!

カウルトップ下の袋部 その底のパネルの状態を 確認すべくホジっていくと……

ワイパーのリンク部が入るカウルトップ下の袋部分、その底面に錆で出来た穴を発見。その穴は室内にまで貫通!さらに錆をたどっていくとAピラーの根本が錆びて大穴が開いていることが判明!

さらに Aピラーの付け根部分に 巨大な錆穴が大口を 開けていることが判明!

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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